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魔神と呼ばれた元傭兵のトンデモ開拓スローライフ 〜裏切られて引退したおっさん。一人で生きると決めたのに、最強種族が集まってくる〜  作者: 犬斗
第一章

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第29話 侵略の代償1

 テラムが上空から城に近づくと、バリスタから大型の矢が発射された。

 さらにカタパルトから巨石が飛ぶ。

 しかし、テラムは投擲兵器の威力が落ち始める絶妙な位置で、大型の矢や巨石をかわす。

 離れすぎると攻撃が止むため、上手く引きつけている。


「くそっ! 魔竜のやつめ! もっと近づけ!」

神の鉄杭(フェルディム)が直撃さえすれば!」


 魔法部隊の声が聞こえたわけではないが、テラムは城壁の上に巨大な大砲を見つけた。

 何人もの人間がその大砲を囲んでおり、砲身は常にテラムを狙っている。


「グゴォォ」


 新しい兵器だと判断したテラムは、あえて発射させることにした。

 人間がどんな兵器を作ったのか興味がある。

 さらには見てるだけではつまらないという理由と、避ける自信もあった。

 興味本位で攻撃を受けようとするテラムを見たら、アレファスたちは呆れるだろう。


 ゆっくりと城に近づくテラム。


「目標接近だ! 神の鉄杭(フェルディム)用意!」

神の鉄杭(フェルディム)用意!」

「射て!」


 砲筒で魔石が大爆発を起こすと、鉄杭が超高速で発射された。


「グゴォ!」


 テラムの予想を超えた速度で飛来する神の鉄杭(フェルディム)


 両手で受け止めようとした瞬間、鉄杭の先端から無数の槍が発射。

 鉄杭の速度に、槍の発射速度が加重されたことで、槍は音速を超えてテラムに襲いかかる。


 さすがのテラムも、全ての槍を浴びてしまった。

 槍の先端は高品質な爆発の魔石だ。

 テラムの全身が大爆発に巻き込まれる。

 さらに、狙い通りに鉄杭も爆発内に突っ込んでいった。


 爆炎と黒煙に包まれるテラム。


「や、やったぞ!」

「魔竜を倒したぞ!」

「人類初の快挙だ!」

神の鉄杭(フェルディム)! 神の鉄杭(フェルディム)! 神の鉄杭(フェルディム)!」


 城壁で魔法部隊が歓声を上げた。

 レーシェも安堵の表情を浮かべる。

 広場にいる騎士や傭兵部隊からも大歓声が上がった。


 残るはアレファスと女二人。

 いくら魔神と呼ばれるアレファスとはいえ、二万人では相手にならない。

 完全に勝ち戦だ。


「よくやった。後はあの三人に攻撃せよ。私は広場に戻る」

「ハッ!」


 レーシェが城壁を下りると、次第に黒煙が晴れていく。

 浮かれていた魔法部隊は、気づいていなかった。


 テラムが墜落していないことに。


「ま、魔竜だっ!」

「なんだとっ!」

「直撃しただろうが!」


 上空にはテラムの姿があった。

 完全に無傷だ。

 さらに、右手に鉄杭を握っている。


「バ、バカなっ!」

「あれを掴んだのかっ!」

「ど、どうすんだよっ!」


 狼狽える魔法部隊に向かって、テラムは鉄杭を投げつけた。


 ◇◇◇


 アレファスが城へ歩き出した直後、テラムが上空で神の鉄杭(フェルディム)の直撃を受けた。


「テラム!」


 さすがに心配したアレファスだが、黒煙が晴れると空中にテラムの姿があった。

 全くの無傷だ。


「あいつ、本当に化け物なんだな……」


 その姿に呆れるアレファス。

 再度城に向かって歩き始めると、城門が開いた。


 一万を超える騎士が騎乗している。

 それに対し、アレファスは無造作にクレイモアを構えた。


「弓兵! 射て!」


 城内から号令が響くと、数千の矢がアレファスたちに向かって放たれた。

 しかし、矢がアレファスに届くことはない。

 シルヴァによって、弓よけの魔法がかけられているためだ。


 さらにシルヴァは、風魔法で強力な突風を発生させた。

 強風に煽られた矢は失速しながら反転し、弓兵に向かって降り注ぐ。


「愚行というものは、必ず自分に返ってくるのよ」


 大切にしていた本を焼かれたシルヴァの怒りで、数百人の弓兵が命を落とした。

 それでも歴戦の騎士たちは怯まない。


「構えよ!」


 初撃の突撃を任されていたレーシェ隊の千騎長が、ランスを空にかざした。

 本来はテラム撃墜後に突撃する予定だったが、戦場は刻々と状況が変化することを理解している。


「突撃!」


 千騎長の号令で、レーシェ隊の騎兵千騎がランスを構え、アレファスに襲いかかった。

 五メルテの長さを誇るルジェール騎士団のランス。

 その先端には、爆発の魔石が埋め込まれている。

 突撃と同時に、対象物を爆発させ破壊する爆炎突撃だ。


 アレファスは無造作にクレイモアを左上段から振り下ろした。


 クレイモアの剣身は百七十セルテと、アレファスの身長よりも短い。

 だが、グリップまで含めると二メルテを超える大剣だ。

 素振り用とは違い、当然ながら軽い。

 アレファスが剣を振ると、剣身は音速を超え衝撃波が発生。


 アレファスは初撃で、正面の十騎を斬り捨てた。

 さらに剣を振り下ろした勢いで、そのまま身体を捻りながら一回転させ、左から水平斬りを繰り出す。

 この一撃は強烈で、三十騎を沈めた。

 

 しかし、数で勝る騎士たちは怯まない。


「たった一人だ!」

「殺せ!」

「突撃しろ!」


 波のように押し寄せる騎兵。

 だが、アレファスは容易に斬り捨てる。

 騎兵が密集すればするほど、一撃で葬る数が増えていく。

 アレファスにとって、密集した突撃は好都合だった。


 たった四振りで百騎以上を斬り捨てたアレファスは、僅かに怯んだ騎兵に向かって走った。

 一振りで数十騎を斬り捨てていく。


 アレファスが剣を振るたびに血飛沫が上がり、赤い霧が発生。

 戦場に血生臭さが広がる。


 血が血を求め、騎士たちは血に酔い、狂気に駆られていく。


 ◇◇◇


 アレファスの後方で、突進を見つめる二人の女。


「アレファスちゃんって、やっぱり凄いのねえ」

「強いとは思っていましたけど、信じられません……」


 手を叩いて感心するアクアスとは対照的に、シルヴァは冷たい汗をかいていた。


「上空にいるテラムちゃんも、呆れているみたいね。うふふ」


 アクアスの言葉で上空に視線を向けるシルヴァ。


「本当ですね」


 テラムは自分の仕事は終わったとばかりに、上空でアレファスの動きを眺めていた。


「このまま一人で制圧しちゃいそうね」

「まさか……。二万近い軍勢ですよ?」

「もしかしたら、彼ってもう……、魔人じゃ収まらないのかもしれないわね……」

「え?」


 アクアスはそれ以降言葉を発さず、アレファスの戦いを真剣に見つめていた。


 ***


 城内は混乱を極めた。


 元々の作戦は、テラムを地上に撃ち落とし、騎兵で突撃して仕留めるというものだった。

 しかし、テラムは神の鉄杭(フェルディム)を食らってなお、上空で待機している。

 さらに、城門をアレファスに塞がれた状況だ。


 そのため、二万の兵は城内から出ることができない。

 突撃騎兵は一定の距離があって、初めてその威力を発揮する。

 アレファスの出現で、ルジェール騎士団の代名詞でもある爆炎突撃は封じられていた。


 当初の予定では、レーシェ隊の五千騎がテラムに突撃する予定だった。

 だが、それは叶わず、アレファスと戦って数を減らしている。


 レーシェ隊の後方に移動したレーシェは、戦況を見つめることしかできない。

 指揮どころではない混戦だ。

 それも相手はたった一人。


「レーシェ将軍! 城門を塞がれた状態では突撃できません!」

「こうも密集しては、騎兵は身動きが取れぬか」


 隊の先頭にいた騎士たちは、すでにランスを捨て抜剣している。

 突撃しないランスなど、ただの棒だ。


 レーシェは城壁に視線を向けた。


「それより対空兵器部隊は何をしている! 射撃を止めるな!」


 レーシェの指示が届くことはなかった。

 テラムが投げ返した鉄槌によって、バリスタとカタパルトは崩壊していたからだ。


「レーシェ将軍! アレファスだ! あれはアレファスだ!」


 傭兵団長のセルバスが、レーシェの元を訪れた。


「ああ、私も先ほど顔を確認した」

「一年前とは別人だぞ! 以前も確かに異常な強さだったが、あれはもう人間を超えている!」

「たった一人に二万の軍勢が……」


 レーシェは軍陣の後方へ身体を向けた。


「レーシェ将軍、どこへ行く?」

「団長の元へ行く。このままでは歴史上類を見ない大敗を喫することになる」

「私も行こう」


 二人は本陣へ向かった。

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