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血の継承【改訂版】  作者: Salhi smail
第四章 アイン・アルワル編

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涸れた水路

ラカンが命令を繰り返す必要はなかった。


「俺の後ろに続け」


その一言で、全員が動いた。


ラカンは真っ先に宿舎を飛び出した。


足より先に視線を走らせる。取り乱した者の走り方ではない。余計な一歩が、誰かの命を奪うと知る者の動きだった。


その後ろを、武器を手にしたサーリム、ヌーリヤ、ジャラールが追う。続いて、封印具を収めた道具袋を抱えたアシール。その周囲をシグラン、マヤ、ヤザンが固める。アシールの穏やかな顔は、すでに静かな鋭さへと変わっていた。


外へ出ると、アイン・アルワルの静けさはすでに失われていた。


子供たちは中庭の扉の向こうへ姿を消し、女たちは道に残った子の名を呼んでいる。男たちは砂運びの荷車やナツメヤシの幹を押し、用水路へ続く道を塞いでいた。


ロバが鳴き、家畜が囲いの中で騒ぐ。


その向こうから、再び悲鳴が上がった。


道の先に守り手が現れ、腕を大きく振った。


「こっちだ! 干上がった水路だ!」


サーリムが守り手を追い越しながら言う。


「表の道では家々を大きく迂回する。間に合わない!」


ヤザンが顔を上げた。


干上がった水路。


その言葉だけで、とうに消えたと思っていた村の地図が、記憶の中に開いた。


「近道があります」


走りながら、ラカンが振り返る。


「どこだ」


ヤザンは、白い石膏で造られた二軒の家の間を指した。


「あそこです。古いパン窯の裏を抜ければ、傾いた石のそばへ直接出られます」


サーリムが言った。


「あの路地は半分崩れている」


「右側だけは、まだ通れます」


サーリムは一瞬、ヤザンを見た。


アルマザの騎士が、なぜ村人さえ忘れかけた道を知っているのか。


けれどラカンは、問いに時間を使わなかった。


「ヤザン、俺の後ろから道を示せ。一人で先行するな」


「はい」


一行は路地へ入った。


シグランの肩が、石膏塗りの壁に触れるほど狭い。


古いパン窯から、灰と焼けた小麦の匂いが漂ってくる。ナツメヤシ材の扉が、彼らの通過に合わせるように内側から閉ざされていった。


ヤザンは考える必要さえなかった。


目より先に、足が曲がり角を覚えていた。


市場を避けたいとき、ここを走った。


年上の子供たちに「呪われた女の息子」と呼ばれれば、あの小屋根の陰に隠れた。


そして古いパン窯の前では、マルワンが小さなパンをひとつ買った。


二人分に分け、同じ大きさだと言い張った。


いつもヤザンの分だけが大きかった。


ヤザンは振り返らず、その場所を通り過ぎた。


今は、立ち止まるときではない。


路地を抜けると、中庭の裏手に広がる砂地へ出た。


その先に、干上がった水路が見えた。


水路の大半は砂に埋もれ、低く窪んだ両岸には、石膏のこびりついた古い石が並んでいた。その端には一本のナツメヤシが傾き、根だけで辛うじて地面にしがみついていた。


そのそばで、砂が動いた。


いや。


内側から膨れ上がっている。


そして、裂けた。


巨大な身体が飛び出し、砂の塊が水路の両側へ弾け飛んだ。


現れた怪物は頭を低く垂れ、背中を広く膨らませていた。砂漠の雄牛に、黒い岩と固まった砂の装甲を重ねたような姿だ。


額からは、途中で折れ曲がった骨の角が伸びている。


装甲の隙間からは、呼吸に合わせて黒い蒸気が漏れた。


片脚が持ち上がる。


地面へ落ちる。


水路の縁が震えた。


さらにその両脇から、ひと回り小さな怪物が二体、砂を掻き分けて姿を現した。


背は大きく曲がり、前脚だけが異様に太い。口は首元近くまで裂けていた。


サーリムが息を呑む。


「こいつら……」


二体を見据え、顔つきを変える。


「前の襲撃で逃げた二体だ」


ヌーリヤが湾曲刀を抜いた。


「戻ってきた。それも、前より厄介なものを連れて」


アシールが最初に見たのは、怪物ではなかった。


亀裂だった。


崩れ落ちた砂が、外へ広がらず、内側へ吸い込まれている。


道具袋へ手を入れたアシールは、細長い封印札を一枚取り出した。発動させず、二本の指の間に挟む。


「水路の底を攻撃しないで。怪物だけを、そこから引き離して」


ラカンが片手を上げ、即座に指示を飛ばした。


「サーリム、ヌーリヤ、ジャラール。小さい二体を引き受けろ。家の方へ行かせるな。シグランとマヤは装甲の大物を引き受けろ。ヤザンは道側に残り、住民の避難を手伝え。俺はアシールを守りながら亀裂を監視する」


一歩前へ出たシグランが言う。


「俺一人で――」


「マヤと組め。単独で動くな」


シグランの目に不満が浮かんだ。


だが、口答えはしなかった。


マヤが隣に立ち、水袋を持ち上げる。


シグランは彼女を見ずに言った。


「邪魔はするな」


水袋の口から流れ出た水が細い糸となり、マヤの手首へ絡みつく。


「あなたこそ、私の邪魔をしないで」


シグランの口元に、かすかな笑みが浮かんだ。


「あいつを転ばせろ」


マヤは怪物の脚を見据える。


「まず、怒らせて」


装甲の怪物が突進した。


獣のような速さはない。


だが、その重さだけで地面の方が後退して見えた。折れた角が空気を裂き、足元の小石が跳ねる。


シグランが掌を上げた。


赤い炎が一気に燃え上がり、怪物の胸へ襲いかかる。


炎が巨体を呑み込んだ。


一瞬、その姿が見えなくなる。


だが、怪物は炎の中から飛び出した。


黒い装甲は赤く熱せられている。それでも歩みは止まらない。


小型の一体を短剣で迎え撃ちながら、サーリムが叫んだ。


「効いていない!」


「シグラン、動け!」


ラカンの声が飛ぶ。


シグランは寸前で身を捻った。


角が胸元をかすめ、外套の端を引き裂く。


その反対側から、小型の二体が迫っていた。


ビスカラの騎士たちは、ケメンを遠くへ放たなかった。


サーリムのケメンは短剣の表面に沿い、薄く圧縮されている。必要な瞬間にだけ刃とともに走り、一体目の顎を受け止め、その向きを逸らした。


ヌーリヤはもう一体の周囲を回りながら、ケメンを湾曲刀の内側に留め続けた。


怪物が飛びかかった瞬間、刃先だけに光が宿る。


一閃。


怪物の脇腹に、長い傷が刻まれた。


ジャラールは二体と家々を結ぶ道の間に立ち、槍を構えた。


派手さはない。


すべての動きが計算されていた。


一度の攻撃に流すケメンは、その一撃に必要な分だけ。


ヤザンは、ほんの一瞬その戦い方を見つめた。


戦いの最中でさえ、ビスカラは何ひとつ無駄にしない。


水も。


力も。


装甲の怪物が唸り、シグランへ向き直った。


「右脚」


マヤが告げ、細い水の鞭で砂を打つ。


水を吸った砂が一気に重くなり、怪物の右脚へまとわりついた。


足がわずかに沈む。


体勢が崩れた。


ほんの半歩。


だが、それで十分だった。


シグランは角の下を潜り抜けた。


指の間に、淡い青の炎が生まれる。


炎を広げることはしなかった。


小さな一点へと圧縮する。


熱で拳の周囲の空気が揺らめいた。


戦いながらそれを目にしたサーリムが、思わず呟く。


「なんて制御だ……」


シグランは肩口にある装甲の継ぎ目へ飛び込み、青い炎を叩き込んだ。


怪物の体内で、岩が割れたような音が響く。


初めて、怪物が咆哮した。


致命傷ではない。


だが、確かに痛みを与えた。


シグランが狙っていたのは、それだった。


砂の上へ着地すると、彼は片手を身体の陰へ隠した。


熱で袖口が黒く焦げ、指先がわずかに震えている。


マヤはそれに気づいた。


だが、何も言わなかった。


怪物が荒々しく身を回した。


尾が近くの中庭の外壁へ激突する。


石を積み、石膏で固めた壁が崩れ、その上に渡されていたナツメヤシの幹と葉の小屋根が落ちた。


悲鳴が上がる。


子供だ。


壁の向こうにあった中庭が剥き出しになった。


幼い少女が、弟の脚に落ちたナツメヤシの梁を必死に持ち上げようとしている。


小型の怪物が、その声へ振り向いた。


石膏の粉塵が舞い上がった一瞬を突き、ヌーリヤの脇を抜ける。


「ジャラール! 右!」


だが、ヤザンはすでに走り出していた。


水路に沿って駆け、細い亀裂を飛び越える。


粉塵の中から怪物が飛び出した。


ヤザンは頭を下げ、身体を斜めに滑らせる。


短い爪が肩のすぐ上を通り、外套の端を裂いた。


ヤザンは反撃しなかった。


狙いは怪物ではない。


子供たちだ。


二人のもとへ辿り着くと、ナツメヤシの梁を両手で掴み、片側を持ち上げる。


「引っ張れ!」


少女が弟を梁の下から引きずり出した。


「中へ! 止まるな!」


少女は弟の身体を支えながら走り出した。


怪物が瓦礫を飛び越える。


ヤザンに逃げる時間はなかった。


胸の傷を庇い、肩を衝撃の方へ向ける。


怪物の身体が激突した。


ヤザンは向かいの壁まで吹き飛ばされ、肺から一気に空気を吐き出した。


古い痛みが肋骨の奥で燃え上がり、背中まで走る。


新たな衝撃のせいで息が止まったのか。


それとも、まだ治りきっていない傷のせいなのか。


一瞬、自分でも分からなかった。


片膝をつく。


裂けた口から黒い唾液を垂らし、怪物が迫ってくる。


ヤザンは砂を一掴みし、その目へ投げつけた。


怪物が反射的に頭を逸らす。


ほんの一瞬。


だが、ジャラールにはそれで十分だった。


槍が粉塵を貫き、怪物の脇腹へ突き刺さる。


そのままヤザンから引き離し、地面へ縫い止めた。


怪物は二度大きく痙攣し、動かなくなった。


ジャラールがヤザンへ手を伸ばす。


「立てるか?」


ヤザンはその腕を掴み、ゆっくりと立ち上がった。


「はい」


ジャラールは彼の肩を見た。


続いて、激突した壁を見る。


ヤザンの身体を包むオーラはない。


ケメンの気配もない。


それでも、立っている。


「オーラもないのに……」


ジャラールは低く呟いた。


「それでも、折れなかった」


ラカンが二人のもとへ来ると、ヤザンの全身を素早く確認した。


「後ろへ下がれ」


「まだ動けます」


「できるかどうかは聞いていない」


ラカンはまっすぐ彼を見た。


「後ろへ下がれと言った」


ヤザンは反論を呑み込んだ。


「はい」


ラカンは水路へ向き直る。


その頃には、サーリムとヌーリヤが残る一体を追い詰めていた。


サーリムが短い斬撃を重ねて注意を引きつける。


背後へ回ったヌーリヤは、最後の瞬間にだけ湾曲刀へケメンを流した。


光が首を横切る。


頭部が砂の上へ落ちた。


だが、装甲の怪物はまだ立っていた。


傷を負い、さらに凶暴になっている。


角を振るうたびに地面が抉れ、尾が動くたびに水路の縁が崩れ、石が砕けた。


それでも、シグランはもう闇雲に炎を放ってはいなかった。


怪物の周囲を巡り、攻撃しては退き、マヤが選んだ場所へ誘い込む。


マヤは声を荒らげない。


視線は常に脚へ。


関節へ。


砂へ。


放つ水の一本一本に、明確な目的があった。


脚元の砂へ水を含ませる。


二つの石の隙間へ水圧をかけ、足場を傾ける。


舞い上がる粉塵を払い、シグランの視界を一瞬だけ開く。


使わずに残した水は、一滴も砂へ落とさない。


それを見ていたヌーリヤが言った。


「力任せに水を放っているんじゃない……」


水路から目を離さないまま、アシールが答える。


「その必要がないのよ。あの子は、水をどこへ、どれだけ流すべきか選んでいる」


装甲の怪物が再びシグランへ突進した。


「左!」


マヤが叫ぶ。


左脚の下へ水を走らせ、砂を一気に重くする。


怪物の脚が関節近くまで沈み、巨体が低く傾いた。


シグランは崩れた壁の欠片を踏み台にして跳んだ。


掌を持ち上げる。


今度の青い炎は、球ではなかった。


掌の前で、山に棲む獅子の顎を形作る。


二本の青い牙と、燃え上がる顎の輪郭。


その頭部さえ、まだ完成していない。


サーリムが目を見開いた。


「青い炎……」


シグランが歯を食いしばる。


「倒れろ」


獅子の顎が、剥き出しになった怪物の片目へ食らいついた。


轟音が村中の壁を震わせた。


炎。


粉塵。


黒い蒸気。


装甲の怪物が、初めて後退した。


だが、まだ死んではいない。


片目を潰され、怒りに狂い、シグランへ突進する。


予想を超える速さだった。


シグランは着地したばかりで、まだ体勢を立て直せていない。


「危ない!」


ジャラールが叫ぶ。


ラカンが動く。


だが、マヤの方が近かった。


二本の水を傷ついた脚へ巻きつけ、怪物が全体重をかけた瞬間に引く。


踏み込みが外れた。


角はシグランの胸を貫かず、すぐ脇を通過する。


シグランは砂の上を転がり、顔を上げた。


肩口に開いた装甲の隙間が、正面にある。


「今!」


マヤの声が飛ぶ。


シグランは反対の掌を上げた。


先ほどよりもさらに圧縮された青い炎が燃える。


熱に耐えきれず、腕が震えた。


それでも、狙いが完全に定まるまで放たない。


そして、撃った。


青い炎が、先ほどと同じ亀裂へ突き刺さる。


怪物の突進が止まった。


一歩。


さらに一歩、よろめきながら後退する。


装甲の一枚に亀裂が走り、濃い黒煙が噴き出した。


前脚から力が抜ける。


巨体が横倒しになり、地面が大きく揺れた。


短い静寂が落ちた。


やがて、柵の向こうから守り手たちの歓声が上がる。


サーリムはシグランから目を離せないまま言った。


「これでC級班だと?」


残った水を震える糸のまま水袋へ戻すマヤを見て、ヌーリヤが続ける。


「階級だけでは、何も分からないみたいね」


アシールが静かに言った。


「階級が示すのは、彼らが今どこにいるかだけ。どこまで行くかではないわ」


ジャラールの視線が、ヤザンへ移る。


ヤザンは道のそばに立ち、片手で脇腹を押さえていた。衣服も顔も白い粉塵にまみれている。


ジャラールは何も言わなかった。


だが、その目に、オーラを持たない騎士への疑念はもうなかった。


アシールが装甲の怪物へ近づく。


封印札は、まだ指の間に挟まれていた。


身を屈め、腹側の装甲を見つめる。


石のような板の隙間に、細く規則的な黒い線が幾重にも走っている。


封印を身体の内側へ埋め込み、その上から装甲が育ったかのようだった。


アシールの目つきが変わる。


ラカンが尋ねた。


「何を見つけた」


アシールは黒い線に触れなかった。


「自然にできた痕ではないわ」


さらに言葉を続けようとした、そのとき。


亀裂の奥から、何かが擦れる音が聞こえた。


装甲の怪物が立てた音ではない。


砂が崩れる音でもない。


もっと鋭い。


石を内側から引っ掻く音だった。


全員が水路へ振り返る。


守り手の一人が一歩退いた。


「何だ……?」


傾いたナツメヤシの根元。


砂と暗闇の境目から、三つの影が這い出した。


装甲の怪物より小さく、軽い。


だが、腕だけが異様に長い。


背を地面につきそうなほど曲げ、身体の前へ垂らした両腕の先には、鎌のように湾曲した爪が伸びていた。


その顔は、獣のものではない。


黒くひび割れた皮を被った悪夢そのものだった。


細い黄色の目が開き、三つの頭が別々の方向へ揺れる。


守り手が掠れた声を漏らした。


「こいつらは……今まで一度も現れなかった」


一本の爪が、水路の縁を擦った。


乾いた音。


鋭い音。


ヤザンの呼吸が止まった。


守り手の声が消える。


サーリムの足音も。


新たな命令を飛ばすラカンの声さえ、聞こえない。


ヤザンは爪を見ていた。


違う。


見ていたのではない。


あの日へ、引き戻されていた。


黒いナツメヤシの間。


十三歳の自分。


砂の上に広がる血の匂い。


自分を後ろへ突き飛ばす、マルワンの硬い手。


そして、あの音。


爪がナツメヤシの幹を擦る。


爪が地面を裂く。


爪が、マルワンの身体の上へ振り上げられる。


ヤザンの指先から熱が消えた。


肩の痛みも。


水路も。


家々も。


すべてが消えた。


残ったのは、二年前の黒いナツメヤシ園だけだった。


まるで、あの日から一日も経っていないかのように。


「ヤザン?」


シグランが呼んだ。


動かない。


マヤが、さらに強く名を呼ぶ。


「ヤザン!」


一体目が跳んだ。


狙いはシグランでも、マヤでもない。


ヤザンだ。


こちらへ来るのが見えた。


どこへ足を置けばいいかも分かる。


右へ半歩。


それだけで爪の軌道から外れる。


ラカンに何百回も叩き込まれた動きだ。


身体は知っている。


だが、記憶が両脚を掴んでいた。


ヤザンは動かなかった。


「ヤザン! 動いて!」


マヤが叫ぶ。


シグランが駆け出す。


だが、二体目がその前へ割り込み、長い爪を振るった。


青い炎が拳を包み、爪と激突する。


「ヤザン! 動け、この馬鹿!」


マヤが三体目を止めようと水を放つ。


怪物は飢えた影のように身を翻し、水の糸を砂へ逸らした。


一体目は、すでにヤザンの目の前にいた。


ラカンが、その姿を見る。


ラカンの目に映ったのは、怪物を恐れて立ち尽くす少年ではなかった。


二年前の光景に囚われた、十三歳の少年だった。


「ヤザン!」


怪物が爪を振り上げる。


爪が落ちてくる。


だが、ヤザンの目に怪物は映っていなかった。


マルワンが倒れる。


頭が垂れる。


血が砂を染めていく。


十三歳の自分が叫んでいる。


けれど今のヤザンの喉からは、何の声も出なかった。


そして爪が胸へ届く、その直前――


白い光が、砂塵を切り裂いた。

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