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「転生したら」と言ってみたいがために俺は異世界転生の方法を本気で探します  作者: 成乃 和幸


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第一話 転生したらと言ってみたい

「転生したら」


 俺はこの一言を言うためだけに異世界に行く方法を探している。あるはずなんだ、行ける方法が。 

                                     七年前。俺が十歳の時のこと。正直、細かいことは覚えていない。でも、線香? のような匂いが漂っていて、大きな大人がみんな揃って震えていたのは覚えている。葬式の帰り道、車の中で流れていたテレビで異世界転生モノアニメがやっていた。今思えば、それがすべての始まりだったのかもしれないな。


 そして、現在。高校二年初日の夜。

 帰宅途中のサラリーマンが露骨に目を逸らした。子連れ家族もだ。俺は今、道路の端の方でメモ帳片手に待機している。メモには、「トラック出現時間:18:40〜19:10(高確率)」と書かれている。


「そろそろゴールデンタイムだな」


 メモ帳を見ながら、走り出す準備運動を始める。アキレス腱を伸ばしてみたり、屈伸をしたり。時間が近づいてくるにつれて、俺の胸の奥が早まる。気づいたら、ぴょんぴょんと跳ねてしまう。やばい、呼吸が浅くなっている。


「来いよ、トラック!!!」


 白い光、だんだんと見えてくる大きな車体、エンジン音。ゴールデンタイムが到来した。


「うぉぉおおお!!」


 毎回、一歩を踏み出すのが遅れる。それでも、道路の中央に走り出した。というより、勝手に動いてしまった。

 ピンポイントでぶつかりに行ったはずなのに、光が消えた。トラック、ましてや車なんて一台も走っていない。先ほどまで俺に光を浴びさせたトラックはどこに行ったんだ。 

                                              「ん? 何だあの看板。ってかなんで!? トラックは?」


 看板に近づくと、「通行止め」と書かれた看板が立っていた。いつ設置されたんだ。遠くを見ると、先ほどのトラックであろう車が走っていた。


「また失敗か……早く転生させてくれよ。こんな世界にいたところで……」


 文句を言いながら、家に帰った。


「ただいま」


 ……。


 返事はない。それでも、何故か毎回言ってしまう言葉ランキング上位に食い込む魔の言葉だ。これも異世界転生の予兆なのかもしれない。


「今日もつかれた……ということは? 転生!! 寝たらそのまま異世界でした的な?」


 そんな期待を込めて、俺は目を閉じた。

 中央にはお城のようなもの、高層ビルなんてないヨーロッパのような風景。自由を手にしたみたいだ。だが、文字はぼやけて、人の顔すらもぼやけている。そこで買い物をする俺、が今の状況だ。


 そんなところで見覚えのある風景が目に入ってきた。窓から入ってくる明るい光、俺の部屋だった。枕元には、見たことのない銀貨。


「せ、成功したのか!? この銀貨……円でもドルでもペソでもユーロでもシリングでもない……! 俺は異世界に行けたんだ!!」


 五感もほぼないし、滞在時間も短い。なんの会話をしたかもあまり覚えていない。でも、たしかに俺は異世界に行くことに成功した。


 あれ、先ほどまで夜だったのに朝になっている? 滞在時間は短いと思っていたが、八時間弱は居たらしいな。

 トイレでそんなことを考えつつも、朝の準備を終えて学校に向かった。


「おはよう、天翔(てんと)。今日の顔はいつも以上に明るいわね」


 うわぁ。一気に現世に引き戻された。もっと異世界の余韻を味わいたかったのに。幼馴染の甘実 琴音(あまみ ことね)だ。家が近いこともあって、毎日一緒に登校している。別に一緒に行きたいわけじゃないが、まあ、名前にもある通り甘い香りするしいいか。


「今日は念願の異世界に行けたんだ! やっぱ俺は間違ってなかった」


「はいはい、じゃあ行くわよ」


 学校に着くと、俺は席に座った。徐々に友達が近づいてくる。


「どうした? そんなにやけて。とうとうおかしくなっちまったか?」


「ちげぇよ。俺、今日……異世界行けたんだよ!!」


 俺は、昨日から今日にかけてあった出来事のすべてを話した。


「いや、それ普通に夢だろ。夢みんなよ」


「いいや、あれは夢じゃなかった。ってか夢くらいみたっていいだろ」


 そう、あれは夢じゃなかった。ちゃんと、”転生”……なのか? 俺は現世に無傷で戻ってきている。ということは、転生というより転移に近いか。


「風崎の場合、あり得るぞ? だって、お前ずっと異世界に行きたがってんじゃん。夢って、その日の強く残った印象が出るらしいし」


「なんだ? お前ら嫉妬してんのか? 醜いぞって!」


 友達は、なぜか呆れた様子で俺の元から離れていく。


「みんなわかってないな……理解者はいつ現れるのか」


 いつかきっとざまぁ展開持ってきてやる。まあいい、夜になったらもう一度試してみよう。


「お前らー。みんな席につけー。朝のホームルーム始めるぞ」

 

 なぜかだるそうにしている俺のクラスの担任だ。


「今日は転校生が来ている。入れー」


 教室の扉から入ってきたのは、地味な男子だった。俺が言えた事じゃないけど。


「異世界からきました、よろしくお願いいたします」

 

 今なんて言った? 異世界? 去年から始めた異世界研究に、成功の兆しが見えすぎている。


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