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第24話 賽は投げられた。

 ぱちぱちぱちぱち。

 シルフィールさんの話をおしまい、と区切るように拍手が響く。


「はい。お疲れさまでした」


 もちろん、ディスティさまによるものだ。


「というわけで。歴史の汚点である大戦の平定に多大な貢献をした今の教会は、ちょっとした救世主なんですよ。そんな彼らの威光と言葉を預かる教会は、今の断絶が激しい世の中でも、余人には無視できない影響力を有しているのです」


 ディスティさまが得意げに笑う。


 どうやら……わたしが思っていた以上に、ディスティさま達はすごかったみたいだ。


「ボク達に無体を働くのは教会はもちろん、『執行部』の人達に喧嘩をふっかけるのと同義です。そんなことができるならやってみろ! ってわけですね。あっはっはっはっ」

「なるほどなー」


 ガーラさんが感心した様子で頷く。


「じゃ、この先も安泰だ」

「ええ。皆さんは大船に乗った気でいてください」

 


 かくして。

 わたし達は城下町の入口に辿り着いた。



「ルクガン卿からの事前許諾証を得ていない方々を通すわけにはいきません」



 そして、門前払いされようとしている。


 …………話が違うっ!



「おや。なぜかをお尋ねしても?」


 予想外のリアクションが返ってきても、ディスティさまはいつものように笑っていた。


 き、肝が据わっておられるなぁ……。


「先に述べた通りです」

「では聞き方を変えましょう。ボクの所属先を伝えても尚、上の方々はそういう判断をされたのでしょうか?」


 門前の衛兵がひるむも、すぐに表情を引き締めて、


「お引き取りを願います」


 そう頑なに告げられた。


「おやまあ。悲しいことですねえ」


 やれやれと肩をすくめるディスティさま。

 その様子を遠目に見守りながら、


「これが()()()ってやつかな?」

「なんだそれ? シーナさんやい、そんな言葉をどこで習ったんだ?」

「えー……? 忘れちゃった」


 なんて話を、ガーラさんと姉さんはしていた。


「ディスティさま、どうされるおつもりなのでしょう……」

「さあ? あの神官様の腕の見せどころだが…最悪のケースもありえるよなー」

「……? ガーラさん。どういうことです?」


 わたしは問う。


「さっき言ってただろ。あの神官様達への無体は教会に喧嘩売るのと同じだって。口論で済んでるうちはまだしも、最悪は……」

「……武力衝突もありえると?」


 わたしがついだ懸念にガーラさんが頷いた。

 ごくりと。誰とも知れず、固唾をのむ。


「ディスティ様」


 シルフィールさんが近寄って、なにか小声で話されている。

 何を話してるんだろう。

 聞き耳を立てると、こんな会話が。


「分かってますよ。この反応的に()()()でしょうねえ」

「では……?」


 ディスティさまが空をあおぐ。

 腕を組んで、「うーん」とうなると、


「今回はゲストが居ますからね。大役は譲ってさしあげましょうか」


 ついと、彼がこちらに目線をやった。



「────」



 なぜか。寒気を感じた。

 ガーラさんがわたしの前に乗り出した──かと思えば、



「伏せろ!!」



 彼が叫んだ。

 瞬間、わたしの視界は白光に埋め尽くされた────



◇◇◇◇◇◇◇◇



 目を、開ける。


「フィナ! フィナ!! 大丈夫!?」


 いつのまにかわたしは地面に倒れていて、姉さんの腕に抱えられていた。


「大丈夫? どこか具合は悪くない!?」


「…は…い……」


 嘘。ホントはちょっと全身が痛んだけど…我慢できないほどじゃあない。

 頭も打った感じがする。それで気絶していたのかな…?


「一体、なにが……」


 きょときょと周りに目をやったら、ガーラさんが剣を構えているのを視認する。

 彼の眼光は、ディスティさまともども、空に向けられていた。


「よもやここまでのことになるなんて、ちょっと困っちゃいますねえ。あっはっはっは」

「笑ってる場合かよ」


 空を警戒しながら、ガーラさんは周囲の様子をうかがっていた。


「さっきのブレスで城壁はあのザマだし、町に飛び火もしてる……。

 これ、やばいんじゃない?」

「城門ごとまとめてどんっ! でしたもんね。

 いやあ、すごい威力だ。伊達に旧時代の使徒ではありませんねえ」


 ……視線を横にやる。

 お二人の言に違わず、落とし格子の城門は跡形もなく焼き飛んでいた。


 パチパチと町に広がる炎。

 遠くから聞こえてくる悲鳴。

 黒煙に混ざって、辺りには焦げた匂いが立ち込めている。


 一目でそうと分かる惨状が、すぐそこに広がっていた。



「というわけで、皆さんのお仕事の時間です。あのドラゴンの足止め、あるいは討伐をお願いできますか」



 普段通りのにこやかな口調で、ディスティさまは言った。

 




 わたしだけ外界から切り離されたみたいに、時が静止してた。

 からだから血の気が引いていく。

 そのくせ胸の鼓動はどくどくどくどくうるさくて、脈拍は早くなるばっかりで。


「──────」


 上空には、町の城壁を壊した脅威が飛んでいる。

 銀青で、宝石のようにキレイで、見覚えのある………ドラゴンだ。



「──ゼルスさん……?」



 カラカラになった口からは、かすれた声しか出ない。


 どうして?


 次いで口にしたかった疑問は、とても吐いて出せそうになかった。

ここまで読んで下さりありがとうございました。5章・完です。

ゼルスくんお帰りー。(お帰りじゃねえ!)

こちらの章はつなぎなので、少し短めです。

ここから怒涛のラッシュになっていく予定ですが、もしよろしければお付き合いください。


続きが気になったり、こちらの話がお気に召すようであれば、

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