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魔神と呼ばれた元傭兵のトンデモ開拓スローライフ 〜裏切られて引退したおっさん。一人で生きると決めたのに、最強種族が集まってくる〜  作者: 犬斗
第一章

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第30話 侵略の代償2

「レーシェ将軍は何をやっている!」


 本陣に轟くバシュデルの怒号。

 怒りのままに、机を蹴飛ばし椅子を破壊した。


「そ、それが、城門を塞がれて外に展開できない模様です」

「相手は魔竜ではないだろうが! たった一人の人間だぞ!」


 バシュデルに怯えた配下たちは、恐怖で何も言えない。


 そこへレーシェとセルバスが姿を見せた。


「バシュデル団長!」

「レーシェ将軍か! レーシェ隊が出なければ本隊は出せんぞ! 早く動け!」

「そのことでご相談がございます。城後方の壁を破壊して、後方から迂回して挟撃をお願いします」

「たった一人に城壁を破壊して挟み撃ちだと? まだ魔竜にも届いてないのだぞ!」


 破壊した椅子をさらに蹴り上げるバシュデル。

 だが、レーシェは冷静だ。


「一人とは言え、相手は元傭兵のアレファス・デモニウスです」

「アレファス・デモニウス? 引退した傭兵が何だっていうのだ! たった一人だぞ!」

「しかし、すでに隊には大きな損害が出ております! どうかご決断を!」

「貴様! 私に命令するか!」


 激昂したバシュデルが、思わずレーシェの頬を平手打ちした。


 唇が切れ、血を流すレーシェ。

 それでもレーシェは冷静にバシュデルの瞳を見つめる。


「団長! このままでは手遅れになります! 神の鉄杭(フェルディム)でも魔竜は墜ちてないのです!」

「くっ……」

「仮にアレファス・デモニウスを倒しても、まだ魔竜が控えているのです!」


 殴ってしまったことで、バシュデルの気持ちが落ち着く。


 バシュデルとしては、圧勝してこの土地を征服するつもりだった。

 そして、圧倒的武力と実績を背景に王国を築く。

 その武力が、他国の侵攻に対する抑止力になる。

 もし苦戦したことが知られれば、すぐに侵攻されてしまうだろう。


「思い出してください! あなたは『汚れなき鎧』だ!」


 レーシェの叫びに、バシュデルの動きが止まった。

 レーシェを睨みつけるバシュデル。

 しかし、その表情が次第に変わっていく。


「汚れなき鎧か……」


 大きく息を吸うバシュデル。


「背後に回っても、今度はアレファス・デモニウスと魔竜に挟まれるぞ。それに、女が二人いただろう?」

「悠長なことは言っていられません。このままでは、我が軍は壊滅します」

「……分かった」


 配下に壁の破壊を指示するバシュデル。

 さらに、後方に控えている本隊の騎兵五千騎を出し、そのうちの千騎でアレファスの背後から突撃させ、残り四千騎を魔竜の襲撃に備えるように指示。


 今でこそ私欲に塗れているが、歴代最強と呼ばれた騎士団長だ。

 二つ名の汚れなき鎧の意味は、高潔さを示す言葉だけではない。

 戦いにおいて、鎧を汚さないほどの強さを誇っていた。


 皮肉なことに、アレファスの強さを目の前にして、バシュデルは目が覚めたのかもしれない。


 バシュデルがセルバスに視線を向ける。


「セルバス傭兵団長、城の修復は任せたぞ」

「かしこまりました」

「お主はアレファス・デモニウスを使ったことがあるのだろう?」

「ございますが、傭兵だった一年前とは別人です。あれは……化け物です」

「そうか。ならば、お主もレーシェ将軍も出ろ。私も出る。このまま壊滅なぞしてみろ。陛下に説明がつかぬ」

「ハッ!」


 セルバスが出撃のために部屋を出た。


 バシュデルがレーシェを見つめる。


「レーシェ将軍。殴って……すまなかった」


 レーシェに対し頭を下げるバシュデル。


「とんでもないことでございます。また一緒に出撃できること、光栄に存じます。将軍閣下」

「……ありがとう」


 レーシェは一礼して退室した。

 そして、バシュデルは出撃準備を行う。


 ***


 アレファスが城に攻め入ったことで、シルヴァとアクアスは城門の正面で待機していた。


「アクアス様、どうやら背後を取られたようです」

「問題ないでしょう?」

「はい。元々、私たちが負ける要素は一つもありません」

「そうね」

「私たちの最大にして唯一のミスは、全員でセディルナ村を出たことです」

「彼らの最大のミスは、私たちを怒らせたことよね」


 アクアスは笑顔を見せているが、内心は人間を滅ぼそうと思ったほどの怒りを抱えていた。

 シルヴァはアクアスに向かって、華麗に一礼する。


「申し訳ありませんが、アクアス様は見ていてください」

「いいわよ。でも困ったら声をかけてね。すぐに消滅させるから」


 微笑みながら、恐ろしい言葉を発するアクアス。

 シルヴァは思わず苦笑いを浮かべた。


「お美しいお顔で……。本当に恐ろしいですわ。ふふ」

「なに言ってるのよ。もしこれがグラキャスちゃんなら、もう人類は滅んでいるわよ。うふふ」


 二人が話している背後に、五千騎が展開した。

 テラムが空中で引きつけている影響で、四千騎はテラムに対して布陣。

 残りの千騎が、城門に向かって突撃の姿勢を取る。


「千騎長! 門の前に女が二人います!」

「構わん。女ごと貫け」

「ハッ!」


 二百メルテの距離を開けたことで、列国最強と呼ばれるルジェール騎士団の爆炎突撃を繰り出すことができる。


「全軍突撃!」


 突撃を指揮する千騎長が、ランスを構え突進した。


「あらあ、来たわよ」

「はい」


 千騎の馬蹄が大地を轟かせ、大きな砂埃を上げる。

 千本のランスが二人を貫かんと、禍々しい風切音を出す。


「アクアス様、少し風が出ます。お気をつけください」

「分かったわ」


 シルヴァが杖をかざすと、千騎の背後で空気が揺らめいだ。

 その直後に、騎士を飲み込むほどの猛烈な空気の流れが発生。


「か、風が!」

「なんだこれは!」

「す、吸い込まれるぞ!」


 突撃していた騎馬の足が止まる。

 そして空気の流れに耐えきれず、後退していく。


「あれはなあに?」

「騎士の背後に強力な空気の渦を発生させました。吸い込まれるでしょう」


 シルヴァの言葉通り、騎兵は渦に吸い込まれていった。


「凄いわねえ」

「まだですわ、アクアス様」

「まだって、何が?」

「あの渦の中心で、炎を発生させたらどうなると思います?」

「あら、あなたは同時に二つの魔法を操れるの?」

「はい。伊達に三百年以上魔女をやってません」

「あらあら、魔女さんはえげつないわねえ。炎の竜巻を発生させるってことでしょう」

「焼かれたセディルナ村の仇ですわ」


 シルヴァはもう一度杖をかざした。


 直後に発生した巨大な炎の竜巻。

 無慈悲な破壊の竜巻は、絶叫と焦げ臭さを生む。


 四千騎が炎に包まれた。


 ◇◇◇


「あっつ!」


 アレファスの背後に、巨大な炎の竜巻が発生した。

 戦いながらも竜巻に視線を向けるアレファス。


「な、なんだ!?」


 シルヴァかアクアスの仕業だと思ったが、アクアスは炎を扱わないことを思い出したアレファス。


「シルヴァの魔法か。しかし、えげつないな」


 さすがに正面の騎士たちの動きも鈍ってきた。


 アレファスによって数千騎が斬られ、なおかつ炎の竜巻が発生し、挟み撃ちに回った騎士が焼かれた。

 さらに上空には、未だ魔竜の姿がある。


「止まるな! 戦うぞ!」


 凛々しい声が戦場に響く。

 止まりかけた騎士をかき分け、一人の女騎士が姿を見せた。


「アレファス・デモニウスか!」

「そうだが?」

「私はルジェール騎士団将軍、レーシェ・アスエルだ!」

「レーシェ……。何度か見た覚えがある顔だな」


 騎乗したレーシェが、アレファスの正面に立つ。


「傭兵で知られる貴公がなぜ魔竜領にいるのだ!」

「なぜと言われてもな。なりゆきだよ。そんなことよりも、お前らは俺の村を襲った」

「俺の村? やはりあの集落は貴公のものだったか」


 レーシェの隣に、もう一騎が現れた。


「レーシェ将軍、一騎じゃ無理だ! 同時に行くぞ!」

「セルバス傭兵団長!」


 姿を見せたのはセルバスだ。

 すでに剣を抜いている。


「ん? お前、セルバスか?」


 セルバスの姿を見て、アレファスが反応した。

 傭兵時代のアレファスは、セルバスの指揮で戦ったこともある。


「久しぶりだな、魔神アレファス。やはり魔竜領に住んでいたのはお前か」

「まあな。マジで快適だったぞ。お前らが来るまではな」

「怒るのも当然か。なあアレファス。今引くといえば、傭兵どもの命は保証してくれるか?」


 このままでは傭兵団は全滅する。

 名誉を重んじる騎士とは違い、傭兵は命が最も大切だ。

 命が助かるのであれば、命乞いでも何でもする。


「ダメだな。俺が許しても、魔竜が怒り狂っている。お前らはここで死ぬんだよ」

「くっ!」

「まあ、俺も許さんけどな」


 旧知の仲とはいえ、超えてはいけない一線を超えていた。

 許されるものではない。


「レーシェ将軍! 挟み込むぞ! こいつを一人だと思うな! 一騎当千の化け物だ!」


 セルバスとレーシェが左右に別れた。

 アレファスはセルバスを牽制しながらも、動きの速いレーシェに反応。


 だが、セルバスも百戦錬磨の傭兵だ。

 馬を巧みに操り、レーシェを囮にしてアレファスの背後を取った。


「卑怯だと思うなよ! アレファス!」


 アレファスの背後から、セルバスが剣を振り下ろす。

 このタイミングなら、いくら魔神でもかわせない。


「取ったぞ! 魔神!」

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