38_充実した日々
エリックが居なくなり、寂しいと過ごした日々━━━━は、2、3日くらいで終わった。今は充実した日々を過ごしていた。
薄情と思われるかもしれないが、工房が完成した今は忙しく、魔塔の主に2度目の人生での家電製品の制作を相談したところ「なんだその面白そうな道具は」と、嬉々として魔道具の制作に加わってくれ、私では思いもつかないような魔法構築をしてくれた。私とジェットさんと魔塔の主で次々と魔道具や、魔力を必要としない便利道具を制作していき、目まぐるしい毎日を過ごしていた。
制作に魔塔の主が加わったことでエリック父とセバスチャンさんが報酬や、制作者について悩んではいたが「報酬は私にはいらぬ。未知なる出会いが私への報酬みたいなものだ。制作者もマリだけにしてくれ。マリがいなければ生み出せていない道具ばかりだしな」と断っていた。
ジェットさんは職人の腕の見せ所らしく、「俺を拾ってくれてありがとよっ!!!」と、相変わらず筋肉をムキムキさせていた。にわか知識しかないが、筋トレ道具を作ったら喜んでくれ、よりいっそう真摯に筋肉と向き合っている。
タイプライターも完成し、翻訳も順調にすすんでいる傍ら、いよいよ物語の執筆にもとりかかった。しかし、私は妄想は得意でも、それを文章に書き起こす才能が壊滅的にないことに気付かされた。
そのためセバスチャンさんに駆け出しの物書きを紹介してもらい、私の妄想をもとに3作品の物語を執筆してもらった。一つは悪役令嬢もので追放からのざまぁ展開。二つ目は嫌われていると思っていたヒーローからの溺愛に気付かない女主人公。三つ目は孤独な少年を助けたら青年になった彼に執着されちゃった魔女の話と、私の趣味に全振りした内容になっている。
本当は異世界転生ものが好きだが、そもそもがここが異世界にあたるし、先人達のこともあるし、あえて転生ものは除外した。
ただ、この駆け出しの物書きは女性の人で名前はアンナといい、茶色の髪をポニーテールにしている。アンナさんは前にエリックと一緒に行った街に住んでおり、物語の内容の確認等は手紙でやり取りするか、アンナさんが別荘にまで足を運んでくれている。
アンナさんはオタクの潜在能力をもっており、私の妄想で足りない部分は彼女なりに見事に補完して執筆してくれた。
そして「このような素晴らしいジャンルがあったとは、私、深く感銘いたしました」とオタク仲間をゲットした。
ちなみに、タイプライターはエリック父が大層気に入ってくれた。
着実と私の快適ライフを送る準備が進んでおり、あと一つ我が儘を言わせて貰えれば、物語の所々にイラストを描く絵師さんが欲しいところだ。だが、さすがに絵師さんは無理だろうと諦めている。
エリックとの手紙のやり取りもしており、直近の手紙には「そろそろ長期休みに入るから帰る。厄介だが1人お客を連れてかえる。早くマリに会いたい」と書かれていた。
"お客=友達"と変換した私は、エリックの友達記念に何か新しく遊び道具を作らねば!と指命に燃えていた。12歳といえば"向こう"では小学生6年生か中学1年生。その年くらいの男子の遊び━━と思ったが、知らないことに気が付いた。
ゲーム機以外で何して遊んでるの?さすがにゲーム機は私には作れない。無理だ。
虫取り?採った虫でバトルとかしてる?いや、さすがにそれはないと思いとどまり、私は思い出せる範囲でボードゲームを捻り出す。が、四色のカードを使って遊ぶカードゲームと、黒ひげの船長が刺されて飛び出すゲームしか思い出せなかった。とりあえず、思い出した2つは作ろうとジェットさんに相談することにした。
そんなこんなで充実した日々を送っていたら、いよいよ明日、エリックが帰省する日となっていた。




