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魔神と呼ばれた元傭兵のトンデモ開拓スローライフ 〜裏切られて引退したおっさん。一人で生きると決めたのに、最強種族が集まってくる〜  作者: 犬斗
第三章

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第95話 決着の後

「ミリオーネアロー!」


 アルキューネが放つ本気の矢は尋常ではない。

 このミリオーネアローは、たった一撃で星が破壊される程の威力を秘めていた。

 

「神速の百万斬り《クトゥヴィセス・ケーダ》!」


 だが、俺もこれまで毎日一万回素振りをしていた成果が出たようだ。

 ミリオーネアローに対抗すべく、百万回の剣撃を放てるようになった。


「魔王となって確実に成果が出たな。やはり訓練は裏切らない」


 俺と相対するアルキューネが、空中に浮遊しながら呆れた表情を浮かべている。


「ねえ、もうやめにしない?」

「まだだ」

「だって……、もう一億本は射ているのよ……」

「勝手に襲ってきて、やめてくださいって都合よすぎるだろ?」

「そ、それは……」


 困惑するアルキューネ。

 その瞬間、俺の背中に強烈な衝撃が走った。


「いてっっっっ!」

「アレファスっ! もうやめなさいっ!」

「シ、シルヴァか」


 どうやらシルヴァが俺に魔法を放ったようだ。

 地上に目を向けると、全員テーブルについて団欒している。


「はあぁぁ? お前ら何やってんだよ!」 

「もう終わりよ。降りてきなさい」

「な、なんなんだよ」


 俺はアルキューネに視線を向けた。


「ちっ、仕方ない。ここまでにしてやる」

「あ、あの……」

「なんて顔してんだよ。戦いは終わりだ。俺たちもコーヒーを飲もうぜ。それともハーブティーがいいか? シルヴァのハーブティーは旨いぞ」

「あ、う、うん」

「ほら、行くぞ」


 俺とアルキューネは地上へ降りて、全員が座るテーブルへ移動した。


「なんでお茶会してるんだよ」

「いいじゃないの。あなたはコーヒー?」

「ああ、コーヒーだ。アルキューネにはハーブティーを淹れてやってくれ」

「分かったわ」


 俺はシルヴァの隣に座った。

 

 シルヴァが洗練された手つきでハーブティーを淹れている。

 当然この地で栽培している茶葉だ。

 旨いに決まっているが、アルキューネたちの舌に合うだろうか。


「はい、どうぞ」


 シルヴァがカップを置くと、恐る恐る口にするアルキューネ。


「これがハーブティー……。なんて美味しいんだろう……」

「気に入ってもらえてよかった」

「ありがとうございます……」


 アルキューネの瞳が大きく潤んでいた。

 どうやら気に入ったようだ。

 その様子を真剣な表情で眺めていた長女のマイハが立ち上がった。


「皆さん、申し訳ありませんでした」


 深く頭を下げるマイハ。


「七姉妹昴星(プレルデス)の長女として責任を取ります。ですから、妹たちの存在はどうか残してください」


 アクアスが何かを言いたそうだったが、俺は右手を挙げて制した。

 そして、ゆっくりと立ち上がる。


 侵略を許すわけではないが、故郷を失った状況は理解できる。

 それに、こいつらのおかげで、テラムたちは上位への進化(エヴォリオル)できたんだ。

 今さら責任を取ると言われても、死なせると双方にとってマイナスになる。


「どいつもこいつも責任責任って、そういうのはもういいんだよ。辛気くせーな」

「え?」

「まあいい。お前らに襲撃の罰を与える」

「は、はい……」

「次の住処が見つかるまでここで働け」

「え? あの……」

「俺たちの農園はもっと広げる。労働力がいるんだ。だから働け」


 俺は七姉妹昴星(プレルデス)全員を見渡した。

 全員が目を見開いている。


「文句がある奴はいるか? まあ文句があっても言うことを聞かせるがな。はっはっは」


 なぜか全員が立ち上がった。

 そして、一斉に頭を下げる。


「ありがとうございます」


 七姉妹昴星(プレルデス)は納得したようだ。

 続いてアクアスたちを見つめた。


「魔竜……じゃなかった。竜王も獣王も異論はないな」


 全員頷いている。

 これで決着だ。


 決着の後にやることは一つ。


「さて、じゃあ飯にするぞ。バーベキューだ。準備するぞ」

「むっ、アレファスにしては良い案だな。わははは」


 テラムが嬉しそうな表情を浮かべながら立ち上がった。

 こいつは飯が食いたいだけだろう。


「なんだよ、お前。女に腕の骨を折られたくせに偉そうだな」

「な、な、な、なんだと!」

「栄養が足りねーんだよ。もっと魚食え。マレム、貧弱なこいつのために、魚を釣ってやろうぜ」


 マレムが苦笑いして、両手を広げながら肩をすくめていた。

 仕草がいちいちかっこいい。


「き、貴様、死にたいようだな。竜王となった私の超爆裂大地拳(テラムパンチ)を喰らわせてやろう」

「バカめ。俺の神速の百万斬り《クトゥヴィセス・ケーダ》で、貧弱なお前なんて塵にしてやるわ」


 俺とテラムは睨み合いながら、庭の広場へ歩き出す。

 久しぶりにテラムと勝負だ。


「やめぬか」

「やめなさい」


 グラキャスとシルヴァが同時に声を上げた。

 その瞬間、テラムは完全に凍りつき、俺の周囲は真空となっていた。


「ぐぼぼぼ……お゛ま゛っ!」


 シルヴァの魔法解除があと少し遅れていたら、俺は死んでいたかもしれない。

 テラムもすぐに解凍されていたが、顔面蒼白でグラキャスに謝罪を繰り返している。


「なるほど。この町の町長とは、グラキャスとシルヴァさんのことっしょ」

「あーし、グラちゃんとシルちゃんの言うことは絶対に聞くんですけど……」


 ケイとメロペの呟きが聞こえた。


 ***


 鉄板を用意して、火を起こし、バーベキューを始めた。

 肉、魚、野菜を焼いていく。

 ピザやパスタ、シチュー、カレーと、とにかく作れるものは全て作った。

 食材の出し惜しみはしない。

 なくなったらまた作ればいいだけだ。


「おい、七姉妹昴星(プレルデス)。これがうちの自慢の飯だ。どうだ、すげーだろ」


 七姉妹昴星(プレルデス)は言葉を失っているようだ。


「今日はとにかく食え。明日からは働いてもらうからな」


 マイハが無言でトウモロコシを手に取った。

 そういえば、この地で俺が最初に作った野菜はトウモロコシだ。

 このトウモロコシをテラムが気に入り、ここでの俺たちの開拓が始まった。


「お、美味しい……。こんな美味しい野菜、初めて……」


 トウモロコシを頬張りながら、マイハの瞳から涙が溢れ出た。

 泣くほど旨いのか、それともこれまでの出来事を振り返っているのか。

 いや、長女としての苦労なのかもしれない。

 いずれにせよ、マイハの手が止まらないことは確かだ。


「うわ、この魚美味しい! さすがマレムさんの海だ!」

「キノコが美味しいんだもん」

「このチーズ、ワインと合うわね」

「アルキューネ! ピザもヤバいっしょ!」

「俺はこの肉が気に入ったぜ」

「あーし、一生ここに住むんですけど?」


 エクトラ、タルテ、アルキューネ、ケイ、アステロ、メロペも堪能しているようだ。

 そんな妹たちの様子を眺めながら、マイハが俺の元にやって来た。


「アレファス様、本当にありがとうございます。私たちはアレファス様に忠誠を誓――」

「やめろ!」


 俺はマイハの言葉を遮った。


「そんなものはいらない。普通にしていろ」

「で、でも」

「さっきのふてぶてしい態度はなんだったんだよ」

「そ、それは……」


 顔を赤らめるマイハ。

 俺はアクアスを指差した。


「おい、アクアス! 友達だろ!」

「うふふ、そうよう。十億年来のお友達なんだから」

「じゃあ、お前が何とかしろ」

「はいはい」


 アクアスがマイハの隣に立ち、僅かに震える肩に手を乗せた。


「マイハちゃん。楽しみなさいよ」

「ア、アクアス……」

「いつも通りでいいわよ。アレファスちゃんなんかに忠誠を誓う必要はないわよ」


 その言い方はまた癪に障るのだが……。


「アレファスちゃんって偉そうだけど、そもそもここはテラムちゃんの土地なのよ。勝手に住み着いて偉そうにしてるんだから。あなたたちも見習いなさい」

「え? 勝手に?」

「そうよう、酷いでしょう? テラムちゃんが許したからここにいられるのよ」

「そ、それはさすがに……。酷いわね……」


 二柱が呆れた視線を俺に浴びせている。


「アレファスちゃんはね。他所で絶望してこの地に来たの。だからあなたたちと一緒よ」

「そうなのね。じゃあ、私たちも勝手に住み着いちゃおうかしら」

「そうそう、それでいいわよ。家はアレファスちゃんが作ってくれるもの」

「え? 本当に?」

「アレファスちゃんが七姉妹全員の家を作るわよ。どんな家がいいか希望を伝えるといいわ」

「それは嬉しいかも」


 マイハに笑顔が戻ってきた。


「なんかちょっとムカつくけど、まあ家は作ってやる。でもお前らも手伝うんだぞ?」

「も、もちろん……よ」


 俺にも普通に接してきたし、これで問題ないだろう。

 マイハが俺の瞳を見つめていた。


「私、かわいいお家がいいわ」

「え? かわいい?」

「ダ、ダメかしら」

「いや、別に構わないけど……。おばさんなのに?」

「は、はあ! ど、どこがよ!」


 マイハの右手がビアンコクローに変化した。

 ヤバい、怒らせてしまったようだ。

 だが、妹たちは構わず笑顔でマイハに飛びついた。


「姉さん! うちはマレムさんと住むよ!」

「僕は黒くてかっこいい城がいいんだもん!」

「私、お庭に花を植えたいな」

「アタシはオシャレな家がいい」

「俺、大きな家がいいんだぜ」

「あーしは豪華な宮殿がいい!」

「も、もう、あなたたち……」


 マイハが少し呆れたような、それでいて心からの笑顔で妹たちの頭を撫でていた。

 仲の良い姉妹で何よりだ。


「明日から忙しくなりそうだな」

「そうね。頑張りましょう」


 アクアスの表情も明るい。

 宇宙からの侵略なんて信じられなかったが、結果的には全て丸く収まった。


「さて、俺もビールを飲むかな」

「アレっさん! ビールあるよ!」

「よし、エルメス! じゃんじゃん持ってこい!」

「任せて!」


 日が沈んだ後も、バーベキューは夜遅くまで続いた。

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