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血の継承【改訂版】  作者: Salhi smail
第四章 アイン・アルワル編

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ここにいる

夜明けまで、あと一刻ほど。


アイン・アルワルの灯りは、まだ消えていなかった。


村の守り手たちは村の入口に配置され、村人たちも干上がった水路の周囲に築かれた柵の後ろで見張りを交代している。


砂が崩れる勢いは弱まっていた。


それでも黒い杭は銀色の円の中心で震え続けていた。まるで、目に見えない場所から何かに押されているかのように。


宿舎の中庭では、アシールが敷物の上に広げた大きな地図を見つめていた。


線の多くは急いで引かれたもので、その先が、何年も前に砂へ埋もれた空白の中で途切れている箇所もあった。


隣に座るヌーリヤが、知っている道と水路を指し示していた。


ヌーリヤは村の外れへ延びる一本の線に印をつけた。


「この水路は、数年前まで地上に残っていました。その後、風で砂に埋まり、誰も使わなくなりました」


アシールが指先で線をなぞった。


「分かっている場所にだけ印をつけて。推測を、夜明けに通る道へ変えたくはないわ」


ヌーリヤが頷く。


ジャラールは中庭の入口近くへ座り、槍を傍らに置いたまま道を見張っていた。


サーリムは地図と守り手たちの間を行き来し、村の老人たちが覚えている古い道の名を集めている。


その反対側では、シグランが木の柱へ背を預けていた。


傷めた手を膝の上へ置き、指を開いたままにしている。完全に握れないことを、誰にも気づかせたくないのだ。


時折、指先に小さな青い火花が生まれ、すぐに消えた。


眠ってはいない。


眠ろうとするふりさえしていなかった。


少し離れた壁際には、ヤザンが座っていた。


肩には清潔な布が巻かれている。


その下では、鉤爪に刻まれた三本の傷が、腕を動かすたびに焼けるように痛んだ。


さらに深い痛みが、脇腹と背中に残っていた。子供たちを助けたとき、壁へ叩きつけられた傷だ。


だが、それが彼を眠らせなかった理由ではない。


ヤザンは宿舎の外へ続く脇道を見つめていた。


家々の間を通り、古いパン窯のそばで曲がり、村の外れへ消えていく細い道。


アイン・アルワルを去った日から、一度も歩いていない道だった。


マヤは彼から少し離れた場所に座っていた。


冷たい水の細い流れを肩の布に沿わせ、包帯を濡らしすぎないよう、傷の熱だけを逃がしている。


ヤザンの視線に気づいた。


「戻ってきてから、ずっとあの道を見てる」


ヤザンは振り向かなかった。


「分かってる」


「誰かが来るのを待ってるの?」


「違う」


マヤは少し黙った。


「じゃあ、行きたいのはヤザンの方ね」


ヤザンが彼女を見る。


答えなかった。


そのとき、見回りを終えたラカンが中庭へ戻ってきた。


外套の裾には砂が付着している。


彼は全員の様子を確かめた後、ヤザンへ視線を止めた。


続いて、ヤザンが見ていた脇道を見る。


「行きたい場所があるな」


ヤザンが顔を上げた。


問いではなかった。


「はい」


マヤの手が止まり、肩を冷やしていた水も静止した。


ラカンが尋ねる。


「どこだ」


ヤザンは道へ目を向けた。


「村の外れです。ナツメヤシ園へ入る前に、どうしても見ておきたい場所があります」


「そこに何がある?」


ヤザンはしばらく黙った。


危険を隠しているわけではない。


ただ、そこへ辿り着くまで、自分だけのものとして残しておきたかった。


「アイン・アルワルを出た日に、置いてきた場所です」


ラカンはそれ以上問い詰めなかった。


「どれくらいかかる」


「十分ほどです」


ラカンは中庭の壁越しに空を見上げた。


まだ光は見えない。


だが、東の空では闇がわずかに薄れ始めていた。


「三十分だ。戻れと言ったら戻る」


「はい」


マヤが立ち上がり、水袋の口を閉じた。


「私も行きます」


ヤザンは反対しなかった。


シグランも柱から背を離し、立ち上がる。


ラカンが彼を見る。


「その手は休ませろ」


「歩くのに手は要らない」


ラカンの視線が鋭くなる。


シグランはわずかに間を置いた。


「目の届く範囲からは離れない」


ラカンはサーリムへ言った。


「同行しろ」


サーリムが頷く。


「最後の家までは安全です。その先は、ナツメヤシ園の端に近づきます」


地図から目を離さないまま、アシールが言った。


「夜明けまでには戻ってきて。そこからは全員が必要になる」


ラカンが答える。


「間に合わせる」


そしてヤザンを見る。


「行くぞ」


一行は宿舎を出た。


     *


夜のアイン・アルワルは、道が昼よりも狭く見えた。


石膏で覆われた石造りの低い家々と、内側から閉ざされた中庭の扉の間を通り抜ける。


いくつかの入口では、小さな灯りが消えずに残っていた。壁の間を風が抜けるたび、その炎が弱々しく揺れる。


サーリムが松明を持ち、開けた道へ出るたびにラカンが先頭へ立った。


ヤザンは、そのすぐ後ろから道を示す。


足を止める必要も、周囲を探す必要もなかった。


二年が過ぎても、身体が道を覚えていた。


古いパン窯の裏を曲がる。


灰と焦げたパンの匂いが、冷え始めた石膏と砂の匂いに混じっていた。


歩くほどに、背後の守り手たちの声が遠ざかる。


代わりに、ナツメヤシの音が聞こえ始めた。


葉が擦れる音。


乾いた枝が壁へ触れる音。


風が隅へ砂を運ぶ音。


冷たい水が再びヤザンの包帯をなぞり、傷の熱をわずかに奪った。


マヤが言う。


「痛みが強くなったら教えて」


「変わってない」


「耐えられるかどうかは聞いてない」


ヤザンは横目で彼女を見る。


「ラカンの影響を受けてる」


前を歩くラカンが言った。


「聞こえているぞ」


ヤザンは黙った。


マヤの口元に小さな笑みが浮かび、すぐに消えた。


村の外れへ近づくと、右手にナツメヤシの長い列が現れた。


完全な黒ではない。


だが、幹と幹の間にある闇は、夜そのものより深く見えた。


マヤがそちらを見る。


「あれがナツメヤシ園?」


サーリムが答えた。


「端だけだ。禁じられた区画は、もっと奥にある」


ヤザンは、サーリムが示した方角を見なかった。


そのまま歩き続ける。


最後の角を曲がったところで、サーリムの足がわずかに止まった。


道がどこへ続いているのか、分かったのだ。


ヤザンを見て、その先に現れたものを見る。


だが、何も尋ねなかった。


古いナツメヤシと低い壁の間に、小さな家が建っていた。


ヤザンの記憶よりも小さく見える。


あるいは、あそこで暮らしていた子供の方が、大きくなっただけなのかもしれない。


壁は石を積み、色褪せた石膏で覆ってある。


何か所か亀裂が走っていたが、最近になって埋め直された跡があった。


低い屋根を古いナツメヤシの幹が支え、その上へ葉が重ねられている。さらに風を防ぐ薄い層で覆われていた。


扉もナツメヤシ材で作られていた。


記憶と同じように少し傾いている。


だが、それを固定する縄は、家そのものより新しかった。


入口の砂は掃かれている。


枯れ枝も、壁際へ積もってはいなかった。


ヤザンが立ち止まった。


家が残っているとは思っていなかった。


誰かの手が、今もここへ触れているとも思っていなかった。


マヤが静かに尋ねる。


「ここなの?」


ヤザンは扉を見つめた。


「ここで暮らしてた」


誰も何も言わなかった。


シグランは小さな家を見て、次にヤザンを見た。


自分が知る少年を、あの狭い場所で暮らしていた子供へ重ねようとした。


だが、うまくできなかった。


ラカンは最初に道を確認し、近くのナツメヤシへ視線を走らせた。


何の動きもないことを確かめる。


「互いから離れるな」


ヤザンは家の裏へ回った。


墓を探すことはしなかった。


場所を知っていた。


古いナツメヤシが地面へ向かって傾き、その葉を二つの並んだ墓の上へ広げている。


飾りのない、簡素な墓だった。


縁を小さな石が囲み、それぞれの頭側に墓標が立っている。


砂は積もっていなかった。


誰かが今も、定期的に払っている。


ヤザンがゆっくりと近づく。


最初の墓の前で止まった。


墓標へ刻まれた文字は薄れている。


それでも、光がなくても読めた。


マルワン。


ヤザンは膝をついた。


脇腹に痛みが走る。


それでも立ち上がらなかった。


手を伸ばし、土へ触れる。


冷たい。


村を離れた日と同じ冷たさだった。


口を開く。


帰ってきたと伝えたかった。


アルマザへ辿り着いたこと。


二年間、訓練を続けたこと。


マルワンが残していった子供のままではいないように、必死で生きてきたこと。


ラカンのこと。


マヤのこと。


シグランのこと。


倒れても、何度も立ち上がったこと。


話したいことはいくつもあった。


だが、すべての言葉が喉で止まった。


出てきたのは、ひとつだけだった。


「じいちゃん……」


マヤが目を伏せる。


サーリムは二歩下がり、ヤザンのために空間を空けた。


ラカンは道のそばに立ったまま、急かそうとはしなかった。


シグランも黙っている。


傷めた手は、身体の脇で開いたままだった。


マヤの目が、隣の墓へ移る。


サーリムが松明を少し高く掲げた。


光が、削れかけた文字の上を揺れる。


マヤが小さな声で読んだ。


「ラヒール……?」


ヤザンは顔を上げなかった。


「母さんだ」


マヤの動きが止まる。


墓を見る。


そして、ヤザンを見る。


少し迷った後で尋ねた。


「覚えてるの?」


ヤザンはラヒールの名を見つめた。


「一度も会ったことがない」


しばらく黙り、続ける。


「俺を産んだときに死んだ」


肩の包帯を巡っていた水が形を失った。


砂の上へ落ち、粒の間へ消えていく。


マヤは「ごめん」と言わなかった。


その言葉は、ヤザンと母親の墓の間へ置くには、小さすぎた。


ヤザンが言う。


「母さんの顔より、墓の場所の方をよく知って育った」


マヤは水袋の口を握り締めた。


「それから、マルワンと二人で?」


ヤザンは祖父の墓へ目を戻した。


「じいちゃんだけが、俺に残されたすべてだった」


マヤは答えを見つけられなかった。


初めて、彼女の沈黙は言葉がないからではなかった。


慰めでは届かないものへの敬意だった。


ナツメヤシの向こうから、老人の声が聞こえた。


「こうして自分の足で戻ってくるとは思わなかった」


ラカンがすぐに振り返り、学生たちの前へ半歩出た。


サーリムが松明を上げる。


影の中から、年老いた男が姿を現した。


長い杖を持ち、肩には薄い外套を巻いている。


顔には細かな皺が刻まれていた。


だが、その目は澄み、静かだった。


サーリムが言う。


「ターヒル爺さん?」


老人は杖の先で地面を打った。


「まだ覚えていたか」


「ここで夜を過ごしているとは知りませんでした」


「夜を過ごしていたわけではない。夜明け前に誰も使わない道を、松明が進んでいるのを見ただけだ」


老人の視線がヤザンへ移る。


長く見つめた。


騎士の顔に、かつての子供を探しているようには見えなかった。


最初から見つけていたかのようだった。


「大きくなったな、ヤザン」


ヤザンの胸の奥で、何かが止まった。


村へ戻ってから、仲間たちには何度も名を呼ばれた。


アマニの震える声でも聞いた。


だが、アイン・アルワルの年長者から、恐れも非難もなく名を呼ばれたのは初めてだった。


ヤザンが言う。


「じいちゃんを訪ねてきていた人だ」


ターヒルの顔に、小さな笑みが浮かぶ。


「訪ねていた。二言で俺を追い返したあと、何事もなかったようにナツメヤシの実と水を出す男だった」


ヤザンは笑わなかった。


それでも、目元からわずかに硬さが消えた。


マヤは掃かれた砂と、扉を固定する新しい縄を見る。


「この家とお墓を守っていたのは、あなたですか?」


ターヒルが頷いた。


「できる範囲でな」


マルワンの墓へ近づき、その端で止まる。


「あいつに友人は多くなかった。だが、多くの友人が必要ないほどの男だった」


次に、ラヒールの墓を見る。


「この村で、あの女の味方だったのはマルワンだけだった。そのあとは、この土だけだ」


ラカンは黙っていた。


ラヒールという名に、彼が知る意味はなかった。


今聞いたことが、すべてだった。


ヤザンの母親。


彼を産んだときに死に、育てた男の隣へ眠る女。


ヤザンが尋ねる。


「どうして、この家を残してくれたんですか?」


ターヒルが彼を見る。


「主が死んだあとに家まで崩れれば、それは二度目の死だ」


傾いた扉へ目を向ける。


「マルワンを二度も死なせたくなかった」


ヤザンは顔を伏せた。


ターヒルは墓のそばへゆっくり腰を下ろし、杖をナツメヤシへ立てかけた。


「マルワンはよく言っていた。嵐が過ぎるときに頭を低くすることを覚えれば、子供は生き延びると」


ヤザンの肩に巻かれた布と、胸にあるアルマザの印を見る。


「だが、お前は頭を上げるべき時も覚えたようだな」


ヤザンが答える。


「教えてくれる人たちに出会いました」


視線がラカンへ向かう。


その後、マヤとシグランへ移った。


それ以上は言わなかった。


シグランは小さく咳払いし、ナツメヤシの方へ顔を逸らした。


サーリムが口を開く。


「ターヒル爺さん。干上がった水路について聞きたいことがあります」


老人の小さな笑みが消えた。


「何だ」


「あの水路は、ナツメヤシ園まで続いていたんですか?」


ターヒルはナツメヤシの列を見る。


「そうだ。人々があそこを禁じられたナツメヤシ園と呼ぶ前は、地上に見える水路が村の外れから東側まで続いていた」


ラカンが尋ねる。


「封印石よりも前からあったのか?」


老人が頷く。


「水路の方が古い。封印が置かれたとき、流れの一部が埋められ、古い区画への道が閉じられた」


サーリムが言う。


「なぜ、封印石が置かれた?」


ターヒルは杖の頭を親指でなぞった。


「置いた者たちは、何も教えなかった」


そして、一行を見る。


「ただ、水だけがあそこを通るものではなくなった、と言った」


ラカンの目がナツメヤシ園へ向く。


マヤが尋ねる。


「それまでは、禁じられた場所じゃなかったんですか?」


「ほかと同じナツメヤシ園だった。ナツメヤシがあり、水が流れ、男たちが実を採りに入っていた」


ターヒルがゆっくりと息を吐く。


「その後、道が閉じられた。“禁じられた”という言葉だけが繰り返され、いつしか人々は、あそこがただのナツメヤシ園だったことさえ忘れた」


ラカンが聞く。


「封印石を置いた者たちを知っているか?」


ターヒルは首を横へ振った。


「俺が若い頃、よそ者たちが村へ入っていくのを見た。名は明かさなかった。村の長老たちも、許された以上のことは尋ねなかった」


サーリムが尋ねる。


「封印石へ続く別の道は?」


「昔あった道なら知っている。今も同じ場所に残っているかは分からない」


完全な答えではなかった。


だが、偽りのない答えだった。


ラカンが空を見る。


家々の向こうに、細い灰色の光が現れ始めていた。


「時間だ。戻るぞ」


ヤザンは反対しなかった。


立ち上がろうとすると、脇腹に痛みが走った。


土へ手をつき、身体を支える。


マヤは気づいたが、駆け寄らなかった。


ヤザンが自分の足で立つのを待ってから、冷たい水を再び肩の包帯へ沿わせた。


ターヒルが言う。


「任務が終わったら、また来い」


ヤザンは彼を見る。


「戻れるようにします」


もう一度、マルワンの墓へ近づいた。


土へ手を置く。


小さな声で言った。


「戻ってきたよ、じいちゃん」


それから、隣の墓へ移る。


ラヒールの墓標を前にして、ためらった。


母親の声を知らない。


顔も見たことがない。


生きていたなら、自分をどんなふうに呼んだのかも分からない。


手を伸ばし、冷たい墓標に刻まれた名へ触れた。


石は冷たかった。


それでも、手を離さなかった。


「俺は、ここにいる」


それ以上、何も言わなかった。


言う必要はなかった。


マヤが目を伏せる。


サーリムは松明を少し遠ざけた。


シグランは誰にも顔を見られないよう、ナツメヤシ園の方を向いたままだった。


ラカンは黙って待った。


そして告げる。


「戻るぞ」


夜明け前、一行は小さな家を離れた。


光がアイン・アルワルの上へ、ゆっくりと昇る。


石膏の家々へ触れた。


水路と砂の道を照らした。


小さな家の裏にある二つの墓へも届いた。


だが、ナツメヤシ園の最初のナツメヤシへ差しかかったところで、光は止まった。


そこだけは幹が黒く、影も崩れない。


まるで夜明けそのものが、そこへ入ってはならないと知っているかのように。

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