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血の継承【改訂版】  作者: Salhi smail
第四章 アイン・アルワル編

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第三の流路

一行が動き出した頃には、夜明けの光がアイン・アルワルの外れまで広がっていた。


だが、太陽はまだ砂丘の向こうに姿を隠したままだった。


禁じられたナツメヤシ園までの道のりは長くない。


それでも、一歩進むごとに背後の村は小さくなり、前方の静けさは大きくなっていった。


村の外れでは、石膏の壁に掛けられた松明がまだ残っていた。


風に揺れる炎は、家々を離れ、誰も近づかない場所へ向かう一行を見送る小さな目のようだった。


先頭にはサーリムとラカン。


その後ろを、黒い道具袋と丸めた水路図を持つアシールとヌーリヤが歩く。


第三班は隊列の中央にいた。


右側を歩くシグランは、片手を身体の脇に下ろしていた。


時折、指の周囲に淡い炎が揺らめき、すぐに消えた。


力を見せつけているわけではない。


必要になる前に、炎が応じるかを確かめているのだ。


反対側にはマヤがいた。


腰に下げた水袋の中では、水が落ち着きなく動いていた。訓練のときのように身体の周囲へ浮かんではいなかったが、小さな円を描きながら命令を待っていた。


ヤザンは二人の間を歩いていた。


第三班の中では先頭に近く、いつもよりラカンとの距離も近い。


肩には包帯が巻かれ、身体には水路の縁へ叩きつけられた痛みが残っている。


それでも、休みたいとは言わなかった。


黙って歩き、ナツメヤシ園ではなく道を見ていた。


最後尾では、ジャラールが二人の村の守り手とともに、背後の細い道へ目を配っていた。


水路に新たな出口が開けば、そこから怪物が現れる可能性があった。


ラカンが振り返らずに尋ねる。


「ここからか?」


ヤザンは半拍遅れて、二列のナツメヤシの間にある細い道を指した。


「本道は左へ回り込みます。でも、開けすぎている。この道なら、古い水路の裏側へ出られます」


サーリムが言う。


「もう誰も使っていない道だ」


「知ってる」


サーリムはヤザンを見てから、ラカンへ目を向けた。


ラカンが尋ねる。


「なぜ使われなくなった?」


ヤザンは前方の黒い木々を見ずに答えた。


「ナツメヤシ園に近いからです」


アシールが静かに言う。


「だからこそ、今はこの道が必要なのよ」


ヤザンは何も言わなかった。


一行は細い道へ入った。


この辺りのナツメヤシは、村のものより古かった。


幹は太く、葉は乾き、何本かは道の上へ傾いて、崩れかけた屋根のようになっている。


足元では、薄い砂の下に古くひび割れた土が広がっていた。


誰かが踏むたびに乾いた音が鳴る。


まるで、大地が内側にある亀裂を覚えているかのように。


ヌーリヤが幹を見ながら言った。


「昔は、この辺りにも水が流れていました。土に跡が残っています」


アシールが尋ねる。


「どこまで続いていたの?」


ヌーリヤが前方を指した。


「あそこです。ナツメヤシ園の近くまで」


弱い風が吹いた。


頭上で乾いた葉が揺れ、長い囁きのような音を立てる。


ヤザンの足が一瞬止まった。


知らない音ではない。


幼い頃の夜にも、同じ音を聞いていた。


日が沈む前にマルワンが小さな家の扉を閉め、何を聞いても外へ出るなと言っていた。


何を聞いても。


後ろからシグランの声がした。


「止まるな」


ヤザンが振り返る。


シグランはヤザンではなく、前方を見ていた。


「道が狭い」


実用的な注意をしただけのような、冷たい口調だった。


だが、ヤザンには分かった。


礼は言わなかった。


ただ、再び歩き始めた。


     *


淡い光がナツメヤシの間へ差し込む頃、一行は禁じられたナツメヤシ園の境へ辿り着いた。


そこに柵はなかった。


門もない。


立ち入りを禁じる印さえなかった。


境界は、人の手で作られるものよりも古かった。


ねじれたナツメヤシが一列に並び、幹の多くは黒く変色している。乾いた葉は骨のように見えた。


その列が、普通のオアシスと、その先にある別の土地を隔てている。


木々の下には、古い水路が干からびた血管のように伸びていた。


口を開けたままのもの。


砂に埋もれたもの。


小さな石で覆われたもの。


村人たちは塞ごうとしたのだろう。


だが、恐怖に押され、途中で手を止めたのだ。


木々の向こうにあるナツメヤシ園は、動かなかった。


鳥はいない。


虫もいない。


風の音さえ、はっきりとは聞こえなかった。


最後尾から、ジャラールが言う。


「この静けさは気に入らないな」


シグランが返した。


「普段から気に入るものがあるのか?」


ジャラールが彼を見る。


「俺を食おうとしないものだ」


マヤが小さな声で言う。


「それなら、ここには何もないわね」


誰も笑わなかった。


それでも、張り詰めていた空気がわずかに緩んだ。


アシールが一歩進み、手を上げる。


「私より前へ出ないで」


全員が止まった。


アシールは道具袋から細い黒糸を取り出した。


編み込んだ影で作られているかのような糸だった。


片端を小さな杭に結び、水路の縁へ打ち込む。


それから、斜めに傾いた小石まで、糸を真っすぐに伸ばした。


ヌーリヤを見る。


「昔の水の流れを特定して」


ヌーリヤは片膝をつき、地面へ手を置いた。


目を閉じる。


しばらくして、口を開いた。


「水はここを通って……あの木で二つに分かれていました」


老人の背中のように幹が曲がったナツメヤシを指す。


「一つは村へ。もう一つはナツメヤシ園の中へ続いています」


アシールが尋ねる。


「今は?」


ヌーリヤはゆっくり目を開いた。


「村へ続く方は、地表では干上がっています。でも、深いところまでは乾いていない」


サーリムが尋ねる。


「どういう意味だ?」


「地下で何かが動いているということです」


アシールは黒糸のそばに身を屈め、二本の指で触れた。


糸が震えた。


目に見えない何かを感じ取ったかのように。


「地図につけた印の一つと重なるわね」


シグランが黒糸へ目を向ける。


「それで、何が分かった?」


「ここに反応があることだけよ。流路がどこへ繋がっているかは、封印を読まなければ分からない」


アシールは黒糸を外し、杭だけを残した。


ラカンは目立たないよう半歩動き、ヤザンとナツメヤシ園の境との間に立った。


「続けるぞ」


     *


封印石は、ナツメヤシ園の奥、干上がった水路と、周囲の木々よりひときわ大きな古いナツメヤシのそばにあった。


シグランが想像していたほど巨大ではない。


美しくもなかった。


黒みがかった灰色の石。


半分は地面に埋まり、表面には亀裂が走っていた。


そこに刻まれたかすれた文様は、この場所へ命令する術を知りながら、その意味を伝える前に死んだ者の筆跡のようだった。


周囲の土は暗い。


遥か昔から、影がこびりついているかのように。


アシールは封印石から七歩離れた場所で止まった。


それ以上は近づかない。


シグランが尋ねる。


「これか?」


「ええ」


「もっと大きいものだと思っていた」


「危険なものが、あなたを満足させるために大きくなることはないわ」


サーリムが右側の水路のそばへ膝をついた。


「最初に亀裂を見つけたのは、ここです」


ヌーリヤが頷く。


「この辺りから、空気も重くなっていました」


マヤが一歩進み、すぐに止まった。


「水を感じる……でも、普通じゃない」


アシールが彼女を見る。


「どう違うの?」


マヤが片手をわずかに上げる。


水袋から細い水の筋が伸びたが、滑らかには流れなかった。


空中で震えている。


不快な音を聞いているかのように。


「地下へ引かれているのに、同時に拒まれているような感じです」


ヌーリヤが言う。


「水路でも同じものを感じました」


アシールは足元へ黒い杭を打った。


「誰も封印石へケメンを流さないで。水も、炎も、光も。何も使ってはいけない」


シグランが彼女を見る。


「何かが出てきてもか?」


「出てきたものは、石から離れた場所で倒して。英雄のつもりで封印石まで攻撃すれば、目の前にいるものではなく、その向こう側にいるものと戦うことになる」


ラカンが言う。


「聞いたな」


ヤザンが答えた。


「はい」


声は、マヤが予想したよりも落ち着いていた。


彼女はヤザンを見る。


顔は少し青ざめている。


それでも、立っていた。


視線は封印石ではなく、自分と古いナツメヤシの間にある地面へ向いている。


記憶の中にある、別の場所に近い地点。


血が残った場所。


ラカンが低い声で呼ぶ。


「ヤザン」


ヤザンは振り返らずに答えた。


「ついています」


ラカンは彼の近くに立ったまま、それ以上何も言わなかった。


     *


アシールが作業を始めた。


道具袋から三つの小さな巻物を取り出し、自分を囲む三角形になるよう地面へ置く。


次に石の箱を開いた。


中には、細かく砕いた灰のような黒い粉が入っている。


指先で少し取り、地面へ短い線を引いた。


二本目。


そして、三本目。


円を描いているのではない。


方向を示していた。


作業を見ていたヌーリヤが言う。


「閉鎖の封印ではありませんね」


「まだ閉じる段階ではないから。今は流れの向きを読んでいるの」


サーリムが尋ねる。


「封印石には触れないのか?」


「繋がりが分からないうちに触れれば、どこへ圧力が逃げるか分からないわ」


アシールは線の上へ掌を置き、目を閉じた。


静寂が落ちる。


風がナツメヤシの間を通り抜けた。


だが、すべての葉が動いたわけではない。


一本の木だけが揺れた。


封印石の近くにある、あの古いナツメヤシ。


アシールが目を開き、地図につけた印を見る。


「この三つの印は、調査を始めるための基準点にすぎない。実際の繋がりを示しているのは封印の方よ」


水路図の上へ指を置く。


「第一の流路は、怪物が現れた水路の下」


ヌーリヤが頷く。


「はい」


「第二の流路は、封印石の真下」


アシールの指が地図の上を滑る。


「そして、第三は……」


言葉が止まった。


全員が彼女を見る。


ラカンが尋ねる。


「どこだ?」


アシールはすぐには答えなかった。


ヤザンへ目を向け、その背後にある、ここまで通ってきた道を見る。


「村の方へ伸びている」


サーリムの目つきが変わる。


「すべての入口を見張っていた」


「あなたたちが見張っていたのは、目に見える道だけよ」


ヌーリヤが掠れた声を漏らす。


「古い水路が、家々の下まで……」


アシールが頷く。


「村の外れの下まで続いている。第三の流路を閉じずに封印石へ触れれば、村そのものが出口になるかもしれない」


誰も口を開かなかった。


シグランが言う。


「なら、先にそこを閉じる」


「ええ。でも、まだ正確な位置を特定できていない」


ヤザンが口を開いた。


「場所なら知っています」


全員が彼を見る。


ラカンが尋ねる。


「何を知っている?」


ヤザンは村の方角を指した。


「石膏造りの古い家々の裏に、埋もれた水路があります。地表は乾いているのに、冬になると下から水の音が聞こえることがあった。子供たちは、ジンが棲んでいると思っていました」


サーリムが言う。


「その水路は知らない」


「誰も使わない道の下にあります。古い鍛冶小屋の裏です」


サーリムがヌーリヤを見る。


彼女は迷うように言った。


「聞いたことはあります。でも、ずっと前に崩れたと思っていました」


アシールが言う。


「地表が崩れても、地下の流れまで消えたとは限らないわ」


ラカンがヤザンを見る。


「案内できるか?」


ヤザンが頷く。


「はい」


「俺の後ろにいろ」


「離れません」


     *


ナツメヤシ園は、それ以上の時間を与えなかった。


一行が動き出す前に、封印石の近くにある水路から音がした。


何かが擦れるような、小さな音。


続いて、呼吸音。


亀裂から、黒く長い腕が現れた。


細い指。


骨のように白い鉤爪。


アシールが素早く言う。


「封印石から引き離して!」


最初に動いたのはシグランだった。


掌を青い炎が覆う。


だが、亀裂へ向けて放ちはしなかった。


横へ一歩移動し、掌を振り抜く。


斜めに走った炎の波が、石ではなく怪物の前方にある地面を焼いた。


進路を断ち、別の方向へ追い込む。


アシールが声を張らずに言った。


「いい判断よ」


シグランが聞いたのか、聞こえないふりをしたのかは分からなかった。


怪物が全身を現した。


水路で見た小型の怪物よりも背が高い。


だが、その身体はさらに細く、皮膚には亀裂が走っていた。二つの目は、黄色い穴のように見える。


怪物は一行ではなく、封印石へ向かって突進した。


マヤが叫ぶ。


「石へ行こうとしてる!」


水を持ち上げ、低い位置から鞭のように伸ばす。


水が怪物の脚へ巻きついた。


力任せには引かない。


計算した角度から張り、怪物を封印石とは別の方向へ逸らした。


ヌーリヤが驚いたように言う。


「引き倒すんじゃない。進む方向だけを変えている」


その瞬間、怪物が狙いを変え、マヤへ跳んだ。


ヤザンが横から動く。


最も近くにいたわけではない。


最も強いわけでもない。


だが、怪物が跳ぶより先に、その肩が沈むのを見ていた。


「マヤ、伏せろ!」


マヤは迷わず身を低くした。


鉤爪が頭上を通り過ぎる。


ヤザンは地面から平たい石を拾っていた。


怪物の頭ではなく、左目へ投げる。


大きな傷にはならない。


だが、その目が閉じた。


一瞬。


シグランは、その一瞬を逃さなかった。


横から踏み込み、青い炎を細い線へ絞る。


剥き出しになった首の関節を打った。


怪物が地面へ倒れ、身をよじった。


ジャラールの槍が、その動きの先を塞いだ。


必要な瞬間にだけケメンを刃へ流し、怪物の首へ深く突き入れる。


怪物の身体が一度大きく震え、動かなくなった。


短い沈黙が訪れた。


三人を見ながら、サーリムが言う。


「何度も一緒に戦ってきたように見える」


息を整えながら、マヤが答えた。


「いつも、ここまでまとまっているわけではありません」


シグランが言う。


「印象を壊すな」


ヤザンが返す。


「怪物に食われかけた時点で、もう壊れたと思う」


封印石のそばから、アシールが言った。


「いいえ。今のは悪くなかったわ」


全員が彼女を見る。


アシールは三人へ順に目を向けた。


「力だけなら封印石を壊していた。慎重なだけなら、怪物を石へ近づけていた。でも、あなたたちはその間にある答えを選んだ」


少し間を置く。


「この先も生き残れれば、いずれ大きな存在になるでしょうね」


奇妙な沈黙が落ちた。


シグランでさえ、すぐには言葉を返せなかった。


ジャラールがサーリムへ小声で尋ねる。


「今のは褒めたんだよな?」


サーリムが答える。


「アシール・ガスカンにしては、長い演説だったと思う」


緊張の中で、ヌーリヤが笑みを浮かべた。


だが、ラカンは笑わなかった。


いつもより長く三人へ目を留め、それからナツメヤシ園へ視線を戻す。


アシールが彼らの先に大きな未来を見た一方で、ラカンには、そこへ至る道が決して優しくないことも見えていた。


     *


アシールは別の杭で亀裂を一時的に閉じ、立ち上がった。


「今は封印石の作業を続けられない」


シグランが言う。


「ここまで来て、戻るのか?」


「順序を変えるだけよ。第三の流路を閉じずに石へ触れれば、村そのものが危険に晒される」


ラカンが言った。


「なら、一度戻る」


その声に迷いはなかった。


撤退を命じたのではない。


先に閉じるべき道を選んだのだ。


アシールが頷く。


「ヤザンが話した、埋もれた水路から始めるわ」


サーリムがヤザンを見る。


その目に疑いはなかった。


代わりに、慎重ながらもヤザンを認める色が浮かんでいた。


「今の姿からは想像できないほど、アイン・アルワルをよく知っているようだな」


ヤザンが答える。


「もっと背が低かった頃に覚えた」


ジャラールが言う。


「転んでも壊れない身体になる前か?」


「それはアルマザで覚えた」


シグランが口を挟む。


「見ている方が恥ずかしくなるほど転んだあとにな」


ヤザンが彼を見る。


「数えてたのか?」


「無視する方が難しかった」


ラカンが言う。


「話は終わりだ。動くぞ」


三人はすぐに歩き始めた。


道具を片づけながら、アシールが言う。


「訓練の成果は、はっきり出ているわね」


ラカンが答えた。


「まだ終わっていない」


一行はナツメヤシ園の境へ向かった。


立ち去る前に、ヤザンは一度だけ振り返った。


封印石。


古いナツメヤシ。


干上がった水路。


触れてもいないのに、胸を圧迫してくる場所。


そして、記憶の中でマルワンの声を聞いた。


死の間際の声ではない。


穏やかな夜に聞いた声だった。


――入る覚悟がないなら、扉の前に立つな、ヤザン。扉は、いつまでもそこにある。


ヤザンは唾を飲み込んだ。


前方から、ラカンが呼ぶ。


「ヤザン」


ヤザンが振り返った。


「はい」


そして、すぐに一行へ追いついた。


一行は足を速めることなく、禁じられたナツメヤシ園をあとにした。


だが、その背後でナツメヤシ園は沈黙したままだった。


まるで、ヤザンという存在を、まだ思い出しきれずにいるかのように。

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