第22話 女神との邂逅
(・・・あれ?ここは何処だ。確か俺はメントスの砦を出て敵の本拠地を探って
いた筈だったよな。それから海岸の崖辺りに結界が張られているのを見つけて、
そこからが思い出せないな)
「・・・京矢、水鏡京矢。聞こえていますか?」
「誰だ?あんたは」
「私はマリエル。一応この世界で女神やってるわ」
「女神だと!」
驚いた京矢は改めて辺りを見回した。見た事も無い部屋でとても暗く自分の
周りだけがスポットライトを当てられたように明るかった。
「で、ここは何処なんだ?」
「あなた達がいう所のあの世ね」
「という事は俺は死んだのか!?」
京矢は思わず立ちあがり女神に飛びかかろうとするが、すぐに見えない壁に
阻まれ後ろにあとずさって元のソファに座りなおした。
「まあ落ち着いて。一つ確認したいんだけどあなたこの世界の住人じゃ無いわ
ね。それにその頭、まるで勇者だわ」
「質問は一つだったんじゃないのか?まあいい」
京矢は自分の家の前からこの世界に突如として移動して来た事を話した。
「扉が門の役割をしたのね。そうなると転移者か召喚者という事ね、じゃあまず
は現状の話をするわね」
「ちょっと待ってくれ、俺の仲間はどうした?ガーウィッシュは?ピッポは?」
「まあまあ落ち着きなさいな。その辺りの話もするからまず聞いて欲しいの。あ
なたはあの海岸でゲオルグというヒューマンによって殺されたの。それを見たお
仲間はすぐに飛んで逃げて行ったわ。多分生きているから安心なさい」
「そうか無事なんだな」
京矢は安心した。自分が言い出して彼らに危機をもたらしてしまった。自分が
死んでしまった事は残念だが起きた事はしょうがなかった。
「それで死んだはずの俺がどうしてここに居るんだ?」
「それはねあなたがこの世界の人間じゃないので転生させる事が出来ないからこ
こに来てもらったのよ」
「転生出来ない?じゃあ俺はどうなるんだ?」
「転生出来なければあなたは消滅するしか無いわ」
「そうかじゃあ仕方ない。さっさと消し去ってくれないか」
「まあまあ全くあなたはせっかちねえ。話には続きがあるの。転生出来ないのは
あなたが正規のルートを踏んでこの世界に来たのではなく、多分人為的に召喚さ
れたからなの」
「召喚?転移した訳じゃ無かったのかよ」
「その可能性も有るんだけど、その場合は私がその転移者を把握してるはずなの
よ。でもあなたの存在は分からなかったわ。だとすると私の理に反した存在とな
るので召喚者じゃないかと思うわ」
「何か難しそうな話だな。それであんたは俺をどうしようってんだ?」
京矢は少し苛立ち始めた。死んだはずでもう転生すら出来ない。なのにこんな
所で尋問攻めとは余り愉快な話ではない。
「実は召喚者だとすると転生する可能性があるのそれには一つの条件があるのだ
けれど、だからあなたの魂をここに呼んだってわけ」
「何だよもったいぶって、それで条件ていうのは何だよ」
「でわあなたが提案を受けたとして話を進めましょう」
そう言って女神は話しをし始めた。
この世界(星)は定期的に魔王が現れ世界に対し破壊活動を行うらしい。それ
で女神は他の世界の魂を掬って来てこの世界(星)に転生させるのだという。転
生者は転生する際魔王を倒す契約を行いスキルを貰って転生する訳だが、誰もが
勇者になれる訳ではなく条件を満たす努力をして行く事となる。
「なるほどな。シフォナの婆さんに聞いた話と概ね一緒だな。しかしあんたらも
ご苦労なこったな、自分には全く関係ない事をその上司とやらにさせられている
んだから」
「仕方が無いのよね、女神に生まれた以上この仕事はやり続けなきゃならないか
ら」
京矢はちょっと同情した自分も遺伝とはいえその生まれであるが故に同じよう
な人生を歩んで来たのだから。
「あなたは現在この世界では登録されてないので、その魂を新たに赤ん坊として
転生させようかと思っているの」
「また赤ん坊としてここでやり直せってか?」
「そうよ。今度はちゃんと勇者候補としての契約をして生まれ変わってもらうわ
。ただ今度は他の人と同じく能力は今より低くくなるし、どこに生れ落ちるかは
保障出来ないけど」
「また人間には生まれられないのか?」
「それを保証する事は出来ないわ。流石に生まれを自由に来るのであればこんな
苦労はして無いわ。だってこの250年間勇者は一人も現れていないのよ、どん
だけ私が苦労してきた事か。それなのにあの上司め・・・」
女神は一人でさんざんその上司とやらを罵倒し不満を京矢にぶちまけた。
「1つ質問していいか?このまま俺を元に戻すって事は出来るか?」
「それは無理ね。それが出来るのであれば今頃戻しているもの」
「だろうな」(転生してしまえばこの頭ともお別れだが、それで訳の分からん種
族や貧困の家庭に転生しても詰まらないからな。いやはやどうしたものか)
「ちょっと待って。まあ良いわじゃあ魔王と一つ取引してみましょう」
「お前魔王と直接話し出来んのか!?」
「女神ですもの出来るわよ。ちょっと待って今魔王に聞いてみるから」
そう言うと女神は交渉に入ったらしく暫く沈黙の時間が流れた。とはいえ京矢
は魂の状態なので時間の概念は無かったが、少し経ったと思った頃にまた女神が
話しし始めた。
「魔王と話はついたわ。まあちょっとかかったけどあなたを召喚してくれるらし
いわ。良かったわね」
「そうかそれは良かった。それで戻ったら何をすればいいんだ?」
「その話が途中だったわね。多分戻ったら勇者になる条件が理解できるようにな
るからそれに従って条件をクリアして魔王を倒してくれればいいわ」
「随分と簡単そうに言ってくれるよな。そもそも250年も勇者は現れなかった
んだろ。何か問題があったんじゃないか?」
「分からないわ。私は人の魂を見て魔王を討伐する為に役立つスキルを与えて来
たけど何故か皆殺し合いを始めちゃうのよね。どんだけ私が思っているのか忘れ
てしまって嫌になるわ」
女神はもう疲れたと言わんばかりの口調で言った。
「あんたそれは間違っているぜ。だいたい勇者って1時代に1人って決まってん
だからそりゃ争いになるだろ。他の候補が勇者になったら今まで自分がやって来
た苦労が水の泡になるって考えたら魔王と戦う前に勇者候補との戦いになるのは
当然だぜ」
「あらそんな設定あったのかしら?皆勇者になれると思ってたけど1人だけなの
ね。知らなかったわ」
「あんたがそれじゃ無理だよ。一度外界の事も見てきたらどうなんだい?」
「私は下界の事知ってたつもりよ。だけどそんなこと誰一人言ってなかったし」
「奴らは納得ずくで契約して人生やり直しているからあんたの言葉に忠実だった
のさ。俺はそうじゃないから考え方が違うんだろうな」
「だとするとこのルールも含めて勇者については上司と話をしなきゃならないわ
ね。そうじゃないと今のままではまた同じ繰り返しになる」
「そうだな。まず勇者候補同士の争いを失くさないと魔王までは中々辿り着け
ないぜ」
「分かったわ、私はその辺りを上司と相談して改善を図ってみるから、あなたは
もう一度今度は正式に勇者目指して頑張ってみて」
「面倒くさいけどまあもう一度チャンスくれるっていうならやってみるさ」
「あ、そうそう魔王が言ってたけど再度召喚する場合どこに・・・」
話しを聞いている最中、京矢は突然召喚用の魔法陣に取り囲まれ何処かに飛ば
されていった。




