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血の継承【改訂版】  作者: Salhi smail
第一章 アルマザ学院編

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正しい鐘が鳴った時


間違った鐘が鳴った。


シグランは即座に手を開いた。


まるで自分が触れたのではなく、鐘のほうから勝手に指へ近づいてきたとでも言うように。


目隠しを外す。


「鐘は、言われた場所より近かった」


マヤが言った。


「止まってと言った」


「俺が動いた後にな」


「私が言い終わる前に動いたからよ」


ラカンは低い壁のそばに立ち、小さな石を指の間で転がしていた。


「素晴らしい」


シグランが鋭く見る。


「何がだ?」


「一分も経たないうちに、二人とも相手を失敗の原因にする方法を見つけた」


シグランが触れた鐘を指す。


「指定したのは中央だ。お前が触れたのは右。失敗だ」


シグランが言う。


「指示が間違っていた」


マヤが返す。


「あなたが聞かなかったの」


ラカンは石を持ち上げた。


「二人とも正しい」


二人は黙った。


ラカンが続ける。


「それが問題だ」


イザンを見る。


二人の後ろに立ち、まだ目隠しを手に持っていた。


「お前は?」


イザンは戸惑った。


「何が?」


「前の挑戦で、あいつの足元にある石を見ていたな」


イザンは素早く顔を上げた。


どうしてラカンが気づいたのか分からない。


「はい」


「なぜ教えなかった?」


目を伏せる。


シグランが言った。


「知らなかったからだろう」


イザンは弱い声で答えた。


「知ってた」


シグランが彼を見る。


「なら、なぜ黙った?」


皆の前で言える答えは見つからなかった。


ラカンが言う。


「間違っているかもしれないと怖れたからだ」


イザンを真っすぐに見る。


「そうだろう?」


イザンは小さく頷いた。


ラカンは石を片手からもう片方へ投げる。


「戦いでは、間違いが仲間を傷つけることがある」


一度、言葉を止めた。


「だが沈黙は、仲間を殺すことがある」


声を上げたわけではない。


それでも、その言葉は鐘の音よりもはっきりとイザンへ届いた。


ラカンが言う。


「もう一度だ」


     ◆


シグランは再び目隠しを巻いた。


道の中央へ立つ。


前方には、近い間隔で三つの鐘が吊るされていた。


地面には、細い縄と小石が置かれている。


ラカンが、指示だけに頼らせるため用意した障害だった。


「左の鐘だ」


マヤが道を見る。


「前へ二歩」


シグランが動く。


今度は、少しだけ歩みが遅かった。


「止まって」


シグランは、半歩余計に進んでから止まった。


「止まってと言った」


「止まった」


「半歩進んだ後に」


シグランが言う。


「半歩だ」


ラカンが口を挟む。


「傲慢さには、独自の長さの単位があるらしい」


シグランは無視した。


マヤが続ける。


「前に低い縄がある。右足を上げて」


足を上げる。


縄を越えた。


次の道は、わずかに右へ曲がっている。


イザンは、シグランの左足の近くに石があることへ気づいた。


口を開く。


だが、その前にマヤが言った。


「進んで」


シグランが動いた。


石が足の下で転がる。


身体が傾き、均衡を戻すために手を伸ばした。


二つの鐘が同時に鳴った。


シグランは乱暴に目隠しを外す。


ラカンが言う。


「また失敗だ」


シグランはイザンを見る。


「見えていたのか?」


イザンは頷いた。


「それでも何も言わなかった?」


指が強く握られる。


「マヤが話してたから」


マヤが言った。


「私の言葉を遮ってもよかったのよ」


イザンが彼女を見る。


声に責める響きはなかった。


「危険が見えたなら、言って」


ラカンが言う。


「驚くべき発想だ。いつか本に書くべきだな」


シグランから目隠しを取る。


「交代だ」


マヤを指した。


「次はお前が中央に立て」


     ◆


マヤは目隠しを巻いた。


シグランはイザンの隣へ立つ。


ラカンが言う。


「一番高い鐘だ」


シグランが道を見る。


「前に三歩。その後、左」


マヤが進む。


イザンが言った。


「縄が……」


声が小さすぎて、誰にも届かなかった。


シグランが言う。


「そのまま進め」


マヤが足を上げる。


縄へ引っかかった。


身体が崩れたが、横へ一歩踏み出し、倒れずに耐えた。


ラカンが言う。


「今、声が聞こえたな」


シグランはイザンを見る。


「何と言った?」


イザンは少しだけ声を強くして繰り返した。


「縄がある」


シグランが言う。


「人間に聞こえる声で話せ」


マヤが止まった。


目隠しの向こうから言う。


「もう一度言って」


イザンは縄を見る。


「足の前に縄がある」


「どのくらい先?」


距離を測る。


「半歩くらい」


マヤは慎重に足を上げ、縄を越えた。


シグランが言う。


「今度は左」


彼女が動く。


イザンは、その指示では二つの鐘の間へ入り込むことに気づいた。


「少しだけ」


シグランが言葉を止めた。


「何だ?」


イザンは指を差しかけた。


だが、彼女には見えないことを思い出す。


「左へ行きすぎないで。鐘は肩の近くにある」


マヤは慎重に手を伸ばした。


指先は正しい鐘の近くを通った。


だが、袖が別の鐘へ触れた。


音が鳴る。


ラカンは目隠しを外した。


「失敗だ」


マヤが目を開ける。


シグランが言う。


「あと少しだった」


「あと少しでも、間違った鐘は黙ってくれない」


ラカンはイザンを見る。


「だが、今の指示は正しかった」


褒め言葉というには軽かった。


それでも、イザンの内側へ残った。


ラカンが続ける。


「ただし、謝るように言った」


イザンは目を伏せた。


「どう言えばいいか……」


ラカンが遮る。


「演説は要らない。見えたものを言え」


鐘を指した。


「頭の中に残したままの視界は、誰も救わない」


     ◆


次はイザンの番だった。


ラカンが目隠しを巻き、身体を二度回した。


広場が消えた。


音だけが残る。


壁の向こうで揺れる木々。


近くにいるマヤの呼吸。


シグランの足が土へ擦れる音。


そして、場所の分からない三つの鐘。


ラカンが言う。


「中央の鐘だ」


マヤが言った。


「前へ一歩」


イザンが動く。


「今度は少し右」


シグランが言う。


「もっとだ」


イザンは止まった。


マヤが言う。


「違う。少しだけ」


シグランが返す。


「もっと曲がったほうが早い」


「柱にぶつかる」


イザンは二つの声の間で立ち止まった。


どちらを信じればいいのか分からない。


ラカンが言う。


「決めろ」


マヤが一瞬黙った。


そして言った。


「右へ半歩」


同時に、シグランが言う。


「一歩だ」


イザンは迷いながら動いた。


肩が木の柱へぶつかる。


膝から落ちた。


シグランの苛立った息が聞こえた。


ラカンが言う。


「失敗だ」


イザンの目隠しを外す。


マヤとシグランを見る。


「一人は道を見ていた。もう一人は速く着こうとした」


二人を交互に見る。


「同じ瞬間に話し、こいつに二つの声から選ばせた」


シグランが言う。


「俺の指示のほうが速いと分かるべきだった」


ラカンが返す。


「柱へ着くまでなら、確かにな」


マヤは言った。


「距離をもっと明確に伝えるべきでした」


ラカンは彼女を指す。


「その通り」


次にシグランを指した。


「お前は、彼女より正確に見えていないなら黙るべきだった」


シグランが言う。


「道全体は見えていた」


「だが、お前の言葉が彼女の指示を壊したことは見えなかった」


ラカンは三人へ背を向けた。


「少し休め」


     ◆


イザンは壁のそばへ座り、肩を擦った。


マヤも隣へ座った。


二人の間には、小さな距離を残している。


「痛む?」


「少し」


「ごめんなさい」


イザンは彼女を見る。


「ぶつかったのはマヤじゃない」


「でも、道を分かるように説明できなかった」


イザンが言う。


「分かりやすかったよ」


「十分じゃなかった」


声は穏やかなままだった。


だが、自分自身に腹を立てているように見えた。


少し離れた場所では、シグランが立ったまま鐘を見ていた。


そして言う。


「こんな訓練は、何も証明しない」


ラカンは座ったまま答えた。


「力で終わらせられないものが嫌いだということは証明している」


「終わらせられる」


「まだ終わっていない」


シグランは止まった。


それから言う。


「もう一度やる」


ラカンが片眉を上げた。


「痛いほど丁寧な頼み方だな」


「もう一度やれと言った」


ラカンは立ち上がった。


「いいだろう」


イザンとマヤを見る。


「最後の挑戦だ」


     ◆


シグランは再び道の中央へ立った。


今度は自分で目隠しを巻いた。


ラカンが言う。


「中央の鐘だ」


マヤは長く道を見た。


そして指示を出す。


「真っすぐ二歩」


シグランが動いた。


一歩。


二歩。


「止まって」


今度は、すぐに止まった。


マヤはわずかに驚いた様子を見せた。


だが、そのまま続ける。


「前に低い縄がある。左足を上げて」


シグランは従った。


縄を越える。


「今度は右へ、小さく一歩」


シグランが足を上げた。


その時、イザンは気づいた。


足が下りる場所の近くに、小さな石がある。


大きくはない。


だが、その上へ足を置けば滑る。


そして身体を支えようと伸ばした手が、間違った鐘へ触れる。


イザンは口を開いた。


これまでの挑戦で消えていった、自分の声を思い出す。


シグランの嘲笑。


間違っているかもしれないという恐怖。


だが、石はそこにあった。


はっきりと見えていた。


自分が正しいかを確かめ続ける必要はない。


見えたものを、言うだけでいい。


「止まって」


予想していたよりも、はっきりと声が出た。


シグランの足が空中で止まる。


短い沈黙。


冷たい声で尋ねた。


「何だ?」


イザンは唾を飲み込んだ。


「足の前に石がある。少し左へ置いて」


シグランは動かなかった。


「確かなのか?」


イザンには、自信を持てないことが多かった。


学院での自分の居場所。


与えられた新しい姓。


自分を理解できなかった水。


だが、石があることだけは分かっていた。


「うん」


マヤはイザンを見る。


次にシグランを見る。


何も付け加えなかった。


イザンの言葉を肯定することもない。


選択をシグランへ委ねた。


シグランは顎へ力を込めた。


警告を無視することもできた。


誰にも導かれないことを証明することも。


だが、足を左へ動かした。


石を避ける。


マヤが言う。


「そのまま、ゆっくり手を前へ伸ばして」


シグランは手を伸ばした。


指が二つの鐘の間を通る。


そして、中央の鐘へ触れた。


音が鳴った。


短く。


明瞭に。


ただ一つだけ。


シグランは目隠しを外した。


最初に鐘を見る。


次に、足元の石。


最後に、イザンへ視線を向けた。


礼は言わない。


笑いもしない。


ただ言った。


「見れば分かる石だった」


ラカンが答える。


「それでも、お前には見えなかった」


シグランが彼を見る。


ラカンは続けた。


「それが、今日学んだ最初の重要なことだ」


鐘へ近づく。


「お前が班で最も強くても、すべての角度が見えるわけではない」


マヤを指す。


「誰かが道を知っていることがある」


次に、イザンを指した。


「そして、別の誰かが、その道へ着く前にお前を転ばせるものを見ることもある」


三人を見る。


「互いを好きになる必要はない」


少し間を置いた。


「ただ、自分の傲慢さや恐怖や、すべてを一人で背負おうとする気持ちで、耳を塞ぐな」


シグランが言う。


「誰かに歩かせてもらう必要はない」


マヤが答えた。


「イザンはあなたの代わりに歩いていない」


シグランが彼女を見る。


「足を置かないほうがいい場所を教えただけ」


シグランは答えなかった。


イザンは鐘を見る。


少し前まで、一つの言葉が喉の中で止まっていた。


今は、その言葉の痕跡が金属の中で震えている。


シグランに認められたわけではない。


本当の班になれたわけでもない。


だが、その言葉が彼を転ばせなかった。


それは、イザンにとって新しいことだった。


ラカンが言う。


「喜ぶには早い。今のは完全な連携ではない」


シグランが一歩下がった。


ラカンは続ける。


「だが、互いの道を邪魔しなかったのは初めてだ」


中央の鐘を見る。


そして三人へ目を向ける。


「明日は、ほかの班の訓練を見てもらう」


わずかに口元を上げた。


「そうすれば、自分たちがどれほど遅れているか分かるだろう」


シグランが言う。


「あるいは、あいつらがどれほど進んでいると思い込んでいるかだ」


ラカンの顔に薄い笑みが浮かんだ。


「自信だけは、すぐに元へ戻ったな」


そして広場を出ていった。


マヤが後を追う。


シグランはイザンの横を通り過ぎた。


だが、半瞬だけ足を止めた。


石を見る。


そして言う。


「次は、もっと早く言え」


そのまま歩いていった。


イザンはその場に残った。


礼ではなかった。


だが、侮辱でもなかった。


まだわずかに震えている鐘を見る。


勝利の音ではない。


何かが変わり始めた音だった。

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