第96話 新生活
七姉妹昴星との戦いを終え、セディルナ町は普段の生活に戻った。
七姉妹の性格は全員バラバラで、それぞれ髪の色も違う。
元々星の性質だったそうなのだが、その七姉妹昴星が消滅したため、今はもう関係ないそうだ。
◇◇◇
長女 マイハ 十五億歳 白 ビアンコクロー
次女 エクトラ 十四億歳 赤 ロッソトライデント
三女 タルテ 十三億歳 黒 ネーログラディウス
四女 アルキューネ 十二億歳 青 アズーリボウ
五女 ケイ 十一億歳 黄 ジャッロカード
六女 アステロ 十億歳 緑 ヴェルデアックス
七女 メロペ 九億歳 紫 ヴィオラステッキ
◇◇◇
俺はまず姉妹たちの家を七軒建てた。
エクトラはマレムと住むと言い出したが、一応家は用意している。
まあ半分マレムの家に住み着いているし、マレムも諦めているようだから勝手にすればいい。
七姉妹はこの地で真面目に、そして楽しそうに働いている。
その理由を聞くと、みんな答えは同じだった。
「この星は働いた分だけ成果があるのよ」
「普通そうだろ?」
俺の隣で、アルキューネが鍬を握り畑を耕している。
青い長髪をポニーテールにしているが、汗で首筋にまとわりついていた。
「私たちの星は過酷だったの。水と食料は少なく、植物もなかなか育たない。昼と夜で気温が酷暑から極寒まで変わるの」
「そんなに大変だったのか?」
「そうよ。それで……豊かなこの星を狙っていたの」
アルキューネは鍬を振り下ろしながら、土の感触を味わっているようだった。
ザクッと音を立てる土の音を聞くたびに、笑顔がこぼれている。
「だから、こうして受け入れてくれたみんなには感謝しているのよ」
「ちゃんと働いてくれるからな。むしろ助かるってもんだ。はっはっは」
「そうね。働くことは好きだもの。それに――」
「温泉だろ?」
アルキューネが手を止めた。
俺の顔を真剣な表情で見つめる。
「そうなのよっ! もう本当に最高っ!」
両掌を胸の前で組み、顔を斜めに傾けながら満面の笑みを浮かべた。
「汗だくになっても温泉に入ってればサッパリするもの。むしろそのために汗をかきたいのよ」
「そ、そうか」
「お水が豊富だとこんなに素晴らしいものができるなんて。本当に驚いたわ」
冷静沈着な美女という印象のアルキューネだが、温泉の話になると饒舌になる。
まあでもその気持ちは分かる。
この地の温泉は、フェルムによってさらに快適に進化した。
先日落下した巨大隕石の成分を分析し、温泉を囲う石として使用している。
フェルムは嬉々として『隕石温泉』という、わけの分からない温泉を作っていた。
そして、エルメスの雷を微量に流した雷風呂も好評だ。
仕事の疲れが取れるらしい。
そもそも、膨大な限界値を持つこいつらが、労働なんかで疲れるわけがないのだが……。
そしてサウナの数も増え、今やサウナだけで十種類もあるほどだ。
そのため、姉妹たちは一日に何度も温泉やサウナに入っていた。
アルキューネが空を見上げ、妙にそわそわしている。
雲が赤く染まり始めていた。
「はは、余程のことだな」
「だ、だって……」
「よし、今日の仕事はここまでだな」
「うん! 温泉に入ってくるわね!」
「ああ、飯にはちゃんと来いよ」
「はーい!」
道具を片付けたアルキューネが温泉に走る。
「なあ、アルキューネ」
俺は思わずアルキューネを呼び止めた。
足を止め、上半身だけで振り返るアルキューネ。
「なに?」
「ここの生活は楽しいか?」
アルキューネが身体を俺に向けて姿勢を正した。
「もちろんよ。あのね、アレファス……」
「どうした?」
「私、あなたと結婚する」
「は、はあああ?」
「温泉入ってくるね」
アルキューネが温泉に向かうと、他の姉妹も次々と温泉に入っていく。
俺は何も言えず、姉妹たちの後ろ姿を眺めていた。
「みんな楽しそうでよかったわね」
「シルヴァか……。そうだな、意外と早く馴染んだな」
シルヴァが俺の肩に手を乗せてきた。
「アルキューネは本当に美人よね」
「何が言いたい」
「聞いていたわよ」
「お、俺から言ったわけじゃない!」
「ふーん」
シルヴァが嫉妬するとは思えないが、不安にはさせたくない。
誰にどう思われようと、俺の気持ちは一つだ。
「俺はお前が好きなんだ。それは絶対に変わらない」
「もう!」
シルヴァが頬を膨らませながら、腕を組んできた。
「そんなこと言われたら何も言えないじゃない」
突然、俺の肩に顔を乗せてくる女がいた。
こんなことをするのは一柱しかいない。
「またイチャイチャしてるぅ」
「なんだよ、アクアス」
「アレファスちゃんは、私とだって結婚するんだからね。忘れないでよ?」
「し、しねーよ!」
「酷い。私のようなか弱い女をもてあそんで……」
「してねーだろ! ってか、か弱くなんかねーんだよ!」
シルヴァが俺たちの様子を笑顔で見つめていた。
「アクアス様。私と一緒に、アレファスと結婚しますか?」
「はい!」
元気よく答えるアクアス。
どこまで本気なのか分からない。
マジで頭が痛い。
***
夕飯は全員で取る。
場所は町の集会場兼レストランだ。
人数が増えたことで、調理担当が増えた。
最近はウェントス、エルメス、テネヴァスが、セディルナ町のコックを名乗っている。
「みんな! 今日の料理は凄いぞ!」
エルメスが巨大な皿を持ってきた。
これはエレトゥスが焼いた皿で、今やセディルナ町の陶芸家を名乗っている。
もう好きにすればいい。
「テネの森豚の重力角煮! ウェントスの竜巻オムライス! 俺の黒角鮪の雷撃刺身だ!」
「「「おおー!」」」
マレム、テラム、フェルムが歓声を上げる。
七姉妹は目が輝いていた。
食事を終えると、アクアスがワイングラスを持ちながら俺に視線を向けた。
「アレファスちゃん、ちょっと聞いて欲しい話があるの」
「話? なんだ――。ま、まさか!」
さっきの結婚の話なのか。
また面倒なことになりそうだ……。
「違うわよ。ほんとバカね」
「な、なんだよ!」
「竜王化の話よ」
「竜王化?」
「ええ、マイハちゃんたちと戦って、私たちは竜王化したでしょ? それがどうやら他の子たちにも影響があったようなの」
「他の子? それって……」
「残りの魔竜よ」
「な、なんだと!」




