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魔神と呼ばれた元傭兵のトンデモ開拓スローライフ 〜裏切られて引退したおっさん。一人で生きると決めたのに、最強種族が集まってくる〜  作者: 犬斗
第一章

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第28話 欲望の侵攻4

 俺たちは侵略者を排除するため、全員で現地へ向かっている。

 俺とシルヴァとアクアスは、魔竜の姿で飛行するテラムの掌の上に立っているが、風の影響を受けていない。

 シルヴァの魔法のおかげだ。


 シルヴァは落ち着いていた。

 その内心は怒りと悲しみで満ち溢れているだろうに、他人に見せないところはさすがとしか言いようがない。


 しばらく飛行すると、草原に建造物が見えた。


「なんだあれは?」

「急造の城のようね。騎士? あの紋章は……」


 シルヴァは魔法で視界を拡大しているのだろう。


「ルジェール王国、ルジェール騎士団の紋章ね」

「ちっ、魔竜領の隣国か」

「ルジェール王国は前王の頃まで、魔竜領にたびたび侵攻していたけど、現国王が即位してからはやめていたはずよ」

「攻め落とす根拠と自信ができたのだろう。騎士団長のバシュデル・ブライシオは、歴代最強騎士と呼ばれていたはずだ」


 いくら最強の騎士とはいえ、負けるつもりはない。

 愚かな人間どもに教えてやる。


「魔竜領に手を出すとどうなるかをな」


 俺は城を見つめた。


 ◇◇◇


「魔竜だ!」

「魔竜が来たぞ!」


 城の見張り台からラッパの音が鳴り響くと、騎士たちは城壁上に設置したバリスタやカタパルトの準備を始めた。


「対空兵器部隊! 迎え撃つぞ!」

「魔法部隊! 神の鉄杭(フェルディム)を準備せよ!」


 慌ただしく動く騎士たち。

 それでも、精鋭たちの統率は取れていた。


 ***


 団長室を訪れるレーシェ。


「バシュデル団長、魔竜の襲撃です。予想通り空から来ました」

「ようやく来たか。神の鉄杭(フェルディム)で撃ち落とせ。奴を地上に落としたら一斉攻撃だ」

「ハッ!」

「この作戦が成功したら……。くくく」

「団長?」

「次期団長は、貴殿を推薦しようではないか。わははは」


 バシュデルは戦う前から、戦後のことを考えていた。

 魔竜を討ち取り、この地の領主になることを想像してほくそ笑む。


「ありがとうございます」

 

 レーシェは自分の表情を見せないように深く頭を下げ、すぐに退室した。


「団長も『汚れなき鎧』と呼ばれ、昔は高潔な騎士だったはずだ。権力は人を狂わせるということか……」


 続いてレーシェは、傭兵団の元へ向かった。

 傭兵団は城外で野営していたが、魔竜の出現によって城内の広場に入り、門を閉ざしている。


 セルバス傭兵団長のテントに入るレーシェ。


「セルバス殿、魔竜の襲撃だ」

「聞いておるよ。傭兵たちの任務は、城の守備と修復だ。攻撃は任せたぞ」

「もちろんだ。まずは魔竜を撃ち落とす。地上に落ちたら総攻撃する」


 間もなく魔竜は射程距離に入る。

 魔竜撃墜後、レーシェ隊が突撃を行う。


「では、行ってくる。」


 レーシェはテントを出ようと、身体を出口に向けた。


「レーシェ将軍。待ってくれ」


 セルバスがレーシェを呼び止める。


「どうした?」

「出撃前にすまない。あの集落のことなのだが……」

「集落? 確かに不審ではあるな。魔竜領に人が住める方法があれば、ご教示いただきたいものだ」

「その人物に心当たりがあるのだ」

「なに? どういうことだ?」


 セルバスの表情は神妙で、額から汗が滲み出ていた。


「あの集落に一本のクレイモアがあったのだが、尋常ではない重さだったのだ」

「重いクレイモア?」

「ああ。刃がなかったから、恐らく素振り用だろう」

「それがどうかしたのか?」

「人が持てないほどのクレイモアで素振りをする傭兵がいたのだ。その傭兵は一年前に引退して姿を消した」

「一年前に引退した傭兵……。ま、まさか?」

「あの集落のログハウスは築一年ほどだ。もしかしたら、引退してこの地で生活していたのかもしれん」

「そ、それは魔神のことか!」


 思わず身を乗り出して声を荒げるレーシェ。

 傭兵時代のアレファスは、魔神の二つ名で呼ばれていた。

 本人は恥ずかしいと快く思っていなかったが、その圧倒的な力で二つ名は浸透していった。


「お主、アレファスのことを知っているのか?」

「知っているもなにも、我が隊は何度も世話になった」

「そうか、貴殿の駐屯地はグラゴースだったな……。もしかしたら、相手は魔竜だけではないかもしれん」

「アレファス・デモニウスが、魔竜と一緒にいるというのか?」

「その可能性はある。あの男には、妙に人を惹きつける魅力があったからな。魔竜は人ではないが、コミュニケーションを取った可能性はあるだろう」

「そうだな……」


 レーシェもその魅力は知っている。

 アレファスのことを心から尊敬していたからだ。


 もし本当にアレファスと魔竜が繋がってるのであれば、話を聞きたいと思うレーシェだった。

 だが、それは無理な話だ。

 あの集落を破壊して、許されるわけがない。


「いずれにしても、我々の邪魔をするのであれば撃破するだけだ」


 レーシェは覚悟を決めてテントを出た。


 ***


 城壁の上で魔竜の動向を見守るレーシェ。

 魔竜が射程距離に入れば、バリスタやカタパルトを受け持つ対空兵器部隊が一斉攻撃する。


 そして、魔法部隊が神の鉄杭(フェルディム)を発射させる。

 これは魔石を組み込んだ魔竜用の最新兵器だ。


 まずは、巨大な大砲から大型の鉄杭を発射する。

 この鉄杭の先端には無数の槍が収納されており、空中で槍を発射するという二段階の投擲兵器だ。

 鉄杭の速度に槍の発射速度が加重されることで、音速を超えて魔竜に向かって放たれる。

 さらに槍の先端は、最上級の魔石を削り出したもので、強力な爆発の刻印が施され、大量の魔力が注がれている。

 槍の大爆発に巻き込まれた魔竜に、鉄杭がとどめを刺す。


 いくら魔竜と言えども、耐えられるものではない。


「目標接近! 神の鉄杭(フェルディム)用意!」


 魔法部隊に緊張が走る。

 しかし、魔竜は射程に入る前に、突然地上へ降下してしまった。


「レ、レーシェ将軍! 魔竜が地上に下りました」


 部下の報告がなくとも見えている。

 レーシェが単眼鏡を覗くと、魔竜は三人の人間と話しているように見えた。

 女二人と男一人だ。


 男の顔は見覚えがある。


「あれは! 魔神アレファス!」


 レーシャは思わず叫んだ。

 すぐに城壁を下り、広場の部隊へ戻った。


 ◇◇◇


 テラムは城から離れた位置で、地上に下り立つ。

 ここで一旦アレファスたちを下ろした。


「テラム、俺は地上から城に入る」

「グゴォォ」

「空中で対空兵器を引きつけてくれ。その間に俺が城を落とす。

「グゴゴ! グゴゴ!」


 魔竜の姿のままテラムが反論した。


「お前は俺たちの将軍だ。最後列で威厳を見せていてくれよ」

「グガ! グゴゴゴゴ!」


 アレファスの言葉に気をよくしたテラムは、空中へ羽ばたいていった。


「アレファス、弓よけの魔法をかけるわね」

「助かるよ、シルヴァ」

「あなた、城に入るって言ってたけど、作戦はあるの?」

「作戦なんていらんよ。騎士の突撃なんて大したことないしな」

「大したことないって……。ルジェール騎士団の爆炎突撃は最強という話でしょう?」

「俺には通じん」


 城を睨みつけるアレファス。

 そのアレファスの肩に、アクアスが手を置いた。


「ねえ、アレファスちゃん。私なら、あの城をこのまま沈めることができるわよ?」

「いや、それだと簡単に全滅してしまう。アクアスは手を出さないでくれ」

「あらあら、私は見てるだけなの?」

「今回は恐怖を残す必要があるからな。あえて何人か生かす」

「なるほどねえ。その者たちが、ここでの恐怖体験を伝達してくれるというわけね」

「そういうことだ。アクアスの存在は、あまりに理不尽だからな」

「酷い言いようねえ」


 それでもアクアスは笑顔を浮かべる。

 実は、アレファスの実力を見られることが楽しみでもあった。


「二人ともここで見ていろ。すぐ終わらせてくる」

「待って、アレファス」


 シルヴァがアレファスを呼び止めた。


「もし敵が背後から来たら、私が手を下すわよ?」

「背後から? 来るわけないだろ?」

「私の予想よ」

「分かった。背後は任せる」

「ありがとう。じゃあ、いってらっしゃい」


 シルヴァとアクアスを残して、アレファスは城に向かって歩き始めた。

 右手には特大のクレイモアが握られている。

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