アマニの声
一行が禁じられたナツメヤシ園を出た時、太陽はすでに木々の上まで昇っていた。
その姿は、戦いから凱旋する勝者には見えなかった。
掲げられた旗はない。
歓声もない。
いたのは、戦いに疲れ果てた者たちだけだった。
衣服はナツメヤシ園の砂にまみれ、手当てをする余裕さえなかった傷が身体の至るところに残っている。
背後では、古いナツメヤシのそばに封印石が静かに佇んでいた。
水路の震えは止まっている。
園の境界で空気を重くしていた圧力も、すでに消えていた。
ラカンは先頭を歩き、前方の道を見ながら、ときおり仲間たちにも目を配っていた。
その隣では、アシールがゆっくりと歩いている。鼻の下には乾いた血が残り、指先は封印に使った黒い粉で汚れていた。
それでも、意識は地面から離れなかった。
最後の抵抗を、まだ警戒している。
後ろでは、マヤがヌーリヤと並んで歩いていた。
傷よりも、水を操り続けた疲労が両腕を重くしている。足元が揺らぐたび、ヌーリヤの手がすぐそばまで伸びた。
サーリムとジャラールは道の左右を警戒している。
シグランは最後尾を歩いていた。
一行とナツメヤシ園の間に立ち、戦いが終わったことをまだ信じていないかのようだった。
青い炎はすでに消えている。
だが、肩の構えと、木々の間へ向ける短い視線を見れば分かる。
背後で何かが動けば、すぐにでも炎を灯すつもりだ。
ヤザンは、その少し前を歩いていた。
肩が痛む。
胸の浅い傷は、衣服が擦れるたびに熱を持った。
両掌の傷も、先ほどの戦いで再び開いている。
それでも、足はもつれなかった。
二年間の訓練を経ても、ケメンを得ることはできなかった。
シグランやマヤより強くなったわけでもない。
だが、倒れたあとも立ち続ける方法は覚えた。
ナツメヤシの間に、白っぽい石膏造りの家々が見え始める。
村へ近づくにつれ、扉や細い窓の奥から人々の顔が現れた。
アイン・アルワルの住民たちが、彼らの帰りを待っていた。
*
一行が戻る前から、広場は人で埋まっていた。
男たちは古い井戸と長い石の腰掛けの近くに立ち、女たちは石膏の壁が作る影に集まっている。
子供たちは、母親に後ろへ下がるよう言われながらも、誰より道の近くへ出ていた。
一行が広場へ入る。
囁きが広がった。
「青い炎の人だ」
「井戸のところで見た」
「怪物と子供たちの間に、一人で立ってたんだ」
最初に視線を集めたのは、シグランだった。
笑みは見せない。
さらに注目を集めようと、顔を上げることもない。
ラカンの近くで不機嫌そうに立ち、人々の囁きなど気にしていないように見えた。
だが、その顎が僅かに強張ったことを、ヤザンは見逃さなかった。
次に、いくつかの視線がマヤへ移る。
「井戸の水が溢れるのを止めた子だ」
「水が、あの子の周りを回っていた」
マヤは僅かに目を伏せた。
アイン・アルワルにとって、水は戦うための道具ではない。
村を生かすものだった。
やがて、人々の視線がヤザンへ届いた。
ゆっくりと。
まるで朝の光が、村が長い間見ようとしなかった顔を照らし出していくかのように。
衣服にはアルマザの徽章がある。
だが、俯いて路地を歩いていた子供を知る者にとって、その顔は徽章よりも見覚えのあるものだった。
井戸のそばにいた男が囁く。
「あれは……」
別の男が低い声で答えた。
「マルワンが育てていた子だ」
扉の近くに立つ女が、長い間使っていなかった名前を確かめるように言った。
「ヤザン……?」
ヤザンは動かなかった。
すべて聞こえていた。
だが、その名に驚きはしない。
ただ、ひどく古く聞こえた。
マスウードが疲れた足取りで前へ出た。
ラカンとアシールの前で止まり、軽く頭を下げる。
「アイン・アルワルを代表して、アルマザとビスカラの騎士たち、そしてアシール・ガスカン殿に感謝する。あなた方がいなければ、次の夕暮れまでに村の何が残っていたか分からない」
ラカンが静かに答える。
「封印は安定した。だが、古く、亀裂も残っている。ナツメヤシ園と使われていない水路には、誰も近づけるな」
マスウードが頷いた。
「必ず守らせる」
アシールが半歩前へ出る。
疲労は顔に現れていたが、その声は広場の端まで届いた。
「石が静かになったからといって、すべてが終わったわけではない。水位と、ナツメヤシ園の周囲にある砂の動きを監視しなさい。夕暮れ時に空気の臭いが変わった場合も、すぐに報告して」
集まった男たちへ視線を向ける。
「封印石には誰も触れないこと。火もケメンも近づけてはいけない」
僅かに間を置いた。
「自分の勇気を証明するために、あの場所へ入る者も出さないで」
何人かが目を伏せた。
ヌーリヤが言う。
「今日中に、監視すべき流路を地図へ記します。家の下から水音が聞こえたり、砂に新しい亀裂が現れたりした場合は、すぐに守り手へ知らせてください」
サーリムが、広場の住民にも聞こえる声で続ける。
「ラカン隊は、干上がった水路でも、古い井戸でも、最後の封印石の前でも、この村のために戦ってくれた」
ジャラールは一度、ヤザンへ目を向けた。
「それに、命じられた以上のことをした者もいる」
人々の視線が、再びヤザンへ向けられる。
今度は、記憶を探るためだけではなかった。
彼を見ていた。
ナツメヤシ園の砂にまみれた衣服。
傷ついた肩。
擦りむいた両掌。
胸には、村の地中から現れた怪物が残した浅い鉤爪の跡がある。
ヤザンは感謝を求めていない。
謝罪を待っているようにも見えなかった。
広場の端には、アマニが立っていた。
両手に、古い藁人形を抱えている。
頭のほつれは新しい糸で縫い直されていたが、身体は昔と変わらず軽く、少し歪んでいた。
持ち主とともに、長い年月を生きてきたかのようだった。
アマニの背後には、母親がいた。
娘の手首を掴んでいる。
母親が囁いた。
「ここにいなさい」
アマニは答えなかった。
母親の指に少し力が入る。
「アマニ」
少女は自分の手首を掴む手を見てから、母親の目を見上げた。
「逃げたりしない」
その手を静かに外す。
母親の指が、もう一度掴もうと動きかけた。
だが、止まった。
アマニは広場の中央へ歩き出した。
最初に気づいたのは、子供たちだった。
彼らが黙る。
続いて女たちの声が消え、男たちも彼女へ顔を向けた。
アマニは村人と騎士たちの間に、一人で立った。
藁人形を胸に抱いている。
ヤザンが彼女を見る。
水路から助けた少女の姿に、もっと幼かった頃のアマニが重なった。
古い道のそばで泣いていた少女。
砂の上へ落ちた藁人形。
それを拾い、砂を払い、言葉もなく差し出した自分。
そして、アマニを自分から引き離した手。
アマニは唾を飲み込んだ。
「私が小さかった頃……みんな、あの人に近づくなって言った」
声は大きくなかった。
広場が、その声を聞けるほど静かだった。
アマニはヤザンを見てから、周囲の顔へ視線を移した。
「理由は分からなかった。いつも一人で歩いてた……ずっと、一人で」
言葉が一度止まる。
「同じ道を歩くだけで、誰かに謝っているみたいだった」
一人の老女が目を伏せた。
アマニが言う。
「子供だった」
短い言葉だった。
それでも、広場にいる全員へ届いた。
「怪物じゃなかった。誰も傷つけてなかった」
藁人形を握る指に力が入る。
「ただの子供だった」
シグランが拳を握った。
指の間に青い光が一瞬だけ現れ、炎になる前に消える。
何も言わなかった。
だが、村人たちへ向ける目は鋭くなっていた。
アマニは続ける。
「私の人形が落ちた時、拾ってくれた」
藁人形を少し持ち上げる。
「何も求めなかった。返してくれて……そのまま行った」
声が揺れ、言葉が途切れた。
誰も急かさなかった。
「私が水路で死にそうになった時も、来てくれたのはあの人だった」
幾つもの顔が、ヤザンへ向く。
アマニが言う。
「私を見捨てることもできた」
そして、首を横へ振った。
「でも、そうしなかった」
再び、沈黙が落ちる。
次の言葉を口にするまで、アマニは少しだけ時間を必要とした。
「彼が呪いなら……どうして、私を助けに来たのは彼だったの?」
その問いは、深い井戸へ落ちた石のように、広場の底まで沈んだ。
アマニの母親が口元へ手を当てる。
ヤザンは、どこへ目を向ければいいのか分からなかった。
アマニは彼を褒めているのではない。
村が長い間、埋め続けてきたものを掘り起こしていた。
村の中で生きながら、村の一人だと認められなかった子供を。
アマニが言う。
「みんな、あの人を怖がってた」
母親を見る。
それから、他の住民たちを見た。
「分からなかったから」
一度、言葉を切る。
藁人形を抱く指が震えていた。
「その恐怖の代償を、子供に払わせた」
ナツメヤシの間を弱い風が通り抜けた。
扉のそばに掛けられた布が揺れ、近くの水路から淀んだ水の臭いが流れてくる。
反論する者はいない。
アマニが間違っていると言う者もいなかった。
「呪いの子なんかじゃなかった」
アマニはヤザンを見上げた。
「この村の子でもあった」
母親の唇が震える。
それでも、アマニは退かなかった。
「アイン・アルワルが忘れても……私は忘れなかった」
言葉が終わる。
誰も拍手をしなかった。
賛同の声も上がらない。
村人たちがヤザンへ駆け寄り、許しを求めることもなかった。
残ったのは、沈黙だけだった。
だが、それはもう、何かを待つ沈黙ではない。
恥じる者たちの沈黙だった。
井戸のそばにいた男が頭を下げる。
扉の近くにいた老女は、脚から力が抜けたようにその場へ座り込んだ。
子供たちは親の顔を見ていた。
すべてを理解したわけではない。
それでも、藁人形を抱いた一人の少女を前に、大人たちが何かを失ったことだけは分かった。
アマニの母親が一歩前へ出る。
顔から血の気が引いていた。
最初に娘を見る。
それから、ヤザンへ目を向けた。
口を開く。
だが、言葉が出ない。
もう一度、声を絞り出そうとした。
「私は……」
そこで止まる。
母親は顔を伏せた。
「怖かった……」
許してほしいとも、悪気はなかったとも言わなかった。
ただ、その一言だけが広場に落ちた。
アマニは母親を責めるようには見なかった。
だが、答えもしなかった。
すべての視線が、ヤザンへ戻る。
広場は彼の声を待っていた。
心の奥には、理由を尋ねたがる子供が残っていた。
なぜ自分だったのか。
なぜ自分の名は、呼ぶことさえためらわれるほど重かったのか。
なぜ自分が通るたび、道が狭くなったのか。
なぜマルワンだけが、自分と村全体の間に立たなければならなかったのか。
だが、ヤザンは何も尋ねなかった。
アルマザの徽章を胸につけて戻ってきた今のヤザンも、演説はしなかった。
ただ、言った。
「俺は、子供だった」
長い非難ではない。
許しでもない。
彼らがもう埋めることのできない事実だった。
シグランの表情が強張る。
村人たちに目元を見られまいとするように、僅かに顔を逸らした。
マヤは、ヤザンを見つめたままだった。
アルマザでの孤独なら知っていた。
だが今、その孤独がアルマザから始まったのではないことを知った。
アマニがヤザンへ一歩近づく。
迷ったあと、藁人形を少し持ち上げた。
彼へ差し出しはしない。
ただ、よく見えるようにした。
「私、覚えてた」
ヤザンは人形を見てから、アマニを見る。
「知ってる」
アマニは頷いた。
問い返す必要はなかった。
マスウードが、再び口を開いた。
声は先ほどよりも重かった。
「ヤザン・ファドゥース」
村人たちの前で、その名をはっきりと口にした。
ヤザンが彼を見る。
「アイン・アルワルは、君と仲間たちに恩がある」
ヤザンは一瞬、黙っていた。
そして答える。
「任務は終わりました」
それ以上は言わなかった。
村に積み重なった年月を、一言の感謝で終わらせるつもりはない。
アマニを救ったのは、彼女を死なせることができなかったからだ。
封印を閉じたのは、自分が騎士であり、マルワンとラヒールの墓がここにあるからだ。
だからといって、アイン・アルワルが再び故郷になるわけではない。
誰かが沈黙を埋めるためだけの言葉を口にする前に、アシールが告げた。
「全員に短い休息が必要よ。その後、封印と監視すべき流路について、最後の指示を残すわ」
ラカンが頷く。
「サーリム、ヌーリヤ、ジャラール。アシールの最終確認が終わるまで、井戸と水路へ誰も近づけるな」
サーリムが答える。
「承知した」
住民たちは、ゆっくりと散り始めた。
珍しい出来事を見終えた者のようには立ち去らない。
誰もが、置き場所の分からない何かを抱えていた。
何人かは何も言わず、石膏造りの家へ戻っていく。
別の者たちは扉の近くに残り、砂へ目を落としていた。
子供たちは囁き合いながら離れていく。
だが、彼らが話していたのは青い炎だけではなかった。
もう一つの名が、そこにあった。
ヤザン。
アマニは母親のもとへ戻った。
藁人形を両手に抱え、母親の前で止まる。
母親は震える手を娘の肩へ伸ばした。
だが、触れる寸前で止まる。
アマニは離れなかった。
母親の手が、そっと肩へ置かれる。
それは謝罪ではない。
起きたことを元へ戻すものでもない。
ただ、長く閉ざされていた壁に、最初の亀裂が入っていた。
*
ヤザンは古い井戸のそばに立っていた。
誰の顔も見ていない。
マヤが近づき、少し距離を残して止まる。
「ヤザン」
彼が振り返る。
マヤの目には、幾つもの言葉が浮かんでいた。
だが、どれも口にはしなかった。
「何を言えばいいのか、分からない」
ヤザンが静かに答える。
「何も言わなくていい」
マヤは頷いた。
「分かった」
そのまま隣に立つ。
触れようとはしない。
沈黙を言葉で埋めようともしなかった。
しばらくして、シグランが反対側へ来た。
ヤザンを見ず、井戸を見たまま言う。
「あの子は、この村の半分より勇気があるな」
ヤザンが答える。
「あの子じゃない。アマニだ」
シグランは一瞬、黙った。
それから言う。
「知ってる」
二人とも、互いの顔を見なかった。
少し離れた場所から、アシールが三人を見ていた。
隣に立つラカンへ言う。
「あなたの隊は、怪物を倒しても戦いが終わらないのね」
ラカンは、ヤザンを見つめていた。
近づこうとはしない。
今必要なのが指示ではなく、誰にも踏み込まれない時間であることを分かっていた。
「分かっている」
アシールが答える。
「いいえ。あなたも、ようやく分かり始めたところでしょう」
ラカンが彼女を見る。
だが、アシールはそれ以上何も言わなかった。
広場で、声を上げて謝罪した者はいない。
アイン・アルワルが突然、ヤザンを愛する場所へ変わったわけでもない。
それでも、何かが変わっていた。
彼はもう、アルマザから来た見知らぬ騎士ではない。
誰も近づいてはならないと言われていた子供でもない。
今は、自分の名を持って彼らの前に立っている。
愛してほしいとは求めない。
簡単な許しも与えない。
ヤザンが求めていたのは、もっと単純なことだった。
そして、もっと重いことだった。
彼を、呪いと呼ぶのをやめること。




