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【1部完結】ひとりぼっちふたりの連れ添いまで冒険譚 ~少女とドラゴン~  作者: めーめー
3章 『逸脱者』のダンジョン探索
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第12話 世界大戦と『逸脱者』

 昔、大きな戦があった。

 種族も国も大義も問わない争いだった。

 そこまで大きな戦いになったのは、裏で暗躍する者達が居たからだという。


 それが『逸脱者』。

 数百年の時を経ても未だ解明されない、人智を越えた力と技術を有した超人達。

 その正体は異なる世界の住人だとか、唯一神様から恩恵を授かった救世主だとか、異界の叡智を有した賢者とか諸説あるらしいけれど……説明するリオさんは言葉を濁された。


「世界大戦とか『逸脱者』の遺産のことはアタシの専門外だからね。でも……旅をしていれば嫌でも耳に入る教訓話があるの。それが『醜怪家(アーチスト)』の作品には近づくなってものよ」

「それは……わたしも聞いたことがあります。彼が作り出した作品の一部は厄災という形で現存し、今も世界のどこかで災害を撒き散らしてるんでしたっけ?」

「そうよ。……なんだ、やっぱエルフ族にまで語られてるんだ。『逸脱者』の一人で、職業は芸術家だったってのが通説よ」

「芸術家……」

「王族とか貴族の暇潰しのために娯楽を作るような連中よ。分かる?」

「それぐらいは分かりますけど……リオさん。もう少し言い方ってものがあると思います」

「うっさい。ほっとけ」


 リオさんが眉尻を険しくする。

 特権階級の方々に恨みでもあるのかな……?


「そいつは色々な作品を作った。道具、武器、彫刻、建築……様々な物があったけど、いづれも見る者を不快にさせる非常な危険性を秘めたものだったらしいわ。

 ……あまりに危ないから語り継がれるなんて、呪物みたいよね。それで評価され続けてるんだから、美術品としては成功なのかもだけど」


 は、と鼻で笑うリオさん。


「で。その残された作品の一つに『グレーテル』ってダンジョンがあるのよ」


 つまりはここね、と彼女が地面を指した。


「正式名称は……移動式……なんだったかな。ともかく、大量のゴーレムが徘徊する上に変なギミックが組まれているせいで、難攻不落なことで有名なのよ。

 前に耳にした時は、ルクガン子爵領ってところで確認されてたって話だったけど……いつのまにか、こんな王都の近くまで移動してきてたのね」


 さっきから良くない話ばかり続く。

 ごく、とわたしは唾をのんだ。


「……わたしたち、無事に脱出できますかね?」

「さあ? ま、悲観するのも早いでしょ」


 むべなるかな。リオさんらしい前向きな発言だ。



◇◇◇◇◇◇◇◇



 探索を再開していくばくかが経った。


 道中で通り過ぎる部屋の中には、色々なものが飾られていた。

 風景絵画、モンスターの彫刻、用途不明の部品。

 何が起きるか分からないから遠目に見ただけだけど、これも全部『醜怪家(アーチスト)』の作品なのかな……?


 ちなみに。こういった部屋には一体以上ゴーレムが控えている。

 ひょっとしたら監視員の代わりなのかもしれない。


 そんな部屋の数も次第に減っていく。


 時折遭遇するゴーレムを倒しながら先に進むと、十字路の広間に辿り着いた。

 中央に一際大きい柱があるし、ここが一区画の中心なのかもしれない。


「フィナ」

「はい。どうかし……」


 ましたか?とは続けられなかった。

 リオさんの前に、数体の亡骸があったからだ。


「……ここに迷い込んで、出られなくなってしまった方々でしょうか?」

「でしょうね。ご愁傷様だけど……今、アタシが気にしてるのはこっちよ」


 リオさんが指差した壁には、大きな穴が開いていた。

 その先は、小さな部屋に通じている。

 これまでの展示部屋と違い、机や椅子にベッドと生活感のある雰囲気だ。


「なんでしょう、ここ」


 壁には色々な数式や文字が書かれているけど、意味は分からない。

 机の上に手記らしきものがあったのでパラパラ見てみる。


「……うーん……」


 でも全然ダメだ。手記には、見覚えのない文字や図しか綴られていない。

 この手のことに通じた人でなければ、解読も無理だろう。

 あと調べて分かったのは、この部屋には出口になりそうな場所がないことぐらいだった。


 リオさんにそう伝えようとして……その姿がないことに気づく。


「リオさん? どうかされたんですか?」


 元の広間に戻ると、彼女はあの遺体を調べていた。


「一応、身元を確認しておこうと思って。手軽な身分証明品があれば完璧ね。家族や所属元に渡せば謝礼を貰えるかもしれないわ」


 ……あくまで謝礼が目的っぽいけど、それで結果的には誰かのためになるなら、良いことなんだろうな。


「分かりそうです?」

「そうね。鎧の作りや材質的に、十中八九はどこかの国の軍役関係者ね」


 確かに、この人達の装備は格式ばったもの…で………



「……リオさん」

「なによ? あ、左胸の獅子のマークって確か……」

「わたし。この鎧に、見覚えがあります」

「へえ。そうなの」

「わたし達の森を襲った賊が身につけてました」



 ぐるん。

 遺体に集中していたリオさんが、勢いよくわたしを見た。



「それ。ホント?」

「はい」


 あの時はもっと着崩されていたけど……青の混じったこの鉄鎧は、間違いない。


「それが本当だとすれば……国際問題ね。国軍の人間がダムレスの村を襲ってるなんて、タダじゃ済まされないわ」

「リオさん。この人達は、どこの国の人達なんですか?」

「……それを知ったら、アンタはどうする気なの?」

「分かりません。でも……何もしないということは、ないと思います」

「あら。助けに向かうとか口にしないの?」

「そうしたいのはやまやまですけど……まずは一回落ち着いて状況を整理しないと。わたし一人が息巻いても、出来ることはたかが知れてますから」

「冷静ね。でも、良かったわ。アンタは了見が広くて」

「どうしたんですか。そんな急に……」

「アンタを褒めてるのよ。アンタの姉貴なら、こうはいかなかっただろうから。……アイツの直情っぷりも、決して悪いものではないんだけどね」


 ……なるほど。リオさんのその評に、わたしは苦笑を浮かべた。

 褒めてくれていることは嬉しいけど、姉さんが引き合いに出されると、ちょっと複雑だ。


「だから約束しなさい。この件について、みだりに口外はしないって」


 わたしは首を傾げた。

 どうしてそんな話になるのか、ちょっと理解が追いつかない。


「いい? アンタの村を襲った連中の正体が本当にそうなら、一国の悪事を掴んだことになるわ。要は大事なの。下手な吹聴には危険がつきまとうわ。

 それこそ……アンタの姉貴なんかに漏らそうものなら、あの女は絶対に先走るでしょ?」

「……それは……」


 そう聞くと、リオさんの懸念は尤もに思えた。

 特に、姉さんの下りあたり。現時点でリオさんが一番危惧しているのはそこだろう。


「分かりました。約束します」

「そ。じゃあくれぐれも、よろしく頼むわよ」

「はい。善処します」


 わたしが神妙に頷くと、リオさんは口を開く。


「これはね。ローラシア王国が騎士に支給している鎧よ」

「! それって──」


 どうりで、リオさんはあんな約束をさせたわけだ。

 この国の領土内でこんな話を軽率にしようものなら、国家侮辱罪とかにされてもおかしくない。


「それにしても……この方達は、こんなところで何をしておられたのでしょう?」

「このダンジョンが現れたことで通行人の被害も出てたって話だし、その調査か対処に訪れていたんじゃない? ……お、紋所入りのペンダント発見。これで身元も明かせそうね」



 ガタンッ!!



 その時、辺りが激しく揺れた!


「なに!?」


 バランスを崩したリオさんが叫ぶ。

 どごんどごんと、地なりみたいな揺れと爆音は続く。


 わたしは状況を探るべく耳を澄ました。

 聞こえる音がうるさくて掴みづらいけど──たぶん、下からだ。


 ふと、単身離れたゼルスさんのことを思い出す。

 彼がドラゴンの姿になっていたら、これぐらいの暴れ方はするかもしれない。

 でもそれは、彼がそれぐらい本気を出さないとまずい状況ともいえて。


 つまりは──窮地なのでは?


「リオさん、わたしから離れていてください!」

「は? アンタなにするつもり……」


 地面に手をつく。

 壁は耐魔金属製みたいだけど、地面は別だ。

 どこに出るか分からないけど、こうなったら出たとこ勝負……!


「≪アース・インター≫!」

「ちょ!? フィナ、待ちなさいッ!!」


 一も二もなく。

 リオさんの制止も無視して、わたしは穴掘りの魔法を放った!

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