第80話 限界値の測定3
エルメスがまじまじとシルヴァを見つめている。
「やっぱすげーな。シルヴァは魔人として過去最高だ。魔獣も超えている」
「へえ、シルヴァちゃんはいくつだったの?」
「アク姉、驚くなよ。850万だ」
「あら、それは凄いわね」
「そうだ。シルヴァは特別かもしれねーな」
「もしかしたら、シルヴァちゃんは少しずつ魔人を超えようとしているのかもしれないわね」
「おいおい、魔王になるってことか?」
「んー、それは分からないけど、シルヴァちゃんの魔法は魔竜に匹敵するくらい凄いし、その可能性は高いわよね」
アクアスがワイングラスを持ちながら、シルヴァに微笑んだ。
この顔は何かをたくらんでいる。
「シルヴァちゃんの杖に、私が能力を付与してあげるわね。レーシェちゃんに負けない武器にしてあげる。うふふ」
「よろしいのですか?」
「ええ、せっかくだし、アレファスちゃんをやっつけましょう!」
またアクアスがアホなことを言っている。
絶対何かやると思った。
「ちょっと! アホって何よ!」
「い、言ってねえだろ! 心を読むな!」
「もう頭来ちゃったもんね。本気出すわよ」
アクアスが、シルヴァの神樹の杖に向かって掌をかざした。
神樹の杖が青白く光る。
エルメスが口を開いたまま、ポカンとした表情でアクアスを見つめている。
「アク姉って、そんなに子供っぽかったっけ?」
「んー、アレファスちゃんの前では乙女になっちゃうのよねえ。愛しの旦那様だから」
「え! アク姉、結婚してるの!」
「そうよ。アレファスちゃんの第二夫人なのよ」
エルメスとウェントスが勢いよくアクアスの顔を見上げた。
「マジかよ!」
「アクアス姉ちゃん、凄い……」
まさかとは思うが、この反応だと本気にしそうだ。
悪戯な双子は意外とウブなのかもしれない。
「ウソに決まってんだろ。お前ら、アクアスの言うことは信じるなよ」
二柱に釘を刺すも、アクアスと喋っていて俺の話を聞いていない。
まあ今度ちゃんと説明すればいいだろう。
「ってかよ! アク姉、とんでもないことしたな!」
「全力出したもの」
「その杖だけで800万もあるぞ」
アクアスがシルヴァの肩に手を置いた。
「シルヴァちゃん、気をつけてね。その杖だけで、国の一つや二つ滅ぶから」
「は、はい」
魔竜のデタラメ具合に慣れてきたと思ったが、やっぱり魔竜は魔竜だった。
「なあ、テラム。杖だけで800万って、ヤバくねーか」
「そうだな。シルヴァは杖と合わせると1650万だ。魔法によっては魔竜に匹敵するぞ……。アレファス、シルヴァを怒らせるなよ」
「お、おう」
あのテラムですらドン引きしているほどだ。
エルメスが改めてビールをジョッキに注ぎ、一気に飲み干した。
「おっしゃ! じゃあ、魔竜やるぞ! まずフェルム!」
「はい」
「お前、腕を上げたな。5千万だぞ」
武器も持たずに5千万なんて信じられない。
俺はフェルムに視線を向けた。
「ご、5千万だと! フェルムすげーな!」
「僕は戦闘タイプではありませんが、以前より上がってます」
フェルムはいつものように真面目な表情を浮かべている。
魔竜の存在は、やはりとんでもなかった。
「次。俺とウェントスは同じで7千万だ。まあここら辺は普通だな」
「うん、そうだね」
納得の表情を浮かべる双子たち。
だが、普通の基準がおかしすぎるだろ……。
「つぎ、テラ兄」
「私なら100億兆万はいってるな! わははは!」
「単位がおかしいだろ。なんだよ億兆万ってよ。テラ兄は8千万だ」
「なんだ、そんなものか」
そんなものと言うが、人間の騎士が10だ。
つまり、単純に考えて800万人の騎士と同等ということになる。
この世に800万人も騎士はいない。
それどころか、全人類を合わせても、テラム一人に敵わないだろう。
「テラム、お前スゲーな」
「そうであろう! そうであろう! 私のことを尊敬しろ!」
「尊敬はしねーけどな」
「なんだと!」
尊敬はしないが、限界値は狂っている。
人間は絶対にテラムを怒らせてはいけない。
「マレ兄。9000万」
「そっか」
「上がってるじゃん。嬉しくねーの?」
「あんま興味ないしな。限界値が増えても刺激がないんだよ。全力を出す状況がない」
「まあ確かにな。限界値まで力を出したことがあるのは、月を壊したテラ兄だけだしな」
マレムは魔竜の中で長兄だ。
陽気で爽やかな青年風だが、全力を出したがっているなんてやっぱり魔竜だ。
「さてさて、残るは三柱だが。ここからはマジのマジのマジで化物だぞ」




