53_押し問答
応接室でエリックを待っていると、扉がノックされた。「どうぞ」と声をかけるとエリックが「早くマリの元に行きたいのに、セバスチャンは話が長くて困るな」と言いながら入室してきた。もちろん、きちんと扉は開けたままだ。
そして私の隣に座ったかと思ったら、「マリ、おいで」と私の手をとり、エリックの足の間に座らせようとしてきた。
「……座らないよ?」
「なぜだ?」
「もう子供じゃないし。それに、そこに座る理由がないもん」
「離れていた間のマリを補充したいという私の願いは聞き入れてくれないのかい?」
眉をさげ懇願されても年頃の男女、しかも異性の友達として座る距離ではないため「だめです」と断る。
そろそろエリックも婚約を結んでもおかしくない年齢だ。いや、むしろ遅い方なのかもしれない。そうなった時に相手の女性に悪いし、今のうちから私とエリックの距離感を見直した方がエリックの為なのだ。
「……マリが、私のいるこの世界にマリがいると触れて安心したくとも駄目か?」
なんともズルい聞き方である。私の不安の吐露がエリックの負担になってしまっているのは私の責任だ。
「私の不安がエリックの負担になっちゃってるね、ごめんね」
「負担ではない!!もし、そう感じて今後私に何も話してくれなくなる方が私には耐え難い苦痛だ」
「……エリック、優しいね。ありがとう」
「そんなマリの不安を私が包みこもう」
そう言ってエリックは私の手を引っ張った。いきなりのことでバランスを崩した私はエリックに寄りかかってしまい、そのままエリックに抱き締められてしまった。
「エリック、いきなり引っ張るのは卑怯だよ」
「マリ、私のプレゼントしたネックレスをしてくれていて嬉しい」
いや、私の抗議はスルーですか。そもそも、ネックレスを外していないではなく、外せないが正しいのである。
「ネックレスはエリックが外せないように細工したじゃんか」
「細工とは心苦しいことを言ってくるな。マリのために用意したネックレスなのに。
私は魔塔主に壊させなかったことが嬉しいんだよ」
そうだよ。ルーパパに頼んだ後が厄介そうだったから断ったんだよ。とは面と向かってはエリックに言えるわけもなく。
「エリックもう離して。そろそろお昼だし、セバスチャンさんが昼食の準備が出来たって呼びにくるだろうから、大人しく待ってよ」
私がそう言うと「セバスチャンに見られると後が厄介だな」と呟き、私をエリックの腕の中から解放してくれた。
「今回の滞在日数はどれくらい?」
私がエリックに質問すると、「残念ながら3日しかない」と返事が返ってきた。
「3日!?それなのに10日程かけて帰省するの大変でしょ?ゆっくりもできないだろうし」
「マリに会えればそれだけで疲れが飛ぶから大丈夫だ」
と、私の頭を優しく撫でてきた。
「だから私がエリックに会いに行くって」
「それは駄目だ」
「行く」「駄目だ」の押し問答を繰り返していたらセバスチャンさんが「昼食の準備ができました」と私達を呼びにきてくれた。
「とりあえず行こう」
エリックの言葉に頷き、私とエリックはダイニングルームへと向かう。エリックの腕は私の腰に何故か回されていた。




