第79話 限界値の測定2
「きゃっ!」
レーシェの身体がビクンと動く。
威力が弱いとはいえ、突然雷が落ちればその反応になるだろう。
エルメスが両目を見開いていた。
「お、おいおい、レーシェ! その剣はなんだよ!」
「こ、これはグラキャス様にいただいた剣です」
「マジか! その剣やべーぞ!」
エルメスがすぐにグラキャスに身体を向けた。
グラキャスはベンチに座り、優雅にグラスを傾けワインを飲んでいる。
これほどワインが似合う女性もいないだろう。
「グラ姉やりすぎだっつーの!」
「なんじゃ? ワシに文句があるのか?」
「な、ないよ……。ないけど……これ……」
「レーシェは魔獣の姫じゃ。それなりの装備が必要じゃろうて。ワシの権能を与えた氷の剣じゃ。わはは」
「永遠の安息がついてんじゃん……。なんなんだよ、マジやべえよ……」
エルメスがブツブツと呟きながら、ジョッキにビールを注ぎ一気に飲み干した。
飲み方がいちいち豪快だ。
「レーシェの出力は150万だ。この中の魔獣では最高だな」
「すげえじゃねーか!」
俺は思わず声を上げた。
レーシェは魔獣最年長のレオールを超えている。
さすがは姫だ。
「確かにすげーよ。だけどな、その剣はもっとやばい」
「剣がヤバいってなんだよ?」
「グラ姉が権能を与えたから、剣にも限界値があるんだよ」
「な、なんだと!」
「聞いて驚くなよ。氷の剣は500万だ。レーシェと合わせると650万だぞ」
「は、はあ⁉︎ 剣がそんなにあんのかよ!」
「だからやべえって言っただろ。グラ姉やりすぎだ」
レーシェの限界値を聞き、フェルムが嬉しそうな表情を浮かべている。
ワインの小樽を持ち上げ、レーシェのグラスに注いだ。
「650万エルメスなんて、魔獣では過去最高値だね。レーシェ、本当に凄いよ」
「そうなのね。ありがとう、フェルム」
なぜか二人で乾杯している。
そして、魔獣たちがレーシェに跪いた。
こいつらは独自の世界に入り込みすぎだ。
その様子をエルメスが眺めている。
「なんだよ。フェルのやつ、やけに嬉しそうじゃねーか?」
「フェルムはレーシェと婚約しているからな。ははは」
マレムが笑いながら、エルメスの肩に左手を乗せた。
右手にビールの樽を持ち、エルメスのジョッキに注ぐ。
「マジかよ、マレ兄! フェル結婚すんの? しかも魔獣と⁉︎」
「そうだ。魔竜初の結婚だ」
「あいつ、真面目な顔してやることやってんな。信じらんねー」
驚愕の表情を浮かべながら、エルメスはフェルムを眺めている。
その隣ではウェントスが瞳を輝かせ、フェルムに羨望の眼差しを向けていた。
「いいなあ……」
ウェントスの呟きを聞いたマレムが、そっとウェントスの頭に手を乗せた。
「ん? ウェントス、お前結婚したいのか?」
「うん。僕もいつか結婚したいなあって……」
「お前ならいつかできるさ。俺の自慢の妹だからな。はっはっは」
「ありがとう、マレム兄ちゃん」
マレムがそのままウェントスの頭を軽く撫でる。
マジでいい兄貴だ。
「テラムとは大違いだな」
「貴様、喧嘩売っているのか?」
「売ってねーよ。事実を述べただけだ。お前、テネヴァスに好かれてんのか?」
「う、うう……、それを言うでない……」
テラムが涙目でブドウジュースに口をつけた。
テラムは酒に弱い。
酒を飲むとすぐに寝てしまう。
「んだよ。結婚なんてぜってーしねーっつーの」
苦虫を潰したような表情で、エルメスが骨付き肉を噛みちぎった。
それを豪快にビールで流し込みながら、シルヴァを指差す。
「じゃあ、次はあんただな」
「はい。よろしくお願いします、エルメス様。シルヴァと申します」
「シルヴァか。あんたは魔人か?」
「ええ、そうです」
「いや……しかし、あんたの魔力は凄いな。魔人の域を超えてるぞ?」
「そうなんですか? アレファスと一緒にいるからでしょうかね」
「それは関係ないな。シルヴァの元々の潜在能力だよ」
「まあ、ありがとうございます」
「正確に見てみるか」
シルヴァの身体を稲妻が包む。




