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魔神と呼ばれた元傭兵のトンデモ開拓スローライフ 〜裏切られて引退したおっさん。一人で生きると決めたのに、最強種族が集まってくる〜  作者: 犬斗
第二章

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第50話 人知を超えた原始の遊び2

 レストランで夕食を終え、俺とシルヴァは自宅に戻った。


 現在、俺はシルヴァと同じ家に住んでいる。

 セディルナ村で、二人暮らしだ。


 レーシェは当初うちに滞在していたが、今は新しく建てた自宅で暮らしている。

 何不自由ないと満足そうだった。


「ねえ、アレファス。さっき夕食の時にテラム様が話していた、水弾の威力比べって何?」

「俺もよく分からんのだが、魔竜どもが勝手に盛り上がってだな――」


 シルヴァに事情を説明した。


「なるほどねえ。温泉の水弾から……。そういうことだったのね」

「バカらしいだろ? ったく、まいっちまうぜ」

「面白そうじゃない。ふふふ」

「え?」


 シルヴァが笑みを浮かべている。

 嫌がると思っていたから、この反応は意外だった。


 もしかして、長き年月を生きてきた者たちは、娯楽に飢えていたのかもしれない。

 今は温泉という楽しみはあるものの、それ以外は日々仕事をして、飯を食い、寝るくらいだ。

 シルヴァは空き時間に、レーシェが持ってきた本を読んでいるが、それくらいしかない。


「なるほどね。これも娯楽ってか……」

「何が?」

「いや……。全力で楽しもうじゃないか。はっはっは」


 今回は賞品がトリュフを最初に食べる権利だが、この目的よりも過程を楽しみたいのだろう。

 テラムだけはマジで最初にトリュフを食べたいようだが、あいつは空気が読めないことで定評がある。

 その分、真剣に取り組むだろうから、この勝負は楽しめるはずだ。


 ここで手を抜いたら、この勝負が一気につまらないものになってしまう。

 俺もやる気が出てきた。

 やると決めたからには徹底的にやる。


「ねえねえ、アレファス。勝負はいつなの? 山ってどこの山?」

「明日にでもアクアスから話があるだろうよ」


 シルヴァの表情が生き生きとしている。

 不覚にも、ちょっと可愛いと思ってしまった。

 これだけ喜んでくれるなら、今後も定期的にこういったイベントを開催してもいいかもしれない。


「ところで、この勝負って、能力を使ってもいいのかしら?」

「能力?」

「魔竜の権能や、私の魔法よ」

「特に何も言われてないからな。いいんじゃないか? むしろ普通にやって、山に穴なんて掘れんだろ」

「……あなたならできると思うけどね」


 シルヴァが呆れた表情を浮かべた。


「う、うるせーな!」

「で、何か具体的に考えているの?」

「いや、まだこれからさ。水弾なんて、ガキの頃に竹で遊んだくらいだしな」


 竹の筒の先に小さな穴を開けた状態で水を入れ、布を巻いた棒で押す。

 圧縮された水が勢いよく穴から飛び出すという仕組みだ。


「素材を考えないといけないわね」

「確かにな。相当な力で水を圧縮するから、竹じゃすぐに壊れるだろ。鉄で作るか?」

「そうね。本当はフェルム鋼で作りたいところだけど、フェルム様しか扱えないものね」


 フェルムはフェルム鋼を粘土細工のように加工する。

 本来、鉄というものは熱して叩きながら形を整えるのだが、フェルム鋼はその必要がない。

 というか、フェルム鋼の形を変えられるのはフェルムだけだ。

 あいつは間違いなくフェルム鋼を使うだろう。


「テラムはテネヴァスとのコンビだから、まあ自滅すんだろ」

「どうでしょうね。仲が悪くても、勝負事にはこだわる可能性が高いわ。意外とテネヴァス様はノリがいいもの」

「しかしなあ、あいつらの権能じゃ素材の加工は無理だろ?」

「そうだけど、想像を絶するお方たちよ?」

「確かにな。テラムなんて、月を壊すほどだし……。まあ考えても分からんか」

「私たちは私たち。気にせず頑張りましょう」

「頑張るって言ってもなあ。どうすんだよ。素材がないぞ?」

「そうねえ。水弾と言っても、容器を作らなきゃいけないわけでもないでしょうから、あなたの力でゴリ押ししちゃいましょう。ふふふ」

「ゴリ押し?」

「私の魔法と、あなたの剣でね」

「ああ、なるほどね。上手くいくか?」

「いくわよ。むしろ、被害が大きくなりそうだから、少し心配なくらいよ。ね、魔王様。ふふふ」


 悪戯な笑みを浮かべるシルヴァ。

 だが、その微笑みは美しく、俺はつい見惚れてしまった。


「どうしたの? 見惚れちゃった?」

「んなわけねーし」

「顔が赤いわよ?」

「よ、酔ったんだよ!」

「麦茶で? バカなの?」

「う、うるせーな!」

「汗が凄いわよ?」

「お、お前のせいだっつーの!」

「さっき温泉に入ったんでしょ? せっかく入ったのに汗だくじゃない。もう一回入ってくれば?」

「ったく、誰のせいだと思ってんだよ」


 俺は溜め息をつきながら席を立った。


「ふふふ、一緒に入る?」

「嫌だよ!」


 シルヴァにからかわれながらも、俺はもう一度温泉に向かった。


「待ってよ。一緒に入りましょうよ」

「女風呂に入ってろ!」

「別にいいじゃない。これまで何度も入ってるんだから」

「お前が勝手に入ってくんだろ!」


 シルヴァが俺に飛びつきながら、腕を組んできた。


「水弾でしょ? 実際に試して作戦会議をしましょ。ね?」

「ちっ」


 石畳の小道を歩く。

 夜空を見上げると、空に浮かぶは銀月の三日月。

 刃物のように鋭く美しい。

 この月を眺めながら入る露天風呂は、さぞ最高だろう。


「きょ、今日だけだぞ」

「あら珍しい」

「さ、作戦会議だからな」

「はいはい。行きましょ。うふふ」


 三日月が照らす薄明かりの中、俺たちは温泉に向かった。

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