40_不本意な友達
「2人の世界に浸っているところすまないが、私もいることを忘れないでくれ」
そう言いながら肩まである金髪の水色の瞳の美少年が馬車から降りてきた。おそらくエリックが連れてくると言っていた友達だろう。私はエリックからはなれた。
エリックが金髪の美少年に「こちらがマリです」と私を紹介してくれた。私はカーテシーをした。続けてエリックは私に金髪の美少年を「レオン殿下だ」と紹介してくれた。
「しばらく厄介になる」
でんか?デンカ?DENKA?殿下って?え、王族の殿下?まさか、セバスチャンさんが私に言おうとしていたことはこの事だったのか!と、今更ながら理解した。
金髪に水色の瞳はまさしく王族が纏っている色だ。エリックも"厄介な人"ではなく、きちんと書いて欲しかった。まさか王族の人が来るとは思っていなかったから、心の準備が出来ていない。
レオン殿下は私の側まで近寄ってきた。
「貴女があの魔道具を開発し、エリックを虜にしているという噂の少女か。しかも魔塔主が気に掛けているらしいな。我が国の筆頭魔法使いが是非とも会いと言っていたぞ」
「……恐縮です」
「そう固くならなくて良い。エリックと同じように接してくれ」
そう言ってくれるが、出来るわけがなかろう。私が何か失態をすれば、お世話になっているエリックの家にまで迷惑をかけてしまう。
そんな私の胸中を察してかエリックが「マリ、殿下は気さくな御方だ。そう緊張することはない」と言ってくれた。「いつまでも外に居るわけにもいかないな。とりあえず中に入ろう」と、エリックにエスコートされ、応接室に向かう。
応接室につき、エリックと私が隣同士でソファーに座り、テーブルを挟んだ向かいにレオン殿下が脚を組み座った。レオン殿下がセバスチャンさんに退室を促し、扉も閉めるように言った。セバスチャンさんはそれに従った。
セバスチャンさんが退室し、扉が閉まってからレオン殿下が口を開く。
「エリックとは物心がつく時からの付き合いでね。そんな友人と休日を過ごすためにお邪魔した……というのは建前で、友好国がマリの魔道具に興味を示すものだからさ。
魔道具という素晴らしいものを開発する少女を、父がこちら側に取り込めないかと画策してね。エリックの家と対立はしたくはないが、魔道具を開発する知識を欲する父の気持ちも分からなくはないんだ。転用次第では武器にもなり得るからね。そんな時に魔塔主が父の前に現れてね」
「魔塔の主が?」
「『私の娘に何かしてみろ。魔塔が黙っていないぞ』なんて脅されてみてよ。手を引くしかないだろう」
「……なんでバカ正直に私に話すんですか」
「君が自分がどれほどの価値があるか知っておくべきだと思ってね」
「……今のところ、この国からは出ていく予定はありませんし、結婚願望もありません」
「なるほど。頭が切れるね」
おそらく魔塔の主に脅されたから、国に取り込む計画をやめて、せめて他国に渡らないよう、この国に留めさせることに方向転換したのだろう。つまり、一番手っ取り早いのはこの国の貴族との結婚だ。
エリックは「もう話は終わっただろう。帰れ」と右手で応接室の扉を指差す。
殿下にそんな態度と口を聞いていいのか。
「エリックは相変わらずだな。私は純粋にマリと仲良くなりたいのだよ。オセロはエリックに勝ってしまいつまらないんだ。是非ともマリと対戦したいし、私の身分のせいで友達っていうのが出来にくくてね。寄ってくるのは下心がある奴ばかりだ。ある意味での魔塔所属なら身分なんて関係なしに私とも仲良くなってもらえると思ってね」
「マリ、殿下は変わった御方でな。仲良くなりたいというのは本心だ。あとは気楽に考えればいい。王族が魔道具を使用する方が宣伝効果はあるからな」
「……私はひっそりと暮らせればそれでいい」
「安心してくれ。マリの今の生活を脅かすつもりはないし、そんなやつがいたら私と殿下で排除する」
殿下はニコニコ胡散臭い笑みを浮かべるし、エリックは真逆で真剣な面持ちで私を見つめてくる。タイプが違うからこその親交が続いているのかな。
いざとなったら魔塔の主に相談しようと決めた。女は度胸。腹をくくった。
「人前では臣下となりますが、誰もいない時はエリックと同じように接するよ。それでもいい?」
「私は構わない。エリックも私に対してはそんな感じだし。これからよろしくね」
相変わらず殿下はニコニコと笑みを浮かべながら、握手を求めてきた。私は握手を返そうと右手を出したらエリックに阻止された。
「殿下がいくら友達になろうと、マリに触れるのは禁止だ」
「狭量な男は嫌われるよ」
殿下はため息をつき、差し出していた右手を引っ込めた。




