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魔神と呼ばれた元傭兵のトンデモ開拓スローライフ 〜裏切られて引退したおっさん。一人で生きると決めたのに、最強種族が集まってくる〜  作者: 犬斗
第三章

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第77話 双子

「よう、ウェントスとエルメス。やっと着いたか。お前たちが近づいてる気配は感じてたんだよ」


 ちょうど通りかかったマレムが、男子たちに手を挙げた。

 爽やかなマレムらしい挨拶だ。


「あ、マレム兄ちゃん」

「マレ兄、マジで遠かったぜ」


 マレムが二柱の肩に手を置く。

 マレムのことを兄と呼ぶということは……。


「魔竜かよ!」


 一人はぶかぶかのオーバーオール姿で、顔を隠すように深い帽子を被っている。

 もう一人は黒いタイトなパンツに、襟とボタンがない紫の半袖シャツ姿だ。

 

「あらあら、二柱も来たのね」

「あ、アクアス姉ちゃん」

「うふふ、久しぶりね。ウェントスちゃん」

「わー、アクアス姉ちゃんだ」


 オーバーオールの男子が、アクアスに抱きついた。


「なんじゃ、お主たちも来たのか」

「ほ、本当にグラ姉がいる……。マジかよ……」

「なんじゃ、エルメス。久しぶりに会ったのじゃから嬉しそうにせい」

「そ、そりゃ嬉しいけど、信じられない気持ちのほうが勝つに決まってんだろ」


 そう言いながらも、紫色のシャツの男子がグラキャスに抱きついた。

 同じ魔竜とはいえ、グラキャスがここにいることは信じられないようだ。


 挨拶を終えたアクアスが、二柱の肩に手を乗せた。

 二柱の身長はアクアスの胸ほどだ。


「アレファスちゃん、紹介するわね。風竜ウェントスちゃんと雷竜エルメスちゃん。二人は双子よ」

「双子?」

「そうよ。悪戯な双子(ジェミディリス)よ」

「え? ま、待てよ。悪戯な双子(ジェミディリス)って女って聞いていたけど……」

「可愛い女の子でしょう?」

「え?」


 どう見ても男子だ。

 一人はちょっと暗そうで、もう一人はなかなか気が強そうな印象を受ける。

 俺が二柱を眺めていると、猛烈に嫌な予感がした。

 俺の直感が告げる。

 

 死ぬ――。


 すぐにその場を避けたら、空気を切り裂くような轟音とともに強烈な閃光が発生した。


「っぶね!」

「てめえ! 俺のこと男だと思っただろ!」


 紫シャツの魔竜が俺を睨んできた。

 アクアスがその魔竜の背後から、両肩に優しく手を置く。


「アレファスちゃん、気をつけてね。エルメスちゃんはすぐに雷を落とすわよ」

「ふ、ふざけんじゃねーよ! やめさせろ!」

「大丈夫よ。ちょっと痺れるくらいよ。マレムちゃんなんて率先して雷に当たるものね」


 マレムが笑顔で自分の肩を揉んでいた。


「そうさ、アレファス。肩凝りが治るんだよ。エルメスの雷は気持ちいいぞ?」

「アホか。死ぬわ。ってか、お前魔竜のくせに肩凝んのかよ……」

「あはは、俺ももう年だからな」


 マレムが華麗に魔竜ジョークを披露しながら、爽やかに笑っていた。

 この笑って受け流す能力は、テラムも見習ったほうがいいだろう。


 アクアスが笑顔のまま二柱の背中を軽く押す。


「ほら、二柱とも挨拶なさい」

「うん。僕はウェントス……。風竜だよ……」


 帽子を取ると、黄色い長髪が風に舞った。

 確かに可愛らしい女の子だ。

 しかし、ウェントスは目線を地面に向けたままで、こちらを見ない。

 相当な人見知りなのだろう。


「俺はエルメス。雷竜だ」


 一方のエルメスは俺を睨むように見つめていた。

 さっきの俺の態度を根に持っているようだ。


 紫色のショートヘアで女子と言われればそう見える。

 そして二柱はよく見ると同じ顔だ。

 確かに双子だが、服装が違うように性格も全く違う。


「で、お前たちは何しに来たのだ?」


 テラムが二柱に告げた。


「みんないるから……」

「別に来てもいいだろ! テラ兄、飯食わせろよ!」


 エルメスがテラムを指差した。


「仕方がない。おい、フェルム。バーベキューをやるぞ」

「はい、テラム兄様」


 さっそくフェルムがバーベキューの準備を始めた。

 倉庫から鉄板と網を運び、炭に火をつける。

 そして、シルヴァとレーシェが食材を用意していく。


「ウェントス姉様、エルメス姉様。食べたい物はありますか?」

「うん、フェルム。私、お肉が食べたい」

「相変わらずフェルムはくそ真面目だな。俺は魚が食べたい」


 見た目的にはフェルムのほうが遥かに年上だが、弟だということに驚く。


「アレファスちゃん、悪戯な双子(ジェミディリス)は二十五億歳よ。フェルムちゃんと五億歳しか離れてないのよ。うふふ」


 アクアスがテーブルに皿やグラスを並べながら笑っていた。


「五億歳しか?」


 魔竜の時間の感覚は狂っている。

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