食べ物は恵み
第三班が学院へ戻った時、昼の鐘はすでに鳴っていた。
廊下は食堂へ向かう生徒たちで埋まり、焼きたてのパン、煮込んだ肉、香辛料の匂いが空気に広がっていた。
イザンはマヤとシグランの後ろを歩いた。
疲労が両脚を引き、肋骨の痛みは、意識を逸らすたびに強くなった。
それでも、何も言わなかった。
食堂の入口で、シグランが足を止めた。
ラカンを見る。
「訓練は、本当に終わったのか?」
ラカンが答える。
「質問できるなら、まだ疲れさせ方が足りなかったらしい」
「何もしていないだろう」
「そうだな。岩を壊したのはお前だ」
マヤの口元が、わずかに動いた。
シグランは見逃さなかった。
「何か面白いか?」
彼女は静かに答える。
「いいえ」
ラカンが言う。
「下手な嘘だ」
そして、食堂を指した。
「食べてこい。一時間後に戻る」
シグランが尋ねる。
「森へ?」
「木々がまだ同じ場所に立っていればな」
誰かが次の質問をするより先に、ラカンは立ち去った。
生徒たちは食堂へ入った。
◆
イザンは、これほど大きな食堂を見たことがなかった。
長い木の机が幾つもの列を作り、さまざまな年齢、さまざまな氏族の生徒たちが座っていた。
反対側では、湯気を立てる大きな鍋の後ろに、食事を配る者たちが並んでいる。
生徒たちは皿を受け取り。
食べ物を選び。
そして、机へ移動していた。
イザンは料理の前で足を止めた。
配膳をしていた女が、最初の鍋を指す。
「レンズ豆のスープは?」
イザンは答えなかった。
女は別の料理を指した。
「肉と野菜の煮込み?」
イザンはそれを見る。
だが、何を頼めばいいのか分からなかった。
いくつかの料理は、名前さえ知らない。
後ろに並ぶ生徒たちが苛立ち始めた。
誰かが言った。
「早くしろよ」
女は、別の器を順に指した。
「クスクス? 鶏肉? 卵?」
イザンの目が、大きな器の前で止まった。
クスクスは知っている。
だが、これはアイン・アルワールで食べていたものとは違っていた。
粒は明るく、白に近い。
薄い色の煮汁の中に、野菜と肉が盛られている。
デーツを加えたマリーサの濃い色ではない。
イザンがよく知り、好んでいたフダンソウの緑もなかった。
イザンは尋ねた。
「これも、クスクス?」
女が眉を上げる。
「そうだよ。白いスープ仕立てのクスクスさ」
イザンはしばらく、それを見つめた。
知っているものなのに。
知らない料理にも見えた。
やがて、卵へ視線を移す。
「卵」
「何と一緒に?」
もう一度、料理を見渡した。
そして言った。
「卵だけ」
女が再び眉を上げる。
「それだけ?」
イザンは頷いた。
女は皿へ、ゆで卵を二つとパンを一切れ置いた。
これ以上列を止めないよう、イザンはすぐにその場を離れた。
マヤが自分の後ろにいたことには、配膳場所から離れて初めて気づいた。
女がマヤへ尋ねる。
「いつものでいい?」
「はい。お願いします」
マヤはスープとパン、少量の肉。
そして、小さな皿に盛られた白いクスクスを受け取った。
それから、座る場所を探す。
シグランはすでに遠くの机へ向かっていた。
何も言わなくても、何人かの生徒が彼のために場所を空けている。
マヤは一瞬ためらった。
シグランが彼女を見る。
だが、どこに座ろうが関心はないと言うように、すぐ顔を逸らした。
その後、マヤの目がイザンを見つけた。
ほとんど誰も座っていない机の端。
イザンは一人で座り、二つの卵をどう分けて食べるか計算しているように見つめていた。
マヤは彼のほうへ歩いた。
向かい側の席へ皿を置く。
イザンが顔を上げた。
「ここ、空いてる?」
周囲を見る。
ほとんどすべての席が空いていた。
「うん」
マヤは座った。
短い沈黙。
イザンは最初の卵を丁寧に剥き始めた。
殻に白身が残らないよう、慎重に。
マヤが尋ねる。
「卵が好きなの?」
イザンの手が止まった。
「知ってるから」
「知ってる?」
「名前を知ってる」
マヤは周囲の料理を見る。
そして理解した。
「何を選べばいいか、分からなかったの?」
イザンは目を伏せた。
「アイン・アルワールには、こんな食べ物はなかった」
マヤは笑わなかった。
だが、彼が配膳台で見つめていたものを思い出した。
「でも、クスクスは知っていたよね?」
イザンは、彼女の前にある小さな皿を見た。
「知ってる。でも、こんな色じゃなかった」
マヤもクスクスへ目を落とす。
「アルマザでは、白いスープで食べることが多いの」
イザンが言った。
「アイン・アルワールには、僕が知ってるものが二つある」
マヤは興味を引かれたように、少し身を乗り出した。
「二つだけ?」
「僕が食べてたのが、その二つ」
イザンは一本目の指を立てた。
「マリーサのクスクス。煮汁にデーツを加えるんだ」
マヤの目が、少し大きくなった。
「煮汁にデーツを?」
「うん」
「甘くなるの?」
イザンは少し考える。
「少しだけ。でも、お菓子みたいに甘くはない」
そして、二本目の指を立てた。
「それから、フダンソウのクスクス」
マヤの好奇心がさらに強くなる。
「フダンソウ?」
「緑の葉っぱ。クスクスや煮汁と一緒に料理する」
「どっちのほうが好き?」
イザンは卵を剥く手を止めた。
考える必要はなかった。
「フダンソウのほう」
マヤが笑う。
「答えるの、早かったね」
イザンは真剣な顔で言った。
「一番おいしいから」
マヤは小さく笑った。
何が彼女を笑わせたのか、イザンには分からなかった。
だが、馬鹿にされているとは感じなかった。
マヤが言う。
「二つとも食べてみたい」
イザンは彼女を見る。
「両方?」
「うん」
少し考えてから、楽しそうに付け加えた。
「特にマリーサ。デーツが煮汁の中で、どんな味になるのか知りたい」
イザンが言う。
「デーツだけの味じゃない。全部と混ざるんだ」
「なら、食べる時に説明してね」
イザンは、しばらくマヤを見た。
自分がずっと知っていた味を、食べたことのない者へどう説明すればいいのか分からなかった。
「食べたほうが分かる」
マヤは微笑んだ。
「分かった。そうする」
それから自分の皿を指す。
「これはレンズ豆のスープ」
次に、肉を指した。
「これは野菜と一緒に煮込んだ肉」
そして、少し離れた場所にある別の器を指した。
「あれが米」
イザンは指の先を目で追った。
「米」
「そう」
新しい授業の言葉を覚えるように、心の中でもう一度繰り返した。
マヤが尋ねる。
「アイン・アルワールは遠いの?」
「うん」
「大きな場所?」
イザンは首を横へ振る。
「村」
「ビスカラは、全部砂漠なの?」
少し考えた。
「全部じゃない。オアシスも、ナツメヤシも、井戸もある。でも、道は長い」
マヤが言う。
「南へは行ったことがないの」
イザンは初めて、すぐに視線を逸らさず彼女を見た。
「暑いよ」
マヤは微笑んだ。
「そうだと思った」
何が面白かったのか、イザンには分からなかった。
だが教室で話す時よりも、彼女との会話は難しくないと感じた。
食べ始める。
少し離れた場所では、周囲の机が混み合っているにもかかわらず、シグランは一人で座っていた。
マヤの視線が一瞬、彼へ向かった。
イザンは気づいた。
胸に、あの小さな不快感が戻ってくる。
今度は、理由を考えようとしなかった。
二つ目の卵を剥くことへ集中した。
◆
アミールが、アナスとナダを連れて食堂へ入ってきた。
入学試験について大声で話している。
自分の攻撃の一つを、まるで誰も見ていなかったかのように、細かく語り直していた。
ナダは皿を持って後ろを歩く。
アナスは黙って話を聞いていた。
ナダの視線がシグランで止まった。
本人も気づかないまま、足がわずかにそちらへ寄る。
アミールが言った。
「ナダ、前を見ろ」
だが、遅かった。
皿の端が、横を通った生徒の肩へ当たる。
ナダの身体が傾いた。
料理を守ろうと手を伸ばした時、その肘がイザンへぶつかった。
卵とパンが皿から落ち、床へ転がった。
ナダの身体が固まる。
イザンは落ちた食べ物を見た。
彼女はすぐに言った。
「ごめんなさい。わざとじゃないの」
イザンは身を屈め、パンを拾った。
次に、机の脚の近くまで転がった卵を取る。
マヤが言った。
「食べないで。新しいものを持ってくるから」
イザンは手でパンの埃を払った。
「大丈夫」
ナダが言う。
「床に落ちたのよ」
「分かってる」
席へ戻る。
アミールは、イザンが持つパンを見て笑った。
「捨てろよ。ここでは食べ物を無料でもらえるんだ」
イザンはパンを握った。
アミールが続ける。
「それとも、パンを見るのも初めてか?」
マヤが振り返る。
「やめて」
だが、イザンが小さな声で言った。
「食べ物は、恵みだから」
近くの声が、少しだけ静まった。
できる限り土を払いながら、続ける。
「粗末にしちゃいけない」
誰かを教え諭すように言ったのではない。
議論する必要もない、当然のこととして口にした。
マルワンの手を思い出した。
硬いパンを二人の間で分ける手。
自分は腹が減っていないと言いながら、いつも大きいほうをイザンへ渡していた。
少しの埃がついたからといって、食べ物を捨てることなどなかった日々。
アミールが言う。
「床に落ちたパンだ。宝じゃない」
イザンは目を上げた。
答えが見つからなかった。
あるいは、答えても何かが変わるとは思えなかった。
ナダが申し訳なさそうに言う。
「私が新しいものを持ってくる」
イザンは首を振った。
「わざとじゃなかったから」
ナダは少しの間、彼を見る。
それから、ゆっくり離れていった。
アミールだけが、その場に残った。
「本当に、どうしてお前が入学できたのか分からない」
反対側の机から、シグランの声が聞こえた。
「学院がお前の意見を聞かなかったからだ」
アミールが振り向く。
シグランは座ったまま、彼を見ることなく食事を続けていた。
「お前には話していない」
「だが、聞こえる」
シグランが目を上げる。
「それが不愉快だ」
アミールが言った。
「今度は、そいつを庇うつもりか?」
シグランは、イザンへ冷たい視線を向けた。
「違う」
そしてアミールを見る。
「お前のほうが、こいつより不愉快なだけだ」
周囲から、小さな笑い声が起こった。
アミールの顔が赤くなる。
「その考えも、すぐ変わる――」
アナスが遮った。
「もうすぐ食事の時間が終わる」
アミールが彼を見る。
アナスの顔は静かなままだった。
だが、その一言はアミールへ、これ以上争わずに離れるための道を与えた。
アミールはイザンへ言った。
「そのパンを楽しめ」
そして離れていった。
イザンは、パンを手にしたままだった。
シグランを見る。
彼は何も起きなかったように、食事へ戻っている。
マヤが言った。
「あの二人、誰かを侮辱しないと話せないみたい」
イザンが尋ねる。
「誰のこと?」
マヤは彼を見る。
そして、小さく笑った。
「二人とも」
イザンは口元の小さな動きを見られないよう、顔を伏せた。
そして、食事を続けた。
◆
同じ頃。
ラカンは森の訓練場へ戻っていた。
食事には行かなかった。
古い切り株の前へ立つ。
石の器を覆っていた布を取った。
水は、残した時と同じように静かだった。
器を持ち上げ、慎重に傾ける。
シグランの熱で生まれた縁の亀裂を調べた。
外側の割れ目は、はっきりしている。
だが、別のものが目に入った。
指を器の内側へ滑らせる。
ほとんど見えないほど細い線のところで止まった。
外から内側へ伸びているのではない。
イザンの手が触れていた場所から始まり、内側へ向かって伸び、途中で止まっていた。
ラカンは眉を寄せた。
器を元に戻す。
少量の水を注ぐ。
漏れはない。
さらに顔を近づけた。
暴力的な力の痕にしては、細すぎる。
偶然にしては、静かすぎる。
まるで石が、方向を理解できない圧力を受けたかのようだった。
水の静けさを思い出す。
イザンにはカマンがないから、動かなかった。
最初に見た教師なら、そう答えるだろう。
だがカマンがないだけでは、水はあれほど静まらない。
死んだものは、静けさを作らない。
そもそも、何も作らない。
だが、あの時は――
器が、届かなかった命令を待っていたようだった。
あるいは。
受け取ったものへ、どう応えればよいか分からなかったように。
ラカンは小さく呟いた。
「壊すな」
その言葉はもう、訓練を厳しくしすぎるなという警告だけには思えなかった。
亀裂を見る。
そして、器を再び布で覆った。
「見事だな、シャーミル」
切り株へ腰を下ろす。
「水にも理解できない少年を残して、俺には壊すなと言った」
木々の上へ目を向ける。
「では、あいつの周りで壊れるものはどうすればいい?」
◆
一時間後、生徒たちが戻ってきた。
ラカンは広場の中央に立っていた。
その前には、黒い布が三枚置かれている。
シグランが尋ねた。
「食べなかったのか?」
「気になるか?」
「いや」
「なら、少し意見が合ったな」
ラカンは一枚を取り、シグランへ投げる。
次にマヤへ。
最後の一枚をイザンへ渡した。
マヤが尋ねる。
「目を隠すのですか?」
「ああ」
シグランが言う。
「またバランスの試験か?」
「違う」
ラカンは広場の中にある、三つの離れた場所へ向かった。
それぞれの場所で、二本の枝の間へ小さな鐘を吊るす。
鐘は少しずつ違う音を持っていた。
それから小さな石を幾つも集め、足元の袋へ入れた。
「今日は、お前たちが自分の声以外を聞けるか確かめる」
マヤは布を目へ巻いた。
イザンも同じようにする。
シグランだけは、布を手に持ったままだった。
「これがなくても、鐘の場所くらい分かる」
ラカンが答える。
「それなら、目を隠す良い理由だ」
シグランは乱暴に布を巻いた。
ラカンが説明する。
「お前たちは円の中へ立つ。俺がさまざまな方向から石を投げる」
鐘を指した。
「俺が指定した鐘へ到達することが目的だ。石に当たってはならない」
マヤが尋ねる。
「道は、どうやって判断するのですか?」
「互いに伝えろ」
シグランが言う。
「一人で行ける」
「一人で器と岩を壊すこともできる。大した進歩だ」
シグランは答えなかった。
ラカンが続ける。
「目隠しを外すことは禁止。属性を攻撃へ使うことも禁止だ」
マヤへ顔を向ける。
「マヤは、水をわずかに動かし、振動を感じ取ってもいい」
次にシグランを見る。
「シグランは熱で空気の変化を読め」
そして、三人全員へ言った。
「だが、自分が読み取ったものをほかの者へ伝えずに進むな」
イザンの前で視線を止める。
「お前は耳と足を使え」
シグランが言った。
「足手まといになる」
ラカンが答える。
「なら、足手まといに倒されない方法を学べ。それが班の役目だ」
三人を円の中へ導く。
シグランが前方。
マヤは右側。
イザンは二人より少し後ろ。
ラカンが言った。
「第一の鐘。一番高い音の鐘だ」
一つの鐘を揺らす。
澄んだ音が鳴った。
マヤが言う。
「左です」
同時に、シグランが言った。
「前だ」
二人は、それぞれ違う方向へ動いた。
イザンだけがその場に残った。
鐘の音。
木々が揺れる音。
二人の呼吸。
それらを分けようとする。
ラカンは石を一つ取り出した。
投げる。
シグランの肩へ当たった。
彼が止まる。
「誰が投げた?」
ラカンが答える。
「お前の自信に興味のない敵だ」
二つ目の石が飛ぶ。
マヤが叫ぶ。
「右!」
身体を屈める。
石は彼女の頭上を通った。
だが、イザンの胸へ当たった。
一歩後ろへよろめく。
マヤが尋ねる。
「大丈夫?」
イザンが答えるより先に、シグランが言った。
「鐘は前だ。ついてこい」
素早く進む。
マヤが叫ぶ。
「待って!」
だが、待たなかった。
ラカンは三つ目の石を、シグランの足元へ投げる。
彼は避けた。
四つ目が横から飛ぶ。
腕を上げ、弾いた。
ラカンが言う。
「失格だ」
シグランは目隠しを外した。
「当たっていない」
「自分一人が当たらないことが目的だとは言っていない」
後ろを指す。
イザンは追いつこうとして、別の石を受けていた。
マヤは石を避けるために進路を変え、木の幹へぶつかっている。
ラカンが言う。
「お前は正しい方向へ進んだ。そして、班を後ろで失った」
シグランが答える。
「二人が俺についてくればよかった」
「お前が見つけたものを伝えればよかった」
ラカンは、目隠しをもう一度巻かせた。
「最初からだ」
マヤは静かに息を整えた。
イザンも胸に当たった石の跡を擦り、両足を固定する。
ラカンが別の鐘を揺らした。
音が鳴る。
マヤが言った。
「少し後ろです」
シグランが続ける。
「右側の温度が低い。そちらは開けている」
二人は待った。
イザンは何も言わなかった。
マヤが呼ぶ。
「イザン?」
地面の上を走る、小さな擦れる音が聞こえていた。
石が、届く前に転がっている。
二人へ伝えなければならない。
口を開いた。
だが、声が出なかった。
シグランが言う。
「進むぞ」
一歩踏み出した。
石が届く。
脚へ当たった。
シグランは乱暴に目隠しを外した。
「いつまで黙っているつもりだ?」
イザンは顔を伏せた。
石が来ることには気づいていた。
伝えていれば、攻撃を防げた。
だが言葉は、アミールの前でそうなった時と同じように、身体の中へ引っかかっていた。
ラカンが言う。
「最初からだ」
シグランが苛立った声を上げる。
「このままでは、夜まで終わらない」
「おそらくな」
シグランは目隠しを巻き直した。
ラカンが言う。
「危険に気づいても、自分の中へ隠していれば、班の役には立たない」
それが自分へ向けられた言葉だと、イザンには分かった。
だがラカンは、それ以上何も言わなかった。
新しい石を一つ手に取る。
円の中には、三人の生徒が近くに立っていた。
それでも――
まだ、それぞれが一人だった。
再び鐘が鳴った。
そして、本当の訓練が始まった。




