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魔神と呼ばれた元傭兵のトンデモ開拓スローライフ 〜裏切られて引退したおっさん。一人で生きると決めたのに、最強種族が集まってくる〜  作者: 犬斗
第三章

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第78話 限界値の測定1

 フェルムがバーベキューの準備を終えると、歓迎の宴会が始まった。

 野外のテーブルには大量の料理や酒が並ぶ。

 この地では以前から酒造も行っており、ビールとワインを生産している。


「ビールがうめーな!」

「このワイン、美味しいね」


 エルメスは口の周りに泡をつけ、ウェントスはワインをちびちび飲んでいた。

 二柱ともほのかに頬を赤らめている。

 ほろ酔いという感じだろう。


「おい、エルメス。私の肩にも雷を落とせ」

「いいぜ。極上のやつをやってやるよ、テラ兄」


 ビールを飲んでいたテラムの両肩に、二発の雷が落ちた。

 凄まじい轟音が轟く。


「ぐおおお! 効くぞ!」


 あんなものを喰らったら普通は死ぬと思うが、テラムは気持ちよさそうな表情を浮かべている。

 魔竜のコミュニケーションはどこかおかしい。


 エルメスは満足そうな表情でジョッキを掴み、ビールを飲み干した。


「ぷはっ! いい気分だ。ここは最高じゃねーか、テラ兄」

「うむ、そうだろう。アレファスが初めに開拓したんだ。セディルナ町と呼ぶ」

「自分の領地に町を作るなんて、テラ兄はすげーな」

「わははは! そうであろう!」


 妹に褒められて上機嫌のテラムは、エルメスのジョッキにビールを注いだ。

 エルメスはそのビールをすぐに飲み干し、俺に視線を向ける。


「アレファス、あんたは魔人じゃないようだが?」

「俺は魔王らしい」

「ま、魔王か。すげーな、初めて見たよ。となると、やっぱ気になるよな」

「気になる? 何がだよ」


 俺の問いかけを無視して、エルメスがアクアスを見つめた。


「アク姉、久々にあれやっていいか?」

「そうね、いいわよ。ついでにみんなも計測してみたら?」

「おっしゃ! やるぜ!」


 エルメスが袖をまくる仕草を見せた。

 やる気を出している素振りだと分かるが、そもそも半袖で袖なんかない。

 まあ、そんな無粋な突っ込みはしない。


「なあ、アクアス。あれってなんだ?」

「エルメスちゃんはね。雷の威力を調整できるんだけど、微細な雷を放つことで、相手の限界値を測ることができるのよ」

「限界値? なんだそれ?」

「簡単に言うと単純な強さね。数字で表すわ。エルメスちゃんだけの能力なのよ。だから、単位はエルメスというのよ」

「強さを測るだって! マジかよ!」


 強さを数字で表すなんて面白い。

 というか、そんなことができる魔竜はやはりおかしい。


「私たちも相手の力量は大体分かるけど、エルメスちゃんは正確に割り出すわ。凄いのよ」

「だはは! そんなに褒めんなよ!」


 エルメスが誇らしげな表情を浮かべながら周囲を見渡した。


「じゃあ、魔獣からやるか。おい、年齢順に並べ」


 エルメスの号令で、ファンシア、ルーファス、エレトゥス、レオールの順番で並んだ。

 魔獣たちの身体の周囲に、微細な稲妻が無数に走った。


「きゃっ!」

「どあっ!」

「ぐぐぐ」

「痺れますね」


 四柱の身体がビクッと反応していた。


「お、魔獣は年齢順か。まあ普通はそうだよな。よし、発表するぞ!」

「エルメスちゃん、ちょっと待ってね」


 アクアスがエルメスに向かって右手を挙げた。

 そして、俺に視線を向ける。


「アレファスちゃん。いきなり聞いても分からないだろうから基準を伝えるわね。人間の騎士クラスで大体10エルメスよ」

「騎士が10エルメスか。じゃあ魔獣は1000くらいあるのか」

「うふふ、お楽しみよ。じゃあ、エルメスちゃんよろしくね」


 エルメスが魔獣四柱の限界値を発表した。


 ◇◇◇


 ファンシア 40万He

 ルーファス 70万He

 エレトゥス 90万He

 レオール 100万He


 ◇◇◇


「おいおい! 魔獣ってそんなに凄いのかよ! 人間の数万倍以上じゃねーか!」


 俺は思わず声を上げてしまった。


「そうよ。だから人間が敵うわけないのよ。ね、レーシェちゃん」


 アクアスがレーシェに微笑みかけている。

 レーシェは以前、人間として魔竜領に侵攻し全滅した。

 もちろんレーシェに非は全くないが、魔獣よりも強いとされている魔竜に対し、人間どもはよく勝てると思ったものだ。


「はい。人間は愚かだと思います」


 レーシェはきっぱりと言い切った。

 魔獣となったことで、もう人間ではないと認めている証拠だ。


「あれ? その女、もしかして魔獣の姫か?」


 エルメスがレーシェに気づいた。


「そ、そうです。レーシェと申します」


 レーシェは人間から魔獣になったこと、魔獣の姫だったことなどをエルメスに説明した。


「へえ、アク姉の治癒の水(メディキナ・アクア)に反応したんだ。奇跡じゃん」

「あ、ありがとうございます」

「そんな怖がんなよ」


 その態度が怖がらせるだろうと思うが、突っ込みはしない。

 それに、子供に見えるが二十五億歳の魔竜だし、油断すると雷をぶっ放つ。

 もしかしたら、エルメスは魔竜で最も危険なやつかもしれない。


「じゃあ、レーシェを視るか」


 エルメスがそう言った直後、レーシェの周囲に細かい稲妻が走った。

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