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魔道具と娯楽品の作成に勤しむ転生令嬢は、囲われていることに気がつかない  作者: 成瀬川 透


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34/71

34_パパ?

私の部屋につき、エリックは私をベッドにおろしてくれた。私はベッドに横にならずに座り、エリックはベッド横にある椅子に座った。


「お嬢様は素直に帰ったの?」


「馬車に押し込めて無理矢理帰らせた。向こうの御者も、私の方が爵位は高いからアイツの言うことより私に従う。雇い主は違うが、まぁ私が送り返すのは恒例行事みたいなものだからな」


「そうなんだ」

そのあとは沈黙が続いたが「無理に聞くことはしない。ゆっくり休め」と、私の頭を撫でて椅子から立ち上がろうとしたエリックの腕を私は掴んだ。


こんなに良くしてくれるエリックに心配と迷惑をかけておいて、私の事情を話さないのはフェアじゃないと思った。大丈夫、エリックは私を頭のおかしい人扱いなんかしない。私はエリックに簡単にでも事情を話そうと決心した。


「マリ?どうした?」


「……エリックに話したいことがある」


「無理に話そうとしなくていいぞ」


「ううん、エリックにだからこそ聞いてほしいんだ」

私はエリックの目を真っ直ぐに見据えて言った。


「私は……私には過去の記憶があるの」


「過去の記憶?魔塔主が言っていた『魂に記憶が刻まれた者』のことか?」


「うん……。多分エリックのことだから気になってても、あえて聞いてこなかったでしょ?

私には伯爵家の娘だった頃の記憶もあるし、この世界とは別の、階級も魔法も存在しない世界で生きていた記憶もある」


「それは本当か?」


エリックとは違う声がした。エリックも第三者の声がしたから不思議に思ったのだろう。2人でほぼ同じタイミングで声がした方向へ顔を向けると、そこには魔塔の主が立っていた。


「……また事前連絡なしに来たんですか」

まさかの魔塔の主の登場で緊張の糸が切れてしまい、呆れた声が出てしまった。魔塔の主はツカツカと私の側まで歩いてきたかと思ったら私の横に座った。おい、乙女のベッドだぞ。と思ったが、私ではなくエリックが声をあげた。


「女性の部屋に無断で侵入したあげくに、ベッドに腰かけるなんて常識がないのですか?」


「私とマリの関係に口出ししないで貰おうかクソガキが」


「それが大人の対応ですか?」


エリックと魔塔の主の間に火花が散ってみえる。私はそんな2人に「続きを話してもいい?」と間に入った。もう、魔塔の主に聞かれたなら、いっそのこと一緒に聞いて貰おう。そうでなければ絶対に魔塔の主は帰らないと思ったからだ。エリックは「すまない、続けてくれ」と言った。


私は、今の生が人生3回目だということ。1度目は伯爵家の生まれで、ろくな人生を歩んでこれなかったこと。その元凶が貴族名鑑に載っていたから過去を思い出して体調が悪くなったこと。

2度目の人生はこことは全くの別世界で階級も魔法も魔獣もいなかったこと。そのかわり、科学が発達しており、文明レベルは2度目の人生の方が圧倒的に高かったこと。その記憶をいかし、魔道具を作っていること。古代語は2度目の人生の時の言語だから読めるし書けるといったことを簡単に話した。


「私が私を認識した時には、それまでの、この身体で過ごした記憶が思い出せなかった……というか。そこから私の人生が始まったというか。だから本当になんであの森に居たかも分からない。家族がいたかどうかの記憶さえ今の私には無い。

今までの私のような人は、今までのその人だった記憶がなくなって、前の生の記憶をいきなり前触れもなく思い出して。だから、言葉は通じなくなるし、今まで築き上げた人間関係は破綻するし、大変だったと思う。幸い私は1度目の人生の記憶があったから言葉には苦労しなかったし、魔法が使えたから生きてこれた」


私が話終えるまでエリックも魔塔の主も口を挟まずに聞いてくれた。


エリックは私の両手を自身の両手で包みながら「マリ、辛いだろうに話てくれてありがとう」と言ったあと、「ろくでもない道を歩まされた元凶を教えてくれ。抹殺してくる」そう言ったエリックの顔には表情がなく、怖かった。


「いや、今の私とは関わりないし、やめて!?」


「マリあとで科学が発達していた世界の話を詳しく話してくれ。魔法がなく生活してきたその科学とやらが気になる」

魔塔の主らしい返答に私はなぜだか安心してしまった。良かった、2人とも私を奇異な目で見ることはなくて、怖かった気持ちが霧散していった。


「マリ、家族の記憶がないと言ったな。それなら私がお前の親になってやろう。さぁ、私をパパと呼ぶんだ」


まさかの魔塔の主の突拍子もない提案に私もエリックも両目を見開いて驚いた。どう考えても父親は無理だろう。魔塔の主は二十代の青年にしか見えないのだ。せめて兄なら納得もできたが、父親はない。しかも、パパってなんだ、パパとは。


「……父親にしては若くないですか?」

それが唯一だせた言葉だった。


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