第7話 -死にたい私はデートしました-
「お前には消えてもらっちゃ困るんでね。俺がお前をこの世界に縛り付けてるってわけだ」
そ、そんなの、まるで…………
「メンヘラじゃない」
「ちげーよ」
違いました。
「ま、それでだなお前の魔力を俺が供給してる都合上、お前は俺を通じてならこの世界に接触することができるってわけだ。とどのつまり、俺の魔力があればお前は飯も食えるし本を手に取りページをめくることだってできるわけだ。はたから見れば本が浮いてるように見えるだろうがな」
なるほど。完全に理解したわ。
「つまりおいしいご飯が食べれるってことね?」
「……まぁそうだ」
なんだかものすごく呆れられているような気がするけど、まぁいいわ。
とりあえず、町の商店街へと向かうことにした。
この辺りは私たちの通う学園を中心ににぎわっており、住んでいる人の多くを学生が占めている。いわゆる学園都市というやつね。
「へぇこんなに騒がしいとは思ってなかったわ」
「(まぁ、この町の店のほとんどはこの商店街にあるし、飯も服も武具とか冒険関連のアイテムも全部そろってるからな。そりゃ、人も多くなるってもんだ。)」
それにしたって人が多すぎないかしら?人がいっぱいで歩くのもままならないじゃない。
あぁ、歩く足もなければ人にぶつかることもなかったわ。
「すまない、その串焼きを2本もらえるか?袋に入れてくれると助かる。」
彼が串焼き屋の人に話しかける。
そうだった、おいしいご飯を食べに来たんだったわ。
それを思い出した私は彼の近くへ駆け寄る。
「(ほら、腹は空いてないだろうが、食うだろ)」
彼はそう言いながら、袋から魔力で覆った串焼きを宙に浮かべる。
どういう仕組みかは知らないが、周りに溶け込んで見えなくなっているらしい。
その串焼きを私は一口頬張る。
「……おいしい。」
なんてことないただの串焼きだ。
ただの肉に塩の味をつけただけの、ただの肉。
ただ、それが、想像を上回るほどおいしい。
最近食べてなかったからかしら?なんて考えてるうちに、一つ気づいたことがある。
男の子と二人でご飯を食べ歩きながら町をぶらぶらと回る……こんなのまるで……
「まるでデートじゃない!?」
「……」
彼は呆れて言葉も出ないのか、黙り込んでしまった。
「えーさま!えーさま……」
少し人が減ってきて開けた場所に、1つの銅像を取り囲んだ集団が、「えーさま」と繰り返して呼んでいた。「あれって?」と彼に聞くと、
「(あー、ただの宗教だよ、お前だって知ってるだろ?この世界の神のこと。俺はあいつが嫌いだ。)」
「あら、神様に向かってあいつだなんて、しかも嫌いだなんて。私、あの方から力を授かってる勇者の前でそんなこと……」
「(関係ないさ、嫌いなものは嫌いだ。)」
そんなこともありつつ、私は彼と主に食べ歩きで一日を楽しんだ。
それから、一通り楽しんだ帰り道、一人の男が彼に話しかけた。
「やっぱり僕は、君以外ありえないと思うんですよ。ねぇ?いじめられっ子君。いや──エンディ君?」
学園で、フェイ・ネムークと名乗っていた、あの男だった。




