第18話 急転直下、スレイン倒れる
「毎日毎日、突撃と撤退の繰り返し。これに何の意味があるというのだ?顧問
殿」
「ヒューマンとエルフの連合軍にまともにぶつかって勝てるとお思いなのです
か?隊長殿」
「じゃあ夜襲でもやれば良いではないか!」
「何を言っておるのですか。夜目の効くエルフ相手に夜襲をかけても勝てるわけ
が無いでしょう?だから時間をかけて奴らを消耗させているのですよ」
「ああ言えばこう言う。全くインプ奴が」
そう吐き捨てるとリザードマンの隊長グンナーは部屋を荒々しく出て行く。
「全く何故我々があんなインプなぞの指示に従わねばならぬのだ」
「あの夜襲以来族長はあのインプに頼りっきりですからね。従うしかありません
や」
「それにあのヒューマンの副官も気に食わん。特にあの陰鬱な顔を見ていると腹
が立って仕方がない」
「それでもあいつは相当な手練れじゃないですか。今日もあいつだけがエルフを
仕留めていましたからね」
「あいつだけが・・・か。そうだいい手が浮かんだぞ」
「それはどういう手なんですかい?」
「それはな・・・」
リザードマンの隊長グンナーと副官のバデルはそのまま暗闇に消えて行った。
「ここは・・・?」
「目を覚ましたか、ミドラ」
「ロッヂに戻って来れたのか妾は」
「ああ、京矢がお前を抱えて戻って来たんだ。腹をやられたみたいだが、どうだ
飯は食えるのか?」
「スープ位なら飲める」
「そっか。じゃあ持って来てやるよ」
ロッヂに戻って来てから京矢はヒールをし続けた。その結果夜にはミドラの状
態も良くなりそのまま朝を迎えた。ミドラが窓の外を眺めているとガーウィッシ
ュがスープを持って戻ってきた。ミドラはそのスープを貰って飲み始める。
「昨日どこに行ってたんだ?キョーヤに聞いても場所が分からなかったらしくて
な」
「帝国の・・・コサージュに行っていたんだ。キョーヤの新たな魔法を手に入れ
る為にな」
「という事はその傷は魔装兵にやられたのか。しかし、お前にそこまでの傷を負
わすが者いるとは」
「見たところ将校みたいやったなあ。どちらかというと武人タイプみたいやった
があれ程の魔法を持っているとは思わなんだわ」
2人が話をしている所に京矢が入ってきた。
「ようミトラ起きたのか。思ったより元気は有りそうだな」
「キョーヤか。昨日はすまなかったな、お蔭でこの通りだ。まだ本調子では無い
がな」
「キョーヤも来たんだったら丁度いい。昨日までの魔法について聞いておくか」
「ああ良いよ。昨日はさ、すげえの手に入れたんだ。そうだガーウィッシュ、俺
に魔法攻撃してみてくれ」
「え、良いのか?」
「大丈夫だ」
ガーウィッシュは京矢に火の魔法を撃った。ガーウィッシュはから放たれた火
は一直線に飛んで行き京矢の顔に当たる寸前、突然消えた。
「何!火が消えただと」
「ふふん」
「魔法キャンセルやな。変換魔法属性の一つでキャンセルというが実際は火自体
が元素に変換されているだけや」
「そうだったのか、じゃあ次はあの将校の放った魔法かな。見てみる?」
「是非見てみたいもんやな、属性が解らんかった。雷っぽかったけど雷では妾の
土魔法は通せ無いからのう」
「じゃあ外に向けて撃ってやるぜ」
京谷は窓の外の木に向かって魔法を撃ってみた。すると京矢の両手から雷が出
て来て続いて火が雷の周りに立ち昇る。京矢は次の瞬間魔法を木に向かって放っ
た。魔法は木に突き刺さりその後、破裂した。
「雷に火、成程プラズマか。初めて見たわ。火はヒューマン特有の魔法属性やが
ヒューマンは絶望的に雷の属性が出にくい。だからプラズマの属性はレアな属性
なんや」
「じゃあかなりいいもん貰った訳だな、しかしそんなレアな属性を持っているあ
いつは強敵になりうるかもな」
「そうだな。マドラにここまでの傷を負わせる奴はいないからな」
京矢達が魔法を検証していた時、庭に魔導騎士が現れた。
「マドラ様、マドラ様は居られますか?」
「どうしたんだ?騒がしい」
「は、突然お騒がせいたしまして申し訳ありません。私はミランダ様直轄の魔導
騎士でジョシュアと申します」
「ミランダの所の奴か。どうした?」
「それが・・・」
ジョシュアはかいつまんでベルデ戦線の状況を説明した。
「それでいつも通りリザードマンを追い払ったんですが、突然倒れていたリザー
ドマンが起き上がり攻撃を再開し始めたんです。そこからは前線が混乱してスレ
イン殿が歌で混乱を収めようとしましたがスレイン様自体がリザードマンに・・
・」
「やられたのか?」
「命は取り留めましたが、意識は回復せず」
「何だと!ガーウィッシュ行くぞ」
「待てキョーヤ。まずは最後まで話を聞くんだ」
興奮した京矢をガーウィッシュは制した。
「それで今前線はどういう状態なんだ?」
「魔法の効果が消えたのかリザードマンは撤退しましたが前衛の兵がかなり深手
を負いまして、このままでは前線が維持できないからマドラ様に来て欲しいとミ
ランダ様から言付かってきました」
「そうか。しかし残念だったな。マドラは今この通りでな」
「マドラ様一体何が起きたんですか?」
ジョシュアは心配そうにマドラに問いかけた。
「ジョシュすまんな、妾はこの通りでな。それでミランダは妾に何をさせたかっ
たんや」
「多分ゾンビ対策をマドラ様にはお願いしたかったのかと」
「ああ妾に廃棄物共の相手をしろと、判った。じゃあキョーヤよ妾の代わりに暴
れてくれんか。やり方はこの間教えた通りにな」
「分かったぜ、じゃあ行こうか騎士さんよ」
「え?マドラ様、大丈夫なのですか?」
「こいつはもう妾よりも数段上の魔導士なんや。安心して連れて行くが良い」
京谷とジョシュアは一緒に前戦に転移した。
「スレイン、スレインは何処にいる?」
京矢はジョーヌ戦線の駐屯地で看護病棟を探し回っていた。
「キョーヤ来たのね。スレインが大変なのよ」
「おうカタリナか。お前は大丈夫だったのか」
「私は大丈夫よ。スレインはあちらにいるから行きましょう」
スレインは士官用の部屋で一人ベットで寝ていた。
「スレイン・・・起きないのか?」
「外傷は殆ど直したんだけど起きないのよ。どうやら敵の中に精神系の魔法を使
う相手がいるみたいで、他にも数名目を覚まさない方もいるの」
「精神系の魔導士か。そう言えばミランダは何処にいるんだ?」
「もうキョーヤったら久し振りに会ったのに他の女に会いに行くというの?」
「ええ!?何言ってるんだカタリナ」
「分かっているの私。今はそんな事言っている場合じゃない事を。でもねこんな
時だからこそ私がキョーヤを好きって事知って欲しいの」
「カタリナ、お前」
「いいのキョーヤ、返事は何時でも。ただ私がキョーヤの事を好きっていう事を
覚えてて欲しいの、ごめんねキョーヤ」
「いや良いんだ。お前の気持ちは有難く受け取っておくよ。しかし、今は時間
が惜しいんだまずはミランダの所に行こう」
2人はミランダのいる作戦司令本部に向かった。




