初日からエルフの作法を学ぶ
よろしくお願いします
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ああ······、うん······?
私は少しだけ、気を遠くしていたようだな
鼻腔を花の蜜ような甘たるい香りがくすぐった
気がつくと体にまとわりついた蔦は消えていて
ホワイトエルフの少女に背負われていた
「歓迎するよ、ここが妖精の森の唯一の入り口になる。人間達はこの辺りを幽明の境となど呼んでいるらしいが、ただの我々の棲みかだよ」
いくつの部屋があるのだろう
森の中に存在するには、いささか大きく真っ白な屋敷がそこにはあった
私は彼女の背から降ろして貰った
少しフラフラする
「大きい建物ですね」
「おかしな連中を相手にするには、こういった物も必要になってくる」
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私が案内されたのはやたらに豪奢な広い一室だった
置かれている調度品はどれもが、エルフ風ではなかった。奥の方には天蓋つきのベッドまである
私には金をかけすぎた子供部屋に見えた
「飲み物を運ばせよう」
ホワイトエルフの代表者がそれだけ言うと
すぐに、エプロンを着けたエルフ娘がワゴンを押してやって来た
流麗といって良い動作で紅茶と笊に乗ったにんじんがテーブルに配膳された
瑞々しい葉の付いたにんじんは、私が知るものよりも小ぶりで細く表面がでこぼこしていた
とても新鮮そうだった
······にんじん?
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紅茶の香りが部屋の中を包みました
にんじんは嫌いではない、だから大丈夫
気を取り直して聞きました
「ええと、これは?」
「遠慮はいらないよ、君らの最大の嗜好品であるにんじんだ。今朝、思い立ってね掘りに行ったのだ、存分に楽しんでくれ」
生まれて初めて見る生にんじんは、葉っぱも皮もそのままだった
とても自然体でした。せっかく、手ずから掘りに行ってくれたようですが
これをどうしろと?
「そういうことでなくて······、初めて見る野菜なんですけど」
私はいつも、そういうことにしているから今日もそうした
「そうか、今は食べられていないのか。悪かったね、食べ方の作法を教えよう」
著名者さんは、にんじんの葉っぱの方をつかむと
尻尾から食べ始めました
解りやすい作法でしたが、これは断りにくくなってきました
まー、食べられ無いことは無いだろと
私も尻尾のの先からかじりました
コリコリと口の中に硬質な音が広がります
思ったより食べやすく、甘みもありました
「この部屋にある物は、自由に使ってくれ。欲しい物があれば、そこの呼び鈴を鳴らしてくれ、いつでも誰か控えている」
至れり尽くせりだが、一日中見張られたりするのだろうか
にんじんは葉っぱまで食べるのが作法でした
ここまで読んでくれてありがとう




