54_お土産
昼食を食べ終え、エリックと一緒に応接室に戻ろうとしたら「マリに買ってきている土産がある。そろそろ荷台からおろされてるだろうから」と、玄関ホールに向かうことになった。もちろん、エリックの腕は私の腰に回されている。慣れていいのかわからないが、慣れてしまった自分がいる。
エリックは律儀に毎回、私をはじめ別荘の皆にお土産を買ってきてくれる。他の屋敷ではあまりないことだとは思う。使用人の皆を大事にしてくれるからこそ、エリックも別荘の主人として皆に慕われ愛されていることが納得できる。
エリックが買ってきてくれるお土産は、セバスチャンさんには万年筆だったりハンカチを。トム爺さんには新しい花の種や腰痛に効く薬。バレットさんには新しい工具や工芸品。バレットさんや女性陣にはハンドクリームや王都で流行っているお菓子やお化粧道具。もちろん、私にもお菓子を買ってきてくれる。バレットさんが作るお菓子も美味しいけれど、王都で有名なお店のお菓子も美味しい。
ジェット師範のもと運動もしているし、魔道具の案を絞り出すのに頭をフル回転させているしと、適度な糖分の摂取は必要だと自分に言い聞かせて、お土産のお菓子とバレットさん手作りのお菓子をペロリと食べてしまう自分がいる。
ちなみに、エリックは私にハンドクリームや保湿効果があるリップクリームは買ってきてくれても、お化粧道具は買ってこない。私は「化粧をする必要はない」とエリックに面と向かって言われてしまった。
1日のほとんどを別荘内で過ごすし、街にもあまり行くことがないし、魔道具を作る時にゴーグルをつけたり、かいた汗を拭うのに逆にお化粧は邪魔だからしていないからいいけど、「他の年頃の女性に"化粧をする必要はない"は失礼にあたるぞ」と指導はしておいた。乙女心がわからないから私を異性としてみていなく、ただの友達というくくりで私と接しているんだろうなとわかる。
だから私がエリックに距離感を教えてあげなければいけないと思って口には出しているが、なかなか伝わらないのである。
学園でも距離が違いがために勘違いする女生徒がいないか心配になってしまう。
それよりも今はお土産だ。前回のお菓子も美味しかったが今回のお菓子は何かな?とワクワクしながら玄関ホールにつくと、セバスチャンさんとサラさんがエリックの持ち帰った荷物の仕分け作業をしていた。
「任せてしまってすまない」
エリックは私から離れセバスチャンさんとサラさんの元へ向かい、一緒に荷物を分ける作業に入った。他の貴族の目がある時には出来ないことだが、貴族だからと全てを丸投げするでもなく、使用人に混じって一緒に作業する姿は好感が持てる。
だから「私も手伝うよ!」と4人がかりで仕分けをした。滞在期間が短いこともあり、私が手伝うまでもなく終わってしまったが。
使用人皆へのお土産をセバスチャンさんとサラさんに「名前がかいてあるから、皆に渡してくれ」と託した。
「マリのお土産は一緒にあけよう」と、エリックは両手に袋や箱を抱えた。一つ一つは大きくなくとも数が多かった。
「私へのお土産だから私も持つ!」とエリックから半ば強引に半分奪い私の部屋へ行こうとしたが、「ベッドがあるマリの部屋は刺激が強いから応接室で開けよう」とエリックが言ってきた。
応接室から私の部屋に運ぶ手間が増えるとか、私の部屋が刺激が強いとはなんだ。ランドリーメイドのサナさんが毎日シーツは交換してくれているし、布団も天気が悪い日意外は干してくれているから臭くないぞ。と抗議してやろうと思ったが、セバスチャンさんが「そうですな。マリ様の部屋ではなく応接室で坊っちゃまの土産話を聞くのがいいですな」と言われてしまったら抗議など出来なかった。
サラさんが「お茶をお持ちしますから。扉は開けたまま、お茶が飲みやすいような距離で座ってお待ちくださいね」とエリックに向かって話すと、「……父上の手先め」とエリックがボソッと呟いた。
聞き間違いかと思い「エリック何か言った?」と聞くと、エリックは「なんでもない。さぁ、時間が勿体ないから行こう」と満面の笑みを浮かべた。
エリックも私も荷物を持っているため、応接室へと向かう今回はエリックの手は私の腰には回ってこれなかった。




