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「ボケた?」と笑われた50歳海将、過労村長に拾われ【兵站チート】で無双。極上メシと近代火器で最強要塞村を築く  作者: 月神世一


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EP 4

海将の土いじりは近代陣地構築。迫り来る先遣隊を『アサルトライフル』で秒殺する

 翌朝。

 ポポロ村の入り口となる街道沿いには、村の自警団が集められていた。

 とはいえ、その数はわずか十数名。大半が農具や狩猟用の粗末なクロスボウを握りしめただけの、素人の村人たちである。

「隊列を崩すな! 敵は凶悪な野盗だ。我々が引けば、村の女子供が犠牲になるぞ!」

 そんな烏合の衆を必死に鼓舞しているのは、見事な栗毛の馬の下半身を持つ、ケンタウロス種の女性だった。

 年齢は二十代半ば。凛とした美貌に生真面目な瞳。右腕には分銅付きの鎖『メビウス』を巻き、左腕には巨大な金属杭を射出するパイルバンカー式の刺突盾『アグニ』を構えている。

「あの方が、自警団のリーダーのマンミアさんです。元はどこかの騎士団長だったらしいんですが、村のために無償で自警団をまとめてくれていて……」

 案内役のキャルルが、申し訳なさそうに説明する。

 坂上真一は咥えていたハイライトの煙を吐き出しながら、マンミアの動きを観察した。

 個人の武の練度は高い。だが、指揮している陣形は典型的な「平原での中世式歩兵戦」のそれだった。

(……いかんな。素人を平原で横一列に並べてどうする。あれでは、騎馬や魔法の突撃をまともに食らって一網打尽じゃ)

 坂上はゆっくりと歩み寄り、声をかけた。

「お前さんがマンミア君じゃな。ご苦労。ワシは今日からこの村の防衛顧問……いや、パトロンになった坂上真一じゃ」

「あなたが……? キャルル様から話は聞いていますが、本当にただの『おじさま』にしか見えませんね。悪いことは言いません、戦いの経験がないなら村の奥へ避難してください。もうすぐ野盗の先遣隊が来ます!」

 マンミアは坂上のワイシャツとスラックス姿を見て、完全に素人だと判断したらしい。

 だが、坂上はふっと笑みをこぼした。

「戦いの経験、か。……まあ、こんな泥臭い地上戦の指揮は久しぶりじゃがな」

「えっ?」

 坂上は空間に手を差し入れ、【酒保】のスキルを発動させた。

 虚空から次々と転がり出てきたのは、大量の『折りたたみ式円匙(シャベル)』、空の『土嚢(どのう)袋』、そして、ドラム缶に巻き付けられた無数の『鉄条網(有刺鉄線)』だった。

「な、なんですかこの見慣れない道具の山は……!?」

「今から少々、土いじりをする。マンミア君、お前さんの馬力なら大助かりじゃ。部下たちにこのシャベルを持たせ、ワシが線を引いた場所に『腰の高さ』までの溝を掘れ」

 坂上は木の枝を使い、街道を塞ぐようにジグザグの線を引いていく。

 いわゆる『塹壕(ざんごう)』の構築である。

「み、溝を掘る!? 敵が来るんですよ!? こんな地面に穴を掘って、なんの魔術の儀式ですか!」

「魔術ではない、ただの物理的な壁と盾じゃ。いいから掘れ。掘った土はその袋(土嚢)に詰めて、溝の前に積み上げるんじゃ」

 坂上の声には、有無を言わせぬ絶対的な指揮官の響きがあった。

 マンミアは反射的に「は、はいっ!」と背筋を伸ばし、自警団の面々とともに猛烈な勢いで地面を掘り始めた。ケンタウロスの馬力と、坂上の的確な指示により、あっという間にジグザグの塹壕が完成していく。

 さらに坂上は、塹壕の数十メートル前方に、鉄条網(レイザーワイヤー)を幾重にも張り巡らせた。

「あの、坂上さん……この棘のついた金属の糸は、一体……?」

 泥だらけになったマンミアが、不思議そうに鉄条網を見つめる。

「侵入阻害用のワイヤーじゃ。馬の足や人間の衣服に絡みつき、無理に動けば肉を切り裂く。これと塹壕を組み合わせれば、敵の突撃速度は完全に死ぬ」

「魔法を使わずに、敵の進軍を止める……? そんな馬鹿なことが……」

 マンミアが半信半疑の声を漏らした、その時だった。

『ヒャッハァァァァッ! 見ろよ、村の入り口で素人どもが泥遊びしてやがるぜ!』

『女と食い物を全部置いていけば、命だけは助けてやるよォ!』

 街道の土煙の向こうから、十数人の荒くれ者たちが姿を現した。

 ニャングルの情報通り、野盗団の先遣隊だ。彼らは手下とはいえ、歴戦の傭兵崩れやならず者たちであり、手には禍々しい魔力を帯びた剣や杖を握っている。

「来ましたっ……! 自警団、弓を構えろ! 敵の魔法使いを優先して狙うんだ!」

 マンミアがパイルバンカー『アグニ』を構え、悲壮な決意で前に出ようとする。

 だが、坂上がその肩をガシッと掴んで止めた。

「マンミア君。女子供と素人は、その穴(塹壕)の中で頭を下げておれ」

「な、何を言っているんですか! 私が出なければ、村が――」

「指揮官の命令が聞けんのか」

 坂上の声が、一段階低く、冷徹なものに変わった。

 マンミアはビクッと体を震わせる。二十五年間、騎士として生きてきた彼女の本能が「この男には絶対に逆らってはいけない」と警鐘を鳴らしていた。

「キャルル。マンミアと村人たちを塹壕に伏せさせろ」

「は、はいっ! みんな、頭を下げて!」

 全員が土嚢の陰に隠れたのを確認すると、坂上はゆっくりと咥えタバコを吐き出し、一人で塹壕の上に立った。

『おいおい、なんだあの白髪のオッサン! 一人で俺たちを止める気かよ!』

『馬鹿め、蜂の巣にしてやる! 炎弾(ファイヤーボール)の詠唱を急げ!』

 野盗たちがヘラヘラと笑いながら、魔法の詠唱を始める。

 坂上は、そんな彼らを「哀れなものを見る目」で見下ろしていた。

(剣と魔法の世界の連中は、どうにも『射程距離』という概念に疎いらしいな)

 魔法が届くのは、せいぜい数十メートル。

 しかし、坂上が【酒保】から引き抜いた漆黒の鉄の塊――『89式5.56mm小銃(アサルトライフル)』の有効射程は、実に500メートルに及ぶ。

「――大人の喧嘩(火力)を教えてやろう」

 坂上はアサルトライフルを肩に当て、照準器越しに野盗たちを捉えた。

 セレクターレバーを『3(3点バースト)』に合わせる。

 タタタンッ!

 乾いた破裂音が、ポポロ村の空気を切り裂いた。

 現代兵器の銃声など聞いたこともない野盗たちは、何が起きたのか理解する間もなく、魔法の詠唱をしていた男の杖が粉々に砕け散り、その手首から血が噴き出した。

『ぎゃああああっ!? な、何だ!? 杖が……見えない何かに弾き飛ばされた!?』

 タタタンッ! タタタンッ!

 坂上は冷徹なまでの精密射撃で、野盗たちの「武器を持つ手」と「足(膝)」だけを正確に撃ち抜いていく。相手はただの先遣隊だ。無駄な殺生をする必要はない。戦闘能力だけを完全に剥奪する。

『ひぃっ!? ま、魔法陣もないのに、遠距離からの不可視の攻撃だと!?』

『ええい、怯むな! 一気に距離を詰めろ! あんなオッサン一人、取り囲んでしまえ!』

 パニックに陥った野盗たちが、ヤケクソで村へ向かって突撃してくる。

 だが、彼らの行く手には、坂上が先ほど張ったばかりの『鉄条網』が待ち構えていた。

『ぐああっ!? な、なんだこの茨は! 鉄でできてるぞ!』

『痛ぇっ! 服が絡まって動けねぇ! 切れない、剣で斬れねえぞ!』

 レイザーワイヤーの刃が野盗たちの装備に絡みつき、進軍速度は完全にゼロになった。

 そこへ、坂上が容赦なく追撃の銃弾を浴びせる。

 タタタンッ!

『ひぎぃぃっ!』

『降参だ! 降参する! 動けねえよぉぉぉっ!』

 ものの三十秒。

 たった一人の中年男が、指一本触れることなく、十数人の野盗団を完全制圧してしまった。

 鉄条網に絡まって泣き喚く野盗たちを見下ろし、坂上はライフルの銃口から上る硝煙をフッと吹き飛ばした。

「……こんなもんじゃな。弾の無駄遣いじゃったわ」

 背後の塹壕から恐る恐る顔を出したマンミアと村人たちは、全員が顎を外したように口を開けて、その光景を呆然と見つめていた。

「魔法、じゃない……。あの黒い杖から、雷のような音が鳴っただけで……敵が、全滅した……?」

「す、すごいです坂上さん! あんな遠くから、あっという間に!」

 キャルルが目をキラキラさせて塹壕から飛び出してくる。

 マンミアは震える足で坂上に近づくと、信じられないものを見る目で彼を見上げた。

「あ、あなたは……ただのパトロンではなかったのですね。あの陣地構築といい、今の見えない遠距離攻撃といい……まるで、軍を統べる将軍のような……」

「ワシはただの50歳のオッサンじゃよ。さて、マンミア君。自警団に指示を出せ。あそこで泣いとるゴロツキどもを拘束して、尋問するぞ」

「は、はいっ! ただちに!」

 マンミアの返事は、先ほどまでの反発が嘘のように、完全な『部下』のそれに変わっていた。

 生真面目で独身の焦りを抱えていた二十五歳の女騎士の心に、圧倒的な強さと包容力を持つ『大人の男』の姿が、強烈な矢となって突き刺さった瞬間だった。

 ***

 数分後。

 縛り上げられた先遣隊のリーダー格が、涙目で村の広場に引きずり出された。

「ひぃぃっ! 命だけは、命だけは助けてくれぇっ!」

「安心しろ。ワシらは野蛮人じゃない。だが、いくつか質問に答えてもらうぞ」

 坂上が冷たい視線で見下ろすと、野盗は震えながらすべてを白状し始めた。

 彼らの本隊は数百人規模であること。前村長から巻き上げた資金で、強力な魔法道具を買い揃えていること。

 そして――。

「ほ、本当だ! 俺たちの頭(かしら)は、『物理攻撃を完全に無効化する魔法盾』を持ってるんだ! あんたのあの見えない攻撃だって、その盾があれば防がれちまう! だから今のうちに逃げたほうが……っ!」

「なるほど。物理無効の魔法盾、か」

 坂上は顎を撫でた。

 5.56mmの通常弾が魔法の盾で防がれる可能性があるならば、より貫通力の高い武装、あるいは『特殊な弾頭』が必要になる。

「キャルル。この村の地下には、ドワーフの国へ繋がる炭鉱があったな?」

「へっ? は、はい。ドンガン地下帝国との密輸用の坑道がありますけど……」

 坂上はニヤリと、悪党よりも悪い笑みを浮かべた。

「少しばかり、ドワーフの親方衆に『仕事(魔改造)』を頼みに行くぞ。……本隊が来るまでに、極上の『徹甲弾』を用意せねばならんからな」

読んでいただきありがとうございます。

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