第11話 最強?最悪?魔導士ガーウィッシュ
宿屋通りを抜けるとひと際大きい建物が現れた。屋根の上では煙突が煙を吐
き、多くの人々が出入りしていた。
「随分でかい建物だな。煙が出ている所を見ると、これは公衆浴場なのか?」
「キョーヤのいた世界にもこういう施設は有ったの?」
「ああ、有ったよ。ちょっと見た目は違ったがな。それでここに用が有るのか
?」
「え?まあ、そうなるわね」
カタリナはさっきから何やらソワソワし始めていた。
「キョーヤよ。先程、ガーウィッシュは有る事により魔導騎士団長になれなかっ
たと言ったじゃろ、あ奴はな何よりも女体が好物なのじゃ」
「なんだとおおお」
「ごめんなさいねキョーヤ。それでもね私が考えうる最強の一人なのよ。だから
何とか説得して欲しいの」
「何?説得して欲しいだと!?」
カタリナは哀願する感じで京矢を見つめていた。
「そう言う事だったのかよ。まあ良い、それでそのガーウィッシュっていう人は
何処にいるんだ?」
「多分なんだけどあそこの屋根に見える人だと思うの」
京矢はカタリナの指さす方向を辿って屋根を見てみた。すると一人の男らしき
姿が4つんばいになって今まさに女湯を覗いていた。
「チッ何だよあれは。それであそこにはどうすれば行けるんだ?」
「それは簡単じゃ。我と一緒に来い」
シフォナが言うや否や2人は空を飛んで行き、屋根の男がいる所に飛び降り
た。
「ウヒヒヒ。今日はまた質が高いわ。それに若い娘が多い。今日はラッキーデー
ですな。ごっつあんです」
「これ、ガーウィッシュよ。また覗きをしておったな」
そう言うとシフォンはガーウィッシュの背中に飛び乗り腕を取ろうとしたが、
「ぬ!ババアか、こんな所まで何しに来た?」
ガーウィッシュは体制を素早く替えシフォナから離れた。そして京矢の横から
一目散に逃げようとしたその時、急に目の前が逆さまに見えた。ガーウィッシュ
は京矢に取り押さえられ気を失った。
「ガーウィッシュ起きろ」
遠くで声がした。しかし自分の目の前は靄が掛かって何も見えない。
「凄いわキョーヤ。師匠をこんなに簡単に捕まえられるなんて」
(ん?この声はカタリナか?確か昼に会ったが、すぐ巻いたはずだ)
「起きろガーウィッシュ。美女が裸で歩いているぞ」
「何い!それは一大事だ助けて・・・あれ?」
「本当にクズじゃのお主は」
シフォンナ呆れた顔をして言った。
「何か俺に用か?」
「何か用かじゃないわ。弟子が困っているというのに逃げてばかりで」
「いや、俺は別に逃げてたわけじゃ無くて・・・」
「もう良いわ。それよりもな、こいつの話を聞いてやってくれんかの?」
「こいつ?」
ガーウィッシュは京矢を暫くまじまじと見てまた地面に寝そべった。
「俺は男にゃ興味はないぜ」
「師匠、お昼にも話しましたが彼がその勇者なのです」
「何だと!そうか成程な。俺がこんな貧相なのにやられるとは思わなかったが、
ひっくり返されたのは、勇者のインチキ魔法でやられたからなんだな」
「貧相で悪かったな。それに俺は魔法は使えないし、あれは合気っていう武道
なんだ」
「ブドウ?なんじゃそりゃ」
「まあ戦う技術って感じかな」
「そうなのか。でもな勇者って言ったら魔法が使える筈だぜ」
「え?本当に?」
京矢は驚いた。この世界に来て今まで一度も魔法の感覚すら感じなかったの
に、それが勇者ならある筈だなんて。
「婆さんまだ話してなかったのか?」
「え?まあな。魔法は我の範疇外じゃからの」
「何言ってやがんだ。王国一の魔法使い様がよ」
「え?騎士団長なのに魔法が使えるのかあんた」
「我の事は長くなるでまた今度にして、まずは勇者についてじゃな」
シフォナはベンチに腰を下ろし、袖の中からキセルを取り出し一服し始めた。
「勇者っていうのはな、転生者がなる権利を持っているんじゃ。それでの転生す
る時に『ギフト』なるものを貰うんじゃがそれが魔法になったり特殊能力になる
のじゃ」
「へえ、そう言うものなんだ。でも何であんたはそんな事知ってるんだ?」
「我もその転生者だったからの」
「まじか。何であんたそれを先に言わなかった」
「我の転生者としての役割はとうに終わってしまったからじゃ」
「終わったってどういう事だよ。現にあんたはさっきだって凄い能力使ってじゃ
ないか」
京矢は訳が分からなくなっていた。
「それはそうなんじゃが。この程度の力では勇者としては力不足なんじゃ。能力
を開花し勇者に覚醒できるのはほんの一握りでの、我はその能力を開花させられ
んかったので、後進を育てる為に家庭教師に身をやつしてこの国に来たのじゃ」
ガーウィッシュは起き上がり、シフォナの隣に座って話を続けた。
「カタリナには話すなとババアに言われていたが、もう良いだろ。実はクラウス
は転生者だったんだ」
「お父様が?」
「あいつが覚醒出来ずにあんな事になってしまって、それから俺は自暴自棄にな
ってこんな事をしていたが、婆さんはクラウスの代わりに国を守ると言って騎士
団長になってこの国を支えて来たんだ」
「だけどさあ転生者って勇者になる必要ってあるの?」
「転生者はの転生する際、女神に勇者になって魔王討伐する契約をするんじゃ」
「ま、魔王!?そう言えばエルフの長老もそんな事言ってたな」
「我々転生者はその契約が有るからそれぞれ経験を積み勇者に覚醒して魔王を討
伐に行かねばならんのじゃ」
「それでカタリナの親父さんは何でダメだったのよ?」
「クラウスは他の転生者、いや勇者候補というべき者に殺された」
「どういう事だよ。他の転生者に殺されるなんて」
京矢とカタリナはお互い顔を見合わせた。
「勇者になれるのは一時代に一人だけだからじゃ。つまり他に勇者がいると自分
は勇者になれなくなるので、ライバルを消す訳じゃの」
「それ何の罰ゲームだよ。転生したけど契約で戦わされた挙句、同じ転生者に殺
されるなんて・・・」
「転生する際に女神には念押しされる事じゃから皆納得ずくだがな」
「それでカタリナの親父さんを殺した奴は今どうしているんだ?」
「あ奴は今連邦の議長になっておるわ」
「何だと!それでそいつは覚醒出来たのか?それにあんたらは指咥えて放置して
いたのか?」
「いや覚醒はしとらん。それに我だってただ指を咥えていた訳ではない。弔い合
戦とばかりに何回かやりあったんじゃが、あの当時の奴の力は強大でな我らの力
が及ばなかったのじゃ」
「あの時のイヴァンには全く歯が立たなかったからな。すごく凹んだぜ」
「何故イヴァンが覚醒出来なんだかは不明じゃが、今回のエルフと王国の砦の件
に奴が絡んでいるのは確実じゃ」
「現議長が転生者だとそれ相応の戦力を集めないといけないな」
「そうなるとキョーヤにも早く覚醒して貰わないといけませんわね」
「全く大変な事になって来たもんだ」
と言って京矢は頭のタオルを取って汗を拭いた。
「おおこれこそが勇者の証か」
ガーウィッシュは京矢の頭を見て感動した。
「いやいやいや。そこ感動するとこじゃないでしょ。それに失礼だよ」
「何を言っているのキョーヤ。師匠からすれば最大の賛辞なのよ」
「訳わからんわ」
「理解した。不肖このガーウィッシュ。カタリナの為にもキョーヤを真の勇者に
すべく力を貸すぞ」
「師匠有難うございます」
今夜ここに王国最強の魔導士が京矢のPTに入った。




