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魔道具と娯楽品の作成に勤しむ転生令嬢は、囲われていることに気がつかない  作者: 成瀬川 透


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26/71

26_まだいる?

ジェットさんはまだ薪割りをしているのかな?エリックは迷わず足を進めるから場所を把握しているのだろうか?エリックに右手を掴まれたままついていく。するとエリックは歩みを止めたから私もその場に立ち止まった。エリックは私にクルっと身体の向きをかえ、

「マリ、私には婚約者はいない。アイツが言ったことを真に受けないで欲しい」

と私の目をみて言ってきた。あまりにも真剣な眼差しだったものだから「うん」としか言えなかった。でも、エリックに婚約者ができたなら、その人に誤解を与えないように距離は置かないといけないな、と考えていた。


「さぁ、筋肉バカのところに行こう」

エリックは掴んでいた右手を離したかと思ったら、指を絡めるように手を繋いできた。


「エリック、さすがにこの別荘の中では迷子にならないよ?」

建物の中でも手を繋ぎたがるエリックの気持ちがわからず、私は繋がれた手を見ながらエリックに言った。


「私と手を繋ぐのは嫌か?」

そんな、眉をさげて悲しげに聞かれたら嫌とは言えないではないか。


「嫌ではないけど……」

"異性の友達としては距離感おかしい"と続けたい言葉はのみこんだ。


「それならば問題ないな」

エリックは微笑み歩みを再開した。手を繋いでいる関係、私もエリックに続き歩きだす。


「ジェットさん、まだ薪割りをしているのかな?」


「外から声が聞こえなくなったから、もう薪割りはしていないと思っている。あの筋肉バカが静かに作業できるとは思っていないからな。とりあえず厨房をのぞいて、いなかったらトム爺さんのところに行く」

ジェットさん、すごい言われようである。


「外に出るの?まだあのお嬢様がいたりしないかな?」

お嬢様が応接室を出てから、あまり時間は経っていない。素直に帰っていればまだしも、セバスチャンさんに私のこととか問いつめていれば、まだ帰らずにいる気がした。エリックも同じ考えなのだろう。


「セバスチャンにマリのことを聞いているだろうな。もちろん、どんなにマリのことを聞かれてもセバスチャンならはぐらかして情報は与えない。出くわさないように厨房に寄ったら、そのまま裏口からトム爺さんのところに行く」と言ってきた。


「セバスチャンさんがダメなら、他の人に聞いたりしていないかな?」

厨房には確実に調理長のバレットさんと、キッチンメイドのリザさんがいる。そこを目掛けてあのお嬢様なら聞き込みをしに行っていても不思議ではない気がする。先ほど出会ったばかりの人だが、アレは自分が思ったことには猪突猛進タイプの厄介なやつだ。


私がそういうとエリックは立ち止まり私をみてきた。

「その発想はなかった。父上にあそこまで言われたんだ。さすがにないと思いたい」

エリックは深いため息をつき「でもアイツならやりかねん」と右手を顎にあて、小さく呟いた。


「エリック、とりあえず行ってみよう。お嬢様がいたら、あの甲高い声が聞こえてくるよ、きっと」

耳からあの甲高い"まぁー!!"が離れない。


「そうだな。とりあえず行こう。セバスチャンも、アイツつきのメイドも流石に帰らずに別荘内を歩き出したら止めるだろうし」


「エリックも大変な人に見初められたけど、こんな感じで相手が勘違いするような態度とっていないの?」

私は顔付近まで繋がれた手をあげた。


「絶対にない。アイツと初めてあった時からあの調子なんだ。かかわり合いたくないない人種だが、父親同士が仲が良いから仕方がなく交流があるだけだ」


エリックの言い方から、あのお嬢様は生理的に受け付けないのだろう。私もあのタイプとは仲良くできる自信がない。


「そうなんだ。さぁ、エリックのお父さんも待っているし、急ごう!でも、お嬢様がまだいるかもしれないから静かにね」

私はあいている左手の人差し指だけをたて、自分の口の前に持っていき"しー"のポーズをとる。


エリックは「あぁ、静かに行こう」と同じくあいている右手で"しー"のポーズを返してくれた。なんだか友達っぽいことをしているぞ、と思った私は楽しくなって笑ってみせた。



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