第二話 異世界ドラゴン現る
「証拠なら、一応あります。見ててください」
そう言うと、人差し指で円を描いた。
ホワーン。彼の足元から、赤と緑の魔法陣らしきものが浮かびだした。その瞬間、彼の目の色が変わり、胸が押しつぶされそうな重みを感じた。彼はトビトカゲ、ワニ、人間を混ぜたような人型ドラゴンになっていた。
「……」
散々見てきた光景だ。なのに、一瞬呼吸すら忘れていた。
「ぷはっ! ははははは!! やはりな! ミニざまぁ展開最高!」
俺は心から溢れてくる気持ちを抑えきれず、立ち上がってしまった。普段なら注意してくる先生だが、今は怒られなかった。
「風崎の言ってたことがいきなり現実味を帯びたぞ……」
「うそでしょ……ドラゴン? 存在するなんて」
「名前とか……聞いてもいいか? 異世界的な名前なのか……?」
それは俺も知りたい。自分の異世界ネーム「トランスリア・テンセイベルト」がどれほどの再現力かを知れるチャンスだ。
「僕はエルメリアン・キングレイです」
ごつごつとした体のわりに声は爽やかだった。異世界ネームはまずまずといった結果か。
「俺は、トランスリア・テンセイベルトだ! よろしく!!」
女子たちのひそひそ声が聞こえる。
「高校生にもなって……あの厨二病はだめだよね……顔はいいのに」
聞いてみると、それは普通に引いていただけだった。
「もしかして!! あなたも異世界人なのですか!?」
エルメリアンの顔が、いきなり明るくなった気がする。
「俺はただの人間。いや、まあただのって言うと語弊はあるんだけども。とりあえずだ! 異世界に行こうと切磋琢磨している男さ」
俺は、エルメリアンの近くに行き、自分を指さした。
「僕……異世界に来たくて来たんじゃないんです」
意外でもないか。よくある転生系も、ひょんなことから転生している。本望じゃないもんな、あれ。
「もし、トランスリアさんがよろしければですけど、一緒に異世界へ帰るの、手伝ってくれませんか?」
数々の異世界系を見た俺だが、こんなに律儀なドラゴン人間を見たことがなかった。
「え、ま、まままままじ!? もちろん!! というか良いのか!?」
喉に唾が絡まって言葉が詰まる。現代モンスター痰吐きおっさんもこんな気持ちなのか。
「こちらこそ良いんですか!? ありがとうございます」
俺は俺で、ひょんなことから転生系あるあるのご都合主義の恩恵を受けることになった。




