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魔神と呼ばれた元傭兵のトンデモ開拓スローライフ 〜裏切られて引退したおっさん。一人で生きると決めたのに、最強種族が集まってくる〜  作者: 犬斗
第一章

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第15話 姉の存在

 集落に戻ると、シルヴァがレストランのキッチンで料理を開始した。


 俺は解体した肉の大半を冷凍室へ保管して、残りを塩漬けにしていく。

 塩漬けにした肉は燻製にするつもりだ。

 そのために燻製室も作った。


 今日の狩りで、一ヶ月分の肉を確保できただろう。

 テラムが想定以上に食わなければだが……。


「テラム様、テーブルに鍋を置きます。熱いのでお気をつけください」

「む、夕食は黒牙猪のシチューか。実に旨そうだな」

「はい。アレファスが作った小麦、ジャガイモ、ニンジン、タマネギを使用しています」


 シルヴァがテーブルに鍋を置いた。

 鉄製の鍋敷きには保温の魔石が埋め込まれているため、いつまでも温かく食べることができる。


 シルヴァが皿に盛ると、テラムは大盛りを要求していた。

 テラムは満面の笑みで、シチューを頬張る。


「うむ、旨いぞ!」

「ありがとうございます。ふふ」


 俺もシチューを口に運ぶ。

 黒牙猪の肉に臭みは一切ない。

 脂肪の少ない赤身肉だが驚くほど柔らかく、噛めば噛むほど濃厚な旨味を感じる。


 煮込んだ野菜は口に入れると溶けていき、甘さが広がっていく。

 そしてシチューの風味とコクが舌に残る。

 このコクはバターだろう。


「なあ、シルヴァ。バターがもうそろそろ終わるんじゃないか?」

「今日のシチューで使い切ったわよ」

「そうか。じゃあ、街へ買い出しに行かないとな」


 一年前にこの地へ来た時は、バターやコーヒー豆など自分で作ることができない食材を大量に購入していた。

 さらに半年前も、一度だけ街へ買い出しに行っている。


「ねえ、アレファス。どうせならバターも作ってみない? ここで家畜を飼育してもいいでしょう?」

「家畜の飼育? そういえば、考えたこともなかったな」

「大角水牛のミルクなら、バターだけではなくてチーズも作れるもの。それと、長毛鶏も飼いましょう。長毛鶏は一日一個の無精卵を生むわよ」

「家畜か……。ふむ……」


 今までは自分の分の食材を用意するだけでよかったし、作ることができないものは街へ買い出しに行っていた。

 だが、人数も増えたことだし、家畜がいてもいいかもしれない。


「となると、街で家畜を買わなきゃならんな。大角水牛は一頭でいいとして、長毛鶏は十羽ほどいるだろ? いくらになるんだ?」

「長毛鶏は一羽二千ルフくらいだと思うわ。意外と安いのよ。ただ、大角水牛は高いわね。恐らく一頭三十万ルフはするでしょう」

「三十万ルフか。ないことはないが、かなりの大金だな。それに大角水牛を飼育するなら池が必要だ。ここに井戸はあるが、池になるほど水が湧くのかどうか……」


 シルヴァと話していると、テラムがスプーンを運ぶ手を止めた。


「私の土地に、野生の大角水牛と長毛鶏はいるぞ。捕獲すればよい」

「野生がいるのか?」

「ああ、生息している」

「じゃあ、捕まえればいいか。だが池はどうする。穴を掘って、そこに井戸の水を移すのか?」


 俺とテラムなら池の広さの穴を掘ることは可能だが、水はどうしようもない。


「池に関しては、お願いすれば作ってもらえるかもしれんぞ」


 水について悩んでいると、テラムがグラスの水を飲み干した。

 その目線は鍋のシチューに向いている。


「おい、テラム。池を作るお願いってなんだ? 業者に依頼するのか?」

「姉上にお願いするのだ」

「アネウエ? 変な会社名だな」

「姉上は姉上だろう?」


 突然シルヴァが立ち上がった。

 珍しく目を見開いている。


「まさか! 始原の十三竜(トレディキス)ですか!?」

「うむ、そうだ」


 驚愕の表情を浮かべるシルヴァ。

 だが、俺には意味が分からない。


「なあ、シルヴァ。その、トレディキスってなんだ?」

始原の十三竜(トレディキス)は――」


 シルヴァは立ったまま俺に視線を向けている。

 いや、立ち上がったことすら気づいていないようだ。

 額から汗が滴り落ちていた。


 ようやく自分が立ち上がったことに気づき、静かに腰を下ろす。


「先日テラム様から、この世には十三柱の魔竜がいると聞いたでしょう? その十三柱のことを始原の十三竜(トレディキス)と呼ぶのよ」

「魔竜のことなのか。で、それとアネウエに何が関係あるんだ?」

始原の十三竜(トレディキス)は姉弟と言われているの」

「姉弟? 姉弟……。アネウエ。姉上……。ま、まさか!」

「そのまさかよ」


 俺はすぐテラムに顔を向けた。


「十三柱の魔竜は兄弟だったのか!」

「そうだ。私の上に五柱の姉と兄がおる。もちろん、妹や弟もおるがの」

「なに! ということは、テラムが六番目? 二十八億年も生きていて?」

「ああ、そうだぞ」


 地竜たるテラムに兄弟がいるとは想像もしていなかった。


 テラムは鍋から勝手にシチューをよそっている。

 二杯目のシチューに手をつけ始めた。


「アレファス。貴様はアクアス湖を知っておるか?」

「アクアス湖? 確か世界一の湖だと聞いたことがある。嘘か本当か知らんが、最も広くて、深い湖なんだろ?」

「それは本当のことだ。そして、そこに魔竜がおる。水竜アクアス。我が姉だ」

「なんだって!」

「あの姉上であれば、この地に池を作ってくれるだろう」


 テラムはこの地に影響を与える魔竜で、正式には地竜テラムと呼ぶ。

 そして、この地はテラム平原だ。

 テラムの誕生とともに生まれた平原だという。


 ということは、水竜アクアスもアクアス湖とともに誕生したのだろうか。

 魔竜は謎すぎてよく分からない。


 テラムは満足そうに二杯目のシチューも食べきった。

 レードルを手に取り、三杯目をよそおうとしている。


「アレファス、近日中にアクアス湖へ行こう。姉上に池を作ってもらうように頼む。そして、大角水牛と長毛鶏を捕獲する」

「なんでお前がそんなに一生懸命なんだよ?」

「バターがもうないのだろう?」


 こいつ、シチューにはバターが重要だと気づいたようだ。


「チーズも食べたいしな」

「はあ、分かったよ……」


 テラムが来てからまだ一週間も経ってないというのに、この地がどんどんと開拓されていくような気がする。

 だが、ここはテラムの土地だし文句は言えない。


 それに、この地でバターやチーズを生産できるのであれば、いよいよ街へ行かなくても済む。

 人間嫌いの俺には好都合だ。


「なあ、テラム。水竜アクアスは野菜を食べるのか?」

「野菜? なぜだ?」

「お願いに行くんだ。手ぶらってわけにもいかんだろう。テラムも喜んでくれた野菜を手土産として持って行く」

「姉上……野菜を食べるのだろうか……」


 俺たちの会話を聞いていたシルヴァが笑っていた。

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