59錬金目、料理神
振り返ると、1人の子供がいた。いや、外見は子供でも肌に伝わる異様な圧迫感は何だ?
「はぁー、またお主は下界に行っておったな?料理神よ」
「だって、料理が僕を呼んでるんだもん」
悪びれた様子もなく、ヒタヒタと創造神の前へ立つ。そう言えば、神像にも子供みたいな後ろ姿があった。
「それで、そこにいるのが黄昏?」
「そうじゃ。未来、ラピスちゃんのサポートをお願いしてたところじゃ」
「ふーん、クンクン…………微かに香辛料の匂いがする。中華とは違う………これはカレーかな?」
クンクン、そんなに臭うか?それにしても料理神と良く言ったものだ。この世界に俺以外作ったカレーは存在しないはずだ。
何故なら、今日前世の記憶を思い出したから分かる。時折起こる閃きは前世の記憶だったと。
「ねぇ、君さ。何か料理作ってよ」
「えっ?」
何を言ってるんだ?!俺が神に料理を作れだと!本来なら畏れ多く泡を噴いて倒れてる場面だろう。
だが、何故だか?ワクワクして堪らない。俺は料理人ではなく、錬金術師だ。でも、錬金術師と料理は使う材料は違えど共通してる部分も多い。
「わ、分かりました。それで、何をお作り致しますか?」
拒否したら、それはそれで不敬になって木っ端微塵になるかもしれない。俺なんかチリにするのも簡単だろう。
「匂いを嗅いだらカレーが食べたくなってきた。よし、カレーにしよう。材料と道具は………持ってるようだね」
料理神は、俺の固有武装である【素材の次元鞄】に気付いているようだ。
「キッチンはアソコだよ」
料理神が指差す方へ向くと、つい先程まで何も存在しなかった場所にキッチンが現れた。
「一言でカレーと言いますが多くの種類があります。何かご要望ありますか?」
「うーん、そうだね。シンプルでポークカレーにしようか」
「了解致しました」
さてと神様の舌を満足出来るか不安が残るが作るしかない。
タマネギをクシ切りにし、フライパンで飴色になるまで炒める。水分が飛び、タマネギの甘みが増す。
ジャガイモは毒である芽を取り除き、1口大にザク切りにする。地球では、ありふれた食材だが、この世界では稀に毒に当たるという牡蠣みたいな立ち位置だ。
人参は、イチョウ切りに切り、それぞれ寸胴鍋に投入し水を8割型注ぎ入れ、火を点火する。
そこに旨味の塊である顆粒出汁を投入すると、数分しない内に薄い飴色に色付き香りも食欲唆る程に充満している。
野菜を煮込んでいる内に俺の固有武装である【素材の次元鞄】で飼っているピンクボアを取り出し、空中へ放り出すと目に止まらない包丁捌きで解体と1口大に切り分けた。
「それはピンクボアかな?確か、Cランクの魔物だよね。一見、大人しそうに見えるが気性が荒く群れだとBランクに上昇するという」
「料理神様、詳しくてお見逸れしました」
「ボクは、食材になるものなら何でも詳しいよ。でも、知識と実際の経験は別物さ。このカレーとやらも知識で知ってるだけで食べた事ないもん」
それで匂いで当てるなんて凄いと思う。香辛料なんて、中世に近いこの世界だと高価で安くても1g金貨1枚はする。
大量に香辛料を使うカレーなんて本来なら以ての外なはずだ。だが、その分………香辛料の匂いが食欲を刺激し客を寄せ付ける。
「ピンクボアが焼けた」
こんがりと焼き目が付き、これだけでも美味しそうだ。焼けたピンクボアを寸胴鍋に入れ、カレーを作る時の秘密兵器…………カレールゥを入れ数分間、焦げないよう掻き混ぜる。
カレールゥを最初に発明した人には大感謝だ。大幅に時間短縮になる。
本場のカレーを作るには複数の香辛料でカレー粉をブレンドし、バターから抽出したギィーで材料を煮込んだりと手間が数倍は掛かる。
だから、俺は日本風なカレーを作っている。トロミがあり、白米に良く絡む。
「うはぁ、これがカレーの匂いかぁ。楽しみだな楽しみだな」
料理神が、キッチンの周囲をスキップしながら廻っている。
「これは料理神じゃないが、確かに良い匂いじゃ」
「普段食物を食べない我々でも食欲が唆ってくるわ」
創造神と魔法神が鼻をクンクンと鳴らせながらにこやかに頬を緩ます。
「錬金術と料理は似てるところがあるとゆーさかい。カイトくんの料理が楽しみやな」
いわずもながな、錬成神にも絶賛のようだ。まぁ何を作っても錬成神の場合は絶賛しそうである。




