二日目 美味しい助っ人
「いやあー、しっかしおかしいなあ」
加奈が腕を組んで首をかしげて言った。
「何が?」
こはるは隣で読書をしながら尋ねた。
今は登校時間で、既に支度を終えたこはるは、加奈の席で暇を潰していた。まだ教室にいる人もまばらだった。
加奈は顎をさすりながら難しい顔をする。
「いや....昨日こはるとアクイムをやった後、もう一度一人でやろうと思ったんだよね。そしたらさ、開かなくなっちゃったんだよ」
こはるは本から加奈へ顔を上げる。
「どういうこと?」
加奈はもっと難しい顔をした。
「いやなんかさ、開くとき、パスワード打つでしょ?ウチさ、パスワードの変更とかしてないんだよ?それなのに開かないの」
「打ち間違いとかじゃないの?」
こはるは疑わしく加奈を見る。加奈は首をブンブン振った。
「打ち間違いなんかじゃないよ。間違いない。完璧に間違いなく打ったよ」
「それなのに開かないんだあ?」
加奈はコクコクと頷いた。
こはるは嫌気がした。昨日加奈が言っていた、新規ユーザーが見れるというシステム。あれと何か関係があるかもしれない。
こはるは自分でウンウンと頷いた。そして加奈に向き直った。
「加奈ちゃん。今日加奈ちゃんの家に行かせて。それをちょっと見たい」
加奈は突然のことに戸惑った。
「えっ、いいけど.....。でも、どうするの?」
こはるは困った。できれば直してあげたいが、自分はそこまで機械やネットには詳しくない。
「おっはよーございまあーっす」
その時、扉から軽快なステップで入ってきた少年に目が止まった。
「......あてはあるよ。丁度いいのがいた」
こはるは加奈にニッと笑いかけた。
「は?オレが?」
その特徴的な茶髪の少年は、自分を指差して唖然とする。
「お願いッ!君しかいないんだよお!」
こはるは少年の目の前で拝むように手を合わせる。
少年は困ったように目を反らして、頭をポリポリと掻いた。
「ねっ?ねっ?海真は機械とかに詳しいでしょ?」
少年....阿倍海真は肩をすくめる。
「悪いけど、オレが得意なのは、プログラミングとか機械設定であって、ゲームとかそういうのは.....」
「ほらそれ!機械設定!それさえできれば完璧なの!」
こはるははしゃぐ。そして、海真の耳にささやく。
「あのね、もしかしたら、加奈ちゃんのデータがハッキングされてるかもしれないの。私だけじゃ無理だからさ」
海真は驚く。
「はあ!?そんなの警察に連絡しろよ!たかが小学生に頼むな!」
海真はこはるをギロリと睨む。こはるは「まあまあ」と海真をなだめる。
「ハッキングってのもまだわかんないじゃん?それを確かめるためにも海真に見てもらうんだよ」
海真はしばらく考え込んでいたが、こはるに向き直って、こはるを見つめた。
「な、何.....?」
こはるは困る。海真は瞳を閉じて頷くと、覚悟を決めた顔で言った。
「わかった。引き受けたよ。ちなみに、オレはお前が言った通り、確かめるためだけにしか働かないからな」
こはるはにんまりと笑って言った。
「ああ....それで充分だよ」
その笑顔に、海真は少し恐怖を覚えた。
* * *
時雨「ねえ、あなた本当に海真なの?」
匿名「そうだよ」
時雨「なんか信用ならない....」
匿名「じゃあ、こういえばわかるか?人頼みのどっかの誰かさんがオレをここに
連れて来たってな」
時雨「海真なのはわかったよ....でも海真はゲームとかしないからさ、意外と
設定が早いなあって」
匿名「どうでもいい。早く加奈のユーザー探そう」
時雨「ちょっと待って。匿名ってなんか嫌だから、ちゃんとユーザーネーム作っ
て」
匿名「めんどくさ....」
『匿名さんがプレイング広場から抜けました』
................
『アベさんがプレイング広場に入室しました』
時雨「わあわかりやすい」
アベ「うるせえ」
時雨「んじゃ、とりあえず加奈ちゃんの家行こうよ」
アベ「探すんじゃなかったの?」
時雨「ごめんもう約束しちゃった」
『アベさんがプレイング広場から抜けました』
(行動はや......)




