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魔道具と娯楽品の作成に勤しむ転生令嬢は、囲われていることに気がつかない  作者: 成瀬川 透


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55_好みのタイプ

応接室前につきお土産を抱えた状態ながらも、なんとか扉を開けて中に入る。私へ買ってきてくれたお土産をテーブルの上に置き、私とエリックは並んでソファーに座った。


「エリック、いつもお土産ありがとう!でも、毎回こんなに買ってくるのも大変じゃない?」


「いや、マリを思って土産を選ぶ時間も私には尊い時間だから。それを奪うことはよしてくれ」


「尊いって、なにそれ」

私は笑ってエリックの気遣いジョークを受け流す。


「さぁ、マリへの土産を開けていこうか」

エリックはそう言って、一つの紙袋からエリックの掌に収まるほどのサイズの箱を取り出し蓋を開けた。中には私の瞳と同じ色の宝石がついた髪飾りが入っていた。エリックはその髪飾りを手に取り、私の頭につけてくれた。


「うん、寝癖が誤魔化されたぞ」

エリックは笑って言った。


「そんなに寝癖ひどかった?」


「あぁ、可愛らしいかったぞ」


「からかわないで。でも綺麗な髪飾りをありがとう」


「毎日つけてくれ」

エリックは髪飾りがついているからいつもの撫でるようにではなく、ポンポンと私の頭を撫でた。

そのあともエリックはお土産の袋を開けていく。次はお目当てのお菓子だった。さっそく食べよう!と思った時に開け放たれたままの扉をノックしたサラさんがお茶がのったワゴンを押して「お茶をお持ちしました」と入室してきた。なんともベストタイミングなことか。


サラさんはテキパキとお茶の準備をしたながらでも、私の変化に気づいたらしい。「綺麗な髪飾りですね。お似合いです」と言ってくれた。「エリックからのお土産なんです」とサラさんに言うと、エリックは「朝の支度の時にマリに毎日つけてくれ」とサラさんに言った。サラさんはそれには答えず、ただ笑みを浮かべるだけだった。

サラさんがお茶を淹れてくれ、私とエリックの前においた。あと、お土産にお菓子があるとわかったのだろう。お菓子用の小皿とスプーンとフォークまで私達の前に並べてくれた。

するとエリックは「まだ仕事があるだろう。もう下がっていいぞ」と、サラさんを退室させようとした。サラさんは私の耳元に視線をよこし、「マリ様、何かあったら魔塔主様から頂いたピアスですよ」といいながら、一礼してから退室していった。


「……何かあったらって、なんだろう?」


「気にすることはない。さぁ、お茶を頂こう」

エリックはお土産で買ってきてくれたお菓子を小皿にのせてくれた。私は待ってましたと言わんばかりに食らいついた。バレットさんのお菓子も美味しいが、やはり王都で有名なお店のお菓子も美味しい。


お菓子のあと、エリックが「まだ土産はあるぞ」と袋から取り出したのは数冊の本だった。渡されたままに本を手にとると、なんとも題名が私の心を刺激するようなものばかりだった。『冷たかった婚約者に別れをつげたら、捨てないでくれと泣きつかれました』やら『魔法使いに見初められた私』だと!

私は本から顔をあげエリックを見つめた。


「この素敵な題名の本たちは何?」


「マリの本に感化された作家たちが、今はこぞってそのような物語を書いていてな」


私は本たちをぎゅうと抱き締めた。今すぐ読みたい衝動にかられるが、夜まで我慢だと自分に言い聞かせる。


「エリック、素敵なお土産をありがとう!」


「今まで渡してきた土産の中で一番の反応を返されるとは思っていなかったよ。嬉しい反面、なんか妬けるな」


「エリックも読んでみれば良さがわかるよ」


「……マリはこのような物語に出てくるような男が好みなのか?」


「物語は物語だからいいんだよ。現実と混同しちゃいけない」

実際、俺様が自分の相手だとしたらイライラしそうだし、病んデレも好きだが束縛されるのは窮屈だろうし。


「……ちなみに、マリの好みの男性はどんな感じなんだ?」


「私の好み?うーん……もしずっと一緒に居る関係になるのなら、価値観が同じで互いに尊敬しあえる人かなぁ。ケンカをしたとしても暴力は絶対に振るわない人。あと浮気も駄目だね。マザコンも無理。でも、まぁ私、出会いもなければ結婚願望もないから関係ないんだけどね」


1度目の人生で結婚に夢を持てなくなった。2度目の人生での両親は仲睦まじかったが、1度目の記憶が結婚は良くないものだと邪魔をする。この両親は少ない成功パターンだと。

愛そうと頑張っても、相手から同じだけの愛が返ってこないことを知っているから。


エリックは私の両肩を掴んで、真剣な面持ちで私を見つめてきた。

「結婚願望がないのか?いや、もし出会いがあったら結婚する気なのか!?」


あまりの迫力に気後れしてしまう。

「……出会いがあったとしても、私は結婚をする気はないよ。こんな私を愛してくれる人なんか現れないと思うし。

あっ!エリックが婚約する時はちゃんと言ってよ?未来の奥様に申し訳ないからさ、ここを出ていくよ」


「マリがここを出て行くことはない!」

エリックは少し声を荒げていった。私が少し驚いていると「大きな声を出してすまない」と謝ってきた。


「……もし、マリを愛しているという者がいたら結婚はするのか?」


「愛してくれるなら、私は同じだけの愛を返すよ」


エリックは「そうか」と呟いたあと、私の両肩から手を離して俯いた。そして何かをぶつぶつと呟きはじめた。


「エリック?どうしたの?」

私はエリックの背中を擦った。


「いや、マリは鈍いから積極的にいこうと決意を新たにしたところだ」


「???」


「ところで、マザコンとはなんだ?」


「あぁ、マザコンはね」と、私はマザコンの説明をした。


「あ、ちなみにエリックの好みの女性ってどんな人なの?」

私は話題の延長のつもりでエリックに聞いた。



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