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第十三話「平穏な日々」

 それからしばらくの間は何の当たり障りのない平穏な日々が続いた。

 朝に弱い僕はユエラに起こしてもらっていたが、途中からリルが加わってかなり強引な起こし方になったので、しかたなく自分で起きることを頑張った。

 朝とお昼は僕とユエラ、そしてリルの二人と一匹で遊んで、夕方はお父さんが帰って来るまで書斎で本を読んでいることがここ最近の一日だ。

 時々本に書かれていることを試すために一日を中庭でいることがあった。

 そのおかげでいろいろな事が出来るようなった。

 まず最初に覚えたのは霊力の使い方だ。

 一度でも自分の内にある霊心から力を持って来て放つことが出来れば、後は自由に霊力が使えると書かれてあったが、最初がかなり難しかった。力を引き出すのに一週間掛かってしまった。ユエラは初めから出来ていた。幽霊だからかな?

 でも、一度引き出してしまえば後は簡単だった。

 引き出した霊力を自分のイメージに合う様に変化させたり、体から離れた所で維持させたりするのは案外簡単に出来たが、ユエラが言うにはそれがかなり難しいらしい。

 それからは本に書いてあったいろいろな霊術や霊技などを二人で練習し、コンビネーション霊術まで創ったりもした。

 なぜそんなことをしていたのかというと、自分の身は自分で護るためだ。

 霊核剥離はいろいろな者から狙われているので、力を付けた方が良いとユエラに言われたからだ。

 そうして僕はユエラに戦い方などを教えて貰った。

 そう、ユエラに教えて貰ったのだ。

 なぜかユエラは物凄く強かった。

 しかも霊術関係の本に書かれていた高難易度霊術―――『マテリアルクリエイト』を使う事が出来たのだ。


 マテリアルクリエイトとは霊力を使って自分が創りあげたイメージを投映して、一時的に物質を創りあげる霊術だ。これは、創りあげる物質を正確にイメージし、尚且つ霊力を使って創りあげそれを維持し続けなければならないので、使える者は数少ない。


 ちなみにユエラが創りあげたのはレイピアと片手剣だ。

 幅2.5センチメートル、長さ120センチメートルの刀身で、柄の部分も合わせれば140センチメートルほどあるレイピアだ。

 一般的な形をしているが柄の部分には白色に輝く宝石のようなものが付いていた。

 加えて片手剣の方は順手と逆手持ちで戦えるように柄の部分の上下にそれぞれ刃がついていて、順手持ちにすると柄より下の方にある刃は曲がってはいるが刃渡り30センチ。上の方は70センチはありそうだ。

 ユエラは右手でレイピアを持ち、左手で片手剣を扱う。

 レイピアは基本折れやすいので、攻撃は突きくらいだ。それでも強く固いものを突けば折れてしまう事はある。他にはリーチを利用して相手の間合いに入ってしまうのを防いだり、攻撃をそらすために使う。

 だが、ユエラはおもいっきりそれを攻撃手段として使っていた。

 僕の家は森の中にある。霊が出て来てもおかしくはない。現に何度か低級の霊が現れたことがある。そのときに、ユエラはレイピアを攻撃手段として使っていた。

 斬る。突く。防ぐなどをこの細い剣で行っていたのだ。よく折れなかったなと思う。

 ちょっと不思議になって聞いてみた。

「ねえ、ユエラ」

「なに?」

「そのレイピアってさ、前みたいに攻撃に使ってたら折れるんじゃない?」

「大丈夫。このレイピアは簡単には折れないから」

「どうして?」

 簡単には折れない?

 あんなに細かったらすぐにでも折れてしまうはずだ。

「持ってみれば分かる」

 そう言って差し出されたレイピアを受け取った瞬間、

「・・・っ!?」

―――ドスッ

 あまりの予想外の重さにレイピアは手から滑り落ち、地面に鈍い音を立てる。良く見れば少しだけ地面にめり込んでいた。

 そう、このレイピアは見た目に反して物凄く重いのだ。

「なに・・・これ? ただのレイピアじゃないの?」

 落ちたレイピアをいとも簡単に拾い上げながらユエラは答える。

「物質構成中にちょっとだけ刀身に使われている鉄の定義を変えたの。幅2.5センチ、長さ120センチの刀身に使われている鉄は、およそ10キログラムほど」

「10キロって・・・」

 あまりの物理法則の無視に声が出なかった。

 10キロもの鉄があの細さになっているのだとしたら、かなり密度が高くなっているはずだ。それならちょっとやそっとじゃ折れないのは納得できるが・・・。

「・・・重くないの?」

「創造者の私が持っても何の重さも感じないの。でも、これで斬りにかかればそこら辺の剣よりは重い攻撃が出来るの」

 そう言って片手で振り回す。ヒュンヒュン聞こえるんですけど。

 流石は最高難易度の霊術。何でもありだなと思った。

「僕にも出来るかな?」

「こればっかりは適性の問題だから、どうかな? それにこれ、どちらかというと適性の問題より固有霊術に近いから出来ないかもしれないよ」

 そうは言っても実際にやってみなければ分からないので、それから僕はマテリアルクリエイトを教わることにした。


 マテリアルクリエイトを教えて貰ってから数日が過ぎた。

 練習の結果から言おう。

 僕には出来なかった。

 霊力の属性変化までは出来たが、イメージした物質を投映しようとすると脳内のイメージが弾けてしまう。

 何度も何度も同じことを繰り返すが、やはり投映の段階に入るとイメージが弾けてしまうのだ。

「う~、何度やってもできない」

「仕方ないよ、こればっかりは。でも良いことを見つけたよ」

「いいこと?」

「うん」

 そういって手の平を向かい合せて両手を出すと手の平の間に霊力の塊が出来る。

 ユエラはゆっくり目を閉じてさらに意識を集中させると、手の中の光が徐々に赤くなっていき光の塊は火の塊となる。

「わー、凄い。ユエラも出来るんだ」

「桜華程じゃないけどね」

「僕ほど?」

「私が得意なのは火属性と水属性。たぶん桜華も出来ると思うよ」

「やってみよ」

 手の平を内にして両手を出し霊力を籠める。するとユエラと同じように光の塊が出来る。

 次にこれの属性を変えるのだが、この時には変化する属性を思い浮かべるだけ。頭の中で火が燃える様子を思い浮かべると、光が突然音を立てて燃え上がる。

 僕の手の間でユエラのと同じくらいの火が現れる。

「まだ霊力を扱ってからそんなに日が経ってないのにここまでスムーズに出来るなんて凄いね」

「皆は最初、苦労するんだ。やっぱりこれって凄いの?」

「少なくてもそんなにスムーズには出来ないと思うよ」

 確かにユエラと僕が火を発生させる時間は僕の方が明らかに早かった。

 手の中の火を消したり付けたりする。

 確かに初めて火を出した時よりはスムーズに発生させることが出来た。

「それに、他の属性も出来るはず」

 そこで僕は、他の属性も試すことにした。


 夕方、他の属性を試した後僕たちはいつものように勝手に書斎に入って本を読んでいた。

 今日は霊術属性の本を探して読むことにした。

 霊術は基本的に『火』、『水』、『雷』、『土』、『風』の五つの属性で成り立つ。

 一般にこれを五源属性という。

 優劣はもちろん存在し、火は風に強く風は土に強い。土は雷に強く雷は水に強い。そして水は火に強い。


 それぞれの特性は火が攻撃特化で水は援護能力。土は防御で風がスピードと優れている。だが、雷だけは少し特別で攻撃と防御、それに援護能力にスピードと他の属性の特性を兼ね備えている。

 その分、雷属性の人は少ないとのこと。

 この他に特別な属性が二つ存在する。

 『光』と『闇』だ。

 この二つは極稀で、基本属性と一緒に持っていることが多いらしい。

 光は癒しの力。

 闇は全てを破壊し呑込む能力だ。


 他の属性を試していて凄いことが分かったことがある。今の所、光と闇以外の属性を扱えることが出来たのだ。

「普通の人ってさ、この五源属性を全部使えるものなの?」

「ううん、使えないよ。精々二つくらいかな」

「・・・これも霊核剥離の力?」

「たぶん」

 改めて霊核剥離の凄さを実感した。

 五つの属性を連続で使ったにも関わらず殆ど疲れを感じない。それどころが、どんどん力が湧き出て来るような気がした。

 なんだか今までの自分とは違うような気がしてきた。

 もともとは病弱な体のため症状が良くなるようにとここに引っ越して来たのだが、ユエラと出逢ってからは症状が悪化することも、発作が起きることもなかった。本当に自分の体が弱いのか不思議に思えてくるほどだった。

 そんなことを考えていると、

「桜華~。ご飯よ~」

 お母さんが僕の事を呼ぶ声が聞こえてくる。いつのまにか晩御飯の時間になっていたらしい。

「は~い、すぐ行く」

 立ち上がりながら返事をする。

 隣を見ると、ユエラがこっちを見ていた。

「ご飯食べて来るからいつものようにリルと一緒に部屋で待ってて」

 頭の上で寝ているリルをユエラに渡す。

「うん、わかった。なるべく早く来てね」

「了解っと」

 ユエラがリルを受け取った後、僕は食堂へ、ユエラは僕の部屋へと向かった。


ちょっと文字数を増やしてみました。

これからは出来るだけこのくらいの文字数で頑張ってみます。

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