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魔神と呼ばれた元傭兵のトンデモ開拓スローライフ 〜裏切られて引退したおっさん。一人で生きると決めたのに、最強種族が集まってくる〜  作者: 犬斗
第三章

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第90話 七姉妹4

 限界値170億のケイが、得意のジャッロカードを放った。


 フェルム、シルヴァ、レーシェ、レオール、エレトゥス、ルーファス、ファンシアの七柱に向かって黄色く光るカードが飛ぶ。

 直撃すれば身体が切断されるだろう。


「鋼鉄の壁(フェルム・エニア)!」


 フェルムが手をかざすとフェルム鋼の壁が現れた。

 甲高い金属音とともに、ジャッロカードが地面に落ちていく。


「へえ、意外とやるっしょ。でも、防ぐだけっしょ?」


 ケイは再度、両腕を交差させた。


「獅子咬裂斬(レオルドレ)っ!!」

「巨象踏天破(エレトゥカリエ)っ!!」

「餓狼咆突爪(ルーファラス)っ!!」

「白豹雪月花(ファンルフロ)っ!!」


 ケイの隙をつき、レオール、エレトゥス、ルーファス、ファンシアが四方から飛びかかった。

 あまりにも限界値に差があることを知った魔獣たちは、それぞれ初手で最大の必殺技を放つ。

 魔竜にも届くほどの攻撃だ。


「なにそれ? 遊びっしょ?」


 四方向から同時に攻撃が直撃したケイ。

 だが、一切のダメージはなく、ケイは何食わぬ顔でジャッロカードを出した。


「雑魚のみなさん、さようなら! っしょ!」


 ケイがジャッロカードを放つ。

 これで魔獣の命は終了となる。


 はずだった――。


「あまり人のことを雑魚とか言わないほうがいいわよ?」


 ジャッロカードが地面に落下した。

 シルヴァの魔法だ。

 アクアスの権能が付与された水女神の杖(アクティカエ)をかざし、シルヴァの得意魔法である空気を操った。


「銀月の光跡(ウェスギム・ルルテ)!」


 レーシェが間髪入れず、一筋の銀の光となり、ケイに突進した。

 手に握るはグラキャスの権能がついた氷の剣(グラリウス)だ。

 光跡は凍り、舞い上がった塵が輝く。

 標的を凍らせ破壊するという、美しくも残虐な必殺技だ。


「だから、効かないんだって!」


 レーシェの銀月の光跡(ウェスギム・ルルテ)が直撃してもケイは無傷だった。

 圧倒的な戦力差。

 一対七の戦いであっても、限界値170億と8千万強の差は歴然だ。


「雑魚は雑魚っしょ!」


 ケイは一気に終わらせようと、全力でジャッロカードを放つ。


「くっ! 鋼鉄の壁(フェルム・エニア)っ!」


 フェルムが鋼鉄の壁(フェルム・エニア)を繰り出すも、カードはフェルム鋼を貫通した。

 その瞬間、全員が絶望を感じる。


「はい、終わりっ!! しょっ!!」


 そして、ジャッロカードは全員の胸を貫いた。


 ***


 限界値190億のエクトラが、ロッソトライデントを振り上げた。

 エクトラの燃えるような赤い三つ編みが大きく揺れる。


 対する限界値9千万のマレム。


「深海(アルマーレ)!」


 マレムが手をかざすと、エクトラの身体が海水に沈み込む。

 エクトラの周囲のみ、世界で最も深いマレム海峡を再現している。

 通常であれば強烈な水圧で即死だ。


「うお、こりゃすげえな」


 極僅かに動きが鈍くなった程度で、エクトラには全く効果がなかった。

 ロッソトライデントを振り下ろすと、深海(アルマーレ)は破られ、海水が爆音を立て破裂した。


「マジか。深海(アルマーレ)を破るのかよ」

「なあ、マレムさん。あんたは生かすようにお願いするから、降参してくれよ」

「嫌だね」

「マレムさんとなら、上手くやれそうな気がするんだよ」

「やっぱり口説いてる?」

「うーん、そうかもしれない」

「俺、こう見えて尻に敷かれんの嫌なんだよ! 渦潮(ウォルマーレ)!」


 エクトラの周囲に猛烈な渦が発生し、飲み込んでいく。


「うちは恐ろしい姉ばかりだからな。強い女はごめんだよ」


 強烈な渦が二つに斬り裂かれた。

 その中心には赤い髪のエクトラが、ロッソトライデントを握って立っている。


「くそ、マジかよ……」

「優しくするからさ、マレムさん」


 マレムですら、絶望の底に落とされた。


 ***


 限界値200億のマイハと、1億8千万のアクアス戦。

 マイハのビアンコクローによって、アクアスは徐々に追いつめられていた。


「ねえ、あなたの三十六億年の中で、最も命の危険を感じているんじゃない?」

「そんなことないわよ」

「強がっちゃって……。もう死になさい!」

「くっ!」


 マイハのビアンコクローが、ついにアクアスを捉えた。

 首筋から胸に向かって、斜めに腕を振り下ろす。


「この星はもらうわ! あーはははは!」


 声を上げて笑うマイハは、容赦なくアクアスの身体を真っ二つに斬り裂いた。


「あっけなかったわね」


 マイハは少しだけ寂しそうな表情を浮かべながら、斬ったアクアスを眺めた。


「なっ! 消えたっ!」


 真っ二つに斬られた身体が、水の塊となり大地に崩れ落ちる。

 そして、草原に吸収されていった。


「驚いたわ。あなた、本当に強くなったわね」


 アクアスが少し離れた場所に姿を見せた。


「危なかったわ。装飾の水(ヴェーラ・アクア)よ」

「ちっ、面倒な権能ね」

「だって私、水だもの」

「その水がほしいのよ」

「あのねえ、私たちはこの星そのものよ? 私たちが死んだら、星も終わるのよ?」

「ふーん……。じゃあ、殺さずに捕らえて生かせばいいわけでしょ? 私たちのために、一生水として生きるの。いいじゃない」


 口調とは裏腹に、マイハの攻撃が激しさを増す。


「くっ! 本当に強くなったわね!」

「ここで勝たなきゃ終わりだもの!」


 マイハがビアンコクローを振り下ろし、アクアスが装飾の水(ヴェーラ・アクア)で凌ぐ。

 同じことの繰り返しとなってきた。


「まさに水論ね、アクアス。ふふふ」

「なに上手いこと言ったって顔してるのよ。でもね、間違っているのは、あなたたち七姉妹昴星(プレルデス)よ」


 マイハには笑う余裕があり、アクアスは焦りが大きくなる。

 このままではマイハに敗れる。

 表には出さないが、アクアスは少しずつ絶望感に支配されていった。


「勝てばいいのよ。勝者が正しいの」

「乱暴な意見ね」

「じゃあね、アクアス。水として生きて。さようなら」


 ついにマイハのビアンコクローが、アクアス本体に届いた。

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