39_おかえり
明日にはエリックが帰ってくるとなって、別荘の中は慌ただしかった。バレットさんとリザさんはご馳走を作ると意気込んでいるし、サナさんは太陽の匂いがするベッドで寝てほしいと朝からシーツから布団を朝から干しているし、サラさんは綺麗な状態で迎えいれたいと掃除に精を出しているし、トム爺さんは別荘にいる間は心穏やかにしてほしいと花瓶に生けるため花を準備していた。
その様子を見ているだけでエリックが皆に慕われているのが分かって、なんだか私まで嬉しくなった。
ジェットさんは、エリックと連れてくる友達を胴上げして迎え入れると息巻いていたが、別荘から追い出され職を失いたくなければ絶対に止めておけと釘をさしておいた。
魔塔の主も「これをクソガキに」に両手にちょうど収まる大きさの箱を私に渡してきた。出会えば言い合いをしてはいたが、なんだかんだエリックのことを思っているんだなと思い、私は微笑んでいた。
セバスチャンさんは私に「お坊っちゃまと一緒に来られる御方なんですが……」と私にエリックの友達について何か話そうとしていたが、「エリックの友達のことは任せてください!新しい遊び道具も準備していますから!」と、セバスチャンさんの言葉を遮り、胸を張って高らかに宣言をした。まだ何か言おうとしていたセバスチャンさんだったが、「嬢ちゃーん」とジェットさんに呼ばれ私はその場を後にした。
私はワクワクした気持ちでベッドに入る。楽しみ過ぎて眠れないかもと心配をしたが、そんなことはなく私は夢の世界へ旅立っていた。
カーテンの隙間から入る朝日が眩しくて目を覚ます。エリックが帰ってくる日だ!私はサラさんを待たずに自分の準備を終え、玄関ホールへと向かった。何時頃にエリックが到着するのかもわからないのに、気持ちはさながら主人の帰りを待つ忠犬だ。
玄関ホールには既にセバスチャンさんがいた。私は「おはようございます」と挨拶をし、セバスチャンさんからも「おはようございます」と挨拶が返ってきた。
「マリ様、お早いですね」
「エリックが帰ってくるのが楽しみ過ぎて早く起きちゃいました」
私を早いと言うが、別荘で働くみんなの方が早起きだと思う。私はセバスチャンさんにエリックが何時頃に帰ってくるか聞いた。
「早馬がきまして、そろそろ到着するとのことです」
「えっ!?夜通しで馬車を走らせているんですか!?」
「それが、向こうを1日早く出たみたいですな」
「そうなんですね」
それでも日が昇る前から最後の宿を出発していることにはかわりはない。労働者のことを考えろと、エリックには後で言ってやろうと決めた。特別手当てをもらえるレベルだぞ。バレットさんとリザさんは急遽、朝食の準備人数が増えたわけだし。
「私もこのまま一緒に待ちますね!」
私は玄関ホールから外に出た。セバスチャンさんが「中でお待ちになっては?」と聞いてきたが「外で待ちたいんです」と馬車がくる方向をじっと見る。すると、土煙があがってきて、すぐに馬車が見えてきた。
私は別荘に向かって大きな声で「エリックが帰ってきました!」と言うと、セバスチャンさんも外に出てきた。他のみんなはまだ仕事の真っ最中だろう。エリックを出迎えたいだろうに、そのエリックのせいで予定が狂っていては何とも言えない。
馬車の前後には護衛の人達が馬に乗って走っている。エリックが王都に向かった時より護衛の人数が明らかに多い。
馬車が別荘の前にとまり、セバスチャンさんが馬車の扉を開ける。中からエリックが降りてきた。エリックは私を見つけたとたん、笑顔で「マリ!」と私の名前を呼んだ。
私はエリックにかけより抱きついた。
「おかえりなさい」
エリックは私を難なく受けとめ抱き返してくれた。
「ただいま戻った」
私はしばらくエリックに抱きついていた。




