閑話「とある一族の報告記録②」
レンがゼペーについた頃。
とある場所で、彼らはまた密かに集まった。
その空気は楽観的なようでいて、重苦しくもあった。
「……土か。しかも変色鱗のってことは、そうそう怒ることはなさそうだが」
「いえ、正確に言うと、風と土ですわ。風は気まぐれ。その行動は読めませんわ」
「見た目も小柄ってことは、風の血が強く出てるってことだもんなぁ」
「だが、風ならば古い硬貨などどこかに捨ててるだろう。中身は土ではないか?」
大事なのは中身がどちら寄りであるのか。
「話を聞く限り、中身は土寄りだろう。しかし、問題は瞳が紫ということだ。人の間でやつらは金の瞳としか伝わっとらん。
やつを竜人族と思わずに接する愚か者が出るのではないか?」
「そこは安心しろ。ちゃんとゼペーの奴らに瞳は紫だが本物だという情報は流した」
「まぁ、エルフなら分かるだろうしな。血は薄まったが、精霊族の子孫だ」
「問題は多くの人間族と亜人族ですわね。あの者らは操りやすいですが、おバカさんですもの」
「視覚に頼りすぎて、奴らを感じ取れねーもんな。……あれだけ雰囲気違うのに、なんで分からねーのか不思議なくらいに」
「愚かだからこそ操りやすいが、それ故にやつらを怒らせる可能性が高い」
「そうか? エルフやドワーフなんかも、割とやつらの地雷を踏んでると思うが」
話が少しズレ始めていた。一つの影が、話を戻す。
「ひとまず、やつが帝国を目指しているのは間違いない」
「変色鱗持ちなら、終の棲家探しかもな。出来れば他の星に行ってほしいもんだぜ」
ため息とともに、誰かがお茶のカップを手にした。
「ひとまず、やつを怒らせないように対策をしつつ、各自、すぐに逃げられるようにゲートの準備をしておけ」
「りょーかい」
「分かりましたわ」
空気が少し張り詰める中、誰かが呟く。
「ああ、そういや……弟子として人間族を連れて歩いてるらしいぞ」
ピタリとざわつきが止まる。
「……人間族を弟子に?」
誰もが信じがたいという顔をした。
だが、その情報を伝えた男は嘘をついている顔ではない。いや、普段ならばともかく……奴らに関してのことで、嘘をつく馬鹿はここにはいない。
「それはまた……随分と変わり者じゃな」
「はぁ。ということは、さらに予測不可能ってことじゃないの! 最悪。
もう一旦逃げておこうかしら」
「それも一理あるが、ようやく帝国を軌道に乗せられたところだぞ」
「でも、命には変えられないし、国は安定してるじゃん? ちょっと離れるくらい問題なくない?」
「うむ。人間をつれているとなると、人間の時間感覚で過ごしている可能性もある」
「つまり、もうちょっと様子見ってことか」
全員、命は惜しいが、帝国から完全に手を離すのもまた惜しいと思っていた。
結局、結論はいつも同じだった。
「……はぁ~あ。ほんと、なんでよりにもよって、帝国に来るんだか」
ため息交じりの言葉に、全員が頷いた。
【おばちゃん竜人族の、人の世体験日記】
閑話「とある一族の報告記録②」完




