③ ハズレ職【農民】のおっさん、ひたすら農作業してたら最強になってた の感想
媒体:なろう
紙にもアニメにもなっていないようですがカクヨム投稿作とのことなので「一円以上のお金を稼いでいる人」の作品とみなします。
※タップのミスでページにジャンプするという偶然の出会いを切っ掛けに「冒険者」研究の一助として(少なめの文字数を鑑み)読んでみました。
個人の評価としては――「高かった筈なのに気付けば低く……」です。
一応のあらすじ。
ヒーローは幼い頃から「戦士」に憧れていたけれど祝福で判明した「天職」が「農民」だった為に夢破れ、その後十二年間真面目に農作業をしていたところ、いつの間にやら戦士を超える力を得ていたようなので、新任の代官の勧めで「冒険者ギルド」へ行く事になりました、という感じです。
こちら、恐らくなろう世界ではさして斬新な設定では無いのでしょうけども、発見当時なろうファンタジー初心者だった筆者からするとタイトルもあらすじも「どういう事だ。何が起こった」というくらいのビッグバンでした。
このビッグバンが後々仇となります。
作中ビッグバンが連発する所為です。話数を重ねるごとに驚きの要素がどんどん消えていきます。
始めの期待値の高さが災いして逆のギャップが生じてしまった『悪ラス~』と似た感覚です。
農民と言うからには「農業」のお話しが主体になると思っていました。
戦う農夫ですよ。とてもクールな響きです。
で、読んでいく内に大昔のバラエティーを眺めている気分になっていきます。
食べ物を粗末にするネタで笑いを取りにいく類の。
前回申し上げた通り、筆者は世界の自然に敬意を払っています。
自然と共に生きている農家なんてリスペクト職業の一つです。
残念な事に、ヒーローは想像していた人物とは全く違っていました。
野菜を武器として使用しています。
アンパンのヒーローにも思うところが無い訳ではありませんが、あちらは夢のある絵本世界ですし「ボクの顔をお食べ」という自己犠牲の精神は称賛に値します。他のパンヒーローたちを「えーい」と敵に放り投げたりもしてません。
こちらのヒーローはまだ一口も食べていない野菜を平然と投擲します。
それも常識では有り得ないサイズの巨大野菜です。だからこそ強烈な武器になっている訳ですけども。
しかし「こんな事もあろうかと」途轍もなく硬い野菜を作っていた真意はさっぱり分かりません。
素人には興味深い点ではあるんですよ、こういう想像を絶する手段というのは。
ただし、作品の舞台が食糧事情には何一つ問題の無い、豊かな豊かな世界である事が大前提の攻撃方法です(作中豊かさを示す描写はない。むしろ世界観は未発達文明)。
でなければヒーローはとんでもないマネをした事になります。今の一投で何人分の食事が消えたんだろう……と考えずにはいられません。
「いやいや自作のものをどう使おうと本人の勝手だし」とも思えません。
誰よりも自然(作物)の恩恵に肖っているのはヒーローです。誰よりも自然を大切にする精神の持ち主でいて欲しい。粗末にしないで。
せめて「泣く泣く」武器として使った後、台無しになった野菜の欠片を一生懸命拾い集めて調理する描写でもあれば印象が全然違ったんですけどね。
因みに、どこかのタイミングで作者も文中に書き添えていた気がします。
それはそれ……、というような一文があったような。
それで「ああ、この戦法がマズい自覚はあるんだな」と思ったので。
そして野菜戦法をたっぷり経た後に、ヒーローは無断耕作した畑を演習中の騎士団に踏み荒らされて涙にくれ、怒り狂います。
申し訳ない事に、全然ヒーローに感情移入出来ません。
無知故の無断耕作はまあいいとして、このヒーローが騎士たちに怒る資格はあるのでしょうか。
なんかこう、丹精込めて工作したガンプラを家族みんなが通る廊下に放置していた癖にお母さんにうっかり踏み潰されて癇癪起こしてる男子中学生のようでした。
(この時だったかな、それはそれ、的な描写は)
掴めないヒーローです。
人格的には朴訥で憎めない。善人です、間違いなく。
女性陣に内心値踏みとかされていますが、まあ強いので無自覚にモテてしまうのも頷けます(世界観的にも)。
善人ですが、田舎の狭い世間しか知らなかった影響なのか(そういえば家族はいたかな)、時々弱者への配慮が足りません。その所為でいまいち「優しいお兄さん」の印象にはなりません。作者の意図がそこに無いだけかもですが。
飲み屋の美人店主が酔っ払いに絡まれるシーンで、彼女が痛い思いをする前に庇う姿勢が一切無かったのが最たる例。ヒーローなら余裕で助けられました。面倒だ、巻き込まれたくない、という心理描写はありませんでした。
ブドウですぐ治せるしと考えたのでしょうね。彼女の痛い思いにまで配慮が行き届かないのは自分が平気だからでしょうし、ヒーローに悪気は全く無いって事はこれまでの彼を見ていれば分かります。
しかしこういう些細な無頓着の積み重ねが、彼を優しい印象から遠ざけてしまうのです。炭治郎みたく愛される可能性を秘めていたのに勿体ない事です。
ヒーローのあるようで無い野菜愛が一番の困惑の元でした。
作風はギャグっぽいので色々とゆるいのは当然でしょう。しかしどうも抑えどころが違っていたように感じました。むしろ外しの匙加減はシリアスよりギャグやコメディの方が難易度高いと思いますよ。凄くセンスを問われる。
(よく似た感覚が『悪ラス~』でもありました。
ラブコメに細かいことはいい。絵が綺麗で面白ければいいんだと思ったんですよ最初は。しかしメインキャラ達は為政者の卵。本人達も自覚しているからおふざけは許されない。そうすると気になるのは――いや書きません)
中途半端だったのかも。いっそ徹底的にリミッターを外して良かった。そうじゃないから一々気が散ってしまった、ような気がします。
武器も、このヒーローには鍬だけで充分だったのでは。
当初想像していた戦闘シーンは「日焼けマッチョな農夫が鍬と素手で派手に暴れまくる」でした。
どうしても野菜の武器は好きになれないし、乱発でインパクトはどんどん薄れてしまいます。
そうそうダンジョンが凄く楽しめました。大玉に追われるとか落とし穴から最下層まで落下するとか胸躍る展開です。
このダンジョンが最高潮となりました。
ダンジョン攻略後、何が起きても驚けなくなります。
無敵の野菜アイテムもさることながらヒーロー、天候と大地も操ります(旧タイトル通り)。
この二点セットだけでもう何でも出来てしまいます。文字通り最強です。余裕で国つくれます。
ところで農民の能力として相応しいでしょうか、この二点セット。
やり過ぎでは。風で飛ぶとか新手の舞空術ですか。天候は、せめて百発百中で当たる天気予報までで勘弁して欲しかったです。
土(大地)を操る力については割と抵抗感ありませんでしたけど(地割れ除く)。物語序盤に出てきた自動遊歩道とか斬新でしたよ。良いですねこれ。
代償として後々披露される土オンリーの能力が全て霞んでしまいますが。
土も雷も魔法使い、じゃなくて魔導師とかに出来る人いそうですよね。
きっとヒーローの前ではほとんどの天職が霞むのでしょう。
最後の大盛り上がりスタンピードでは、とりあえずギルマスに仰天します。
彼女始め、各陣営の戦闘シーンは大変楽しめました。こうでなくては。
盛り上がりもヒーローの到着前までです。落雷がもう卑怯レベルで……。戦略も何も無い。いっそ魔物に同情しました(この手の世界観って凄い搾取されますよね魔物。狩られる以上に雑草の如く繁殖しているのでしょう)。
ところでなんでスタンピードは起こったのでしょう。誰も言及してませんでしたから結構あるって認識でよろしいでしょうか。それにしては領都の戦力が充分とは言えない気が。ヒーローがいない時はどうやって凌いでいたのかな――
――以上です。
(唐突に終わります。作品も唐突に終わりましたので右に倣え)




