④ 断罪された悪役令嬢ですが、パンを焼いたら聖女にジョブチェンジしました!? の感想(前)
媒体:なろう
書籍化しているそうなので「一円以上のお金を稼いでいる人」の作品とみなします。
尚、現時点で評価しきれない未完作品につき(前)記載です。
個人の評価としては――「高いと低いを行ったり来たり」です。
あらすじ割愛。
うっかり完結済と勘違いして読んでしまった連載中の作品。
作風はパン作りを主体としたほのぼの系ですね。そこにささいな謎や問題とも呼べない問題がちょっぴり絡んでくるよ、と。
物語の序盤がとても伸びやかで良いです(ノーダメージの断罪シーンはどうでもいい)。
パン作りのシーンは作者の書き方が上手いと言いますか、いっそ食べているシーンよりも美味しそうです。
そして全体的にほのぼの満載です。
ヒロインは賢く(当たり前)、悪役令嬢ですからきっと異世界でもトップテンに入る美少女に違いありません(だから兄が変態と思われる)。
森にある彼女を想像すると美しい絵面しか浮かびません。
で、こちらのヒロイン、自分の作った美味しいパンを世に広めたい――との事ですが広めると何か良い事があるのでしょうか。自分だけの楽しみに留めない理由とは(ヒロインは裕福で稼ぐ必要も無い)。
少なくとも異世界の住人は「パンは大して美味くない」の認識で特に困っていない模様(日本人の意識が目覚める前のヒロインもそうだったでしょう)。皮が厚くて硬くて当たり前。ヤギ飼いとかの保存・携帯食ですし。
分かっています。
時計の針を進めちゃうぞ、って事ですよね。
それに話も進みません。どうぞ、やっちゃってください。
先に言っておきますが、パン作りに必要な材料やら家電やらが都合よく揃っている点は何も問題ありません(ヒロインの実家は大金持ちなので余裕で買い揃えられる)。
こちらの舞台は日本のゲーム会社が製作した世界です。勿論日本人が快適に暮らせる環境が整っています。
ゲーム会社には女性社員も多いでしょうし、乙女ゲームをプレイするのは日本人女子です。
キラッキラのラグジュアリー空間が用意されていて当たり前の世界って事です。お客様に喜んで頂く為です。おもてなしの精神が炸裂です。
本作品で気になる点はそこではありません。
でも一応触れておきます(集中砲火にあらず。類似作はそこら中にある)。
パンやら料理やらをネタにして異世界人から驚嘆と感謝と尊敬を得る作品軍団の例にこちらも漏れません。
世間の声にもある通り「周囲の知能レベルを下げてヒロインを持ち上げる」戦法が次々と繰り出されていきます。
正直、ストーリーが死ぬほど面白いのであれば些細な矛盾も卑劣も構わないと筆者は思っています。死ぬほど面白いなら――。
(ところでご存じの方お教えください。天才パン職人のヒロインが転移か転生かして活躍するファンタジーはどこですか。焼きたてジャパン超えのクオリティでお願いします)
パンや料理の蘊蓄には所々で感心します。
「へえ。これは良く調べましたね――ネットで」と。いやネットがソースか否か判断付きませんけど情報にオリジナリティが無いのでそうかなと感じただけです。
話が出たついでに。度々見かけるネットが命綱の蘊蓄作者、大丈夫ですかね。信憑性の問題もありますけど記事を書いた本人には「それ私のネタ!」ってバレバレです。訴えられます。
残念ながら、このヒロインが繰り出すアンパンチはどれも地球では珍しくもない一撃です。異世界だからこそ輝けるネタです。焼きたてジャパンはありません。
別にいいんですよ。他人の成果を自分の成果みたいに胸張って発表したって。品性の問題は知りませんが(筆者はヒロインの親でも兄弟でも無いんで)。
ヒロインにパクり指摘が出来るのは同じく日本人である対抗馬だけです。既に落ち目ですから対抗馬とは言えません。
今の流れでは、このヒロインもきっと同胞に歩み寄ったりはしないでしょう。
はい、ここです。
ストーリーはまだ道半ばですが、序盤からずっとヒロインの言動に「無くてはならないものが無い」という不自然が継続しています。
いつ「私、転生しちゃってる!」と気付いたのかは不明ですがいつであろうと関係ありません。
生前(かどうかはまだ明かされていませんが)ヒロインはゲームの熱烈なファンでした。美容と健康を損なって時間とお金を捧げていますから信者の域に達していると言えるでしょう。
対抗馬と元婚約者の王太子に対して「みんなの声大好き! このスチル神!」とかの反応をしなくてはいけませんでした(その描写は無い)。
彼らの行く末に無関心でパン焼いてます。いや気になるでしょう、神たちがその後どうなったのか。どうなっていくのか。
神よりパンって事かな(その描写も無いですけど)。
分かります。ヒロインはゲーム会社が提供出来なかったサービスを異世界で補填しなければならない身ですからね。
ちょっと脱線します。
本作品に限らず、乙女ゲームの世界で現代知識無双するヒロインの、異様に高いキッチン使用率は無理もない事です。
弄れる部分がほとんど無いからそうなります。
上にも書いた通り、ヒロインがいるのはゲームの中です。
プロ集団によって整えられた世界です。作中の仕様を変えるにはプロと同等かそれ以上の能力が必要になります。
要するに乙女ゲームというのはヒロインの住み心地が良い反面、どこでもない異世界に比べると知識無双にはあまり適さない、不自由な環境って事ですね。
話戻します。
日本人の(多分)前世を思い出したものの、ヒロインは大好きなゲーム世界をぶち壊す自分を許せないからと、無事に断罪されるまでパン作りを自重していた忍耐の人です。
リスペクトとスピリットに溢れています。感動しました。
ならば異分子である自分の存在など絶対に許せないのでは、と変な心配も過ぎりました。元の悪役令嬢とは認識も感覚もまるで異なる別人です。コスプレどころではありません。
リアルの人間が架空世界に紛れ込んでいる状況です。どこのテーマパークのアトラクションでしょう。係員さん捜さないと。
幸い杞憂でした。パンが彼女の支えになったようです。
ところで本来のゲームの悪役令嬢、妙ですね。悪役になれる素養がありません。彼女は恵まれ、これ以上ない程家族に愛されています。王太子ごとき聖女にくれてやっても一生幸せに暮らせます。
『悪ラス~』と違って死のリスクもない。人生安泰です。
校内だけかもですがヒロインに対する周囲の認識も変ですね。ヒロインの悪評を誰かが流したのかな(その描写も無い)。敢えて放置(便乗)したって事ですかね。
本作品にツッコミを背負わせすぎて中々ヒーローの話に入れません。
精霊の話にも辿り着けません。
聖騎士の素敵なヒーローの話、行きます(初対面の重傷者率高いですね)。
高い戦闘力を持つ彼がなんで瀕死だったのか非常に気になっております(彼の正体よりも)。胸躍る展開の予感がしています。
しかし彼、ポーションで全快しないとか斬新では。薬の期限切れって事は無いですよね。
ヒーローについて最も興味深いのは二種類の力を持っている点です。ナルトです。
ただ騎士と言うからには帯剣してて欲しかったですね。剣は騎士の魂です。
(この剣、どんな口寄せの術が使われているかよりも未使用時どこでぐうすか寝ているかの方が気になります)
ところで彼の年齢は知りませんが食レポがやけに幼く感じられました。「~」とか「!」が多い所為で。美味しいもの食べた衝撃なのでしょうし、微笑ましいレベルではありますけど。
精霊のにゃんこについて語ります。
可愛いですね。文句のつけようがありません。
バリエーションがあるのも楽しい――ですが、筆者は世界の自然と動植物に敬意を払っています。
にゃんこも対象です。
動物が出て来る作品は好きですが、ものによっては苦手です。
魔法少女のマスコットみたく地球生物からかけ離れた姿形であればあまり気になりませんが、こちらのにゃんこはヒロインが品種で例えられる程「猫」です。
人間の為に頑張ってくれるマスコット的な動物というのが苦手の部類に入ります。嫌いとは違います。ただ時々痛ましい。
動物は基本チヤホヤされるだけの役立たずでいい、というのが筆者の認識です(ピカピカ言ってる系の動物はまた別)。
こちらのにゃんこ達、ヒロインを好き過ぎる所為で健気な反面ちょっと痛ましいです。
そもそも、それ程の絆は互いに無いのでは……。
にゃんこ達の強すぎる片想いに見えます。
ヒロインもどこか「私と私のパンを好きだから好き」という風に見えます。
最初のにゃんこがチョロ過ぎたかも。
急に出てきてなし崩しに餌付けされた感じ。歩み寄りプロセスが欲しかった。
いっそパン欲しさにヒロインに付きまとっていて気が向いたら助ける、というスタンスでも良かった(にゃんこ先生みたく)。
なので精霊を看板にゃんこにしてパンを売るシーンはあまり好きになれませんでした(ヒロインの意図ではない)。
時折見られる人間っぽい動きもちょっと気になりました。
「猫」である以上、猫科特有の描写が見られないのはかなり残念で勿体ない気がします(作者が猫に詳しくない?)。
あとこれ難癖ですけど、空中浮遊していたと思われる最初のにゃんこ。
ヒロインのパン作りの熱意にひかれたみたいな事を言っていましたが、では他のプロフェッショナル達が不合格だったのは何故でしょう(パン職人に限らず、騎士や食品・家電の開発者、農家等。彼らが情熱不足な筈も無く)。
散々否定したヒロインが聖女だから、って所に話戻って来ませんかね。聖女云々もよく分かっていませんけど。
きっとこれからスッキリするのでしょう。
色々書きましたが好きか嫌いかで言えば、好きな作品です。
自分では絶対に書けないテーマの作品ですし、あらゆる点で興味深い。だからこそ最新話まで読めています。
個人的な物足りなさは作風を考えれば当然です(作者の力量とは無関係の問題)。
次回の感想は本作品の完結後でしょう。
胸躍る展開を期待してはいますが、ほのぼの作風なので過剰にならず生ぬるい気持ちで完結を待ってみたいと思います。




