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血の継承【改訂版】  作者: Salhi smail
第一章 アルマザ学院編

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壊すな


第三班は、班として歩いてはいなかった。


ラカンは先頭にいた。


両手を背中で組み、まるで初めての訓練ではなく、ただの散歩へ連れていくかのように、落ち着いた足取りで進んでいた。


その後ろを、シグランが顔を上げて歩いている。


遅れているようには見えない程度に近く。


従っているようには見えない程度に遠く。


マヤは二人の間を歩き、ラカンと道、そしてシグランへ視線を移していた。


一度だけ、素早くシグランを見た。


それから、また前へ目を戻した。


イザンは、それに気づいた。


理由の分からない小さな不快感が胸に生まれた。


すぐに彼女から目を逸らし、最後尾を歩いた。


一歩進むたびに、昨日の試合を思い出した。


包帯が肋骨を締めつける。


身体を大きく動かすたび、肩が痛みに逆らった。


隠そうとした。


だが時折、呼吸が乱れ、片方の足が半歩だけ遅れた。


ラカンは振り返らなかった。


だが、気づいていた。


イザンが倒れずに足をもつれさせた時、少し前に聞いた言葉が蘇った。


壊すな。


     ◆


それは、班分けの会議が終わった後のことだった。


ラカンは学院長室を出た。


手には、自分が受け持つ生徒の名が書かれた紙がある。


マヤ・タライン。


シグラン・ザラン。


イザン・ファドゥース。


もう一度、名前を読んだ。


「静かな水。傲慢な炎。そして、誰もどこへ置けばいいのか分からない少年」


紙を折り畳む。


そして、足を止めた。


廊下には、ほかにも誰かがいた。


窓から入る光が途切れ、影が始まる場所。


そこにシャーミルが立っていた。


足音は聞こえなかった。


気配も感じなかった。


暗い外套と長い白髪をまとい、必要になった瞬間、壁の中から現れたかのように、ただそこにいた。


ラカンは姿勢を正した。


「シャーミル将軍」


シャーミルが言う。


「普通に話せ。ここには誰もいない」


ラカンは周囲を見る。


それから、シャーミルへ目を戻した。


「影の将軍が暗闇から現れると、普通に話すのが難しくなる」


シャーミルは答えなかった。


そして、その沈黙だけで、自分の登場の仕方に何の問題も感じていないことが分かった。


ラカンは手元の紙を見る。


「少年のために来たのか」


「なら、理解しているな」


「ファドゥースか?」


シャーミルが言った。


「名はイザンだ」


ラカンの表情がわずかに変わる。


「なら、なぜ皆にそう言わない?」


シャーミルは真っすぐに彼を見る。


「名前は人を殺す」


ラカンは黙った。


何も説明していない言葉だった。


だが、その先の問いをより危険なものにした。


「何者なんだ?」


「面倒を見ろ」


「それは答えではない、将軍」


シャーミルの目がわずかに細くなった。


「敬称は要らないと言った」


ラカンは息を吐いた。


「分かった。それは答えではない」


「だが、お前が知る必要のあるすべてだ」


ラカンの顔に、わずかな皮肉が浮かぶ。


「半分しか話さない、厄介な癖があるな」


シャーミルが言う。


「残りの半分は、もっと早く人を殺す」


皮肉が少しずつ消えた。


ラカンは、より注意深くシャーミルを見る。


「俺を選んで、あの子を鍛えさせたのか?」


「違う」


ラカンが片眉を上げる。


シャーミルは続けた。


「担当教師の名を知ってから、お前の記録を調べた」


「当然、許可なしで?」


「許可があれば、何か変わったか?」


「変わらない。ただ、もう少し礼儀正しい違反になった」


シャーミルが言う。


「記録だけで十分だった」


視線が紙へ落ちる。


「訓練生を読むことができる。判断を急がない。それが必要だ」


ラカンはシグランの名を見る。


「同じ班には、シグラン・ザランもいる」


「知っている」


「気にならないのか?」


シャーミルが答える。


「気になることは多い」


そして、そのまま立ち去ろうと背を向けた。


ラカンが呼び止める。


「イザンは危険なのか?」


シャーミルは止まった。


「壊すな」


ラカンは眉を寄せる。


「そんなことは聞いていない」


シャーミルが振り返った。


「俺は答えた」


ラカンは彼を見続けた。


「何が待っている、シャーミル?」


「お前が無視できないものだ」


そう言い残し、廊下の奥へ歩いていった。


一瞬で消えたわけではない。


ただ歩き続けた。


やがて影が口を閉じ、彼を呑み込んだように見えた。


ラカンは一人残された。


最後にもう一度、紙を開く。


「ザランの少年が一方にいて……」


視線が三人目の名で止まった。


「もう一方には、影の将軍が名を隠す少年か」


紙を折り畳む。


「素晴らしい」


     ◆


イザンの足が石へ擦れる音が、ラカンを現在へ戻した。


マヤも、彼がつまずいたことに気づいた。


直接振り返ることはせず、歩調をわずかに落とした。


シグランは何もしなかった。


あるいは、何もしなかったふりをした。


ラカンは歩き続けた。


訓練はまだ始まっていない。


それでも、三人はすでに自分の一部を見せ始めていた。


     ◆


学院の騒音から離れ、都市の近くにある森へ続く道を進んだ。


黒きナツメヤシの園とは似ていなかった。


死んだような静けさもない。


足を踏み入れた者を呑み込む闇もない。


学院の教師たちがよく知る森だった。


ほかの生徒から離れ、簡単な試験を行うために使われている。


ラカンは、木々の間に開けた土の広場へ三人を連れていった。


中央には古い切り株がある。


その上には、澄んだ水が半分ほど入った、丸い石の器が置かれていた。


端には、低い岩が三つ並んでいる。


表面は傾き、それぞれ形も高さも違っていた。


シグランが周囲を見る。


「ここが訓練場か?」


ラカンが答える。


「違う」


器を指す。


「これが授業の始まりだ」


「森の中で?」


「教室は話すには便利だ。ここでは、物事はもう少し容赦がない」


ラカンは器へ近づき、縁に手を置いた。


「戦いを教える前に、何かを攻撃しろと命じられていない時、お前たちの力がどう応えるのかを見たい」


イザンの身体が強張った。


器。


その言葉が、シャーミルの小屋へ連れ戻した。


自分の存在をどう扱えばいいのか分からなかった水。


シグランが言う。


「子供の試験だ」


ラカンが彼を見る。


「素晴らしい。なら、恐れる必要はないな」


シグランの目が細くなった。


ラカンが続ける。


「正式な選別用の器ではない。だが、カマンの最初の残響を読むには十分だ」


器を示す。


「縁へ手を置き、力が自然に反応するのを待て」


シグランを見る。


「見せつける必要はない」


「まだ何もしていない」


「今がお前に最も期待している瞬間だ」


マヤは、小さな笑みを隠すように目を伏せた。


ラカンが言う。


「マヤ・タライン。お前からだ」


     ◆


マヤは前へ進み、石の上へ手を置いた。


水は一瞬、静かなままだった。


やがて、長く息を吸い込んだかのように動いた。


柔らかな波が立ち上がる。


飛び散ることなく、自らの周囲を回った。


その後、水面は静かな円へ戻った。


小さな池を風が撫でたような、わずかな波紋だけが残る。


イザンは見つめていた。


水は、彼女が命じるよりも先に理解したように見えた。


ラカンが言う。


「良い制御だ」


マヤの目がわずかに和らぐ。


だが、ラカンは続けた。


「ただし、お前の水は動くたびに謝っている」


マヤが顔を上げる。


「どういう意味ですか?」


「動きを必要以上に綺麗にしようとしている」


水面を指す。


「精密さは良い。だが、その中に隠れた迷いは良くない」


マヤはゆっくりと手を離した。


何も返さなかった。


だが、その言葉を覚えていた。


ラカンが呼ぶ。


「シグラン・ザラン」


シグランは、器のほうが自分を迎える準備をするべきだという態度で前へ出た。


手を置く。


水が即座に震えた。


底から泡が現れ、急速に大きくなる。


温度が上がる。


蒸気が昇る。


縁には、小さな亀裂が生まれた。


ラカンが二本の指を石の上へ置いた。


水は一瞬で静まった。


「力を見せろとは言った。器を処刑しろとは言っていない」


シグランは手を離した。


「器が弱い」


ラカンが答える。


「弱いものは、自分の力を扱えない者をよく見せてくれる」


シグランは答えなかった。


ラカンが呼ぶ。


「イザン・ファドゥース」


その名が広場の中で重く響いた。


イザンはゆっくりと前へ出た。


一歩ごとに、最初の試験が蘇った。


器へ置いた手。


動かなかった水。


何かを理解しながら、何も言わなかったシャーミルの顔。


石の前へ立つ。


ラカンが言った。


「手を置くだけでいい。結果を作ろうとするな」


結果を意識しないことなど、不可能だった。


イザンは掌を置く。


そして待った。


色は現れない。


波も立たない。


熱も。


冷気も。


光も。


影もない。


ただ、静かな水だけがあった。


シグランが言う。


「予想通りだ。何もない」


マヤは嘲笑に加わらなかった。


水を見る。


次に、イザンを見る。


その瞳には、口に出さない問いがあった。


イザンは顔を伏せた。


この沈黙を知っている。


だがラカンは、イザンを見ていなかった。


水を見ていた。


最も弱い訓練生でさえ、小さな震えは起こる。


乱れ。


抵抗。


身体の中を命が通った痕跡。


だが、この水は――


静かなだけではない。


時間の外へ出たようだった。


読まない。


拒まない。


受け入れない。


ただ、沈黙している。


シャーミルの言葉が、再びラカンの中へ戻った。


壊すな。


ラカンは普段と変わらない声で言った。


「器の試験は終わりだ」


シグランが眉を上げる。


「これだけか?」


「必要なものは見た」


シグランはイザンを見る。


「俺もだ」


ラカンは答えなかった。


心の中で言う。


違う。


お前は、何も見ていない。


イザンは手を上げた。


水は変わらず静かだった。


マヤはラカンを見る。


何かが起きたのに、それが語られなかった。


そう感じ取ったかのようだった。


シグランは顔を背けた。


彼にとっては、すでに答えが出た問題だった。


ラカンは器へ布をかぶせる。


そして、三つの岩を指した。


「次だ」


     ◆


シグランが岩を見る。


「何だ、これは?」


「立つ授業だ」


「俺たちを森へ連れてきて、立ち方を教えるのか?」


「ああ」


ラカンは続ける。


「どうやら、お前には予想以上に必要らしい」


シグランの顔が変わった。


ラカンは岩へ向かった。


「多くの戦士は、戦いが手から始まると思っている」


地面を指す。


「だが、始まりは足だ。自分の身体をどこへ置くべきか分からない者は、力を使い、より速く倒れるだけだ」


岩のそばへ立つ。


「一人ずつ、岩の上へ立て。攻撃は禁止。属性も使うな。壊すな」


三人を見る。


「バランスを保つために必要な分だけ、カマンを使え」


シグランへ視線を向ける。


「繰り返す。壊すな」


シグランが答える。


「分かっている」


ラカンは言った。


「分かっていないものとして扱い、驚かせてくれる機会を与えよう」


最初にシグランが前へ出た。


軽やかに岩へ上がり、足を固定する。


バランスは良かった。


「終わりか?」


ラカンは足の位置を見る。


「今度は、岩を怯えさせないように立ってみろ」


立ち方の中へ、わずかな圧力が流れ込んだ。


炎は現れない。


だが身体に宿る力が、岩の上で均衡するのではなく、自分を支えるよう岩へ強いていた。


小さな音がした。


岩の端に亀裂が走る。


ラカンが言う。


「落ちたな」


シグランが鋭く見る。


「俺は落ちていない」


ラカンは亀裂を指した。


「代わりに岩が落ちた」


そして付け加える。


「成功したわけではない。岩のほうがお前より礼儀正しかっただけだ」


マヤは目を伏せた。


イザンも、顔に浮かびかけたものを隠すために地面を見た。


シグランが岩から下りる。


ラカンは言った。


「力とは、大地を怯えさせることではない。それは単に、お前が大地の上に立つ方法を知らないという証明かもしれない」


シグランの手が握られた。


だが、黙った。


ラカンが呼ぶ。


「マヤ」


     ◆


マヤは二つ目の岩へ上がった。


静かに体重を分ける。


傾いた表面へ逆らうのではなく、それに合わせた。


岩が揺れる。


身体も共に傾いた。


バランスを失いかける。


足元に薄い湿り気が現れ、すぐに消えた。


姿勢を取り戻す。


ラカンが言う。


「良い」


マヤは立ち続けた。


「だが、まだ失敗を美しく見せようとしている」


彼女がラカンを見る。


「すべての動きを完璧にする必要はない」


少し間を置く。


「時には、成功するだけで十分だ」


マヤは、その言葉も覚えた。


そして、よろめくことなく岩から下りた。


次はイザンだった。


     ◆


三つ目の岩を見る。


低い。


だが、必要以上に高く見えた。


ラカンが言う。


「上がれ」


イザンは片足を置いた。


次に、もう片方。


真っすぐ立とうとした瞬間、肋骨が拒んだ。


岩が足元で傾く。


腕を伸ばし、均衡を取ろうとする。


肩に痛みが走った。


そのまま土の上へ落ちた。


シグランが言う。


「立つことさえ、こいつには難しいらしい」


イザンは答えなかった。


立ち上がる。


そして、もう一度上った。


三度、呼吸する間だけ耐えた。


だが脚が震え、再び落ちた。


マヤが半歩前へ出る。


ラカンがわずかに手を上げた。


彼女は止まった。


今は助けさせたくなかった。


見たかった。


イザンは三度目に上った。


四度目も。


そのたびに、身体は違う形で間違えた。


岩の傾きに反応するのが遅れる。


痛みが強くなると、呼吸を止める。


表面と共に動くのではなく、逆らおうとする。


シグランが言う。


「時間の無駄だ」


ラカンが尋ねる。


「お前の時間は、それほど価値があるのか?」


「これを見るよりはな」


ラカンはシグランを見ずに言った。


「奇妙だな。昨日はもっと長い時間、こいつを殴るつもりだっただろう」


シグランの目が燃える。


ラカンが言った。


「黙れ」


大きな声ではない。


だが、そこで話を終わらせる響きだった。


イザンは五度目に岩へ上った。


マヤの真似はしなかった。


強そうに見せようともしなかった。


できる範囲で足を置く。


少し身体を曲げる。


そして、呼吸した。


一度。


もう一度。


岩が揺れた。


イザンの身体も、共に揺れる。


傾く。


落ちかける。


だが、立っていた。


美しい姿勢ではなかった。


片方の肩は下がっている。


顔色は青白い。


両手は震えていた。


それでも、立っていた。


マヤは無言で彼を見ていた。


器の前では、血の鍵を持たないのではないかと疑った。


だが今は、別のものを見ていた。


イザンは立ち方を知らなかった。


それでも、立ち上がり方を教わる必要はなかった。


ラカンは、布で覆われた器を見る。


次に、岩の上に立つ少年を見た。


水は彼を読めなかった。


身体も、まだ正しく動かない。


技術はない。


制御もない。


それでも、そこには人々が予想するようには壊れない何かがあった。


「もういい」


イザンは苦労しながら岩から下りた。


今度は、倒れなかった。


ラカンが言う。


「今日の授業はここまでだ」


シグランが尋ねた。


「何の授業だ? 立てる者と立てない者がいるという話か?」


ラカンは、亀裂の入った岩を指した。


「お前は、必要のない時まで力を使う」


次に、マヤが立っていた岩を指す。


「マヤは、すべての動きを完璧にするために時間を使いすぎる」


最後に、イザンを見る。


少し止まった。


イザンは、いつもの言葉を待った。


弱い。


役立たず。


何もない。


だがラカンは言った。


「お前は、まだ何も知らない」


静寂が落ちた。


そして続ける。


「自分は知っていると思い込むより、そのほうがいい」


それが褒め言葉なのか、イザンには分からなかった。


だが、痛くはなかった。


ラカンが言う。


「訓練は終わりだ」


シグランが眉を上げた。


「もう終わりか?」


「お前たちが、自分を何者だと思っているのかを話す前に、本当は何者なのかを見たかった」


布で覆われた器を持ち上げる。


「午後は、今日失敗したことから始める」


マヤが尋ねた。


「立つことですか?」


ラカンは、わずかに笑った。


「違う」


歩き始める。


「聞くことだ」


シグランが最初に後を追った。


怒りを抱え、黙ったまま。


次にマヤ。


イザンだけが、一瞬遅れた。


水を動かさなかった自分の手を見る。


次に、何度も落ちながら最後には立つことのできた岩を見る。


器の前で変わったラカンの目を、イザンは見ていなかった。


先頭を歩く彼の頭に残っていた問いも、聞こえなかった。


シャーミル――


俺の手に、何を預けた?

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