壊すな
第三班は、班として歩いてはいなかった。
ラカンは先頭にいた。
両手を背中で組み、まるで初めての訓練ではなく、ただの散歩へ連れていくかのように、落ち着いた足取りで進んでいた。
その後ろを、シグランが顔を上げて歩いている。
遅れているようには見えない程度に近く。
従っているようには見えない程度に遠く。
マヤは二人の間を歩き、ラカンと道、そしてシグランへ視線を移していた。
一度だけ、素早くシグランを見た。
それから、また前へ目を戻した。
イザンは、それに気づいた。
理由の分からない小さな不快感が胸に生まれた。
すぐに彼女から目を逸らし、最後尾を歩いた。
一歩進むたびに、昨日の試合を思い出した。
包帯が肋骨を締めつける。
身体を大きく動かすたび、肩が痛みに逆らった。
隠そうとした。
だが時折、呼吸が乱れ、片方の足が半歩だけ遅れた。
ラカンは振り返らなかった。
だが、気づいていた。
イザンが倒れずに足をもつれさせた時、少し前に聞いた言葉が蘇った。
壊すな。
◆
それは、班分けの会議が終わった後のことだった。
ラカンは学院長室を出た。
手には、自分が受け持つ生徒の名が書かれた紙がある。
マヤ・タライン。
シグラン・ザラン。
イザン・ファドゥース。
もう一度、名前を読んだ。
「静かな水。傲慢な炎。そして、誰もどこへ置けばいいのか分からない少年」
紙を折り畳む。
そして、足を止めた。
廊下には、ほかにも誰かがいた。
窓から入る光が途切れ、影が始まる場所。
そこにシャーミルが立っていた。
足音は聞こえなかった。
気配も感じなかった。
暗い外套と長い白髪をまとい、必要になった瞬間、壁の中から現れたかのように、ただそこにいた。
ラカンは姿勢を正した。
「シャーミル将軍」
シャーミルが言う。
「普通に話せ。ここには誰もいない」
ラカンは周囲を見る。
それから、シャーミルへ目を戻した。
「影の将軍が暗闇から現れると、普通に話すのが難しくなる」
シャーミルは答えなかった。
そして、その沈黙だけで、自分の登場の仕方に何の問題も感じていないことが分かった。
ラカンは手元の紙を見る。
「少年のために来たのか」
「なら、理解しているな」
「ファドゥースか?」
シャーミルが言った。
「名はイザンだ」
ラカンの表情がわずかに変わる。
「なら、なぜ皆にそう言わない?」
シャーミルは真っすぐに彼を見る。
「名前は人を殺す」
ラカンは黙った。
何も説明していない言葉だった。
だが、その先の問いをより危険なものにした。
「何者なんだ?」
「面倒を見ろ」
「それは答えではない、将軍」
シャーミルの目がわずかに細くなった。
「敬称は要らないと言った」
ラカンは息を吐いた。
「分かった。それは答えではない」
「だが、お前が知る必要のあるすべてだ」
ラカンの顔に、わずかな皮肉が浮かぶ。
「半分しか話さない、厄介な癖があるな」
シャーミルが言う。
「残りの半分は、もっと早く人を殺す」
皮肉が少しずつ消えた。
ラカンは、より注意深くシャーミルを見る。
「俺を選んで、あの子を鍛えさせたのか?」
「違う」
ラカンが片眉を上げる。
シャーミルは続けた。
「担当教師の名を知ってから、お前の記録を調べた」
「当然、許可なしで?」
「許可があれば、何か変わったか?」
「変わらない。ただ、もう少し礼儀正しい違反になった」
シャーミルが言う。
「記録だけで十分だった」
視線が紙へ落ちる。
「訓練生を読むことができる。判断を急がない。それが必要だ」
ラカンはシグランの名を見る。
「同じ班には、シグラン・ザランもいる」
「知っている」
「気にならないのか?」
シャーミルが答える。
「気になることは多い」
そして、そのまま立ち去ろうと背を向けた。
ラカンが呼び止める。
「イザンは危険なのか?」
シャーミルは止まった。
「壊すな」
ラカンは眉を寄せる。
「そんなことは聞いていない」
シャーミルが振り返った。
「俺は答えた」
ラカンは彼を見続けた。
「何が待っている、シャーミル?」
「お前が無視できないものだ」
そう言い残し、廊下の奥へ歩いていった。
一瞬で消えたわけではない。
ただ歩き続けた。
やがて影が口を閉じ、彼を呑み込んだように見えた。
ラカンは一人残された。
最後にもう一度、紙を開く。
「ザランの少年が一方にいて……」
視線が三人目の名で止まった。
「もう一方には、影の将軍が名を隠す少年か」
紙を折り畳む。
「素晴らしい」
◆
イザンの足が石へ擦れる音が、ラカンを現在へ戻した。
マヤも、彼がつまずいたことに気づいた。
直接振り返ることはせず、歩調をわずかに落とした。
シグランは何もしなかった。
あるいは、何もしなかったふりをした。
ラカンは歩き続けた。
訓練はまだ始まっていない。
それでも、三人はすでに自分の一部を見せ始めていた。
◆
学院の騒音から離れ、都市の近くにある森へ続く道を進んだ。
黒きナツメヤシの園とは似ていなかった。
死んだような静けさもない。
足を踏み入れた者を呑み込む闇もない。
学院の教師たちがよく知る森だった。
ほかの生徒から離れ、簡単な試験を行うために使われている。
ラカンは、木々の間に開けた土の広場へ三人を連れていった。
中央には古い切り株がある。
その上には、澄んだ水が半分ほど入った、丸い石の器が置かれていた。
端には、低い岩が三つ並んでいる。
表面は傾き、それぞれ形も高さも違っていた。
シグランが周囲を見る。
「ここが訓練場か?」
ラカンが答える。
「違う」
器を指す。
「これが授業の始まりだ」
「森の中で?」
「教室は話すには便利だ。ここでは、物事はもう少し容赦がない」
ラカンは器へ近づき、縁に手を置いた。
「戦いを教える前に、何かを攻撃しろと命じられていない時、お前たちの力がどう応えるのかを見たい」
イザンの身体が強張った。
器。
その言葉が、シャーミルの小屋へ連れ戻した。
自分の存在をどう扱えばいいのか分からなかった水。
シグランが言う。
「子供の試験だ」
ラカンが彼を見る。
「素晴らしい。なら、恐れる必要はないな」
シグランの目が細くなった。
ラカンが続ける。
「正式な選別用の器ではない。だが、カマンの最初の残響を読むには十分だ」
器を示す。
「縁へ手を置き、力が自然に反応するのを待て」
シグランを見る。
「見せつける必要はない」
「まだ何もしていない」
「今がお前に最も期待している瞬間だ」
マヤは、小さな笑みを隠すように目を伏せた。
ラカンが言う。
「マヤ・タライン。お前からだ」
◆
マヤは前へ進み、石の上へ手を置いた。
水は一瞬、静かなままだった。
やがて、長く息を吸い込んだかのように動いた。
柔らかな波が立ち上がる。
飛び散ることなく、自らの周囲を回った。
その後、水面は静かな円へ戻った。
小さな池を風が撫でたような、わずかな波紋だけが残る。
イザンは見つめていた。
水は、彼女が命じるよりも先に理解したように見えた。
ラカンが言う。
「良い制御だ」
マヤの目がわずかに和らぐ。
だが、ラカンは続けた。
「ただし、お前の水は動くたびに謝っている」
マヤが顔を上げる。
「どういう意味ですか?」
「動きを必要以上に綺麗にしようとしている」
水面を指す。
「精密さは良い。だが、その中に隠れた迷いは良くない」
マヤはゆっくりと手を離した。
何も返さなかった。
だが、その言葉を覚えていた。
ラカンが呼ぶ。
「シグラン・ザラン」
シグランは、器のほうが自分を迎える準備をするべきだという態度で前へ出た。
手を置く。
水が即座に震えた。
底から泡が現れ、急速に大きくなる。
温度が上がる。
蒸気が昇る。
縁には、小さな亀裂が生まれた。
ラカンが二本の指を石の上へ置いた。
水は一瞬で静まった。
「力を見せろとは言った。器を処刑しろとは言っていない」
シグランは手を離した。
「器が弱い」
ラカンが答える。
「弱いものは、自分の力を扱えない者をよく見せてくれる」
シグランは答えなかった。
ラカンが呼ぶ。
「イザン・ファドゥース」
その名が広場の中で重く響いた。
イザンはゆっくりと前へ出た。
一歩ごとに、最初の試験が蘇った。
器へ置いた手。
動かなかった水。
何かを理解しながら、何も言わなかったシャーミルの顔。
石の前へ立つ。
ラカンが言った。
「手を置くだけでいい。結果を作ろうとするな」
結果を意識しないことなど、不可能だった。
イザンは掌を置く。
そして待った。
色は現れない。
波も立たない。
熱も。
冷気も。
光も。
影もない。
ただ、静かな水だけがあった。
シグランが言う。
「予想通りだ。何もない」
マヤは嘲笑に加わらなかった。
水を見る。
次に、イザンを見る。
その瞳には、口に出さない問いがあった。
イザンは顔を伏せた。
この沈黙を知っている。
だがラカンは、イザンを見ていなかった。
水を見ていた。
最も弱い訓練生でさえ、小さな震えは起こる。
乱れ。
抵抗。
身体の中を命が通った痕跡。
だが、この水は――
静かなだけではない。
時間の外へ出たようだった。
読まない。
拒まない。
受け入れない。
ただ、沈黙している。
シャーミルの言葉が、再びラカンの中へ戻った。
壊すな。
ラカンは普段と変わらない声で言った。
「器の試験は終わりだ」
シグランが眉を上げる。
「これだけか?」
「必要なものは見た」
シグランはイザンを見る。
「俺もだ」
ラカンは答えなかった。
心の中で言う。
違う。
お前は、何も見ていない。
イザンは手を上げた。
水は変わらず静かだった。
マヤはラカンを見る。
何かが起きたのに、それが語られなかった。
そう感じ取ったかのようだった。
シグランは顔を背けた。
彼にとっては、すでに答えが出た問題だった。
ラカンは器へ布をかぶせる。
そして、三つの岩を指した。
「次だ」
◆
シグランが岩を見る。
「何だ、これは?」
「立つ授業だ」
「俺たちを森へ連れてきて、立ち方を教えるのか?」
「ああ」
ラカンは続ける。
「どうやら、お前には予想以上に必要らしい」
シグランの顔が変わった。
ラカンは岩へ向かった。
「多くの戦士は、戦いが手から始まると思っている」
地面を指す。
「だが、始まりは足だ。自分の身体をどこへ置くべきか分からない者は、力を使い、より速く倒れるだけだ」
岩のそばへ立つ。
「一人ずつ、岩の上へ立て。攻撃は禁止。属性も使うな。壊すな」
三人を見る。
「バランスを保つために必要な分だけ、カマンを使え」
シグランへ視線を向ける。
「繰り返す。壊すな」
シグランが答える。
「分かっている」
ラカンは言った。
「分かっていないものとして扱い、驚かせてくれる機会を与えよう」
最初にシグランが前へ出た。
軽やかに岩へ上がり、足を固定する。
バランスは良かった。
「終わりか?」
ラカンは足の位置を見る。
「今度は、岩を怯えさせないように立ってみろ」
立ち方の中へ、わずかな圧力が流れ込んだ。
炎は現れない。
だが身体に宿る力が、岩の上で均衡するのではなく、自分を支えるよう岩へ強いていた。
小さな音がした。
岩の端に亀裂が走る。
ラカンが言う。
「落ちたな」
シグランが鋭く見る。
「俺は落ちていない」
ラカンは亀裂を指した。
「代わりに岩が落ちた」
そして付け加える。
「成功したわけではない。岩のほうがお前より礼儀正しかっただけだ」
マヤは目を伏せた。
イザンも、顔に浮かびかけたものを隠すために地面を見た。
シグランが岩から下りる。
ラカンは言った。
「力とは、大地を怯えさせることではない。それは単に、お前が大地の上に立つ方法を知らないという証明かもしれない」
シグランの手が握られた。
だが、黙った。
ラカンが呼ぶ。
「マヤ」
◆
マヤは二つ目の岩へ上がった。
静かに体重を分ける。
傾いた表面へ逆らうのではなく、それに合わせた。
岩が揺れる。
身体も共に傾いた。
バランスを失いかける。
足元に薄い湿り気が現れ、すぐに消えた。
姿勢を取り戻す。
ラカンが言う。
「良い」
マヤは立ち続けた。
「だが、まだ失敗を美しく見せようとしている」
彼女がラカンを見る。
「すべての動きを完璧にする必要はない」
少し間を置く。
「時には、成功するだけで十分だ」
マヤは、その言葉も覚えた。
そして、よろめくことなく岩から下りた。
次はイザンだった。
◆
三つ目の岩を見る。
低い。
だが、必要以上に高く見えた。
ラカンが言う。
「上がれ」
イザンは片足を置いた。
次に、もう片方。
真っすぐ立とうとした瞬間、肋骨が拒んだ。
岩が足元で傾く。
腕を伸ばし、均衡を取ろうとする。
肩に痛みが走った。
そのまま土の上へ落ちた。
シグランが言う。
「立つことさえ、こいつには難しいらしい」
イザンは答えなかった。
立ち上がる。
そして、もう一度上った。
三度、呼吸する間だけ耐えた。
だが脚が震え、再び落ちた。
マヤが半歩前へ出る。
ラカンがわずかに手を上げた。
彼女は止まった。
今は助けさせたくなかった。
見たかった。
イザンは三度目に上った。
四度目も。
そのたびに、身体は違う形で間違えた。
岩の傾きに反応するのが遅れる。
痛みが強くなると、呼吸を止める。
表面と共に動くのではなく、逆らおうとする。
シグランが言う。
「時間の無駄だ」
ラカンが尋ねる。
「お前の時間は、それほど価値があるのか?」
「これを見るよりはな」
ラカンはシグランを見ずに言った。
「奇妙だな。昨日はもっと長い時間、こいつを殴るつもりだっただろう」
シグランの目が燃える。
ラカンが言った。
「黙れ」
大きな声ではない。
だが、そこで話を終わらせる響きだった。
イザンは五度目に岩へ上った。
マヤの真似はしなかった。
強そうに見せようともしなかった。
できる範囲で足を置く。
少し身体を曲げる。
そして、呼吸した。
一度。
もう一度。
岩が揺れた。
イザンの身体も、共に揺れる。
傾く。
落ちかける。
だが、立っていた。
美しい姿勢ではなかった。
片方の肩は下がっている。
顔色は青白い。
両手は震えていた。
それでも、立っていた。
マヤは無言で彼を見ていた。
器の前では、血の鍵を持たないのではないかと疑った。
だが今は、別のものを見ていた。
イザンは立ち方を知らなかった。
それでも、立ち上がり方を教わる必要はなかった。
ラカンは、布で覆われた器を見る。
次に、岩の上に立つ少年を見た。
水は彼を読めなかった。
身体も、まだ正しく動かない。
技術はない。
制御もない。
それでも、そこには人々が予想するようには壊れない何かがあった。
「もういい」
イザンは苦労しながら岩から下りた。
今度は、倒れなかった。
ラカンが言う。
「今日の授業はここまでだ」
シグランが尋ねた。
「何の授業だ? 立てる者と立てない者がいるという話か?」
ラカンは、亀裂の入った岩を指した。
「お前は、必要のない時まで力を使う」
次に、マヤが立っていた岩を指す。
「マヤは、すべての動きを完璧にするために時間を使いすぎる」
最後に、イザンを見る。
少し止まった。
イザンは、いつもの言葉を待った。
弱い。
役立たず。
何もない。
だがラカンは言った。
「お前は、まだ何も知らない」
静寂が落ちた。
そして続ける。
「自分は知っていると思い込むより、そのほうがいい」
それが褒め言葉なのか、イザンには分からなかった。
だが、痛くはなかった。
ラカンが言う。
「訓練は終わりだ」
シグランが眉を上げた。
「もう終わりか?」
「お前たちが、自分を何者だと思っているのかを話す前に、本当は何者なのかを見たかった」
布で覆われた器を持ち上げる。
「午後は、今日失敗したことから始める」
マヤが尋ねた。
「立つことですか?」
ラカンは、わずかに笑った。
「違う」
歩き始める。
「聞くことだ」
シグランが最初に後を追った。
怒りを抱え、黙ったまま。
次にマヤ。
イザンだけが、一瞬遅れた。
水を動かさなかった自分の手を見る。
次に、何度も落ちながら最後には立つことのできた岩を見る。
器の前で変わったラカンの目を、イザンは見ていなかった。
先頭を歩く彼の頭に残っていた問いも、聞こえなかった。
シャーミル――
俺の手に、何を預けた?




