第20話 王国・連邦、臨戦態勢
「リザードマンは全く浅ましい種族で、今回の事は何と申しましたら・・・」
「まさかゲオルグを使ってまでエルフを叩くとは思いもよらなかったな」
「『レボリューション』の効果なのでしょうか?リザードマン共に知恵が付い
て来ている様な気がしますが」
「そうかもしれませぬ、『レボリューション』は種の発展に寄与する、我が帝国
でも知っている者はそう居らぬ秘術中の秘術」
「今後はその辺りも含んで作戦を考えた方が良いかな」
連邦議事堂内の議長室内でアイヴァンと書記官のウラジミール、そしてサリエ
ルとゲオルグの4人がグンナーの造反について会議を行っていた。
「会議中失礼します。ジョーヌより至急の伝令が参りました。如何いたしましょ
うか?」
「通せ」
アイヴァンが指示を出すとすぐ伝令が部屋に入って来た。
「失礼します。今夜夜半ジョーヌの駐屯地内にエルフが侵入しグンナー隊長が暗
殺されました」
「何だと!」
「これはやられたな。して敵の構成とこちらの被害については?」
「エルフは4名だけで侵入したらしく、こちらの被害は司令本部と食糧倉庫を燃
やされ士官を含めて兵が8名殺害されました」
「分かった下がって宜しい。それからサリエル、君はひとまず戻って事態の収拾
に努めてくれ給え」
伝令とサリエルはジョーヌに戻って行った。
「被害甚大だのう。アイヴァン様これでは陽動作戦は継続出来ませんな」
「敵にも中々出来る者がいるらしい。ゲオルグ、君達が戦っていた時はそのよう
な者がいる事を気づけ無かったのかな」
「我々が戦っている時は多少魔法が使える者はいましたが、それ以上の者は見当
りませんでした」
「一定の空間に居る者の能力を見通せる君がいても気が付かないなら、誰にも分
らんだろうな」
「アイヴァン様、私はこれからどうしたら良いでしょうか?」
「ゲオルグ、君は暫く休んでくれていいよ。次の作戦が決まったらまた君を呼ぶ
から下がっていいよ」
「有難うございます。それではこれにて」
ゲオルグは恭しく礼をすると部屋を出て行った。
「さて、これからは如何いたしますか?」
「王国の内部も結局シフォンがギーレルに残ったから潜入も出来なかったから
な、リザードマンの方は一度撤退させよう」
「メントスの方はどういたしますか?」
「メントスは継続する、形を変えてだがね」
「形を変えるのですか?」
「そうだ。今のままでゲリラ的に王国突っついても良いんだが、それだと我々も
疲弊するし何よりもザーギンの奴らが黙っていない。なので一度リザードマンも
含めて国内の戦力を再編成してより強力な軍隊を作って行こうと思う」
「軍隊の再編ですか、これは大変興味深い。明日からまた忙しくなりそうです
な」
翌日、京矢とカタリナはリザードマンの駐屯地強襲の報告の為、王都に来てい
た。
「・・・という事でリザードマンの所に行ったんだけどダメだったかな?」
「ダメも何も無いわな。しかしそのヒューマンはひょっとするとゲオルグかの
う」
「俺も見てないんで何とも言えないがな」
「王国の暗部の報告ではアイヴァンの秘蔵っ子らしいんじゃ。属性は10種類は使
えるらしい」
「10種類もか。それは骨が折れそうだな」
「ひょっとするとアイヴァンよりも厄介かもしれん」
「丁度良い。連邦の他の戦力も教えて貰おうか」
「連邦の戦力か長くなるが良いか?」
「ちょっと待った。その話俺達にも聞かせてくれないか?」
シフォナが話し始めようとした時、ガーウィッシュとピッポが入ってきた。
「ガーウィッシュ、それにピッポ。どうしたんだ?」
「どうしたじゃねえ。リザードマンと一戦やらかしたそうじゃねえか。ミランダ
に聞いたぜ全く俺に報告も無しに」
「ごめんなさい師匠。私が言ったの、報告するならシフォナ様が良いと」
「お前が言ったならしょうがねえな。だけどキョーヤてめえはダメだ」
「何言ってんだよ俺は悪くねえぞ」
「お主ら仲良いなホント」
「仲良くねええ」京矢とガーウィッシュは同時に叫んだ。
「じゃあ改めて連邦の戦力じゃったな。基本的に連邦には種族ごとに4軍あって
上位からヒューマンのボリス将軍、ザーギンのスミルノフ将軍、ヴォルフガング
のハインツ将軍そしてフォキシスのカミンスキー将軍がいるんじゃ」
「ヒューマンは解るが他が解らん」
「ザーギンは海洋性の獣族でなサメ種族での主に水属性の魔法を使う。ヴォルフ
ガングは狼じゃな。足がとても速くて風魔法が得意じゃ。あとフォキシスは狐な
んじゃがこいつらが結構厄介でな」
「強いのか?」
「強いというか土系の魔法を使うんじゃが高位になると幻術を使ってきてなこいつ
らが厄介なんじゃ」
「幻術かあ」
「あたしも小さい頃フォキシスにばかされた事有ったわ。お腹すいてた時に団子
貰ったの、美味しいと思って食べてたら途中で泥に変わって」
「まじかよ!そういうのが本当にあるんだな」
「将軍の中での序列は下位にあるが一番警戒しなければならないのはカミンスキ
ーかもしれん。単体の戦力で一番強いのは『ダークネスハリケーン』ヴォルフガ
ングのニコライかの。次点で『スプラッシュマイスター』ザーギンのペトロフじ
ゃな」
「火炎魔人フドー、雷光のテレジアなんてのもいたな」
「結構強そうなのがいるんだな」
「私が知ってるのは泥人形のドロテアって人だわ」
「何だよ泥人形のドロテアってのは。語呂合わせしてんじゃねえよ」
「しょうがないじゃない冒険者の中では結構有名なのよ」
「それにネクロマンサーのゲオルグを合わせて、今出た名前はわしも知ってお
る。ドロテアは微妙じゃがの。でも皆強敵じゃから覚えておいて損はないはず
じゃ」
「ゲオルグはネクロマンサーの能力だけじゃないんじゃねえか?だって10個も
属性持ってんだろ」
「そうじゃな。そやつも含め暗部には連邦の要注意人物の情報を緊急に調査し
て貰わねばならぬな」
「婆さん敵の情報もそうなんだが、こっちも一度騎士団招集し直して戦力の確認
を行った方が良いかもな」
「戦力の再編成はやりたいと思っていたのじゃがメントスが結構活発でな中々集
める事が出来無いんじゃ。交替で砦に行ってくれる戦力があれば良いんじゃが」
シフォナは椅子から立ち上がり窓辺まで歩いて外を眺めながらため息交じりに
話した。
「じゃあ俺達が行こうか?」
「キョーヤが行ってくれるのか?」
「俺達しかいないんだろ?行ってやるよ。それに覚えた魔法もどんどん使わない
といけないしな」
「あたしも行くわキョーヤ。新しい魔法だったらあたしも負けないわよ」
「じゃあしょうがねえ、俺も行くわ。修行も終わってねえし、それにこいつら何
しでかすか分からねえからな」
「ええ!?じゃあ私も行くわよ。ヒーラー居ないんでしょ」
「カタリナは ジョーヌ戦線が有るからだめだろ」
「ダメって言わないで!」
「まあ良いじゃろ。ミランダにはわしから言っておくで」
「やったあ!シフォナ様大好き!」
王国、連邦お互いの思惑の中で京矢達は新たな修行の地、メントスの砦に向か
う事となった。




