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【1部完結】ひとりぼっちふたりの連れ添いまで冒険譚 ~少女とドラゴン~  作者: めーめー
3章 『逸脱者』のダンジョン探索
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第13話 ドラゴンよ、大志を抱け

 どん!!


 僕が放ったレーザーブレスを受けて、ゴーレムの生成機関が大破した。


 これで、ゴーレムのわずらわしさからは解放されるかな…。

 そのまま数多の歯車で構成された他の部位も壊していく。


 この場所には、どんどんと出てくるゴーレム共の元を辿ったら辿り着いた。

 ヤツらは結構な数で徘徊していたけど、本気を出せればどうってことはない。 


「それにしても、随分と奥まで来ちゃったな…」


 地面を埋め尽くした瓦礫を足蹴にして、隣の部屋に移る。

 すると、ドーム状の広間に出た。


 先日寄った宿場が数個入りそうなほどの敷地に、高さ六〇メートはある天井。

 そこはエントランスと同じ天体のステンドグラスになっているが、側面に張り巡らされたパイプと繋がっているせいか、歪な不気味さを醸し出していた。


「…また作品か…」


 壁づたいには様々な彫刻が飾られている。

 熊、兎、鹿などの動物。ゴブリン、オークなどのモンスターを象ったもの。竜、エルフ、人の彫刻に、生物とは形容しがたい抽象的な造形物の山……。彫刻の前にキャプションボードがあるから、いづれも『醜怪家アーチスト』の作品なのだろう。


「ここから外への穴でも開けるか」


 これだけ広ければドラゴン形態に戻っても自由が効くし、飛翔のスペースとしても申し分ない。


 早速そうしようと、全身に力を入れた。


「!」


 その直前で。

 ステンドグラスの太陽から、光の柱が落ちた。

 まばゆい光が晴れると、果たしてそこには天からの落とし物があった。


 番人みたいな出現の仕方から、称するなら『ガーディアン』だろうか。

 複数のリングが組み合わさった円球。それらがくるくる回る様は天球儀そのものだけど、そうと称するには中央の玉が歪だった。

 太陽でも星でもないそれは、()()である。

 そんな球儀を支える土台はタコのような八本足で、うねると金属音がする。

 極めつけは、全体に彫られた撚糸(ねんし)みたいな模様。赤く点滅するとどくどく脈動音を立てる様は、自らを生物だと謳っているようだった。


 黒光りする耐魔金属で作られた、生物染みた動きを可能とする()()

 それがこの『ガーディアン』の全貌だ。

 ハッキリ言ってひどいビジュアルだ。生物はもちろん、自然をも冒涜している。


 それだけに、確信する。

 これは正真正銘、『醜怪家(アーチスト)』の手によるものだろう。

 その危険性は、先のゴーレム共なんて目じゃないはずだ──


 がたがたがたっ!


 ──『ガーディアン』が動き出す!


 あの足でどうやってこんなスピードを出してるのだろうと思いつつ、風魔法による圧縮弾を数発撃ちこむも、ヤツは物ともしない。


 予想通り、魔法は駄目か。


 『ガーディアン』の足が僕に届く間合いに入った!


 ドゥッ!


 僕が放ったレーザーブレスが『ガーディアン』に直撃する。

 城壁も貫通する威力があるのだけど、今回は『ガーディアン』を吹き飛ばすに留まった。


 この程度の威力は微妙、と。

 なら、出力を上げよう。


「────ッ!」


 全身の力を発散するように吠えて、変形する。


 竜の姿になった僕はすかさず飛翔し、先程よりもエネルギー順達率が好調したレーザーブレスを放つ。

 寸前のところで『ガーディアン』はこれを回避し、代わりに広間の側面に穴が開いた。


 …素早いけど、宙を制した僕からいつまで逃げられるかな。


 攻撃を続ける。

 地を這う『ガーディアン』を狙い撃って、その躯体を削いでいく。


 そうしてレーザーブレスの射出を繰り返すこと数度。

 不意に、『ガーディアン』の目玉が怪しく光った!


「!」


 僕は放たれた白熱線をかわす。


 ──コイツ、撃ち返してきた!?


 連続して行われる『ガーディアン』からの狙撃。

 その精度は少しずつ正確に、そして僕のスピードに喰らいつくものになっていた。


 彫刻の癖に生意気だ…!


 旋回しながら、炉心からエネルギーを()み上げて、


「置物なら大人しくしてろ!」


 ありったけの灼熱を地面に向けて吐いた。

 地表に高熱が氾濫すれば逃げ場はない。

 岩をも熔かす炎に『ガーディアン』はすんなりとのまれてくれた。


 そうして熱波が失せる頃。

 広間に残ったのは、焦土と化したフロアと、炭みたいなスクラップだけ。


 下降して、尻尾で小突いたら元『ガーディアン』は砂みたいに崩れた。


「よし」


 片づいた。

 撃たれた時は少し焦ったけど、滞りなく済んだ。

 下手なことになる前に早く退散しよう──



『ころせ』



「────は?」



『ころせ』

『ころせ』『ころせ』『ころせ』『ころせ』

『りゅうは ころせ』


 耳慣れない音と共に、天から無数の光柱が落ちた。

 それも一つじゃあない。一〇、二〇、三〇……数えてられるか!

 光と光の隙間に身を滑らせて回避はするも、ちょっとだけ羽に(かす)めた。痛い。


 そうして光が収束する頃。眩んだ目を開けてみると、



「…最悪…」



 そう吐いて捨てた。

 両の指でも数え切れない『ガーディアン』が現れていたのだ。至極当然の吐露だろう。


「羽を生やしたヤツも居るし、アイツなんかは掘削機を装備してるな」


 先程のものより改良された『ガーディアン』と見て取るべきだろう。

 面倒だ。こんなのの相手はしたくない。即刻逃げたいけど……


「この数を前に、逃げるのは難しいか…」


 …諦念の境地に至る。

 仕方がない。大変そうだけど、そっちがそうくるなら全部スクラップにして、



「────」



 赤い光の線が見えた。

 なんだろうと理解するより早く、直感で僕は飛んだ。


 ガツン、と鈍い音。


 音のほうを見れば、僕が元居た場所に『ガーディアン』共の掘削機が喰いこんでいる。


 こいつら、さっきよりも数段はやい──!


 状況の悪化はそれだけに留まらない。


 パァッ!


 天井で眩い光がまたたいた瞬間、自分の体が異様に重くなって感じられた。


 くそ、これじゃあ飛びづらい!

 今の光の影響なのか!?


 そういえば、入口に入った時も似たような仕かけがあったような──と思考にリソースを割いた、その時。


 びゅんっ!


 跳躍した『ガーディアン』数体が僕に迫ってきた。

 体に取り付かれる寸前だったけど、なんとか翼で打ち払うことに成功する。


 しかしヤツらの猛攻は止まらない。


 追加で十機ほどが宙域に跳び込んでくる。

 尻尾で払いのけて迎撃する。

 次は視界の遠くでビームの射出準備をしているヤツがたくさん。

 灼熱のブレスで焼き払う。

 数に物を言わせて、天井まで登って降下してきた機体もチラホラあった。

 しつこい──!


 蹴散らしても蹴散らしても、ヤツらは群がってくる。

 湯水のように『ガーディアン』達は湧いて出て。どんどんと早く、しぶとく、キリがなくなっていく


 ああ。嫌な状況だ。

 昔からこういうのは大嫌いなのに、なんでいつもこうなるんだよ…!


 視界の隅で、地上の『ガーディアン』達の目玉が怪しく光る。

 またビーム光線だ。

 僕は旋回することでこれを回避する。


 けど、その中には僕の死角に入り込んでいた光線もあって──



 ちゅどん!



 僕の意識は、そこで途切れた。



◇◇◇◇◇◇◇◇



 ぱちぱち、ぱちぱち。

 ぐわんぐわんする頭に、火の焚ける音が甦る。


「──キミ達はいつだって愚直ですね」


 みんなを■したクソヤロウが、僕を見下ろしていた。


「ドラゴンはいつもそうだ。最強種たる自分達ならどうにか出来ると慢心する…。仕組み上そうなりやすいのは理解しますが、そろそろ省みることを覚えて欲しいものです」


 省みるってなんだよ。僕達が何をしたっていうんだよ。

 なんで■されないといけないんだよ。おかしいだろ。

 こんなの理不尽だ。不平等だ。ひどすぎる。


「何もおかしくありませんよ。命の価値は違うんですから。()()と定められた命は消費され、他の命はこれを糧に生存する。それがこの世界の道理(ルール)なんです」


 なに、それ。

 だから■ぬの? だから■されるの?

 お前達に負けた以上、生きる価値なんてないと断定されたから──?


「ま…恨むならご先祖様をお恨みください。ボク達が躍起にならざるを得ないような愚を犯した、ある意味では誠実過ぎた方々をね」


 …■してやる。

 ■してやる。■してやる。■してやる。■してやる。■してやる。■してやる!


「それはおススメしません。

 だってキミ……結局、一度もボクに勝ててないじゃあないですか」


 ──■してやりたい。


 けど。


 そう誓って。地に叩きのめされ続けて、どれだけの年月が過ぎた?

 倒される度に嘲笑われて。命からがら逃げたのは、何回目だ?


 …軽々しく世の道理を逸脱する連中が、この世界には存在してる。


 だから理不尽はある。どうしようもないものはある。命は等価値じゃあない。

 そんなくつがえせないものに抗い続けるのは、不毛だ。


 だから、もういい。

 わかったから。

 復讐も、制勝も、証明も、もういいから。


 だから、

 だから……



「────っ……」


 ずきずきと。

 全身に走った鈍痛が鮮烈で、目を開けた。


 …僕、何をして……そうだ。『ガーディアン』達の猛攻をさばき切れなくなったところを、ビームで撃たれたんだっけ…。


 どれぐらい気絶していたんだろ。体、動かすの億劫だな……。


「────から」


 …?


「死なないで。諦めないで」


 だれだろう。

 泣きながら、僕に治癒魔法をかけてくれている。


「死んでもいい命なんて、一つもないんだから…!」



 ………この子は、一人で何をしてるんだろう。



「……ひとりで……きた、の」

「はい」

「…死ぬよ…」

「リオさんにも、危ないって止められました」

「ばかなの? きみ」

「ぐうの音も出ません」


 笑うなよ。そんな状況じゃないのは一目瞭然なんだから。


 カチャカチャ


 凶器を引っ提げた彫刻共がにじり寄って来ている。



 …あぁ、クソ。抵抗しないと殺される…。



 体がずきずきと痛んだけど、無視して立ち上げる。


「ゼルスさん、ダメです! まだ怪我が…!」

「うるさい」


 こんな大群に襲われたら体が丈夫な僕はまだしも…だというのに。そんな悠長あるわけがないだろ。


「僕が飛んだら、元来た場所から逃げな」

「いやです。わたしも頑張ります」

「なんで」

「だって」


 涙を拭いながら、彼女──フィナは言う。



「何もしないでひとりだけ助かるなんて。そんなの、もう嫌ですから」



 その群青の双眸は、決意に満ちていた。


 …そうか。

 この子はそうやって自分の故郷を目の前で失ったのだから、こんなことで躍起になるのは当然なのか。

 意固地になっている彼女を一人にしたら、きっとみすみす無駄死にさせる。

 流石にそれは、度し難い。


 ……なら、仕方ない。


「僕のフォロー、出来るかい?」

「…! はい。任せてください!」


 ぱぁっとフィナが顔を輝かせた。

 ここまで散々、彼女の好意に付け入ったのだ。今更それを突っ返すのも違うだろうと自分に言い聞かせる。


 だから──来いよ、醜怪なる置物共。

 こうなったらどこまでも足掻いて目に物を見せてやる…!


 

 ガシャァンッ!!



 その時だった。

 天井のステンドグラスが叩き壊され、砕けたガラス片が散らばったのは。


「あぶない!」

「きゃっ!?」


 雨みたいに降る破片からフィナを庇いながら、目線を天井からそらさないでいたら…人の姿を捉えた。


 太陽みたいな長い金の髪と、見る者の記憶に焼きつく鮮烈な美貌。

 飛びかかった数多の『ガーディアン』を一刀両断して地に降り立つ様は、天から舞い降りた戦女神と称して妥当極まる。


 長耳をさらしたエルフの剣士が、周囲の『ガーディアン』達を一望する。

 戦慄する程に苛烈なカーネリアンレッドの瞳を前に、心を持たぬ『ガーディアン』達ですらたじろいだようだった。


「あれ」


 その意識が、僕達に向けられる。


 ──ずきずきと、癒えたはずの古傷が悲鳴を上げた。


 この剣士、あの時の……!


「フィナ? どうしてあなたがこんな所に居るの?」

「──シーナ姉さん!」


 込み上げた恐怖に押し黙る僕に対して。

 剣士に呼ばれた隣の女の子は、歓喜の声を上げていた。

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