第五十九話「和解とこれからと影」
―――ミ~ン、ミンミンミンミ~ンっ
「・・・・・・」
窓の外から忙しなく聞こえる蝉の鳴き声が、まどろむ意識の中で聞こえて来る。顔にかかる眩しい光は、目を閉じているにも関わらず視界を真っ白に染め上げる。
目を開ければ光り輝く太陽が目の前にあった。
「・・・なんで俺、ここにいるんだ?」
別にここがどこかわからない訳ではない。見慣れた天井。窓から見える景色。ベッドの感触。それらが、アクティナから南西に向かった森の中にある天ヶ咲家の別荘の一つ。そこの俺の部屋である事は確かだ。
しかし、どうして自分が今ここにいるのかわからなかった。
俺が最後に覚えている記憶でば、蓮桜学園で天蘭院と戦っていたはずだった。しかもいつの間にかネックレスが首に掛かっていた。
いつ着け直したんだ?
首を傾げながら記憶を辿って行くと、だんだんと思い出してきて顔全体が熱くなってくるのがわかった。
「うあぁ~・・・、やっちまったぁ」
あの時の自分の行動が今さら恥ずかしく感じて片手で顔を隠す。よりによって女子の、しかも天蘭院の腕の中で泣いてしまうとは。この年になってまで声を上げて泣いた恥ずかしさよりも、そっちの方が何倍も恥ずかしく感じられた。
「・・・はぁ~。これからどうするか」
しばらくそのままボゥ~っとしていると、タッタッタッタッタと小さな足音が聞こえて来た。
―--バンッ
「お兄ちゃん、朝だよ! おはようの時間だよ♪」
部屋の扉を勢いよく開け、水玉模様の入った涼しそうな服を着て、銀色の長い髪をふわつかせながら小さな女の子―――ニーナが入って来た。
「起きてお兄ちゃん。皆食堂で待ってるよ? 皆お兄ちゃん待ちなんだからね。早く起きて来てよね」
それだけ言ってニーナは部屋を出て行く。
嵐のように現れ、嵐のように去る。いったい何がしたかったのやら。
そう思いながら気怠い身体を起こす。伸びをしながら身体を捻るとコキコキと小気味良い音がなる。まだ微妙にスッキリしない頭のまま部屋を出る。
時計を見ればまだ六時前だった。
若干余裕があると思いつつ一階まで下りる。
そして、食堂―――というには少し小さく、しかも食卓以外にもソファや暖炉などがある―――に入ると、まずニーナの声が聞こえて来た。
「お兄ちゃん、早く顔を洗って来て? あ、お義母さん、それ取って」
「おはよう、桜華。ようやく起きて来たのね? 早く顔を洗っていらっしゃい。はい、ニーナちゃん」
「いくら明日から夏休みだからと言って、気が緩んでいるのではないか、桜華。 ・・・これで、チェックメイトだ」
「朝からお邪魔してるわよ。 ・・・ん、ちょっと待って」
「往生際が悪いぞ・・・志恵那」
食堂を突っ切って洗面所に行こうとしたら次々に投げ掛けられる声。その声を聞いて足が止まった。
止めたのではなく、止まったのだ。
驚いて振り返るとそこには、
「と、父さんに母さん?! なんでここに! しかも、なんでお前がここにいる!」
台所でニーナと共に朝食の用意をする俺の母さんこと天ヶ咲 静奈。そして食卓の机では父さんこと天ヶ咲 隆二と、共にチェスをする天蘭院 志恵那。その志恵那へ向かってビシッと音が聞こえそうな程に指さす。
「私だけじゃないわよ」
「何・・・?」
その言葉の意味を問おうとしたその時、
「やっと起きてきたみたいだね、桜華」
「お、おはよう・・・天ヶ咲君」
「こ~ら、天ヶ咲。あんたはいつまで寝てる気なのよ」
後ろから声が聞こえて来た。どの声も聞いたことのある声だった。しかし、ここで聞こえるはずのない声。
ゆっくりと振り向くと、そこには蓮桜学園指定の制服と朱色のコートを着てソファに座っているオルスレッド、天蘭院、美永瀬の姿があった。
「な、何でお前らここに」
「何でと言われても・・・ね、ねぇ?」
ばつが悪そうにしながら天蘭院が他に二人に顔を向ける。
オルスレッドと美永瀬も同じ様だった。
「志恵那がお前に言いたいことがあるそうなのでな、私が招いたのだ。綾香ちゃん達がいるのは先日の件に関して当事者だからな」
至極簡単に、且つ短く説明をする父さん。
確かに当事者だがわざわざ家に入れなくてもいいだろう。というか何故こいつらはここがわかったのだろうか。そう思い三人の方に視線を向けると。オルスレッドが片目を瞑りながら親指を立てていた。
お前の仕業か!
余計なことをしやがってと視線向けると、今度は両手を顔の前で合わせて「ごめん」としだした。まったく謝る気が感じられなかった。わざとだ。これは絶対にわざとだ。
今度殴ってやる。
オルスレッドを睨んでいると、いつの間にか向かいに天蘭院 志恵那が立っていた。
さっきまでと打って変って重い沈黙が部屋を包み込む。
「・・・何だよ」
自然と若干睨み気味になる。
俺はまだこいつを許したわけでも、そもそも許す気すらなかった。
「そう睨まないで欲しい」
「自分が何やったかは理解しているよな」
「ええ。私はあなたの大切な人を殺した。あなたや隆二、静奈にはいくら謝っても許してもらえるとは思ってはいないわ。だから私の事は一生怨んでもらっても構わない。でも、娘だけは―――綾香のことは許してあげて欲しい」
腰を曲げ、頭を下げる天蘭院 志恵那。
その様子に俺は心の底から驚いた。あの天蘭院 志恵那が頭を下げているだと?
以前までの俺だったらここで怒って声を荒げていただろう。今回も一瞬、怒りを覚えたがそれはすぐに消え失せ、代わりに別のものを感じた。
これも以前までの俺だったら絶対に感じたことのないものだった。
自然と口が開いていた。
「・・・別に俺は、あいつの事をどうこうしようとは思っていない。これに関して謝らなければならないのは俺の方だ。すまなかった」
小さく頭を下げる。
人に謝罪をするのはいつぶりだろうか。妙に恥ずかしく感じてしまった。頭を上げて前を見ると、何故か天蘭院 志恵那が少し驚いたような顔をしていた。
「・・・なんだよ。俺が謝るのがそんなにおかしいか。俺だって天蘭院にしたことがおかしいことくらい理解している。だが勘違いするな。俺はお前を許してはしない」
今思うと八つ当たりよりも酷いことをしたもんだ。
これは後で天蘭院から怨まれてもしかたがない。それだけのことをしたのだから。
「俺はあいつと『人と霊が共存できる世界を一緒に創ろう』と約束した。その約束をお前は奪ったんだ。だから、せいぜいその償いをしてもらう。嫌とは言わせない」
「この私に向かって命令とは。これはある意味許してもらったと思っていいのかな?」
「まさか。これからも償い続けろと言っただけだ」
そう言って食堂を出て洗面所に向かう。顔を洗ってスッキリしてからいったん部屋に戻り、制服に着替える。
そして食堂に戻ってくると、天蘭院 志恵那が母さんと並んで台所に立っていた。料理出来るのかと思いながら席に着こうとすると後ろから呼び止められる。
「天ヶ咲君。ちょっといい?」
呼び止めて来たのは天蘭院だった。
「そう言えばまだお前に謝ってなかったな」
「い、いいの! そんな、別に謝らなくても。・・・ていうかむしろ私は天ヶ咲君に抱き着けたからラッキーだったっていうか、なんていうか・・・その、だから・・・」
突然大きな声を出したかと思うと段々と尻込みしていき、両手の人差し指をツンツンと突き合わせながら顔を赤らめて視線を彷徨わせる。聞こえたのは最初の方だけで他は何を言っているのか聞こえなかった。
だが天蘭院からしてみれば理不尽な怒りをぶつけられ、最悪殺されていたかもしれないのだ。
俺としてはちゃんと謝り、出来るならそれ相応の償いをするべきだと思っていた。
「天ヶ咲君。今、私にした事に対して何か償おうとか思ってるでしょ」
「・・・・・・」
何故か考えていたことが言い当てられてしまった。
しかし事実だ。俺がした事は下手をすると殺人未遂で訴えられてもおかしくはない。そんなことをしたのにまさか御咎めなしですと言う訳にもいくまい。
あれだけ償いがどうのこうのと自分で言っておきながら自分がこれとは、かなり皮肉だな。
「む~。また考えてる」
だから何故お前は俺の考えている事がわかるのだ。テレパシーか。それとも単に顔に出ているだけなのだろうか。
「そ、それじゃぁね~・・・」
何か思いついたらしい天蘭院は、両手をギュッと握って何度も頷く。
その後ろでは美永瀬が「ガンバレ~」といいながら手を振っていた。オルスレッドに至ってはこちらの様子を見ながら父さんとチェスをしていた。
「あのね、どうしても償いたいっていうなら、お詫びって形にして、私のこと天蘭院じゃなくて綾香・・・て呼んで? 私は天ヶ咲君のこと、これから桜華君、て呼ぶから」
「そんなので、いいのか・・・?」
「そんなのじゃ・・・駄目?」
上目遣いで聞いてくる天蘭院。
駄目も何も、そもそも俺には拒否権はないように思えた。しかもこの上目遣いは反則だ。あの天蘭院が可愛く見えてしまう。
周りでは皆がこちらに視線を向けて「ほら、早く呼んであげなよ」と言っているように感じて仕方がなかった。目の前に天蘭院ですら何故か期待の籠った視線を向けて来る。
幾分かしてから覚悟を決めた。
「わ、わかった。お前がそれでいいなら、これからそう呼ばせてもらう・・・綾香」
名前を呼んだ途端、天蘭院の―――いや、綾香の顔がパァッと明るくなった。
「うん! これからもよろしくね、桜華君♪」
嬉しげにそう言って綾香は美永瀬の所へと走っていく。美永瀬は近寄って来た綾香に「良く頑張ったね」といいながら綾香の頭を撫でる。
その姿は姉が勇気を出した妹を褒めるようだった。
「若いっていいわね~」
「私からすれば娘を取られたみたいでちょっと複雑なんだけど」
「いずれはそれが現実になるかもしれないな、志恵那よ」
「わぁお~。吹っ切れた天蘭院さんは凄いな」
「あの人凄く嬉しそうだったけど、お兄ちゃんはどうだったの?」
振り向くと母さん、天蘭院 志恵那、父さんにオルスレッド、それとニーナが並んでこちらを見ていた。
「な、なんだよ」
「ふふ、何もないわよ? ささ、それよりもご飯にしましょう。綾香ちゃん達もどうぞ」
母さんに呼ばれ全員がテーブルについて朝食を取る。
八人という今までにない人数で取る朝食は、四人だった頃と負けず劣らずの楽しさがあった。
◇
「それじゃあ、行ってきます」
朝食を食べた後はすぐに学園に行く準備を始めた。
いろいろと時間を取られたせいかいつもより少し遅い。部屋に戻ってカバンを持って玄関を出ると、オルスレッドと綾香、美永瀬が「遅い」と言って俺のことを待っていた。
遅いと言われても、霊術を使えばアトラントまで一瞬で行くことができる。
それでもここは謝る所だと思って「待たせた」と言って早速霊術を発動しようとすると、
「桜華」
父さんに呼び止められた。
三人に少し待ってもらい、父さんの所まで行くが何故か父さんは黙ったままだった。そして唐突に口を開く。
「・・・これからどうするつもりだ?」
「・・・っ!」
『何が』や『何を』などの重要な部分がまるっきり抜けた質問。
いつもこうだ。
まるで独り言を呟くかのように出される質問は、決まって最重要事項となる。決して答えないことを許さない質問。避けては通れないかの如く、俺の前に立ちはだかる。
いくつもの意味を含んだその言葉を予想はしていた。しかし俺はまだ、その全ての答えを決めかねていた。
「・・・今はまだ、無理だ。やらなければならない事が、たくさんある。したいことが・・・ある。それに、俺自身がまだ・・・踏ん切りがついていない。だから、もう少しの間だけ、俺の我が儘に付き合って欲しい」
歯切りの悪い答えしか出来なかった。
「そうか。だがこれだけは忘れるな。お前も『天』の名を背負う一族の、しかも我が天ヶ咲家の一人息子だ。・・・母さんはもう子を産めない。それはわかっているな」
つまりそれは俺がこの天ヶ咲家を継がなくてはならないということだ。
それ自体については昔から覚悟が出来ていた事だ。父さんの姿を見ながら、子供心ながら誓ったのだから。
天の名を持つ一族は二十三家存在する。四年に一度、その中から選ばれた十二家が十二天族を名乗ることを許される。そしてその間に家を継ぐとなるとまず最初に継承式を行わなくてはならない。
十二天族がそれぞれ契約している黄道十二神霊。それらと血の契約を交わすことにより、一時的に十二神霊を使役することが出来る。あくまで一時的なので、真の力を扱う事は出来ない。この血の契約の事を『継承式』という。
しかし俺はこの継承式を行っていない。もっと言えば行えないのだ。
その理由は俺が契約している神霊達にあった。故に俺はまだ、継承式をすることができないのだった。
「・・・まだ、諦めきれないか」
「諦め切れるわけ、ないだろ」
継承式の問題は契約中の神霊達と契約を解除すれば解決する。
しかしその次が問題だった。
何なのかというと・・・子供を作る事だ。
つまりは将来の伴侶を見つけ、その者との間で子を産む。そして現当主から認められればようやく当主となり、家を継ぐことができるのだ。伴侶を見つけただけではダメな理由は、もしも子供が生まれる前に不慮の事故やなんかで跡取りがいなくなるのを防ぐためだ。
これは十二天族の間では決定事項であり、決して曲げることはできない。
未だに死んだ彼女の事を思い続けている俺にとっては、例え天地がひっくり返ってもできることではなかった。
しばらく二人の間に思い沈黙が訪れるが、突然父さんが俺の背中を叩いてきた。
「心配するな。当分はこの座をお前に譲る気はない。だが決して避けられない道だ。いつか決めなければならないことを忘れるな」
「・・・ありがとう、父さん」
「それとだ、学園に着いたら天上院家の娘に礼を言えよ。あの後、事後処理どころか学園の全教師と全生徒の説得に破壊された教室、グラウンドの修理。さらにはお前にかけられていた連合の手配の消去まで、他のも全部やってくれたらしいからな」
「うっ・・・」
天上院家の娘というと、あの人か。
確かにあの人なら全部やってもおかしくはない。ただその後が怖い。それだけのことをしたのだ。無理難題を要求されそうな気がしてきた。
例えば俺を抱き枕にしようとするとか、男の俺に女の服を着させようとか、家に紹介しに行こうとするとか―――etc. etc.
ああ、思い出すだけで鳥肌が立ってきた。
二の腕を擦っていると俺の頭に父さんが手を置いた。
「それにちょうどいい。桜華、お前・・・墓参りに行ってやれ。一度もいってないだろう。いくらなんでも悲しむぞ、あの子」
「機会があればな」
あの国に行く機会なんか当分無いし、と思いながら答えると、何故か父さんは意味ありげな笑みを浮かべていた。
「あるさ、機会は。すぐに訪れる」
「父さん?」
「大変だろうが、お前なら大丈夫だろう。・・・これで話は終わりだ。ほら行け。友達が待ってるぞ」
意味ありげな答えをされ、それを聞けなかった俺はどこか釈然としない中、急かされながらオルスレッド達の所まで戻る。
何を話していたのか聞かれたが、何でもないとだけ言って霊術を発動させる。
俺達四人を囲むように霊術陣が広がり、身体を光が包み始めた―――その時、ふとどこからか見られているような視線を感じて視線を上げる。ほとんどの窓がカーテンで閉ざされている中、閉ざされていない窓が二つあった。
三階奥の窓は俺の部屋。
その一つ手前―――ユエラの部屋の窓際に、一瞬だが人影が見えたような気がした。
「いってらっしゃい、桜華」
確認しようかと思ったところに母さんの声が聞こえて来た。
視線を下ろせば、ニーナと並び、父さんに寄り添うように立っている母さんがいた。
「いってきます」
完全に光に包まれ、俺達は家を出た。
◇
「・・・・・・」
カーテンが開かれているのにも関わらず薄暗い部屋の中で、窓際に立っているその者は窓の外から学生服に身を包んだ者たちが転移霊術で消え去るのをじっと見ていた。
灰色のコートを着て、さらに上から同じ灰色のローブを着ている。しかしこのローブ、少し変わっていてフードはあるがそこから下が二の腕までしかなかった。ショートローブとでも言えばいいだろうか。
そのショートローブのしたからは、腰まであり、薄暗い部屋の中でもはっきりわかる程の艶を持った黒い髪が流れる様に垂れ、フードの下からは微かにだが真っ赤に燃えるような真紅の瞳が覗いていた。
一見、男性か女性か見分けづらいが、人体で言えば胸のあたりのコートが男性にしては不自然に膨らんでいるところから、その者が女性だとわかる。
身長は女性にしてはやや高い、170cm程ある彼女はゆっくりと目を閉じた。
彼女はさきほどの四人の学生の内の一人と目が合ったような気がしていた。それは僅かな、ほんの一瞬でしかなかったがその一瞬の間である疑問を抱いた。
あの少年・・・どこかで会った気がする。
目を開け、振り返って自分がいる部屋を見渡す。
水色の絨毯が敷かれ、脚の低いテーブルにはいくつものぬいぐるみが置かれている。
ベッドには皺ひとつなく、使われていない事は一目瞭然だが小まめに掃除だけはされているのか、どこも埃を被ってはいなかった。
部屋の隅にはペットの寝床らしき道具まであった。
この部屋も、どこか見覚えがあった・・・いや、違う。そう彼女はすぐにその考えを改めた。見覚えがあるなんかじゃなく、彼女は懐かしいと感じていた。
だが何故そう感じるのか、彼女は分からなかった。
テーブルとは別の机には一つの写真が立てかけられてあった。
写真を手に取ってみる。
「これは・・・」
女性にしてはどこか刺々しさを感じる声。
彼女が手に持つ写真には先程の少年とそっくりな小さな子供が移っていた。その隣には、同い年か一、二歳年上と見える少女の姿。
似ている。そう声が出ようとしたその時、
「どうかしたか・・・エル」
背後から声が聞こえた。
しかし彼女は別段驚きもせず振り返る。そこには一人の男が立っていた。
身長は彼女よりも10cmから15cmほど高く、アイマスクのような鼻から上の顔半分を覆う金色の仮面。男にしてはかなり珍しい、その仮面に負けず劣らずな黄金色の長髪。
紅色をベースにした、肩と腕が完全に大気に触れているという多少露出の高い服装。
そして手にするは自らの身の丈ほどもある、金色の上から紅色で模様が描かれ、先端には紺色の球体の形をした結晶がついた杖を握っていた。
彼女はその男を一瞥して部屋の中を見て回り始めた。
「やれやれ、お前にとっては命の恩人―――主も当然である私を無視か」
肩を竦めるような仕草をしながら皮肉めいてみせるが、それでも彼女はただ黙って部屋を見ていた。
「どうだ・・・『エル』という名以外に、何か思い出したことはあるか?」
男の問いに、彼女は答えなかった。いや、そもそも彼女の耳に届いているのかすら疑わしかった。
彼女が部屋を見て回る様子を男は静かに目線で追う。
「・・・『神』、か。ふん、人の身にして神の名を持つとは・・・なんと忌々しい。・・・まあよい。エル。そろそろ時間だが何か思い出したか?」
男がそう聞くと彼女はようやく動きを止め、やや会ってから男の方を向いて首を横に振る。
「ならば仕方ない。他の連中も集まっているはずだ、行くぞ。我らが主の野望を叶えに、そして・・・我が悲願の為に」
最後の言葉だけ異様に感情が籠っていた。
トンっ、と軽く杖で床を付く。たったそれだけの動作だった。それだけで空間が歪んだ。
誰にも気づかれず霊術が発動。
霊術陣の展開はおろか、霊力の揺らぎも殆ど感じられない霊術。にも関わらず歪みは部屋全体へと広がり、二人を飲み込む。
歪みが消え去ったそこには、二人の姿はどこにもなかった。
どうもみなさん、アリッサです。
執筆開始をいたしまして二話目の投稿となりました。書いていない間はアイデアだけを考え続けていたおかげか、それとも久しぶりに書くことが楽しかったのか、執筆がサクサク進みましたw
おかげでこうして一週間越しに更新することが出来ました。
このペースを維持するのは難しいですが頑張っていきたいと思います。
次回からは四章です。長かったです。side storyに半年もかかるとは思ってもいませんでした。
ようやく桜華のツン期(?)が終わりましたね。ツンと来たら後はデレでしょうか?w
桜華のデレ期か~(書けたらいいなぁ)・・・でも桜華のデレってなかなか想像出来ないんですよね。半ばヤンじゃった子だから。
と、長話はこの辺にして、それではまた次話でお会いしましょう。
・・・。
・・・・・・。
・・・・・・・・・何かボケの出来るコーナー作ろうかなぁ(ボソッ)
(↑第八十九話の内容について何かボケようとしたけど思いついたボケが下手するとネタバレになりかねないボケだと気づき、自重した結果)




