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第34話 赤い魔道士の正体

「リオ様。いかがされるおつもりでしょうか」


 兵達のとりまとめらしき方が、彼女に声をかけた。


「ここはアタシに預からせてください。幸い、ドラゴンは気絶しているようですし」

「……承知しました。では、我々は館内への突入を進めます。もしもの際は()()()()よろしくお願い致します」

「そちらこそ」


 どたどたと、多くの兵士達が館のほうへ駆けて行く。


「リオさん。今の方々は……?」

「王国兵団の小隊の人達よ。あのルディスって男が隊長を務めてるね。仕事の都合で、今は一緒させてもらってるの。ま……アタシの仕事については、あの男から聞いておいて」


 ガーラさんを指差して、話を続けるリオさん。


「とりあえず今の状況を伝えておこうかしら。一時的にだけど、この町は彼ら小隊の管理下に置かれることになったわ。中規模のモンスター被害が発生したからってのと……それ以上に、領主であるルクガン卿の失踪が確認されたからね」

「サイファーさんがですか?」

「そ。理由は……」


 リオさんが館のほうに横目をやる。

 つられて見れば、館内に駆け込んだ兵の方々が、ぞくぞくと昏睡状態の人達を運び出していて……そこには、森のみんなの姿も混じっていた。


「あ……」


 思わず、安堵の息が漏れる。

 よかった……。みんな、助かったんだ……。


「ほんの数刻前に、ルクガン卿の部下である騎士達が大荷物を持って町から逃亡しようとしているところを捕えてね。町が危険な状況であるにも関わらず職務放棄の逃亡とは何事だってしばいたら、あの手の証拠が山ほど出てきたのよ」

「じゃあ、これで失踪事件は──」

「一つ区切りではあるわね。あの中にアンタの故郷のエルフ達が混ざってるなら、アンタにとっては解決にも等しいでしょ」


 そこまで聞いて、ぐっと胸に込み上げるものがあった。

 解決……か。

 これで、元の日々が返ってくるのかな──。


「こっちの説明はそんなところ。次はアンタ達の番よ。一体、ここで何をしていたの?」

「それは……話すと長いんですが──」



◇◇◇◇◇◇◇◇



「……ドラゴンに助けられた、ね……ひとまずは分かったわ。協力のほど、感謝します」


 そう言うと、彼女はその足でディスティさまのほうに向かってしまった。


「よかったな、村の皆が助かって」

「ガーラさん! お体は大丈夫です!?」

「おう。へーきへーき」


 ガーラさんがやってきたのをいいことに、わたしは彼についと喰いかかった。


「リオさんの仕事って一体なんなんですか!? なんで王国兵団の方々とご一緒しておられるんです!?」

「どーどー。落ち着けって。んーと……アイツ、新しい仕事があるって言ってただろ? それが()()だよ。ローラシア王国軍と一緒している理由は、俺もよく分からん」

「それじゃあ何も分かりませんよ! 結局、リオさんの仕事っていったい……?」

「帝国が有する……えーと……なんだっけ?」

「──神聖シルフェイド帝国の名だたる帝国魔道士団。これの支援・指導を受け持つ、顧問魔道士様ですね」


 わたしとガーラさんの間を縫うように、その声は割り込んできた。

 ……ディスティさまだ。

 突然のことにぴゃっとわたしは跳び跳ねて、ガーラさんは間の抜けた顔をしていた。


「おや。どうされました? そんなビックリされて」

「ど……どうって……」


 さっきまで殺そうとしていたわたし達にそんな調子で話しかけるあなたのほうが変ですよ──と喉元まで出かかったが、なんとか抑える。



「今は勝手な行動は自重くださると助かりますわ。神官サマ」



 ふりかえると、しかめ面をしたリオさんが仁王立ちしていた。


「おや。それは失礼しました」

「分かってくだされば結構です。……では改めて、アナタの所属をうかがいましょうか?」

「そうですね。そういえばフィナさん達にもちゃんとした自己紹介はしてませんでしたし、そこも兼ねてしまいましょうか」


 おほん、と咳ばらいをしてディスティさまは口を開いた。



「教会の『執行部』に務めているディスティと申します」

「ああ……噂はかねがね耳にしていますよ。ひどく物騒なお仕事をされているとか」

「ええ。厄災・脅威・異分子等の排除を主とする、教会が有する最高の処刑部隊ですからね」


 いまさら……いや。ある意味では改めて聞かされた彼の物々しい肩書に、わたしは背を震わした。


「とはいえ……モンスターや厄災みたいな害悪が世界のあちこちではびこってる以上、ボクのところのような常識外れの荒事を受け持つ組織は必要不可欠でしてね。大戦時もそうやって戦火になりえるモノをボク達が率先して葬り去ってきたことで、この世界は平和を保っているわけですし」

「そうですね。まさに、血塗られた歴史です」

「はっはっは。違いないですねえ」


 お二人は和やかに話しているけど、内容は実に殺伐としている。

 腹の探り合いまっただ中なのもあって、どこか張り詰めた空気も漂ってるし……。


「で。そんな神官様は、この町にはどういったご用件で?」

「なぜ、それをアナタに話さないといけないのでしょう?」



 ──そこで明確に、リオさんとディスティさまの間で火花が散った。



「だってアナタはシルフェイドの方でしょう? ローラシア王国内のトラブルにこんな大々的に介入するのは越権行為に値するのでは?」

「ご安心ください。今回の作戦行動については、我が国からもローラシア王国からも事前に許可をいただいておりますので……。今のアタシの立場は、この小隊を支援する一魔道士です。なのでこの町の治安を守る義務も、この事態が起きた経緯や原因を調査する権限も、アタシにはあるんですよ」

「おや……そうだったんですか。それは失礼しました」


 にこにこ笑いながら、お二人のあげ足取りは激化する。


「越権行為といえば。神官様こそ、他人のことをとやかく言えた義理はないのでは?」

「と、いうと?」

「当然でしょう。教会の処刑人サマが、こんな町中で堂々と武力をふるっておられるのですから。ドラゴン退治ありきにしても、なぜかそこの剣士と交戦していたりと不審な点もありますし……。このまま何も説明をいただけないなら、ローラシア王国の自治権を侵害している恐れ有りとみなして、身柄の拘束と、教皇様への異議申し立てをしなくてはいけません」


 ぴく、と。ディスティさまの眉が動く。


「……ホセさんにですか。それは面倒ですねえ」

「そうでしょう? でもそれは、アタシも胸が痛むってものですよ」


 少しの思考の後──彼は肩をすくめた。


「仕方ありませんね。あんまり疑われるのも厄介なので、口を割ってしんぜましょうか」

このへん(https://ncode.syosetu.com/n9091ip/)の話から数年経ってるので、リオの立場はアップデートされていたりしますよ、と。


あと、教皇さまについてはこちら(https://ncode.syosetu.com/n2845ir/)に出てきている方です。

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