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魔神と呼ばれた元傭兵のトンデモ開拓スローライフ 〜裏切られて引退したおっさん。一人で生きると決めたのに、最強種族が集まってくる〜  作者: 犬斗
第三章

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第88話 七姉妹2

 ◇◇◇


 マイハの指の爪が白く光り、ナイフのように伸びる。

 

「ビアンコクロー!」


 マイハは叫びながら、アクアスの美しい顔を切り裂かんと、腕を大きく振り下ろした。


 だが、アクアスはマイハを水で包む。

 マイハの攻撃速度が遅くなったことで、アクアスは後方に飛び退いた。


「驚いちゃった。マイハちゃん、いつの間に聖人から聖王になったの?」

「うるさい! 死ねっ!」


 アクアスの言う通り、マイハたち七姉妹は辺境の星に住む聖人だった。

 それが上位への進化(エヴォリオル)を経て、今や聖王だ。

 限界値は大きく伸び、長女のマイハは200億に達していた。

 アクアスの1億8千万とは比べものにならない。


 だが、アクアスは限界値の差を権能でカバーする。

 マイハの攻撃をことごとく水で覆っていた。


「ふう、やはりこの星では圧勝まではいかないようね」


 水で怒りを冷やされたわけではないが、マイハの表情は元に戻っている。

 単純な力勝負なら圧倒的に勝利できるが、この星では魔竜の権能が厄介だった。


「逃げてばかりじゃない、アクアス」

「だって、あなた強いんだもの」

「どう足掻いても、勝てないわ」

「そうよねえ。200億だもの」

「今降参すれば、メイドくらいにはしてあげるわよ。水汲みで」

「はあ、田舎者って嫌ねえ。水汲みって何よ。今は水道があるのよ?」

「こ、殺すっっ!」


 マイハの爪による攻撃が激しさを増す。


 ***


 赤髪の女が、マレムの前に立つ。


「エクトラか。お前の限界値190億なんてやべーな。俺なんて9千万だぞ?」

「わけあって聖王になったからね。マレムさん。悪いけど死んでもらうよ」


 エクトラは七姉妹の次女で、年齢は十四億歳だ。

 身長はマレムよりも指三本ほど高い。

 腰まで伸びる赤い髪を、一本の長い三つ編みにしている。


 エクトラが赤い三叉槍を構えた。


「ロッソトライデントか。美しい武器だな」

「武器だけ?」

「まあ、お前も美しいとは思うよ。だけど、侵略はいかんだろ」

「口説いても無駄だよ?」

「口説いてねーだろ!」


 エクトラが、身長よりも長いロッソトライデントを大きく振りかざした。

 マレムは即座に大波を作り出し、エクトラに浴びせる。

 だが、エクトラはロッソトライデントを縦に振り、目の前の大波を切った。

 同時に大波が白煙を上げ、猛烈な速度で蒸発していく。


「ちっ、厄介だな」

「マレムさん、無駄だよ。限界値に差があり過ぎる。勝負にならないよ」

「やる前から諦めるわけないだど」

「さすがだね。そういうところ好きだよ」

「口説いてんの?」

「口説いてないよ!」


 エクトラは再度ロッソトライデントを構え、マレムに振りかざした。


 ***


 七姉妹の三女、タルテが黒いレースのリボンを取り出す。

 黒い長髪を後頭部で結び、ポニーテールにした。

 戦闘で髪が邪魔にならないようにするタルテの儀式だ。


「僕の相手は双子君ね」


 そう呟きながら、タルテはウェントスとエルメスの正面に立つ。

 タルテは七姉妹の中で、身長は下から二番目だ。

 それでも、ウェントスとエルメスより僅かに高い。


「ウェントス。こいつ、ちょっと背が伸びたみたいだな」

「前は僕たちと一緒くらいだったのにね」

「限界値はちょっとじゃないけどな」


 ウェントスとエルメスの限界値はそれぞれ7千万だ。

 それに対し、タルテの限界値は250億に達する。

 二柱を足したとしても、誤差にもならない。


「君たち二柱同時に相手にしてあげるね」


 タルテは剣を二本握った。


「ネーログラディウスだよ」


 つや消しの黒い双剣を構えるタルテ。

 刃も柄も全てが黒く、光を吸収するかのような不気味さを放つ。


「出た。黒い剣。ガキが好みそうだな」

「うん。正直ダサいよね」

「しかも双剣だって。ぷぷっ」

「この子、そういうの凄く好きそう」

「あの儀式って奴も恥ずかしいよな」

「普通のポニーテールなのにね」


 悪戯な双子(ジェミディリス)の名の通り、二柱の息はピッタリだった。


「う、うるさいなっ!」


 タルテは叫びながら、二柱に突進していく。


 ***


 アクアスの言いつけを守り、魔獣たちを庇うように立っていたテラム。


「テラム兄様! レーシェと魔獣は僕が守ります!」


 そこにフェルムが駆け寄った。

 愛する者は自分で守りたいと思うフェルムだった。


「うむ、分かったのだ。私は別の者を相手にしよう。守り抜けよ、フェルム」

「はい!」


 シルヴァも神樹の杖を持って駆けつけた。


「私もこちらで!」


 シルヴァは限界値が最も低くなる魔獣たちをカバーするつもりだった。

 もちろん自分自身の限界値も高くないことは理解している。

 だが、アレファスや魔竜たちの戦いに参加すると邪魔してしまう。

 テラムがシルヴァの肩に手を置いた。


「シルヴァ、頼んだぞ!」

「お任せください!」


 その様子を見つめるケイは、七姉妹の五女だ。

 身長はフェルムと全く同じ。

 七姉妹は平均身長が高い。

 ケイは右手で黄色い短髪を無造作に掻いていた。


「テラムのほうが強いっしょ? フェルムなんかでアタシの相手になるの? しかも雑魚ばっかりなんだけど」

「君だって七姉妹昴星(プレルデス)で一番弱いだろ?」

「い、言うじゃないか。クソバカ真面目魔竜のくせに」


 フェルムは特に煽っていない。

 真面目が故に正しいことを言っているだけだ。

 ケイは170億Heという途方もない限界値だが、七姉妹では最も低い。


「フェルム、私も戦うわ」

「レーシェ、危険だ」

「いえ、私は今こそ戦わなければいけないのよ」


 レーシェは以前、セディルナ村を攻めた。

 村を完全に破壊したにもかかわらず、こうして住まわせてくれていることに多大なる恩を感じていた。


「姫! 我らも戦います!」

「あなたたちは下がりなさい!」

「今戦わなくてどうするんですか!」


 魔獣たちはレーシェと同じことを口にした。


「そうね……。分かったわ。みんな、死んじゃダメよ」

「「「「はい!」」」」


 レオールを筆頭に、エレトゥス、ルーファス、ファンシアが応えた。

 この六柱の限界値を合計しても、6千万に満たない。


「ふふふ。私、邪魔になっちゃうかしら」


 シルヴァが加わり、ようやく7千万を超えた。

 ケイが小さく溜め息をつく。


「はあ。弱い者イジメみたいになっちゃうけど、仕方ないっしょ」


 ケイが両腕を交差して構えると、掌に五枚ずつカードが現れた。


「まあ、ジャッロカードは大人数に強いしね。っしょ!」


 ケイがフェルムたちに向かってカードを飛ばした。

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