表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔神と呼ばれた元傭兵のトンデモ開拓スローライフ 〜裏切られて引退したおっさん。一人で生きると決めたのに、最強種族が集まってくる〜  作者: 犬斗
第一章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

18/39

第18話 原初の力

 テラムは東に向かって飛行中だ。

 丸一日以上飛び続け、二回目の夜が間もなく明ける。


 俺は立ち上がり、窓の外を眺めた。


「そろそろ夜明けだな」


 東の空が濃紫色から徐々に赤みを帯びてきた。

 上空から見下ろす草原は、赤紫色に染まっている。


 隣に視線を向けると、アクアスも窓の外を眺めていた。


「久しぶりの草原もいいわね。美しいわ。うふふ」

「アクアスはずっとあの湖にいたのか?」

「基本的にはそうよ。少し別の場所へ行くこともあるけど、湖にいるわ」

「そうか。じゃあ、今回は旅行だな。楽しんでくれ。たくさんご馳走するよ。ははは」

「あらあ、楽しみねえ。嬉しいわあ。うふふ」


 アクアスの笑顔は、とても嬉しそうだった。


 ***


 太陽が頭上に昇った頃、俺たちの集落が見えてきた。


「お、そろそろ到着するぞ」

「あれが畑ね。へえ、思ったよりもしっかりしてるじゃない」

「そうか? 小さいぞ?」

「大きさはね。でも、質がいいのよ。さすがはテラムちゃんの土地ね」


 アクアスは鑑定眼とでも言うべきか、全てを見通すような眼力を持っている。

 さすがは古の魔竜だ。


 テラムがゆっくりと下降を始め、着地した。

 集落に到着した俺たちが小屋を出ると、魔人化したテラムが姿を見せる。


「姉上、ここが私たちの集落だ」

「いい土地なんだけど、この三軒の家はアンバランスよねえ。特にこのツリーハウスが景観を損ねているわ」

「うっ……。か、かっこいいと思うのだが……」

「やっぱりテラムちゃんの家ね。そうだと思ったわ。うふふ」


 アクアスが笑いながら集落を見渡す。

 そして、地面に視線を向けた。

 地面というよりも、さらにその奥の地中を見つめているような印象だ。


「ここには豊富な水源があるわね。アレファスちゃん、いい場所を選んだじゃない」

「偶然なんだよ。土地を探しながら、ここで試しに井戸を掘ったら水が出たんだ。だからここに住むと決めたのさ」

「そうね。水は大切だもの。いい判断よ」


 アクアスが庭のベンチに腰掛けた。


「この集落内に、池を作るのね?」

「ああ、大角水牛の住処になる程度の広さで掘る予定だ」

「大角水牛は何頭の予定?」

「一頭だ」

「あら、一頭で足りるのかしら?」

「ああ、三人だからな。多く作っても食べきれない」

「でも、バターとチーズを作るんでしょう? それに、この畑だってもっと拡張するのでしょう?」

「そりゃ野菜の種類を増やすには、畑を大きくしないといけないからな。だけど、池はそれほど大きくする必要はない。掘るのだって時間がかかるしな」

「なるほどねえ……」


 アクアスがシルヴァに視線を向けた。


「シルヴァちゃん、悪いんだけど紙とペンを持ってきてもらえるかしら?」

「はい、かしこまりました」


 シルヴァが自宅へ向かい、紙とペンを持って戻ってきた。


 アクアスがペンを手に取り、テーブルに広げた紙になにやら描き始めた。

 どうやら、この集落の平面図を描いているようだ。


「アレファスちゃん、池はどの辺に作る予定なの?」

「畑の隣かな」


 俺はアクアスの正面に座り、平面図を指差した。

 俺の隣にシルヴァが座る。


「アレファスちゃん。その場所だと、今後畑の拡張をする時に邪魔になっちゃうわよ? こっちの方がいいと思うわ」


 アクアスが別の場所に円を描いて囲んだ。

 テラムはアクアスの隣に座り、平面図を覗き込んでいる。


「姉上が言うなら、その通りにしたほうがいいだろう」

「そうだな。アクアスが勧める場所に池を掘るよ」


 アクアスはさらに、平面図に図形や線を描き始めた。


「それじゃあ、ここに池を作るわね。そして、川も作りましょう。池と川は水路で繋ぐわ。あと、少し離れた場所に湖も作るわね」

「なに!?」

「畑を大きくするなら、川は必要よ。そしたら湖も必要でしょう?」

「ま、待て! そんな治水工事のようなことはできん! 俺とテラムで掘るんだぞ! 何十年かかると思ってるんだ!」


 永遠の時間を生きている魔竜だ。

 時間の感覚が狂ってる。

 十年なんか瞬きよりも短いと思っているのだろう。


「掘る? どうして?」

「どうしてって、水を溜めるためには掘らなきゃならんだろ?」

「そうね」

「池を掘るだけでも時間がかかるんだぞ。そもそも、人間に川と湖なんて作れるわけないだろ」

「あなたは魔人でしょ」

「揚げ足を取るんじゃない!」

「うふふ、アレファスちゃんは面白いわねえ」


 アクアスは笑いながら、平面図を指差した。


「これ全部、私が作るから大丈夫よ」

「は? 作るって……。どうやって? 池なら俺でも掘れるけど、川と湖だぞ?」

「問題ないわよ?」

「いやいや、湖ってそんなに簡単――」

「湖があれば、淡水魚が獲れるわよ?」


 アクアスが俺の言葉に被せてきた。


「ねえ、みんな。お魚も食べたくない?」


 アクアスが全員を見渡した。


 そう言われれば、この地に来て魚は食べていない。

 肉と野菜だけだった。


「魚か……。確かに食べたいが……」

「お魚も食べなきゃダメよ、アレファスちゃん。骨を丈夫にするんだから」


 言っていることは正しいのだが、永遠の時を生きている魔竜が身体に気を使うのだろうか?

 シルヴァとテラムは、アクアスの言葉に勢いよく頷いている。


「アレファス。私、お魚食べたいわ」

「うむ、私も食いたいぞ」


 二人が同時に俺を見つめた。

 すると、アクアスが手を一回叩き、俺に笑顔を向ける。


「うふふ、アレファスちゃん。多数決で決定よ」

「いやいや、いくらなんでも湖だぞ? そんな簡単に作れるものじゃないだろ?」

「大丈夫よ。すぐ作るわね。うふふ」


 湖って、すぐできるものなのだろうか?


「水深は……そうねえ。三千メルテってところかしら」

「さ、三千メルテ!?」


 思わず声を張り上げてしまった。


「あらあ、足りないかしら? じゃあ、五千メルテでいい?」

「深すぎるっつーの!」


 五千メルテなんて、それはもう深海だ。

 こんな陸地に、深海レベルの湖なんていらない。


 アクアスの落ち着きぶりから常識人かと思っていたが、やはり魔竜だ。

 ぶっ飛んでいる。


「じゃあ、作っちゃうわね」

「ま、待ってくれ! 本当に作れるのか?」

「ふふ、私は水竜アクアスよ。原初の三女(トレデプリアス)だもの。これくらい簡単よ」

原初の三女(トレデプリアス)?」


 俺の疑問にシルヴァが反応した。


「アレファス。アクアス様は始原の十三竜(トレディキス)の三女なのよ。つまり、この世界に誕生した最初の三柱なの。この御三方は本当に特別で、原初の三女(トレデプリアス)と呼ばれているの」

「あらあ、さすがシルヴァちゃんは博学ね」


 アクアスが感心しながら、笑みを浮かべている。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ