37/38
五
「圭! 圭ってば!」
「え?」
「もう、送り火、消えちゃったよ!」
「送り火? 迎え火だろ?」
「何、言ってんのよ! もう16日だよ」
「ええ! そうなの? 賀茂さんは?」
「さっき、戻って来たじゃない。途中で出会った誠たちと一緒に。さあ、早く家に入りましょう」
「姉さん、新宿の目の前で……」
「新宿? なんのこと?」
「なんでもない……」
送り火に水を掛けてから立ち上がり、姉に続いて門の中へと入っていった。あたりはすっかりたそがれどきで、すぐにでも日が沈みそうだった。
「ああ! 誰よ! キツネノカミソリ抜いたの!」
門の脇に目をやると、『キツネノカミソリ』がごっそり無くなっていた。そこだけ土がボコボコと盛り上がっている。たった今、掘り起こしていったようだ。
「御先祖様が抜いていったんだよ。大目に見てやってよ」
「御先祖様が? 今年のお盆は、来なかったじゃない」
「来たよ。もう、帰ったみたいだけど。キツネノカミソリを手土産にして……」
「ホントに? だったら……今度はいつ来るのよ?」
「キツネノカミソリが咲くころ、やってくるよ」
肩に掛かっていたトートバッグを開けて中身を確認した。
塩岡先輩から送られてきた魔除けは、3つとも消失していた。
(キツネノカミソリが咲くころ御先祖様がやってくる おわり)




